IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男   作:運命の担い手

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今回はちょいとデカいことがあります。
そんで書いている内に一万字が超えているので長いです。てか初めて一万字超えました。
文章は相変わらず駄作ですのでご了承ください。
では、どうぞ!


第39話「実家と出会いと過去」

五月一日、土曜日。世間で言うと大型連休の始まり。天気予報は連休中はどの日も晴れで外に出かけるには持って来いだ。

IS学園で朝食を済まし、着替えなどを入れた大き目のバックを持って学園から街までの直通モノレール駅で簪達を待つ。本当なら学園の門で会う予定だったが、久しぶりの私服が恥ずかしいとかで直通モノレール駅で待つことになった。

 

「ふむ。時間までは三十分前だが暇だ」

 

時間より十五分前に来ようと思ったが、念の為もう十五分延ばして早目に来た。ホームには同じが一年や二、三年生の先輩達が街に行くようで何回か待っている間見かける。

近くにあった椅子に座り、簪達を待つ。

 

「ねえ。あれって弓塚君じゃない?」

「あ、本当だ。誰か待っているのかな?」

「声かけようかな~」

「じゃ私が」

「いやいや私が」

「それじゃ私!」

「「どうぞどうぞ」」

「ごめん。無理。私にそんな勇気ない」

 

良からぬ事が起きる前に早く来てほしい。十代の乙女の考える事はよく分からん。それ以前に女というものは男にとって一生分からないものだろう。

 

「ゆーみーん!」

「お。来たか」

 

俺の事をゆーみんと呼ぶのはただ一人。分かるが本音だ。声がした方を向くと私服姿の簪達が見えた。こうして見るのは入学前までだな。

 

「どうかな士郎君。お姉さんの格好は?」

「値札が付いたままですよ。よくその格好で来れましたね。さすが生徒会長です」

「え、うそ!?虚ちゃん!値札付いているの!?」

「ええ。気付いたまま着るとは。さすがお嬢様です」

「気付いてないわよ!あと、お嬢様って呼ばないで!」

 

虚さんが珍しくイタズラに便乗する。休日のせいか破目を外している。

 

「簪ちゃん値札取って。お願い」

「お姉ちゃん凄いね。私は無理だね。恥ずかしくて外に出られないよ」

「現在進行形が私よ!それよりお願い取って!」

 

簪もまたそっと距離を置く。普段からアドバンテージが上な姉がこうも慌てているとどうも弄りたいようだ。ほんっと普段と逆だ。

 

「簪ちゃんも取ってくれないなんて……。こうなったら本音ちゃんに……ってあれ本音ちゃんはどこ?」

「ゆーみん。この自販機に珍しいジュースあるよー」

「すでに距離を取っている!?」

 

いつの間にか本音は自販機に移動していた。多分すでに状況を読んでの行動だろう。本音は何かと鋭い。

 

「もー!誰でもいいから取ってー!」

 

弄るのはここまでにしておくか。簪、本音、虚さんは笑いを堪えるのも限界なようだ。

 

「楯無さん。値札なんてないですよ」

「誰か取っ…………え?」

「だから、値札なんてないですよほら」

 

投影した鏡を手渡し確認する。すると、楯無さんがプルプルと小刻みに震える。

 

「騙したわね?」

「ええ、騙しました。でも、こんな簡単に引っかかるとは思いませんでしたけど」

「「「あはははははははははは!」」」

 

我慢が来たようで三人は一斉に笑い出した。楯無さんは一人顔を赤くして恥ずかしいようで頭を抱える。

 

「慌てる会長も中々でした。くくく……」

「お姉ちゃんの慌てっぷり初めて見た。っぷ……」

「会長面白かったよー。あははは!」

「まさか、みんなして騙していたなんて……不覚だわ……」

 

そうこうしている内に時間のモノレールが来た。出て来る人はほとんどいない。まあ、IS学園に来る人なんてかなり限られているから分かりきっている。

 

「モノレールが来たから乗りますよ。ほら楯無さん。いつまでもいじけていたらまた笑われますよ?」

「うぅ……。この恨み、いつか晴らす……」

 

なにはともあれ、モノレールに乗り街に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モノレールから降りて街に着く。街から実家まで少々掛かったが無事に着いた。着いたのだが……

 

『…………………………………』

 

誰も喋らない。喋れないと言うより言葉にならないと言った方がいい。

目の前にあるのは門。そう、道場とかにある木で出来た門があるのだ。それも大層立派に。

 

