IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男 作:運命の担い手
原作とは少し違う展開があります。
では、どうぞ!
「はっ!」
起き上がると外は夕暮れになっていた。身体には包帯やガーゼが張られていた。特に左腕が厳重に。
「あ、起きた」
近くに簪がいた。手には本がある。小説ではあるがアニメキャラクターが描かれているようなのでライトノベルのようだ。
「簪。俺はどのくらい眠っていた?」
「そんなに寝ていないよ。大体一時間半くらいかな」
思ったより寝てはいないと少しばかり驚く。眠りが深かっただけか。
「織斑先生から伝言で今日の事は誰にも話すなって言っていたよ」
「当然だろうな」
無人機による襲撃。識別不明の黒い打鉄。十分過ぎるくらいな理由だ。
「腕痛む?」
「まあ痛むが動かしても問題はない。ただ、完治するまでは部活とISを使った練習、腕立て、腹筋といったトレーニングもしばらくは出来ん」
日常生活は大丈夫そうだが、弓を持つのが左腕なので当然無理。ISを使った練習も当然左腕に負荷がかかるので無理。念の為トレーニングもやめておこう。
「言っちゃいけないのは分かるけど中で何が起きたの?」
「そうだな。色々省くが、予想外と言った所か」
どれ話してもまずいからかなりへし折って話すしかなかった。説明が下手だな、俺は。
「あ、一夏達は?」
「――――――ああ織斑一夏ね」
「あ……」
とても冷めた声で返事が返ってきた。しまった、一夏の事は禁句だというのを忘れていた。
「鈴とオルコットさんは大丈夫だよ。……織斑一夏はなんか倒れたみたいだけど。まあ打撲らしいよ」
「そ、そうか」
鈴とセシリアは無事で一夏は打撲か。龍砲を背中にまともに喰らってエネルギー変換をしたから仕方ないか。
「時間は大丈夫か。一品だけだが作れそうだ」
「なにするの?」
「料理をするだけだ。小腹を満たす程度の物を作ろうとな」
俺は大丈夫だが一夏と鈴は小腹程度空いているはずだ。何を作るかはまだ決めてはいないが小腹を満たす料理であれば何でもいいだろう。鈴は一夏の所にいる可能性が非常に高いから捜さなくても見つかるはずだ。
「あ。楯無さん達は?」
「お姉ちゃんと虚さんは生徒会の仕事で生徒会室にいるよ」
ご愁傷様です、楯無さん、虚さん。二人の分も作ろう。
ちなみに本音はあの黒い打鉄にやられたラファールを修理の手伝いをしているそうだ。
◇
目を開けると鈴が顔に当たりそうに近い。
「何してんだ、お前?」
「お、おおおお、起きてたの!?」
「たった今な」
身体中が痛い。龍砲の最大出力を背中に受けたのが結構響く。あれしか方法なかったし、後悔はしていないぞ。
「あの黒い打鉄のパイロットはどうなったんだ?」
「先生達が連れて行ったわよ。あの無人機ISもよ」
「そうか」
「ケガ人は避難の時に数名でまともなケガをしたのはアンタと士郎だけよ」
「まともって。まあそうだよな」
ケガの詳細は俺は背中が打撲。士郎は左腕裂傷に擦り傷などである。
「あと試合は無効だって」
「だよなー」
あんな大事になったんだ。仕方がないと言ったら仕方がないよな。
「なあ、酢豚の話をしたのもこんな夕方だったよな」
「え?」
外に映る夕暮れを見て約束を思い出した。小六の時で場所は教室。ちょうど俺と鈴だけにいる時に言われたんだ。
料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?、て夕暮れのように顔を真っ赤にして。
「あの約束って違う意味なのか?俺はてっきりタダメシを食わせてくれるんだとばかり思っていたんだが?」
「ち、違わない!違わないわよ!ほ、ほら誰かに食べてもらったら料理って上達するじゃない。あは、あははははは……」
そのままの意味だったのか。深読みし過ぎだな、俺。
「お前の酢豚も食ってみたいけどさ、鈴の親父さんの料理うまいもんな。また食べたいぜ。こっちに戻って来たんならまた店やるんだろ?」
「あ……その、お店は……しないんだ」
「え?なんで?」
「あたしの両親、離婚しちゃったから……」
鈴の表情が暗いので冗談ではないようだ。鈴の両親は誰から見ても仲睦まじく見えていた。中学ではお世話になっていた。そんな仲が良かった鈴の両親が離婚したというのは正直信じられない。
「国に帰る事になったのも、そのせいなんだよね」
「………………………」
中国に戻る数か月前から鈴がやけに明るく振る舞っていたのを当時俺は気になっていた。
「親権は母さんがあるの。今はどこでも女の方が立場が上だし、待遇もいいし。だから……」
鈴の顔が一層暗くなる。こんなに暗い顔を見るのは初めてだ。
「父さんとは一年会っていないの。ううん。正確には分からないの」
「え?」
分からない?どういう事だろうか?
