IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男   作:運命の担い手

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出来たー!やれば出来るもんだな。
頑張ってレッドブルを三本飲んだおかげだね。
一応確認はしたんですが変な所があったら報告お願いします。
では、どうぞ!


第37話「心の剣」

放課後、剣道場にいる。本来今の時間では剣道部が使用していて日々鍛錬を積み己を鍛えている頃だが今は俺と箒が使わせてもらっている。

 

「分かっていたがここまで人が来るとは思わなかった」

 

道場には一年から三年まで大勢いる。かなりギリギリに入ってるので中に入れなかった人も多いようだ。気のせいであろうかどこかでどっちが勝つか賭けをするとかが聞こえるような。

 

「満員だねゆーみん」

「そうだな。人の目が気になるが勝負に集中すれば問題はない」

「けど大丈夫なの?二本じゃなくて一本で」

「さすがに全国大会優勝者には少々厳しいがなんとかなるさ」

「負けたら週末に研究場に行って訓練をみっちりするように頼んでおいたわよ」

「完全に負けられないな、これは。美沙夜、頼んでもいないのにやってくれる。特に研究場の訓練とは!」

 

傍には本音、簪、美沙夜がいる。放課後にはすでに情報が行き渡っていたようで学園中知らない者はいないそうだ。

 

「えっと、研究場の訓練てそんなに辛いの?」

「簪、辛いってもんじゃない。あれは地獄だ」

「え?」

「いいか。最初に呼び出された日の朝からいきなり高速戦闘訓練をやらされたんだぞ。それも二十四時間中十六時間だ」

「え、えー……」

「しかも土曜だったから次の日曜もやらされた。IS学園に帰ってきたのは八時を過ぎていたはずだ」

「それ知ってるー。ジュース買いに行って戻ろうとした時ゆーみんがものすごーく疲れた顔で部屋に戻って行くの見たー」

「それ以外にもフルアーマーを無鉄に装備し火薬銃をたんまり付けてほとんどに身動きが出来ないのに五対一の複数戦闘訓練と言う名のイジメを……!」

「けどそのおかげに良いデータが取れたって研究場の人達は喜んでいたわよ」

「俺はちっとも嬉しくない!」

 

思い出すのはやめよう。モチベーションが下がるだけだ。切り替えよう。

 

「とくかく!勝てばいいだけだ。では行ってくる」

「頑張って」

「ファイト―」

「勝ちなさい」

 

さて、相手はやる気満々だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

箒と士郎が剣道で勝負を決めることになった。士郎が勝ったら、箒は文句を言わない。箒が勝ったら、士郎は今後俺との訓練には参加出来ないとなっている。

 

「なあ箒。いくらなんでも賭けの内容が酷いと思うぞ」

「何を言うのだ一夏。士郎は了承しているからなんら問題はない」

「いや、だけど」

「それに私は負ける気なんぞ一切ない。前回は二本だったが今回は一本だ。すでに勝機はこちらにある」

 

そう、セシリアと戦う前に箒と士郎は一度打ち合ったことがある。

その時は士郎は二本だったが今回は一本。箒に勝つ確率が高くなっている。

 

「では行ってくる一夏」

「ケガしないようにな」

 

箒は自信満々で勝つ気だ。どう考えても箒の方が勝つ気だ。箒の実力は身を挺して分かっている。なのに……

 

「なんで士郎の方が勝つような気がするんだ」

 

なぜかそんな思えてしまう。そんな呟きはギャラリーの声でかき消された。

 

 

 

 

 

 

 

試合場には俺と箒、審判の剣道部の部長さんがいる。

 

「ルールは一本勝負でいいわね?」

「ええ」

「はい」

 

白黒手っ取り早く決めるには一本勝負がいい。なにより相手がやる気だからなおさらだ。

 

「後で後悔しても文句は言うなよ」

「それは俺に勝ってからしろ」

「ふん!」

「こら、私語を慎むように。それでは始め!」

「はああああああ!」

 

合図と同時に箒が仕掛けて来る。迷いのない一閃が振り落されたが―――

 

「ふっ!」

 

躱す。ただ躱す。箒と俺の実力はそれほど大差はない。だが、それは二本持っていればの話だ。

俺の実力は二本あって本領を発揮する。片方で攻め、片方で守る。これにより、箒との実力を埋めることが出来る。何より、俺自身が剣の才能にない事を自覚しているからなおさらである。

だとしても負ける通りはない。

 

「面!突き!胴!」

 