「場所合っているよね?」

「ああ。藤村先生に簡単な地図を書いてもらった通りに来た。場所も予めネットで確認しているから間違いはない」

 

念の為に調べているから間違いはまずない。ここで合っている事は確かだ。

 

「とにかく入りましょう」

 

意を決して中に入る。ちなみに入ったのは小門、つまり小さい門である。大門のわきなどにある。

 

「これは……」

「わあ……」

 

広い。とにかく広い庭がある。しかも家は武家屋敷ときた。パッと見ただけでもそれなりに古い。っと言っても所々リフォームされているようだ。

裏の方に回ると土蔵と道場、弓道場の三つががあった。土蔵と道場二つの間には中庭がある。表ほどではないがそれなりに広い。

 

「これは私達の家より広いんじゃないの?」

「そうですね。確実に広いです」

「道場二つあるんだ……」

「あ、蔵があるよー」

 

確実に楯無さんの家より広い。面積が目で分かるくらいだ。向こうにも道場はあったが、こっちは二つ。そのせいで自然と面積が広くなる。

 

「立ったままのあれですから、中に入りましょう」

 

再び表に戻って、玄関を鍵で開けて中に入る。当然人っ子一人いない。いるのは俺、簪、本音、楯無さん、虚さんの五人。とりあえず今に行く。

 

「思ったほど埃が少ない。窓や廊下も隅々までキレイにしているな」

「そうね。普通は埃があってもおかしくないのに、よほどあなたのお爺さんは慕われていたのね」

「父さんと母さんの友人も来ているそうなのでそれもあるでしょう」

 

これほど広いと掃除するのも一苦労すると思う。外は晴れているので窓を全て開けて換気することにした。

 

「まずは掃除をします。掃除する順序は上からで」

「なんで上からー?」

「埃を掃くと下に落ちるだろ。だから上からだ」

「分かったー」

 

掃除するのは居間に玄関、廊下、トイレ空室、父さんが使っていた部屋の計六ヶ所。実際掃除すると思ったほど汚れてはいなかった。時間が掛かると思ったが予定より早く終わりそうだ。

父さんの部屋はあまり物はなかった。あったのは布団一式だけだ。二十年以上前に出て行ったきり帰ってこなかったようでほとんど整理されていた。

 

「簪、そっちは終わったか?」

「もうすぐ終わる。士郎は終わったの?」

「ああ。廊下を掃除終えた所だ。あとで布団を探して外に干しておこうと思うんだが、どこにあるか分からん」

「ちょっと待ってて。今終わらせるから」

 

そう言うと簪は瞬く間に掃除を終えた。普段掃除しているのだろうか随分手馴れていた。あ、そういえば織斑先生の部屋大丈夫か。また散らかっていないといいが。

まあ一夏がやっているだろう。

 

 

その頃、IS学園では。

 

「あー!千冬姉!なんでこんなに散らかっているんだよ!ゴミもこんなに溜めて!」

「やろうと思っているんだが時間がなくてな。ほら、教師は何かと忙しいだろ?」

「それは千冬姉だけじゃないんだぞ。とにかく、このゴミ捨てて来て」

「いや、これから書類を……」

「いいから捨 て て 来 る !」

 

あまりの汚さに一夏が奮闘して立場が逆転している事を俺は連休明けに聞く事になる。

 

 

「これで五人分だな」

「そうだね」

 

五人分の布団を外に干した。夕暮れ前に回収して寝る時には気持ちよく寝れるはず。

 

「あ」

「どうしたの?」

「昼食の事忘れていた」

「えー……」

 

いかん。こっちに来ることだけを考えていて、ご飯の事を忘れていた。料理する者としてなんという失態だ!