「国に帰ってから父さんには電話で話すことは出来たの。離婚したからって電話しちゃいけないって決まりなかったからね。国に帰って慣れた頃に電話かけると……出なくなったんだ」
「それって……」
別な女性と。
「あんたが思っているのと違うわよ」
「まだ言っていないぞ」
「あんたは顔に出やすいから分かりやすいのよ」
そんなに分かりやすいのか?
「話しを戻すわ。最初は都合が合わないだけだと思ったの。でも、何度かけても出なかった。不審に思って警察に電話をして家に行ってもらったら……」
「どうだったんだ?」
「誰もいなかったの。それに戻ってきた形跡がないからようやく行方不明と分かったわ」
「なっ」
「今も警察が探しているけどいまだに手がかりの一つもないの」
「……悪い。無神経だった」
「大丈夫よ。父さんはどこか元気でいるわよ」
明るく振る舞うがやっぱり暗い表情だ。……よし。
「なあ鈴。今度どこかに遊びに行かないか?」
「え?それって、デート……!」
ぱあっと明るくなって鈴。それと同時にドアが開く。そのせいで鈴が言った最後に言ったのが聞こえなかった。
「一夏さーん。具合はいかがですか♪わたくしが看護に来て―――あら?」
出て来たのはセシリアだった。つかつかと足早に入ってきて鈴に詰め寄った。
「どうしてあなたが?一夏さんが起きるまで抜け駆けはなしと決めたでしょ!」
「そういうお前も、私に隠れて抜け駆けしようとしていたな」
「そ、それは……」
すぐに箒も入ってきた。なんだか賑やかになってきたな。
「ぐぅぅ……。二人とも出てってよ!一夏は私の幼なじみなんだから!」
「それなら私も!」
「大体二組のあなたが!」
「……あれ?」
そろそろ来るはずなんだけど、中々来ない。
「千冬姉は?」
「そういえば……」
「どこに行っちゃったのかしら?」
「さっきまで私達と一緒にいたのだが……」
教師の仕事が急に出来たのか?案外そうかも。前に愚痴の二、三は言ってたっけ。
「なんだ。随分と賑やかだな」
「お、士郎か。どうしたんだ?」
いつの間にか士郎が部屋にいた。左腕を見ると痛々しく包帯が巻かれていた。
「小腹が空いていると思って一品だけだが料理を作ってきた」
「おお!ありがとう!ちょうど腹が減っていたんだ!」
大皿に熱を逃がさないようにカバーがかけられている。中は見えない。
「お前達もどうだ。大目に作っておいたから小腹位は満たすぞ?」
「私は食べるぞ。腕前を再確認したい」
「わたくしもいただきます」
「当然私もよ!」
みんなも食べるのか。この前作った士郎の料理はどれもおいしかったから当然だろう。鈴はまだ食べてないんだよな。
「今回は中華料理だ。得意ではないからあまり期待しないでくれ」
「へえ。開けていいか?」
「ああ」
テーブルに置いて、カバーを外すと……。
「酢豚だ!ちょうど食べてみたいと思っていた所だったんだよ!」
「そうだったのか」
鈴の親父さんの中華料理を思い出して食べたくなってきてたんだよな。ナイスタイミングだぜ!