目にも止まらぬ速さで襲い掛かるがそれすらも躱す。

俺の目、弓塚の目はただ遠くの的に中てるモノだけではなく、接近戦においても有効だ。相手の動き、目の方向、手の傾き、足の運び、重心の移動、得物の矛先。それらなどを注意深く観察することでちょっとした未来予測が出来る。しかし、今の俺では僅かしか見えない。

 

「正々堂々勝負しろ!それとも臆病風にでも当たったのか!」

「別に躱しているだけだ。ルールには違反していない。それに掠りもしてはいないぞ」

「その余裕も今のうちだけだ!」

 

勇猛果敢に攻めてくる箒。その姿はかつての侍、いや、武者といったところだろうか。無駄のない足の運び、日々磨き上げている剣筋、臆することなく果敢に攻める姿勢。どれも俺を遥か上であるかを示している。

だけど、今のお前では俺には通じない。

 

「さて、そろそろこちらから攻めて行くぞ」

「今さら何を―――」

 

 

フォンッ!

 

 

「ッ!?」

 

驚き、思わず大きく後退する。まさか、これが予想外と思われるとは少々心外だな。

 

「二本ではそこまで速くはなかったのになぜ一本では速い?」

「なに、簡単な事さ。二本を使う際には並行処理を行い、巧みに使っていたのを集約して一本にしただけさ」

「そんなこと簡単に出来るわけ―――」

「出来るさ。剣の才能がないのは誰よりも俺自身が分かっている。だから、いつでも一本でも出来るように幾度も練習している」

 

この先、二本で戦えるとは限らない。そのためには一本でも戦えるように必然的になる。

例え才能がなくても、技量で差を埋まらせることが出来れば十分だ。

 

「面!」

「くっ!」

 

受け止めるのではなく受け流して腕の負担を減らす箒。男女を筋力の差は大きく違う。だから箒は受け止めるのではなく受け流した。

 

「胴!胴!突き!」

「っち!これほどとは……!」

 

休むことなく攻め続け、箒に負担をかける。先ほどとは違いこちらが攻めに入り、箒が守りになった。

 

「凄いわ。一本でもあれほどの実力なんて……」

「篠ノ之さんって去年、全国大会優勝者って聞いたけど」

「もしかしてこれ、勝つんじゃないかな?」

「だとしたら凄いわよ、それ」

 

ギャラリーが何を言っているか分からないがこちらはこちらの目の前の相手をするだけだ。

 

 

 

 

 

 

予感は見事に当たった。最初こそは攻め続けていた箒だったが、士郎の風を切るような一閃で流れが変わった。

二本で実力は同じくらいだったので一本では負けると思ったらそうではなかった。実力は確かに箒の方が上だ。しかし、実際はどうか。

攻めに行く士郎、守りに徹する箒。俺にとっては信じられない光景だ。箒は去年、全国大会の優勝した。新聞で大々的に映っていた。小学生の頃とは実力は明らかに違う。

箒の実力は少ないながらも知っている者はいる。俺と箒の実力はもはや天と地の差だ。

それは士郎も例外じゃない。あいつは自分の家は代々弓塚家は剣の才能がないと入学当時から言っていた。それを埋めるために二本にしているのだと。

 

「胴!面!」

「はあ……はあ……ふっ!」

 

だからこそ箒は自信満々だったが、それを打ち砕く現実が目の前で起きている。

 

「なかなかやるな弓塚」

「ちふ……織斑先生いつの間に!?」

 

横にはいつ来たのか千冬姉がいた。

 

「今しがただ。篠ノ之は劣勢だな。まあそれもそうだろう」

「どういう事ですか織斑先生?」

「確かに篠ノ之はお前や弓塚より実力は上だ。しかし、あいつは心が出来ていない」

 

心が出来ていない?それがどういう事だろうか。

 

「いいか。力はただ力だ。使い方によっては誰かを守るためにもなれば、反面誰かを傷つけることになる。それはお前に昔言っただろう」

「はい」

 

剣道を始める前に言われた事だ。剣道は力を形にしたモノの一つだと。竹刀で人を傷つけてはならない。人に向けたあらゆるモノは、時に自分を傷つけることもあるのだと。

 

「心がない剣はただの力、いや、暴力の方に傾いてしまう。今の篠ノ之はそんな状態だ。だから、弓塚に押されている」

「そんな!箒はそんな事―――」

「外観だけで判断するな。それでは誰も守れはしないぞ。些細な事に気を配り、相手の真意に気づかないとそれは時に他人を傷つけることなる」

「…………………………………」

 