 

「どうするの。今から買い物に行く?」

「それは夕方にしよう。昼は外食にするしかあるまい」

 

昼は外食に決まり、身支度を済ませて再び外に出た。

 

「所で士郎さん。どこで外食をなさるのでしょうか?」

 

唐突に虚さんに質問された。当然だろう。

 

「俺が知る限り美味しい店ですよ。味は保証します」

「そうですか。では楽しみにしますよ」

「はい」

 

途中コンビニに立ち寄り現金引き下ろす。念の為十万ほど下ろしてきたので休日中は大丈夫なはずだ。

 

「ここです」

 

来たのは食堂。名前は五反田食堂と書かれている。

 

 

 

 

 

中は昼という事もあり席が大体埋まっているように見える。

 

「いらっしゃいませー!ってお。なんだ士郎じゃねーか。久しぶりだな」

「ああ。一月振りだ。今日はここで昼食を食べに来たんだ。俺含めて五人なんだが席空いているか?」

「空いているよ。あそこの奥だ」

「分かった。注文が終わったら呼ぶから来いよ」

「分かってるよ。じゃ、手伝いの続きしないといけないからあとでな」

 

厨房では厳さんが鍋を振っているのが見える。あの年でよく中華鍋を振る事が出来るとはすごい。

 

「どれにしようかな」

「これはどうです?」

「食べきれないからこれは二人で食べよう」

「そだねー」

 

メニューを見てどれにするか迷っている。俺も選ばないといけないな。

 

「…………よし、決めた。みんなは?」

「大丈夫よ」

「決めました」

「うん」

「おーけー」

「呼ぶか。おーい弾。注文決めたから頼む」

「おお!今行く!」

 

すぐに弾が来た。蘭も手伝いをしているようでエプロンを着ているのを見かける。似合っている。

 

「注文はなん…………」

「ん?どうかしましたか?」

「あ…い、いえ、なんでもありません!」

 

虚さんを見て弾がぼんやりする。虚さんが訪ねるとなんでもないと答え、注文を聞いてくる。注文を聞き終わるとすぐ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ士郎」

「なんだ?」

 

料理を食べ終えたのち会計を済ませて店から出ようとすると弾に引き留められた。

 

「眼鏡を掛けて三つ編みの人ってさ、なんて言うんだ?」

「布仏 虚さん。三年で主席だ。それがどうした?」

「あ、いやなんでもない。じゃあな、また来いよな」

 

店に戻っていった。なんなんだあいつ。

 

「士郎さん」

「なんですか」

 

今度は虚さんだ。弾の事を不審に思ったのだろうか。もしそうなら誤解を解かねば。

 

「あの赤髪の男の人はなんと言うのですか?」

「五反田 弾。俺と一夏の友達です。それがなにか?」

「いえ、なんでもありません。屋敷に戻りましょう」

 

一人足早に行く。なんなんだ。…………もしかして。

 

「楯無さんもしかするとあれって……」

「そうね。あれは恋よ」

「ですよね。もしかすると弾もそうかもしれません」

 

互いに気づいていないような素振りを見せているが第三者から見ればバレバレだ。

 

「お姉ちゃんに春が来たんだねー。いやー良かった良かったー」

「兄弟がいない俺はよく分からないんだが。本音としてはどういう気持ちだ?」

「んーと。なんとなく分かるなーって」

「どういう意味だ?」

「教えなーい」

 

そう言うと本音は虚さんを追いかけて腕にしがみ付く。よく分からん。

 

「ねえお姉ちゃん」

「なに?」

「もしかして本音も士郎の事が……」

「まさか……いえ、ありえるわね。最近士郎君の事、見る目が違ったように見えるし」

「やっぱり。でも私負けない」

「その意気よ」

 

で、簪と楯無さんは俺に聞こえないように何やらボソボソと言っている。はあ。これ以上気にしないようにしよう。疲れるだけだ。

 

 

 

 

 

 

そうして家に戻り午後は特に何もする事がないので俺は作業着を着て土蔵で藤ねえから預かったビデオテープの再生機を直している。

 

「配線に問題はない。回路も焼け切れていない。てことは何が問題だ」

 

少しずつ分解して中の様子を見ているのだがどこも異常が見当たらない。調子が悪いと聞いていたがどこも悪くないのだ。もう少し奥を見て見るか。

 

「どう。直りそう?」

「ん?簪か。見ているんだがどこが原因なのか分からないんだ」

 

出入り口に簪が立っていた。何か用だろうか。

 

「何か見つけたのか?」

「それはお姉ちゃんと本音がやっているよ。私と虚さんはテレビを見ていただけで士郎が何しているか気になったから来ただけ」

 

探索という名の漁りではない事を願おう。仕方がないか。それくらいしかやる事ないし、宿題もないから余計暇だろう。

 

「水持ってこようか?」

「頼む。集中していたせいか喉が渇いてきたところだ」

「分かった。すぐ持ってくるからね」

 

土蔵から出て行き家に戻る。また一人になった。

 

「この中を見ながら休憩するか。何かあるかもしれん」

 