「いただきます」
「「「いただきます」」」
「遠慮なく食べてくれ」
箸を使って肉を取る。箒達も肉を取っている。口に入れると……。
「「「「うまい!」」」」
「それは良かった」
肉は柔らかく、とても食べ応えがある。噛めば噛むほど肉汁が広がる。
「やはりうまい!」
「野菜がシャキシャキしていますわ!」
「一夏と同じくらい家事出来そうね」
箒達も俺と同じ感想みたいだな。ああ、ご飯が恋しくなる。
「あれ?この味もしかして……」
「鈴?」
突然鈴が考え事を始めた。もたもたしていると全部食われるぞ。
「やっぱりこの味は……」
士郎の近くに行き、テーブルに置いている酢豚を指差した。
「これってあんたが作ったのね?」
「ああ。それがどうした?口に合わなかったか?」
本場の料理を作っていたから何か指摘でもするのか。味が向上するなら良いことだ。
「…………のよ……」
「?すまん。もう少し大きな声で頼む」
士郎がそう言うと鈴は怒ったような顔になる。
「なんであんたが父さんの酢豚の調理法を知っているのよ!!」
「?!」
鈴の親父さんの?そう思えばそうだ。どこかで食べた事のある味、これは確かに鈴の親父さんが作った酢豚だ。
「あんた、父さんの事知っているの!答えなさいよ!」
「なんの話だ?全く分からないぞ。落ち着け」
「これが落ち着けらるはずがないでしょ!いいから答えない!」
胸ぐらを掴んで揺する。こんな鈴は初めてだ。てか止めないと!
「落ち着け凰!どうしたというのだ!」
「よく分かりませんがとにかく一度冷静になってくださないまし!」
箒とセシリアが鈴と士郎の間に入り、鈴を士郎から引き剥がした。
それから数分してようやく落ち着いた鈴がさっき俺に話した事を箒達にも教えた。
「そうだったのか」
「お気持ちは分かります。わたくしは一度家族を失った者ですから」
「先走る事も無理はないか」
三人とも納得したようだ。士郎の左腕が滲んでいるが大したことじゃないと言ったが鈴はへこんでいる。
「ごめん。頭に血が上って。守ってくれた左腕を……」
「さっきも言ったが大したことじゃない。それに家族を失うのは誰でも怖い。俺にはそんな記憶さえ失くしてしまったが」
「………………………」
「それにお前の父親はまだ死んだと決まったわけじゃない。どこかで生きていて元気にしているはずさ」
「そうよね。私の父さんだもん」
士郎は記憶ないんだよな。あるのは今年の三月から。
俺には両親の記憶はない。千冬姉は知っているみたいけどきっと教えてくれないだろうな。
「やっと半分終わったー……」
「ご苦労様です。今紅茶淹れます」
「うん。ありがと」
空が暗くなっている。時刻はすでに八時を過ぎているのに生徒会室に明かりが灯っている。中には生徒会長の更識楯無と会計の布仏虚がいる。この二人は今日起きた全身装甲のISと黒い打鉄の事後処理をしていった。IS学園生徒会とは表では一般の学校と変わらないが裏では表に出せない事をする。今日のような出来事がいい例だ。
「それにしても無人機なんて大層な事してくれるわね。やった方は」
「ええ。無人機はどの国も企業も考え付く事ですが、予算や女性権利団体などでやれないのではなく出来ないんですから」
「そうなんだけど。一体送った人は誰なのかしら?」
「さあ。紅茶が出来ました。どうぞ」
「ん……あーやっぱり虚ちゃんの淹れる紅茶は世界一ね!」
「ありがとうごうざいます」
「そういえば、簪ちゃんは友達の部屋に行くって聞いたけど、本音ちゃんは?」
「本音ですか?あの子は先生達が使っていたラファールを整備して疲れて自室で寝ています」
「珍しく真面目ね。何か思いつくかしら?」
