IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男   作:運命の担い手

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二週間ちょいぶりです。
リアルの尋常じゃない忙しさと度重なる体調不調でえらく長くなってしまいました。
とくかく、出来たので上げました。
新キャラも出ます。
それでは、どうぞ!


第36話「頼み事」

「――――――――――――」

 

呼吸を整え、的を見据える。いつも通りに一連の動作―――射法八節をし、矢が放たれ、的の中心に()たる。

 

「うむ。いつ見ても良い動きじゃの」

「ありがとうございます間堂部長」

 

今日の放課後は部活の弓道部に来ている。弓道部には週三回以上来るようにしている。本当は週五回来たいのだがISの練習や久宇企業から呼び出しもあるのでどう頑張っても週三回ぐらいが限界だ。

 

「一年だというのに正鵠に的中するとはなかなかすごい者じゃ。これはワシもうかうかしておれんな」

「いえいえ。美射部長の方が上手いではないですか」

 

この人は弓道部部長の間堂(げんどう) 美射(みしゃ)。三年生。高校生で五段錬士という超エリートだ。「全国高校弓道選抜大会」で惜しくも破れ個人戦2位に終わった。

ちなみに1位になったのは貧乳だったとか。

それと正鵠とは的の真ん中の白い部分の更に真ん中の事だ。

 

「そうは言うものほとんど大差はないぞ。もっと自信を持つのじゃ」

「それなりには持っていますがそれ以上は慢心に繋がるので持たないようにしているので」

 

自信があり過ぎると慢心が起こる。すると的に当たらなくなったり、ケガをする恐れもある。だから常にある程度だけにしている。

 

「相変わらずよく中たるな。私より学年がしたなのに」

「マナ。嫉妬しているのかぇ?」

「違う。ただ事実を言っているだけだ。この筋トレ中毒者が」

 

この二人は高橋 (まなぶ)先輩に荒井 (ちから)先輩。二年生。IS学園に入ってから弓道を始めたそうだ。愛称はマナとチカである。

 

「ですが本当に良く正鵠(せいこく)に中たっています。美射部長のように正射必中で素晴らしいです」

「祈先輩ありがとうございます。今度は何を祈っていたんですか?」

「織田信長や豊臣秀吉と言った武将達に祈願を」

「はは。それより体を鍛えた方がいいと思うんですが」

「いえ、最後は運なので」

 

神崎(かみさき)  (いのり)先輩。同じく二年生。背が低く華奢で体が弱いがしっかりと射法八節をしているので的に()たっている。美射部長とは中学の時からの付き合いだそうだ。

 

「士郎君はすごいよね。私なんか的にほとんど()たってないんだよ」

「そんなことない。弓道を始めて一ヵ月、ずいぶん成長しているぞ。それに初日で離れをしたじゃないか」

「えへへ、そうかな。私、筋トレしてくるね」

 

こいつは矢澤(やざわ) 正弓(まさみ)。俺と同じ一年。初日から射法八節の離れをして美射部長の一番期待している女子だ。ただ、身体ができていないので今は筋トレを主にしている。

 

「よ。今日は来てたんだな」

「ああ。今日は問題はないから来れた。なるべく部活に来るようには調整しているからさ。勝負はしないぞ」

「今日はしないさ。ま、同じ一年で張り合いが出来るのは士郎ぐらいだな。先輩と勝負するのもいいがやっぱり同じ学年の方がいい」

 

話しかけてきたのは美綴(みつづり)綾子(あやこ)。同じく一年。サバサバした性格で男前な口調が特徴。弓道はIS学園に来てから始めたそうで、それまでは様々な武道武芸を(たしな)んできていた。弓道部に入ったのは唯一弓道には心得がなかったからだ。そこで学園入学時にすすんで弓道部に入ったという事になった。

 

「そこお喋りしないで()たないか。時間は有限じゃぞ」

「やば。部長怒ると話しが長いからさっさとやろうぜ」

「そうだな」

 

話しをやめ、再び的に目掛けて弓矢を向ける。

 

「――――――――――――」

 