土蔵の中はあまり整理されてはいなかった。もっぱら物置代わりのように扱われていたのか様々な物が置かれている。

 

「これはブラウン管テレビか。今では薄型テレビが主流になっているから見たことがないな。明日にでも分解してみよう」

 

他にも鉛筆削り、などがあった。

 

「ん?」

 

車のタイヤを退()かしてみると床にな何か書かれている。文字は日本語のようだが埃や汚れでうまく見えない。

 

「気になる。手で掃けば大体見えるはずだ」

 

手で掃くと簡単に見えるようになった。手は黒く汚れてしまったが文字ははっきり見える。

 

「えーとなになに」

 

床に書かれていた文字はこう書かれていた。

 

 

             ☆はじめて記念☆

              ゴロウ&みき

 

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?

 

「ちょっと、待てよ。父さんの名前が悟郎で母さんの名前が美樹だ。このはじめてというのはあれということだろう。で、書いたのはおそらく……」

 

母さんだな。文字が女性が書くような感じになっている。

はぁー……。余計なもん見つけてしまった。これは誰にも見せないようにしないと―――

 

「士郎。水持って来たよ」

「お、おう!!」

 

突然の声に思わず裏返って返事をした。咄嗟にタイヤを元の位置に戻し、何事もなかったように装った。

 

「どうしたの。変な声出して?」

「そ、そうか。それより水ありがとうな」

 

簪から水が入ったコップを貰い、喉を潤す。あの文字のせいか渇きが消えない。今は忘れよう。その方が身のためだ。

 

「どこが悪いんだろうね」

粗方(あらかた)見たんだがどこにも異常が見当たらないんだ。一体何が原因なんだ」

 

どこか見落としがあるのか。それ以外ないのだが隈なく見たからそれはないと思うが。

 

「あれ?ここ緩んでいない?」

「どこだ?」

「ここ。隅にあるネジ緩んでいると思うんだけど」

「どれどれ。………………本当だ。俺とした事がこんな初歩的な事を見落とすとは。助かった。簪が見つけてくれなかったら夜まで掛かっていたかもしれない」

「そんな事ないよ。たまたま見つけただけだから大した事していないよ」

「いや、それでも見つけたのは簪だ。本当に助かった」

 

部品のネジが緩んでいただけとは思いもしなかった。すぐにドライバーで少しきつめに閉めて組み立て直した。

 

「動くかどうか確認しないとな。早速するか」

「あ、士郎待って」

「どうした?」

「汚れているから着替えてきた方がいいよ」

 

体を見ると作業着が所々汚れていた。さっき周りの物を触って回っていた時についたのだろう。これでは居間には行けない。

 

「すまないがこのビデオデッキを今まで運んで来てくれ。俺はその間に着替えて来る」

「いいよ。居間で待っているね」

 

ビデオデッキを紙袋に入れ簪に渡す。部屋に戻って普段着に着替えて居間に戻る。

居間には虚さんがいる事を知っていたが楯無さんと本音もいた。どうやら探索は終わったようだ。

 

「直ったのー?」

「それを今確認する所だ。少しの間テレビを借りるぞ」

「どぞどぞー」

 

テレビにビデオデッキの接続ケーブルを繋げる。ビデオデッキの電源をコンセントに差し込み起動させる。あとはテレビをビデオデッキでで見れるように調整する。

最後に確認用に藤ねえから渡された洋画が録画されているビデオテープを入れるだけっと。

 

「お。ちゃんと映っている。直っているようで良かった」

 

画面には主人公の男が機関銃を派手に撃っているのが映っている。ちなみにこれはランボーだ。

 

「そうだ。士郎君、これも見たら」

 

楯無さんからビデオテープを渡される。タイトルが書かれていない。

 

「これをどこで?」

「棚の中にあったわよ。見れないと思ったけど一応持って来たのよ。それも直っているようだし見て見ましょ」

「そうですね。もしかすると学生時代の父さんと母さんが映っているかもするので」

 

一旦ビデオテープを出して、家にあったビデオテープを入れる。

 

「それじゃ再生します」

 

再生ボタンを押して画面に映る。

 

「「「「「!!」」」」」

 

映っている。映っているがあるのは赤い目であった。これは呪いのビデオなのか。

 

『おい楯無。もう映っているぞ。離れろ』

「「「「え?」」」」

「違うわよ。私じゃない」

 