「強いて言うなら士郎君が頑張ったからではないでしょうか。あの子も簪さんと同じく士郎君を好きなようですから」
「恋する乙女はなんとやらね」
本音が教師部隊が使っていたラファールを整備していたのは士郎が原因である。アリーナから担架で運ばれる士郎を見て本音は驚いた。なぜ担架で運ばれているのかと。
理由は教師に聞いても教えてくれなかった。当然だが。
考えた末にラファールを修理する事にした。教師部隊が使っていたラファールは黒い打鉄によって損傷していた。本来なら二、三年の整備科に任せるのだが、アリーナの修復に人手が取られているので人手不足。一年生に整備を任せるのは心配であったが三年で主席の布仏虚の妹と分かり、任せる事にした。損傷理由は教えてくれないのはもう分かっているので了承はしている。整備を始めて終わるまで黙々と作業をしていたのであった。
「あの黒い打鉄のパイロットは誰だか分かった?」
「はい。髙橋
「分からない?てことは何も覚えてないの?」
「はい。アリーナに侵入した事も戦った事も」
「はあ……。嘘じゃないよね」
「ウソ発見器を付けながら聞いていたので間違いないかと」
あの黒い打鉄のパイロットは髙橋
彼女が行方不明になったのは五月、今月の頭である。IS部隊でも自衛隊。ISが使用出来ないと想定した山岳での訓練の最中であった。定時に無線で場所を本部に連絡をするのだが彼女一人だけ返事がなかった。不穏に思った上官が部隊を引き連れて最後に交信で言った場所と各隊員にGPSを付けているので場所を割り出した場所に行った。交信で言った場所にはいなかった。GPSで割り出した場所に行ってみるとそこには無残に壊れた無線機と無傷のGPSがあった。他にも所持していた装備一式があった。現場は何者かと争った形跡があったがそれ以外は何も分からなかった。
その後、自衛隊による捜索が行われたが現場にあった物以外は何も見つからなかった。
すでに自衛隊と彼女の家族に連絡済み。後日、手続きが済み次第、身柄を自衛隊に引き渡す事になっている。
「でも一番分からないのは」
「はい」
二人が見つめるディスプレイには――――――士郎が映っていた。
◇
学園の地下に隠された空間がある。そこにはレベル4権限を持つ関係者以外は入れないセキュリティーになっている。元より学園の地下の事は教師以外、少数の者しか知らない。
「やはり無人機です。コアはどのデータベースにもありませんでした」
「そうか」
「黒い打鉄の方はどのパーツも普通ではありません。パイロットの事を無視をしたモノになっていました」
「コアの方は?」
「こちらはありました。日本が所有しているコアで場所は九州にある実験施設となっています」
「では黒い打鉄はそこで造られたのか」
「いえ。今年の二月に爆発事故があったそうです。幸い死傷者はいませんでしたがコアが一つ無くなっていたそうです」
「無くなった?壊れたじゃなくか?」
「はい。無くなったコアは試作ISにあって、事故の時には別な場所にあったので盗まれたとIS委員会に報告。現場検証で何者かがセキュリティーを落として侵入した形跡があったそうです」
黒い打鉄。髙橋晶が操縦していたIS。正確には操れてだが。
見た目は至って通常の打鉄と変わりない。そして、解析によってその全貌が明らかになった。普通なら操縦者の事を考えて、つまり安全を考えてISを作るのが基本だ。いかにISに絶対防御が備わっているとしても万が一を想定しており自滅しないように作られていく。
だが、この黒い打鉄は違う。性能が圧倒的に違うのだ。機体構造は見かけだけで中身は全くの別物。速度、防御力、機動性、反応速度、旋回機能、耐久力等あらゆる数値が数倍もあった。その結果、搭乗者の事を考えず造られた事が判明した。黒い打鉄のパーツには文字や番号が書かれておらず、どこで造られたかは不明。
