IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男 作:運命の担い手
今の所リアルが落ち着いているのでなるべく少しでも多く出せるようにします。
それでは、どうぞ!
黒煙がアリーナ中央から立ち上る。今だ状況が判断出来ない生徒達はただただ困惑している。
「な、なに?」
「地震?」
「砲弾が逸れたの?」
状況が呑み込めないのは当たり前か。今日のような行事には多少なりとも警備を教師達がしている。一部生徒達にも協力してレーダーや電波を受信したりと警備を手伝っている。
『試合中止!凰、織斑直ちにピットに戻れ!』
織斑先生の怒声で事態をようやく理解したのか騒ぎ始めた。アリーナのシールドを隔壁で閉める事で強度を上げる。アリーナの中を見る事が出来なくなったが時間稼ぎにはなるだろう。
「俺達も非難しよう。ここにいては危ない」
「そうね。いくら私達、専用機持ちでもこんな狭い所ではISを展開するのはまずいわね」
「扉はあっちだよ」
扉はそれほど遠くはなかったがなぜか列が出来ていた。
「どうしたんだ。出ないのか?」
「それが扉が閉まっているようで出られないの」
「何?」
扉が閉まっているだと。なぜそんな事に。……あの黒いISのせいか。いや、まだ断定は出来ない。
「別れてそれぞれ別の扉を調べてくれ。美沙夜は左に。簪は右の方を」
「いいわ」
「分かった」
すぐに行動して左の扉に美沙夜が右の扉に簪が行った。残った俺は目の前の扉を調べる事にした。
「どう?」
「だめだな。完全にこちらの操作を受け付けていない。配線を弄ってみてれば開くかもしれんが下手をしたら今以上に悪くなる可能性がある」
本音と一緒に調べてみたが配線には問題はなかった。となると電子的な問題か。
「そっちはどうだ?」
『だめね。閉じているわ』
『こっちも。他の人にも聞いてみたんだけど、どこの扉も閉まっているみたい』
「そうか」
無鉄で美沙夜と簪のISに通信をして状況を聞いた。全ての扉が閉まっているか。厄介だな。
『織斑君!凰さん!今すぐアリーナから脱出してください!すぐに先生達がISで制圧に行きす!』
『―――いや、先生達が来るまで俺達で食い止めます』
管制室に連絡をすると通信中だった。本来は通信が終わった後に話しをするんだが状況が状況でそうは言ってられない。
「通信割り込み失礼。一夏、鈴、観客席にいる人達を全員避難させるまで頼む」
『士郎か!?お前どこにいるんだ』
「観客席だよ。避難したいところだが、どこもなぜか閉まっているから避難が出来ん。こっちはなんとか開けるようにしておく。お前は鈴と共同であのISを相手してくれ」
『もちろんさ。鈴もそれでいいな?』
『当たり前よ。士郎もなるべく早く扉開けなさいよ』
「当然だ。それと目的は倒すのではなく時間稼ぎと言う事を忘れるな。あのISはアリーナの遮断シールドを突破出来る威力を持っている。下手に倒しにかかると観客席に被害が及ぶ可能性がある」
『分かった。そんじゃ行くぞ鈴!』
『遅れないでよね一夏!』
一夏と鈴との通信が終わる。何分持つか分からんがなるべく早く非難せねば。
『弓塚君、なんて事するんですか!二人だけで止める事なんて出来ません!先生達がISで制圧するので―――』
「それは恐らく無理でしょう。織斑先生アリーナの扉だけではなく、ISの保管庫も閉まっているのではありませんか?」
『……ああ。ISの保管庫も閉まっている。今は二、三年の警備であたっていたISはアリーナの出入り口を開けようとしている。教師で警備にあたっていたISは突入部隊を編成していつでも行けるが遮断シールドが強くて入れない。これでは避難する事も救援に向かう事も出来ない』
八方塞がりで今動けるのは管制室にいるセシリアと観客席にいる俺、簪、美沙夜だけか。楯無さんは虚さんとシステムクラックをしているはずなので動けないはずだ。
「聞きたい事があります。遮断シールドのレベルはいくつですか?」
『レベル4だ。すでに緊急事態として政府に助勢をしている。扉は現在、三年の精鋭がシステムクラックを実行中だ。遮断シールドを解除出来れば、すぐに部隊を突入させる』
レベル4か。これもあのISのせいなのか。今は三年の精鋭がシステムクラックを実行中で、いずれ開くだろうが今は時間が惜しい。
「織斑先生。アリーナには保険が入っていますか?」
『ああ、入っている。まさか、扉を壊すつもりか。アリーナの扉は通常のIS武装では壊れないように出来ているんだぞ』
「はい。ですがそれは通常のIS武装であればの事です。無鉄の投影で何か剣を出せば問題ありません。他の扉にいる簪や美沙夜も通常武装ではないのでなんとか大丈夫です」
『……分かった、許可しよう。こちらも手は打っておく。すまないが頼むぞ』
「了解」
管制室との通信が終わり、すぐに簪と美沙夜に通信をする。
「扉を破壊してもいいと許可が下りた。簪、美沙夜。いけるか?」
『問題ない。夢現の高周波電流を上げれば切れる』
『私は威力のある武装があるから壊せるわ。士郎はどうするつもりなの?』
「俺は無鉄の投影で何か剣を出す。では、扉を破壊してからまた会おう」
通信を切る。さて、何を投影すればいい。生半可な物では切れん。だとすれば……………………あれしかない。
「……………………」
無鉄の右手だけ部分展開し、目を閉じ、前に出す。本来はこのような事をしないが今回は極度の集中をしなければならない。
「ゆーみんどーしたの?」
「すまないが本音、話しかけないでくれ。集中出来ない」
「う、うん」
今から投影するのは聖剣。聖剣なんて投影したらそれだけで俺はただじゃすまないはずだ。だがこの状況下でそうも言ってはいられない。
「――――――――」
集中しろ。聖ピエールの歯、バシリウスの血、パリ市の守護聖人である聖ドニ(ディオニュシウス)の毛髪、聖母マリアの衣服の一部と多くの聖遺物。
「ぐっ!」
手には一つの剣があった。それはまるで芸術のように美しく、宝石のような輝き。
これがデュランダルなのか?とにかく扉を壊さなければ。
「はあああ!」
勢いよく振る。これで扉が――――――
パリン!