胸に突き刺さる。確かに俺は外観だけを見ていた。昔のままの箒だと思っていた。だけど、会えなかった空白の時間で箒は傷ついていたのかもしれない。突然の引っ越し、幾度も繰り返す転校。俺はそんなことで負けない箒と思っていた。

傷付いていたかもしれない。そのことに気付けなかった事に俺は自分に腹が立つ。

なぜ分かってあげなかったのだろうか。なぜ自分はこれほどまでに無力なのだろうか。

 

「なに背負い込んでいる馬鹿者」

「いた」

 

いつものような出席簿で当てるような感じではなく、軽く当てられた。

 

「過去を悔やんでもどうすることは出来ん。なら、今これからどうすればいいだけの話だ」

「……そうだよな。俺、試合が終わったら箒と話しをする。なんでもいいから」

「そういうことだ。なら、見ておけ。今の弓塚は心技体を持ち合わせている」

「はい!」

 

試合に目を向ける。劣勢ながらも諦めない箒。才能をないのを認め、技量で押す士郎。目に焼き付けるように、食い入るように見た。

 

 

「………………そうさ。過去を悔やんでもどうすることは出来ん。それは私も…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

息を切らしながらも構えは崩さないか。体力はもはや限界だというのに立つとは見上げたものだ。

 

「負けを認めるんだ箒。体力はそれほど残っていないはずだ。潔く諦めろ」

「何を言っている……私はまだ負けていない。勝ち負けは倒れてからにするんだ」

 

息を整え構え直す。その心意気はいいが今のお前では見苦しいだけだ。

 

「はあ……仕方がない。なら、切り札を使うしかない」

「ふ、戯言を――――――なっ?!」

 

防具を全て脱ぎ、竹刀を置くと袴だけになる。脱ぐと少しだけ体から熱気が抜けて心地よい。

 

「どういうつもりだ。お前が負けになるのか。それほどまでに私を侮辱するのか……!」

「試合を捨てるつもりはない。このまま続けるさ。審判、引き続き試合は続行だ」

「防具を付けないと試合は続けられないわ。万が一ケガでもしたら大変よ」

「心配には及ばない。ケガなど今の箒には出来ん」

「いいだろう。構えろ。私がお前を叩き直す!」

 

先ほどとは違い息を切らしてはおらず、万全ではないにしろいつでも試合続行という態勢だ。

 

「なら来い。俺はシンケンでやる」

「真剣?お前は手でただ構えているだけではないか」

「いや、そっちの真剣じゃない。俺が言ってるのはこの剣のことだ。あるのさ。俺の心の中に。心の剣。その名は心剣」

「馬鹿な事を。それは剣を極めた者した見えないという奥義ではないか。それをお前が出来る筈がないだろ」

「現に出来ている。それにお前なら見えると思ったが、思い違いか……。まあいい、試合を続けようじゃないか」

 

見えていないとは残念だ。だが、心剣が見えるまで続けるしか他はないか。

手には心が具現化した心剣が握られている。無名の日本刀、それが俺の心剣。

心剣は箒が言った通り剣を極めた者しか見えない。だがこれには少々言葉が足りない。剣の才能がある者、またはそれ相応の者が見える使えるのである。それ相応の者というのは心が強い者や真っ直ぐな者など多くの者である。

 

「しょうがないわね。試合続行、始め!」

「はあっ!」

 

迷うことなく頭を狙いに来たか。せめて腹に狙いを付けて欲しかったんだが、これは痛い目を見ないといけないな。

最小限で躱し――――――右腕を切る!

 

「ふっ!」

「ッッッ!?」

 

ん?今の反応もしかすると。

 

「ようやく見えたか。時間が掛かると思ったが早かったな」

「なぜだ……なぜお前にそんなことが出来る!」

「さあ。どうしてだろうな。だが、お前に目が曇っていたという事は確かだ。ここからは本気で避けなければ斬れるぞ」

 

動揺する箒に向けて心剣で斬りかかった。

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

なぜだ、なぜだ!なぜ士郎に心剣が使える!

私が弱く、あいつが強いからなのか。そんなはずはない!私は全国大会の優勝者なのだぞ。それをこんなやつに!

 

 

―――いいか、箒。剣を極める者は心剣が使えるのだ。

―――しんけんとは父上が持っている真剣の事でしょうか?

 

 

ふいに昔、父と話したことを思い出した。

 

 

―――いや違う。心の剣と書いて心剣だ。これは心が具現化した剣で己の形でもある。

―――私には見えません。弱いからでしょうか?