一体誰が何の為に造ったのか。なぜ連れ去った者を乗せたのか。そして、一夏ではなく士郎を狙ったのか。残ったのは謎だけ。
ちなみにエネルギーブレードは士郎が最後に放った攻撃によりボロボロの状態で発見された。当然ながらほとんど調べることは出来なかった。
「結局、何一つわかりませんでしたね」
「いや、一つだけある」
「え?」
千冬が軽快に操作パネルを打つとディスプレイが映りそこには――――――士郎がいた。
◇
「はあ……」
医務室から出てしばらく時間は経って自室で一人溜息をつくセシリア。部屋には基本二人一組か三人一組になっている。士郎は特別だが。
で、部屋にいるはずのルームメイトはどこにいるのかというと病院にいる。原因はそのルームメイト自身である。休日に買ったプリンを食べて腹を壊したのだ。
決してプリンが作った会社が悪いわけではない。そのプリンの消費期限を見落としたルームメイトが悪い。しかもおつとめ品で買った物である事を忘れて、消費期限が二週間も過ぎている。当然腹を壊して入院する羽目になった。
なぜそこまでして食べたのかとセシリアが聞くとルームメイトは笑ってこう言った。
―――食べ物を粗末にしちゃいけないんだよ、と。
その言葉に思わず涙が出そうなセシリアだった。帰って来たらおいしい料理を食べさせてあげようと心に誓うセシリアだったが、ルームメイトには悲劇が待ち受けていることをまだ知らない。セシリアの料理が壊滅的だということを。
「それにしても意外と家族がいない人が身近にいるんですわね」
鈴の話を気にしている。セシリアも家族を亡くしている、両親を。今は屋敷に仕えているメイドと執事。それに年上の幼なじみが家族である。家族を失うのは怖い。身に染みて分かっている。例え嫌いな父親でも失うと悲しいと。
でも、鈴は父親の事が好きである。もしかすると自分以上に悲しい思いをするのではないかと心配する。だが。
「行方不明であって、まだ死んだとは決まっていません。士郎さんが言っていましたわ」
最初こそ仲は良くなかったが今では良き友人が言っていたことを思い出す。友人、士郎に十年間の記憶がない。それ以前の記憶もない。それはいつ思い出すかは分からない。
「ですがこれは……」
ディスプレイに映っているのは――――――士郎である。
この五人が見ているのは士郎。映像には髙橋晶がエネルギーブレードで最大威力を放つ前から始まる。
肝心の映像はこの後。士郎が黄金の剣を投影し、真名解放する際の言葉がである。
『カリバーン!!』
この言葉こそ五人が重要としている。
カリバーン。それはかの騎士王、ブリテンの伝説的君主・アーサー王が石から抜いた選定の剣の名。
それをなぜ投影出来たのか?そう疑問が浮かぶ。投影は見た物、または投影する物の材料を辿らなければ出来ないのを士郎自身が言っていて、無鉄にもそう書かれていた。カリバーンはあまりにも有名であるがどう作られたのかは分からない。話には何度も出ているがどれも石から抜いたとしかない。それをどうやって投影したのか。
「「「「「士郎(君・さん)。お前(あなた)は何者(だ・なの・ですか)?」」」」」
疑問だけが残るだけであった。
この事は後に判明する。そう、時間が解決する。
「ただいまー」
「おかえりなさい。今日はずいぶん早いわね」
一人の中年男性が自宅に帰宅する。日はすでに暮れて空は暗くなっていて、時刻は午後九時を過ぎている。中から一人の女性の声が明るく迎える。
「一山終わったからな。と言っても明日もあるんだけど大まかにな」
「無理はしないでくださいよ。あなたが倒れると私も悲しみますが子供たちはもっと悲しみますから」