射法八節とは弓の基本で

足踏み(射位(しゃい:弓を射る位置)で的に向かって両足を踏み開く動作)、

胴造り(足踏みを基礎として、両脚の上に上体を安静におく動作・構え)、

弓構(ゆがま)え(矢を番えて弓を引く前に行う準備動作)、

打起(うちおこ)し(弓矢を持った両拳を上に持ち上げる動作)、

引分け(打起こした位置から弓を押し弦を引いて、両拳を左右に開きながら引き下ろす動作)、

会(引分けが完成(弓を引き切った状態)され、矢は的を狙っている状態)、

離れ(矢を放つ、あるいは放たれること)、

残心(矢が放たれた後の姿勢)

といった順である。これらを上手く行えば、大体は的に中らずとも届くほどぐらいに飛ぶ。

俺はなぜか射法八節が自然とできた。身体が覚えているという事なのだろう。集中を切らさなければ今の所は外す事はない。と言うより外す気はない。

そして放たれた矢は真ん中の白い部分に中たる。中たるのは的の真ん中の白い部分がほとんどだ。

 

「お前よく中てるよな。しかも白い所に」

「これに関しては俺もよく分からん。身体が覚えてると言った方がいいなのだろう。綾子は覚えが早いから的には中たるだろ」

「白い所はほとんどないんだよ。ま、今は積み重ねしかないからしょうがないがいずれ士郎、お前に勝つぜ」

「臨む所だ」

 

それからは先輩達と変わり一年生は全員的作りになった。的作りは先輩達もやるがもっぱら一年生がやる事だ。すでに先輩達に教えてもらっているので作れるが馴れないと上手く張れない。そんな時は先輩達に聞いたり、一年生同士で協力するなどで補っている。

 

「士郎はおるか?」

「います。何か用でも?」

「うむ。お主に用があるという者がいる。ちと来てくれんか」

「分かりました」

 

俺に用か。別に何かしたわけでもないし、覚えもない。

 

「何かしたのか?」

「していない」

「え?何かしたの士郎君」

「だから、何もしていない。あ、ずれているぞ正美」

「わあ!また張り直しだあ!」

 

綾子と正美からの質問に答え、美射部長の所に行く。

行くと誰かがいた。恐らくその人が俺に用があるのだろう。あの人は確か……

 

「剣道部の部長さんか」

「お久しぶり?元気そうね?」

 

相変わらずな疑問形で話す剣道部の部長。この人とは会ったといえばクラス代表を決める前に剣道場で箒と試合をしたときに審判をしてもらっただけだ。

学校ではたまに見かけるだけで、こう面と向かって話すのは二回目だ。

 

「何かやりましたか。俺が」

「違うよ?ちょっと頼みたい事があったんだよ」

 

あれ?前半は疑問形だったが後半は普通に話している。てことは真面目な話なのか。よく分からないが。

 

「篠ノ之 箒さんは分かるよね」

「はい。一夏にISの練習・特訓に良く付き合ってくれていますし、クラスメイトですから」

「その篠ノ之さんを部活に来るように言ってくれないかしら」

「…………え?」

 

確か最近話していたな部活の事。その時には大丈夫と言っていたはずだが。

 

「ちなみに箒は今まで何回来ました?」

「片手で数えられるわよ。部活の顔出しだけ」

「あー……」

 

片手。しかも一回だけか。はあ…………思った以上に行っていないとは。

一夏に構い過ぎだ。一人で出来るようなメニューを考えておかないとまずい。このままでは箒が幽霊部員になってしまう。いや、なりかけている。

 

「私からも何度も言っているんだけど、はい分かりましたってだけで全然来てくれないのよ。悪いんだけど、あなたから言ってくれないかしら」

「分かりました。言ってみましょう。自分にも多少なりとも責任があるので」

「ありがと。それじゃお願いね?」

 

すぐに弓道場から出ていった。部長だからそんなに長居は出来ないのは当たり前か。てか、また後半から疑問形の話し方に戻った。

 

「美射部長。明日は説得するので、すみませんが部活来れません」

「気にするでない。同じ部長として見過ごすわけにはいかんからの」

「ありがとうございます。ところで部長」

「なんじゃ?」

「剣道部部長とは仲が良いんですか?」

「そうじゃ。IS学園に入ってすぐに友達になったからの」

 