つい全員が楯無さんを見てしまう。違うという事はこの赤い目は。

 

『これでいいわね。こんにちは。私は更識 楯無。君達の生徒会長よ。覚えてね』

 

赤い目をした人が離れると画面に映る。そこには楯無さんによく似た人だった。扇子を持っている。

 

「これ、もしかしてお母さん?」

「そうかもね。母さんは士郎君のお父さんとは幼なじみで学校が同じだったと聞いているからそうよ」

 

学生時代は同じ学校に通っていた言っていたらそのはず。しかし、本当に楯無さんに似ている。親子だからそれは当然か。

 

『ほら、彩乃。あなたも自己紹介したら』

『待ってください。今これを削っているんですからあとにしてください』

 

カメラが横に動くとそこには机の上でプラモデルを作っている虚さんに似た人が映る。

 

「わー。これお母さんだー」

「そうね。この時からもうやっていたのね」

 

実は彩乃さんの趣味は模型作り。つまり、ガンダムとかのプラモデルを作るのが趣味なのだ。ちなみに虚さんもそうである。

 

『しょうがないわね。カメラ持つからあなたが先に紹介したら』

『分かった。では頼む。これは借り物だから壊すなよ』

『当然よ』

 

カメラが反転するとそこに映っているのは俺によく似た男がいた。

 

『俺は弓塚 悟郎。生徒会副会長で弓道部の部長だ。何か困ったことがあれば相談に乗ろう』

「父さん……」

 

俺の父、若き弓塚 悟郎が映っていた。初めて更識の家に行った時に沙織さんが間違えるのも無理はないか。

 

「本当に似ているわね。あなたのお父さん」

「楯無さんも沙織さんによく似ていますよ」

『次はこの人よ。かわいいからよく見てね』

 

またカメラが動くとそこには黒い髪が背中まで伸びて誰が見ても美人だと思える女性がいた。

 

『…………ん?ちょ、ちょっと。何撮っているの!?』

『生徒会の記録って事で撮っているわよ。何か問題ある?』

『そんな事昨日言っていなかったわよ!』

『言っていないだけよ~』

 

そこには写真でしか見た事がない弓塚 美樹、俺の母さんが映っていた。画面の向こうでは沙織さんとじゃれあっているのか画面がぶれる。

 

『まあまあ。自己紹介だけでいいからお願い』

『はあ。分かったわ。祖川(そがわ) 美樹です。生徒会書記をしています』

 

姿勢と整えて自己紹介をする母さん。とても礼儀正しいと感じた。

 

「士郎のお母さん、美人だね」

「大和撫子って感じがするよねー」

「ありがとうと言うべきなのか。返答に困るな」

 

すると突然生徒会室の扉が開き、一人の男子生徒が入ってくる。

 

『悪い悪い。遅くなった。お!なんだ。撮っているのか?』

『そうよ。自己紹介したらどう?』

『おうよ。俺は前田 孝司だ。生徒会雑務をしている。喧嘩なら負ける自信はねえぜ!』

 

なんと孝司さんだった。今とは違い、昔は随分と活発だな。制服の上着をいくつか外している。

 

『そうだ。このまま学園の中を映しましょ。うん、それがいいわね』

『ちょっと。まだ仕事終わっていないわ。彩乃も何か言ってよ』

『ここは慎重に削らないと反対側とバランスが崩れる。こっちは家に帰らないと出来ないから後回しにして……』

『まったく。こうなったらどうにも出来ないのに。早く戻って来てよ』

『分かっているわ。あ、悟郎も連れて行くから孝司君、美樹の手伝いお願いね』

『おうよ!』

 

今の楯無さんと同じだ。自由奔放で周囲の人間を自分のペースに引き込んでいく。親子して同じ事をやっているとはなんともな。

 

「お姉ちゃんと同じ事している」

「これはもはや遺伝だな。こうも似ていると親子というより同じ人というべきか」

「私ってこんな風なの?」

「「「「当然」」」」

「うっそーん……」

 

そうこうしている内に次々と部活の紹介をしていく。野球、サッカー、バドミントン、ソフトボール、テニス、卓球などといったよくある部活を突撃紹介をしていくのであった。

そんでいつの間にか父さんがカメラを持っているようだ。

 

『あら?何をしておりますの?』

 

突然に声をかけられ振り向くと金髪の女子生徒と男子生徒がいた。

 