「何!?」
扉に確かに傷がついている。そう、傷が付く程度だ。デュランダルはガラスのように砕け散った。
やはり聖剣を投影するなんて無理だったのか。
「きゃああああ!」
隔壁が振動する。一夏と鈴であのISと戦っている影響なのだろう。早くせねば、いつまでも隔壁が持つはずがない。だが俺には……。
―――今あなたが出来るのは命懸けでやるだけです。
「!」
どこからか声がする。これだけ人が多いのになぜかその声だけがはっきりと聞こえる。
―――あなたの友はあなたを信じて戦っています。それになのにあなたは諦めるんですか。
そうだ。一夏と鈴は俺を信じているんだ。俺の失敗は俺だけの事で済む事じゃない。ここにいる観客席全員の命がかかっているんだ。ならば、俺が今成すべき事は!
「ぐ……あ…ああああああっ!!」
今まで以上に高度な投影をするのは練習でもない。右手が吹き飛びそうだ。千切れそうだ。だがそうなるのはこの後にしろ……!
「ぬうううっ!」
挑むのは投影じゃない。挑むべきは自分自身。ただ一つの狂いも妥協も許されない。己が精神をの限界を超え、この幻想に本物よりも本物らしい形を与える事こそが今、成すべき戦い。
「ぎ……ッううう……くっ……!!」
完璧な模造品を作れ。敵を騙し、自らも騙しうる完全無欠のイメージを作り出せ!!
形だけではなく、
創造の理念を鑑定し、
基本となる骨子を想定し、
構成された材質を複製をし、
製作に及ぶ技術を模倣し、
成長に至る経験を共感し、
蓄積された年月を再現し、
あらゆる工程を凌駕し尽くし―――
「ぐううう……は、ああああああああああああ!!!!」
今ここに、幻想を結び剣と成す――――!
キィィィィン
手に再び剣があった。先ほどよりもより芸術のように美しく、より宝石のような輝き。そして、幻想が現実になったモノ。
デュランダル。フランスの叙事詩『ローランの歌』に登場する英雄・ローランが持つ聖剣。
切れ味の鋭さデュランダルに如くもの無しと言われ、岩に叩きつけて折ろうとするが、剣は岩を両断して折れなかったという。それ故に決して折れない「不滅の聖剣」と言われている。
これで完成した。だが………。
「はあ……はあ……はあ……」
精神も体力も限界だ。剣を確かに握るほど力が出ない。これほどまでに高度な投影をしたのは初めてで後先構わずしたのが今ここでツケがまわったか。
「ゆーみん。うううん、士郎。一緒にやろう」
そっと俺の手と合わせるように本音が握ってきた。いつものようにのんびりとした雰囲気はなく、どこか聖母のように優しい。
「本音……」
「今の士郎一人じゃ剣を振れないでしょう。私一人でも出来ないから一緒にやろう。一人で出来なくても二人なら出来るよ」
「そうだな。まったくそうだ。なら、さっさとやるか」
「うん!」
俺の手の上に本音の手が重なる。不思議とどこからともなく力が湧いて来る。
「「はああああああああ!!!!!!」」
デュランダルを扉に渾身を込めて振り落とし、そして―――
カラン、カラン
扉がバターのように切れて通路に出れるようになった。ふらつくが避難誘導をしなければ。
「本音、静寐。避難誘導をするぞ。いつまでもここにいるわけにはいかん」
「うん」
「分かった。皆さん、扉が開きました。二列になって外に出てください」
簪と美沙夜に通信をして確認するか。
「簪。そちらはどうだ?」
『今ようやく切り終わった。今から避難誘導するところ』
「そうか。こちらも先ほど切れたところで避難誘導中だ。美沙夜はどうだ?」
『ちょっと待って。今―――』
ドォォォォン!!
『―――終わったところ。今から避難誘導するわ』
「そうか。それにしても随分デカイ音だったぞ。一体何をした?」
『私のISの武装の一つよ。見るのは次の学年別トーナメントでね。それまで楽しみにしてなさい』
「ふ、そうしておこう」
通信を切り、避難誘導を再開する。三か所も扉を壊したから思った以上に早く終わりそうだ。
次回でようやく一巻終わる予定です。
一周年記念としてのアンケートはまだやっているので詳しくは活動報告を見てください。
それでは次回もお楽しみに。
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