なるほど。それなら納得。

その後は部活に集中して、終わったら箒をどう説得するか考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。箒を説得するため一夏、セシリアを呼んで昼休みに説得をすることにした。

昼食をしてタイミングを見計らい、意を決して話した。

 

「箒。一夏の特訓はセシリアと織斑先生に任せるから部活に行くんだ」

「それはどういうことだ」

 

不快にさせたようだ。いや、言葉が足りなかった。

 

「実は昨日剣道部の部長さんに部活にもう少し出て欲しいと頼まれてな。一夏に特訓を付き合ってもらうのはいいが、部活に精を出すがいい。一日の鍛錬を怠れば後日に影響を及ぼすはずだろ」

「大丈夫と言ったはずだ。私から部長に直接言っておく」

「……分かっていないようだな」

「どういうことだ?」

「はっきり言おう。今のお前は自己満足に浸っている」

「なんだと!」

 

ダン!とテーブルを叩き立ち上がる。周りには当然昼食を取っている者が多くいるのでこちらに注目が集まる。

 

「私は一夏のためを思ってやっているんだ。それをお前は自己満足と言うのか!」

「そうだ。今の箒は周りがよく見えていないからそうなっている。一夏のためと言っておきながらそれは自己を満たすことだけでやっているだけに過ぎん。

それにさっきも言ったが織斑先生に任せると言った」

「どういうことだ士郎。俺は千冬ね……織斑先生から何も言われなかったぞ」

「その事はさっき職員室で頼んだからさ。織斑先生には少々無理させてしまったがね」

 

食堂に来る前に職員室に行き、織斑先生に頼んだのだ。姉弟で不公平だと言っていたが雪片をよく知っているのは織斑先生だと言ったら渋々ながら了承してくれた。

 

「だから、クラス対抗戦が終わるまで特訓は織斑先生がメインになることになる。終わっても少々出るがな。セシリアも部活に出て大丈夫だ」

「え、ええ分かりましたわ」

 

一夏と一緒に特訓するのはいいが織斑先生となるとさすがに遠慮するよな。もし一緒になったら、容赦なく欠点を言うだろう。

 

「とにかく部活に出ろということだ」

「私はまだ納得がいっていない!なぜ私達に一言も言わない!」

「言ったら必ずといっていいほどに反対するだろ。だから、何も言わずにした」

 

悪いと思ったがこうする他はなかったからしょうがない。特に箒の場合は。

 

「なら、私と勝負しろ」

「は?」

「私と勝負しろと言ったのだ」

 

なぜ勝負なのか。納得いかないからとにかく勝負しましょってか。

 

「ああいいぞ。ルールはただの勝ち負けか」

「それだけではない。賭けをしてもらう。お前が勝てば、私は文句は言わない。私が勝ったら、士郎、お前は一夏の訓練に今後付き合わないでもらおう」

「ほう」

「おい、箒!」

 

なかなかおもしろい。白黒つけて、今後の事にケリをつけるか。ふ、実にいい。

 

「その勝負受けよう」

「決まりだな。勝負は放課後だ。ちなみに今回は竹刀は一つだけだ。言い訳はしないでもらおう」

「安心しろ。今のお前には一つで十分だ」

「ふん」

 

食器を返却口に返してそのまま食堂を出て行った。

 

「おい、大丈夫なのか」

「何がだ一夏」

「放課後の事だよ。箒は全国大会一位の実力だぞ。勝てるのか?」

「安心しろ。こちらに切り札がある。悪いがお前も放課後見に来るといい。ためになるはずだ」

「どういうことだよそれは」

「あ、あのわたくしもいいでしょうか?」

「構わない。というよりも誰も来ないようにはと言っていないからな」

 

勝負は放課後か。二刀流は許されているがあえて一本にした。正直言うと一本ではきついが、そうも言ってはいられない。一本でも勝てると証明するのもいい機会だ。

切り札の()()を使うしかないか。箒に見えればいいんだが。

 

 

 

 

 




次回もオリジナルです。当然ですけど。
今回出てきた新キャラは射 〜Sya〜からです。
詳細は後日の設定で出します。
次回は来週かな。頑張って今週もう一回上げるようにがんばるか。余裕が出来たし。
では次回もお楽しみに!
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