IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男 作:運命の担い手
皆さんもうっかりしないように気をつけてください。
では、どうぞ!
「お前で最後か?」
「はい」
今ので最後の一人。避難誘導は思った以上に終わった。避難した生徒はアリーナの外にいるのでひとまず安心だ。
「ふう…………」
安心したのか疲れが一気に来たので床に座った。あれほどの高度な投影をしたのは初めてだったのでまだまだ未熟だと思い知った。
ゴオオオオン!!
「!」
避難し終えて誰もいない観客席に桃色の閃光が当たり、観客席は滅茶苦茶になった。
「ギリギリだったか。後少しでも遅れていた危なかった」
「そうだねー。でもゆーみんが頑張ったからみんな無事だよー」
残っていた本音がいつもの口調でそう呟く。
「そういえば本音。俺の事を名前で呼んでくれたな」
「ま、まーねー。さすがにあんな時までふざけるなんて出来ないからねー」
「ほほう。ではこれからは名前で呼んでもらおうか」
「へ?」
「いつもあだ名で呼んでいると名前を忘れてしまうかも知れんからな。ただ名前を言うだけだぞ。そんな難しい事ではないだろ」
「そ、それは……」
この際だから名前で呼んでほしい。いつまでもあだ名のままでは名前を忘れてしまうかも知れん。
「なにイチャイチャしているのよ」
「美沙夜か。避難は済んだか?」
「ええ。観客席にいた全員外にいるわよ。ケガをした人が何人かいるけど避難した時に出来たものだからそんなにでもないわ」
「そうか。それはよかった」
多少なりともケガ人は出たが、命にかかわるのはなしか。上々の結果だ。
「それよりも士郎となにイチャイチャしていたのよ。色仕掛けでもしたのかしら」
「そ、そそそんな事していないよー!ただ名前を呼んでほしいって言われただけだよー!」
「ほんとかしら?」
「ほんとだよー!」
何を話しをしているか分からんが別にいいか。
ふと思う。あの時の声は無鉄から聞こえたような気がした。
「喝を入れてくれてありがとな」
そう言うと赤い勾玉、無鉄が光って答えたようにも見えた。
「さて、俺達も外に――――――」
ドクン
この感じは何か起きそうだというのか。観客席にいる全員は避難し終えた。いるのは管制室にいる織斑先生とアリーナで戦っている一夏と鈴だけのはずだが。
仕方がない。とにかく行ってみなくては分からん。
「くっ!」
首筋に注射をする。中身はビタミン剤で注射器は片手で出来るような物だ。これは久宇研究所からいざという時に医療キット使うようにと貰った物の一つである。
「士郎、注射なんかしてどうしたの?」
「他に誰かいない確認するためだ。今打ったのは即効性ビタミン剤だからすぐに効く。なに、今はこんなだが、効き始めたら少しばかり走るだけの体力は戻るはずだ」
「それなりに私も手伝うわ。一人より二人の方が早いはずよ」
「せっかくの申し出だが、一人で大丈夫だ。それより本音と共に外に避難してくれ。出来ればそのまま外で避難した人達を守って欲しい」
「なんでよ。外には専用機持ちじゃなくても二、三年生がISで守っているからいいじゃない」
「そうだな。だが、アリーナに侵入して来たISと同じISが増援が来たらいくら数で上回ったとしても量産型では防ぎきれない。そのためにも簪と共に守ってほしい」
「……はあ。分かったわ。なるべく早く終わらせなさい」
「すまないな。本音もそれでいいか?」
「いいよー。ひさーと一緒に外に出るからー」
ひさー?ああ、美沙夜の事か。久宇だからひさーか。
程なくして美沙夜と本音は外に行ってもらった。即効性なのか先ほどよりは体が軽くなった気がする。
「さて、どこから探せばいいか」
観客席には誰もいない。管制室以外に人がいる所はあるのか?
『大丈夫か!』
アリーナのスピーカーから大声が聞こえた。この声は箒か。
『ごめんなさい。衝撃で審判の子が気絶して、私は机が倒れて足を打って動けなかったの』
審判の子?そうか中継室だ。なんて初歩的なミスをしてしまった。中継室は試合の判定や外のリアルタイムモニターに繋ぐための場所。予め知っていたが避難する事だけを考えてばかりいたのかすっかり忘れていた。とにかく中継室に急がねば。
◇
『大丈夫か!』
突撃姿勢になろうとした時にアリーナのスピーカーから箒の声が聞こえた。
『ごめんなさい。衝撃で審判の子が気絶して、私は机が倒れて足を打って動けなかったの』
中継室の方を見ると審判をしていた女子が気絶していてもう一人がうずくまっている。あの正体不明のISが入った時にそうなったのだろう。マイクが電源が入ったままのようで箒の声が聞こえるようだ。
「まだ避難し終えていなかったの!?」
「観客席の方は避難したようけど、中継室は盲点だった。俺てっきり避難したと思っていた」
鈴が驚いている。無理もないか。危なかったのは観客席だけだと今の今まで俺もそう思っていたからな。
「………………」
赤い複眼が光り、箒がいる中継室に興味を持ったようで俺達からセンサーレンズをそらし、箒の方を見ている。
「まずい!箒逃げろ!」
正体不明のISは砲口が付いた両腕を箒がいる中継室に向けた。幸いにも撃つのに時間が掛かるようですぐには撃てず動けないようだ。今しかない!