『エミリアじゃない。それにギーレも一緒に』

『急な用事が出来たので帰る所ですわ。それよりもなぜ撮っておりますの?』

『ただ撮っているだけよ。気にしないで。そうだ、自己紹介お願い。ギーレも』

『いいですわ。私はエミリア・オルコット。イギリスから留学して来ましたのよ。貴族ですから分からない事がありましたら聞いてくださいまし』

『えっと、自分はギーレ・ウィウェールです。エミリアお嬢様の執事です。見習いですが』

 

これは驚いた。オルコットという事はこの女性はセシリアの母親なのか。だとしたら凄い偶然だな。

 

『二人とも相変わらず日本語上手ね。学園に来たときからそうだけど苦労したでしょ』

『なんの問題もありませんわ。これしきの事は覚えて当然ですわ。ねえギーレ』

『え、ええ。お嬢様はスポンジで水を吸うように覚えが早かったです。僕は苦労してました』

『そうなの。あ、彼はどうしたの。あなたが帰るのなら彼も一緒のはずでしょ』

『ああ彼ね。彼はあの人と何か手伝っていたわ。ギーレ一人で大丈夫ですので彼は後で帰りますわ。それでは』

『僕もこれで。……ここだけの話なんですがお嬢様はかなり苦労していたんですよ』

『え、なんで?』

『さっきの話は逆で僕がスポンジで水を吸うように覚えが早かったでお嬢様が苦労されたんです。なにせ外国語が苦手なので』

『そうなの』

『ええ。ではこれで。では楯無に悟郎、また明日会いましょう』

 

二人は校門に向かって行き、学園の外に出る。

 

『お次はここ、剣道部に行きまーす』

『おいおい。あの人がいるかもしれないんだぞ。三年は部活は終わっているがよく来るんだぞ』

『気にしない気にしない。私は気にしていないわ』

 

道場が映る。それなりに立派である。

 

『こんにちはー。みんな頑張っているかなー?』

『おい、生徒会長だぜ』

『いつ見ても美人だよな!』

『女の私から見て羨ましいプロポーションだわ』

『どうしたらあの体型になれるのかしら?』

 

熱心に打ち込んでいる男子女子が集まってくる。楯無さんと同じく支持が強いようだ。

 

『なんだこの騒ぎわ。誰か来たのか』

 

一人の男子生徒の声が聞こえる。沙織さんの方に近づき、溜息をした。

 

『お前か更識。天才なのか厄介なのか。全く相変わらずだな』

『これはどうも篠ノ之先輩。三年生の部活は終わっているの熱心ですね』

『剣道は私にとって私そのものと言ってもいい。別に三年が来ても問題ないだろ。少しだけだが指導もしている』

『そうなんですか。あ、せっかくなので自己紹介お願いできます?』

『自己紹介だけだぞ。私は篠ノ之 柳韻(りゅういん)。元剣道部の部長だ。篠ノ之道場の次期当主でもある』

 

篠ノ之?てことはこの人は箒のお父さんなのか。顔立ちが箒に似ている。

 

「あなたの同じ組の篠ノ之さんに似ているわね」

「多分そうですね。顔が所々似ていますから」

 

なんだってこんなに身近な人の親がいるんだ。一体どうなっている。

 

『随分賑わっているわね。誰か来たの?』

 

カメラが後ろに回るとそこにはあの教師によく似た女性がいた。

 

『あら、秋美じゃない。ちょうどいいわ、あなたも自己紹介しなさい。これは生徒会長の命令よ』

『そんな権限ないでしょう。いいわ。私は―――()() 秋美(あきみ)。剣道部の部長よ。今、全国大会に向けて頑張っているわ。応援よろしくね』

 

驚愕。これ以外に表すには他ない。ただただ驚いた。

 

「なっ!?」

「お、織斑先生!?」

「そんなはずはないわ簪ちゃん。だってこれはざっと二十年前以上の映像よ。それはまずありえない」

「どういう事なのー。訳分からないよ~」

「一体このビデオは何なのか分かりませんが、とにかく昔の事を映していたものである事には間違いありません」

 

虚さんの言う通り。これはただのビデオテープ。写した映像を保存しただけだ。それに。

 

「織斑先生が言うには両親から捨てられたと聞いています。もしかするとこの人は一夏と織斑先生の母親にかも」

「そう考えるのが自然よね。でもなんなのこのビデオテープは。まったく、頭の整理が追い付かないわ……」

 