「分かっているよ。そこまではするつもりはない。俺も自分の年の事ぐらい知っている」
「それならいいですが。あなたの職業柄だとそれがよくあるのは重々承知ですが心配だという事忘れないでください」
「自分で選んだ道だ。俺は――――――刑事だからな」
ソファーにずっしりと圧し掛かり座る。男性は疲れているようだがそれでも明るい顔である。
男性と女性の間には二人の娘がいる。一人は誰もが知る世界で唯一しかないIS学園に入学して、もう一人は小学生。
刑事という職業柄は危険が伴うのは避けて通れない。それに帰るのが遅い。昔、長女に誰ですか?と言われたのが一番のショックであるのは内緒だ。
「あの子はまだ起きてるのか?」
「ええ。見て行ったら?」
「そうする。最近まともに見れなかったからな」
立ち上がり、次女の部屋に向かう。だが後ろから見るとなぜか尾行のように移動している。
「家の中だけにしてほしいわね……」
そんな奥さんの呟きは誰も答えてくれない。
トントン
「誰ですかー?」
「お父さんだよ」
「お父さん!」
部屋から出て来たのは女の子。この男性の娘である。
「今日早いね!」
「頑張ってお前の顔を見たかったんだよ――――――真美」
男性の名前は鷹月
「この前は悪かったな。急に仕事が入っちまって」
「ううん。お父さんのお仕事は大変だって分かっているから大丈夫だよ」
「ありがとよ。で、お姉ちゃんと二人で行ったのか?」
「二人じゃなくて三人だよ」
「三人?誰だ?」
「男の人だよ」
「……………………なに?」
父は思う。男だと?娘の言い方だと年上を指している。だとすると……………………静寐の彼氏かぁ?
「真美。そいつは静寐の彼氏って事か?」
「何言っているのお父さん。私の恩人だよ」
「恩人?えっと、なんて言ったけ?」
「もう!ちゃんと覚えないといけないとダメなんだから!」
「すいません」
小学生に怒られる大の大人。シュールだ。
「いい。ちゃんと聞いてね」
「はい」
「んん。弓塚士郎。私の恩人だよ。ちょっと前からお兄ちゃんって私は言っているんだ。この前の遊園地に行ってくれたんだよ」
「―――――――――――――そ、そうか。それは良かったな」
「うん!でね、お兄ちゃんは…………」
その後の話は男性にはよく聞こえなかったそうだ。
「ふう……」
時刻は0時。妻と娘はすでに寝ているが男性はベランダで一人タバコを吸っている。
「まさか、あいつの息子とは思わなかったな。想像もしなかった」
男性は士郎の事を言っているようだ。しかし、なんで驚いているのかは分からんない。
「それに
アレとは何か。それはなんなのだろうか。
「そして、真美が生まれて九年になろうというのか。ふう……。今だに罪悪感がくっ付いてきやがる」
娘が生まれて九年。それと同時に罪悪感とは一体何なのか。語られるのはいつになるのだろうか。
「それはそれとして。――――――行方不明の自衛隊隊員が見つかったのがIS学園とは驚きだよなー」
行方不明の自衛隊。それは髙橋晶の事である。警察も追っていたので必然に伝わったので知る事になった。自衛隊や警察にはIS学園付近の海辺で発見されたとなっている。当然だが黒い打鉄の事は言ってはいないので知らない。
夜は更けて、空はいつも変わらず星々が輝く。
感想、誤字脱字がありましたらお願いします。
なんでセシリアが映像を持っているのかはISを起動していたからです。一夏と鈴はエネルギー切れで起動していません。なのでISに記録映像として残っています。
次の話が終わったら設定を載せます。半年以上設定なんて上げていなかったのを最近気づきました。
では次回もお楽しみにしてください。