―――これには力の強いも弱いもない。これは心が強い者か真っ直ぐな者などが見え、使えるモノだ。

―――私もいつか出来るでしょうか……

―――出来るさ!なにせ私の娘だ。これまでもこれからも常に精進するのだぞ。

―――はい!

 

 

ああそうか。わたしは強さをいつの間にか力として考えていたんだな。士郎の言う通り、私は目が曇っていたのだ。

何度も引っ越しをさせられ、必要以上に監視と聴取を受けて心身ともに消失していた。

だが、剣道だけは続けた。それは唯一、一夏との繋がりだと思えていたからだ。しかし、去年の全国大会の決勝、あの日はとても醜い人間だった。

太刀筋は己を映す鏡。私はただ―――誰かを叩きのめすの憂さ晴らしの剣道をしていた。

あれはただの暴力だ。強さとはそういうものを指しているのではない。それは幼少の頃から父に教わって知っていたはずだった。

そして私はまた強さを見謝ってしまった。

 

「せい!はあああ!」

 

士郎は本当に強い。記憶がほとんど失い、自分が何者かが分からないのにただひたすら走り続けている。

ああ、これが強さの一つの形なのだと今なら分かる。

今からでも遅くないだろうか。例え遅くても今始めなければ意味など成さなくなる。

だから、この試合が終わったらまた新しく始めよう。

 

「はっ!」

 

心剣で頭から斬られた。実際には斬られていないから痛みはないがそう思えるほど実感があり―――

 

「負けだろ」

「ああ。私の負けだ」

「勝者、弓塚 士郎!」

 

これまでの自分を斬るために士郎はそうしたのだと今更ながら分かった瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

はあ、疲れた。まったく慣れないことはするものではない。

 

「箒!」

 

疲れが一気に来たのだろうか。箒が倒れる寸前で一夏が受け止めた。

 

「大丈夫だ。少し目眩がしただけだ」

「軽い熱中症だろう。温いスポーツドリンクを飲むといい」

「すまない、助かる」

 

防具を脱いで熱を逃がす。温いスポーツドリンクは体に沁みわたりやすい。冷たいものもいいがそれはその場凌ぎに過ぎず、体に悪い。

 

「勝敗は俺の勝ちだ。文句はないだろ?」

「ああない。それと斬ってくれてありがとう」

「なに、安いものだ」

 

真意を分かってくれたようで何よりだ。今の方が断然いい表情だ。

 

「すまないが部長を呼んでくれないか?」

「分かった」

 

すぐに剣道部の部長を箒の前まで連れて来る。

 

「すいませんでした部長。今まで部活に来なくてすいません。これからは部活に来ます。雑用でもなんでするのでお願いします」

 

一夏の肩を使って立ち、謝った。それを部長さんは―――

 

「うん、いいよ」

「はい?」

 

あっさり許した。この人の性格上なんかきついとかがないような気がするから当然か。

 

「い、いいのですか。そんなにあっさりと許して」

「いいのいいの。私も悪い点があったのも事実だしお相子さまってことでいいの」

「あ、ありがとうございます」

 

これで万事解決だな。早く部屋に戻ってシャワーでも浴びよう。

 

「じゃあ俺は先に戻らしてもらうぞ。汗臭い男なんぞいてもマイナスなだけだ」

 

ギャラリーの群れを突破して小走りで部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。屋上で一人の少女が携帯電話と違った通信機器でどこかと連絡を取っていた。月はよく光り、外灯なしでも見えて、少女の長い紫髪が光を帯びる。

 

「ええ。彼は自覚がないのでしょうが日々見ていると力を取り戻し、言動が前と同じようになってきています」

 

相手は誰かは知らないが女性の声であるのに間違いはない。

 

「ええ、ええ。いえ、記憶はそれほど多くは思い出してはいないようです。定時連絡でも言いましたが、恐らく十年前の事を断片的に思い出していると織斑教師との会話を聞きました」

 

十年前となんなのか。それは調べて分かるものかさえ分からない。

 

「それではそろそろ切ります。引き続き、IS学園の調査及び、彼の報告を私、ラニ・エルトナムが行います」

 

連絡を切り、静かな廊下を渡り、誰にも気づかれる事無く、少女は自分の部屋に戻る。

 

 

 

 

 




やったね!ラニを出したよ!知らない人はFate/EXTRA で調べてみてね。
ラニも後日の設定に出します。
次回は来週になります。お楽しみに!

それはそうと設定がえらく多くなると思うので二つに分けようと思います。
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