「鈴、やれ!」
「分かった!」
射線上に出て最大出力の衝撃砲を待ち構える。
「ちょっ、ちょっと馬鹿!何してんのよ!?どきなさいよ!」
「いいから撃て!」
「ああもう……!どうなっても知らないわよ!」
背中に最大出力の衝撃砲を受け、
みしみしと衝撃砲の弾丸で体が
「オオオオオオッ!!」
俺は……千冬姉を、箒を、鈴を関わる人全てを―――守る!
ブシュウウウウウウ!!!
必殺の一撃は左腕を切り落としてオイルのようなモノが吹き出る。しかし、無事な右腕でモロに殴られて背中から地面に落ちた。そして、ゆっくり歩いてゼロ距離で俺にビームを撃つようだ。
「「一夏っ!」」
大丈夫だって。俺に頼れる友達がいるんだぜ。
「……狙うは?」
『完璧だ(ですわ)!』
客席からブルー・ティアーズの四機同時攻撃と得意の連続狙撃が正体不明のISを襲う。通常ならシールドエネルギーで絶対防御が発動するが、さっきの零落白夜でシールドエネルギーはない。それに零落白夜を使ったのは遮断シールドを破壊するためでもある。
『とどめは任せたぞ』
『了解ですわ!』
最後の一撃といわんばかりに胸にスターライトで撃った。容赦ねえ。まあ無人機だからいいのか?
さすがセシリア。見事に胸のど真ん中を撃った。俺がいた場所は先ほど正体不明のISの攻撃でアリーナの遮断シールドを貫通して観客席に当たった所だ。そこから狙撃していた。一夏と鈴の所まで行き、無事を確認するか。
「大丈夫か。一夏、鈴」
「なんとかな」
「わたしも―――わ!」
シールドエネルギーが切れたのか鈴のISは待機状態になった。地面に着いていたが突然の事で尻餅をついたようだ。
「いたたた……。甲龍のシールドエネルギーが切れかけてのを忘れていたわ」
「大丈夫か鈴?」
「大丈夫よ。あんたの白式もそんなに残っていないでしょ」
「まあな。それより士郎、観客の避難ありがとな」
「当然の事だ。だが、中継室を忘れていたせいで彼女らに危険が及んだ事はこちらに非がある。あとで謝なければな」
場所を把握していながら忘れてしまうとは初歩的なミスだ。謝罪をしないといけない。
「まあなんにせよこれで終わ―――」
―――敵ISを再起動を確認!警告!射撃体勢に移行!高出力のエネルギー反応!
「「「「!?」」」」
あれほど喰らってまだ動けるのか!すぐに迎撃してやる!
「っ!これは……!セシリア撃つな!」
『なぜですの!今撃たないと一夏さん達に被害が!』
「あいつをモニターしてみろ。お前なら分かるはずだ」
一夏にはすでに静止するように腕で合図している。セシリアがISでモニターすると分かったようだ。
『士郎さんこれは!』
「ああ。今下手に撃ったらこのアリーナが丸ごと吹き飛ぶ。これでは外にいる人達にも被害が及んでしまう」
「どういう事なんだ士郎?分かるように説明してくれ」
一夏は訳が分からないようだ。時間がないが説明するか。
「今あのISはどこを切っても撃っても危険な状態だ。だから手出しが出来ない」
「なら避ければいいだろ。あのISは動けないいんだし」
「そうしたいのは山々なんだが外には避難した人達がいる。それにもう時間がないようだ」
あのISの構造は知らんがこちらが思っている以上にエネルギーを蓄えているようだ。ビーム兵器はどの国も企業も試験おろか開発していなく空想理論上として出来ていない。どこの誰だか知らんがあのISが再起動した結果、暴走し、過剰なまでの威力を生み出そうとしている。
全身のあちこちから電流が弾けながら桃色の閃光が収束してくる。これは最大威力で撃つようだな。
「ならどうするんだよ!」
「簡単な事だ。俺が受け切った後に攻撃すればいい」
幸いにも俺にはあの盾がある。俺が知る得る限り、あの最強の盾を。
「セシリア!こっちに来て一夏と鈴を守ってくれ!万が一という事もある。そのためにもこっちに来てくれ!」
『分かりましたわ!』
すぐに観客席からこちらまで来た。これでいい。セシリアのブルー・ティアーズはさほどシールドエネルギーが減ってはいない。なので一夏と鈴は無事になりそうだがセシリアは多少かそれなりのケガになるだろう。俺は重傷だな。
「………………」
今にでも撃ちそうな状態だ。方角では避難した人達の方角ではないが貫通して街に被害が及ぶ可能性がある。なので受けきらなければならない。
「――――――」
恐怖などない。失敗などしない。俺は……守ってみせる!