そうしている内もテープは次々と職員室、屋上と映していく。

 

『あ、まずい』

『どうしたの?』

『バッテリーがなくなりそうだ』

『ええー。まだ紹介したりないのにー』

『仕方ないだろ。そこまで長持ちはしない。あと精々十分くらいだ』

『そんなにないわね。あ!あそこの二人にしましょ!』

『あいつらか。そうだな。締めにはぴったりだ』

 

残りのバッテリーがなくなりそうでちょうど通りかかった男子二人後姿が見える。片や黒髪で片や金髪で。

 

『おーいお二人さーん。何やっているのー』

 

振り向くと二人はプリントを両手で運んでいるようであった。

顔を見るとこれまた驚くであった。

 

『あーなんだ、楯無と悟郎か。お前達こそ何をしている?』

『はっ。デートじゃねえのか』

 

二人の顔は同じだった。しかもそれは一夏に似て。

 

「おいおい。これはどういう事だ」

「もうダメ。頭が追い付かない……」

「え、なんなのこれ。訳が分からないよ」

「プシュ~………」

「ああ、頭が痛い……」

 

辛うじて俺は何とか理解をしようとしているが俺以外はほとんどアウトになっている。

 

『ただ撮っているだけよ。それとデートではありません。残念でした』

『こいつはただの幼なじみだ。腐れ縁とも言うがな』

『なんだつまんねえな。エミリアとギーレはもう帰ったか?』

『帰ったわよ。それがどうしたの?』

『家に戻るのに時間が掛かるんだよ。車はお嬢しか呼べねえから歩き確定だ。はぁ……』

『それはご愁傷様。頑張って帰ってね』

『そうだ。何か喋った方がいいか?』

『ええ。自己紹介だけでいいわ。バッテリーも切れそうだし』

『俺からでいいか?』

『別にいいぜ。後でも先でもな』

『じゃ俺からだ。俺は衛宮 春人。時々生徒会の手伝いをしている』

『次は俺、エリ・クロードだ。エミリアお嬢の護衛をしている。ま、もっぱら大した事してねえが』

『ありがとう。最後に私が一言を―――』

『すまないがもう切れるぞ』

『え?』

 

ブツンっとここで終わり、画面は暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の女性が暗くなった空を見上げ、星を見つめている。

 

「白騎士事件が起きて十年。そして、娘が罪を犯して十年か」

 

星々は光り輝き、無限と思われるような数が夜空を輝かせる。

 

「あの人はもういない。けど、あの人の意思は()が受け継いだ。彼の息子に」

 

一人淡々と語る。まるで懺悔のように。

 

「この写真を見ると学生時代の思い出をよく思い出す。色々あったが、それでも楽しかった」

 

写真には多くの学生服を着た男女がいる。そこには士郎の両親や美沙夜の両親の学生時代が写っている。他にもセシリアの両親()()()

 

「さて、少しだけ星を見てから戻りましょう」

「お母さん。外で何しているの?」

 

後ろから声をかけられる。

 

「ちょっとね。昔の事を思い出してね」

「そうなんだ。外で何しているか気になったから来て見たけどなんでもなかったんだね」

「なんなの。私をなんだと思っているの?」

「私のお母さん」

 

声をかけたのは一人の少女。大体高校生くらいである。

 

「…………いつになったら思い出すのかな」

「さあ。それは分からないわ。でも、必ず思い出す。そして必ず帰って来る。これは確実よ」

「お母さんがそう言うならそうだよね。私、信じる。だって彼女で恋人だもん」

「流石私の娘ね」

 

何気ない会話が続き、ふと、少女は思い出す。

 

「あ。お母さん」

「なに」

「雷電とサムがまた試合したいってさっき言っていたよ」

「またか。懲りないわね」

「だってお母さんは強いからね。サイボーグよりも」

「あの二人も強いわよ。でも経験の差だけ。その内、私に勝てるようになる」

「そうかな。それじゃ先に寝るね」

「ええお休みなさい。―――円夏(まどか)

 

 

 

 

 




感想や誤字脱字がありましたらお願いします。
さてさて今回はこういうもんでした。
色々とデカいことをやってしまったな私。
まだゴールデンウィークの話をあと二話くらいしたらクラス対抗戦にします。
ではまた次回もよろしくお願いします。

それと関係ありませんがハーメルンに来て私は一年が経ちました。時が過ぎるのは早いね。
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