「!」
最大出力のビームが右腕から放たれる。地面が融解しドロドロになる。この一秒とも満たぬその間に、そっと目蓋を閉じて。
「―――
カッ!
◇
「織斑君!凰さん!オルコットさん!弓塚君!」
真耶がこれ以上ないくらい叫んでいる。あのISから放たれるビームを弓塚が受けきると言っていたが……。土煙でよく見えん。
「山田先生あれを見ろ」
「え?……あ、あれは……」
徐々に土煙が消えてそこには――――――七枚の花弁のような盾が出ていた。
◇
俺の目の前には盾がある。それは花弁の如き
この盾の名は―――
「
大気を振るわせるかのように真名を叫んだ。
誰が知ろう。この守りこそアイアス。
ギリシャ神話のトロイア戦争において英雄ヘクトールの投擲を唯一防いだというアイアスの盾。花弁の守りは七つ、一枚一枚が
故に投擲される武具、使い手より放たれた凶器に対しては無敵とされる究極の防壁。
このまま防ぎきればいいのだが……。
パアン!
「む……!」
一枚割れてしまったか。だが六枚残っている。まだ余裕が―――
パアン!パアン!パアン!パアン!パアン!
一気に六枚が四散し、一枚になってしまった。本来なら一枚も割れないはずなのだが、まだ基本骨子の想定が甘かったか。ここで愚痴を言っても状況は変わらん。
今もなお、勢いが緩まない。
「ぬ……ぬああああああああ!!!」
暴風と高熱を残骸として巻き散らしながらなお最後の一枚に襲いかかる。突き出した右腕が亀裂が生まれ、皮膚には裂傷が出来てくる。両脚は吹き飛ばされないように地面に食い込むように力が入る。
もう少し……あともう少しだけ耐えてくれ、アイアスの盾よ!
パリン
最後の一枚が砕けるが、同時にそれはビームが撃ち終えた事にもなった。
アリーナが嘘のように静寂になり、沈黙が支配する。俺とあのISは互いに右腕を突き出したままだ。
「今だ!今度こそあいつを倒すんだ!」
「分かった!」
俺の叫びに答えたのは一夏だった。すぐに切りかかり、そして―――
「!」
右腕を突き出したまま無防備に切られ、ゆらりと俯せに倒れる。これで本当に終わったな。
「終わりましたの?」
「そうみたいね。って士郎アンタ腕大丈夫?」
セシリアと鈴も大丈夫そうだ。今回は何とかなったが次はないだろう。それに全神経を使ったのか頭痛がする。右腕と頭痛が治り次第、投影の鍛錬をせねば。
「大丈夫と言えないが大した事はない。適切な処置をすれば大事には至らないはずだ」
「おーい。大丈夫かー」
走って一夏がこちらに来る。白式を纏っていないという事はエネルギー切れで待機状態になったようだ。
「お前こそ大丈夫か」
「何が?」
「衝撃砲の最大出力をモロに背中に当たったんだぞ。なんともないのか?」
「どこも痛い所なんて―――前言撤回。今痛くなってきた」
今かよ。神経が鈍くはないはずだが、あの織斑先生の出席簿を何回も喰らっているのにな。
「なんにせよこれで本当に―――」
終わったと言う瞬間に通信が入った。相手は……美沙夜か。
「どうした。こっちは今終わった所―――」
『そっちに識別不明のISが向かったわ。気を付けて』
「何?」
識別不明のISだと?まったく次から次へとよく来るものだ。
―――アリーナに識別不明のIS侵入。警戒してください。
「「「!」」」
アリーナに一機のISが入ってきたようだ。そのISの姿は……
「打鉄?」
打鉄全体が黒くなっている。バイザーがあるので搭乗者の顔がよく見えない。
「………………」
どういった顔で見ているのか分からないが、アリーナ全体を見渡して、セシリア、鈴、一夏、俺の順に見た。
「最優先捕獲対象を発見。これより――――――弓塚 士郎を確保する」
機械のように淡々と喋り、狙いは俺のようだ。
次回は黒い打鉄との戦いになります。頑張って戦闘描写を現在書いています。
感想や誤字脱字などがありましたらお願いします。
それと一周年記念の意見が少ないです。少ないままでしたら、こちらが考えた話しを上げます。
意見がありましたら送ってください。
それでは次回もお楽しみにしてください。