IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男 作:運命の担い手
本当はこの一話にしようと思ったんですけど長いので分割にして明日の朝もう一話更新して設定を上げます。
それではどうぞ!
アリーナでの戦闘から数日が過ぎた。無人機と実験中の機体が暴走した、黒い打鉄は機体制御ができなく墜落したと公表された。二、三日ほど世間が騒いだが、今ではすでに過去の事のように誰もその話は出てこない。アリーナは今でも修復作業は行われているが近い内に直るとなっている。
「うむ。順序は一通り覚えたようだな。あとは自分でアレンジしてみろ」
「分かった。すまないな、休日なのに時間を割いてしまって」
「大丈夫だ。トレーニングが終わってからは基本暇になっている」
で、俺は箒に料理を教え終わった所である。アリーナでの戦闘の翌日に箒に料理を教えてほしいと言われた。理由を聞くと一夏に味なしチャーハンを食べさせてしまった、ということ。
少しだけなら作れるそうだがちゃんとした物は一度も作ったことがないそうなので簡単な料理から教え始めた。同時に調理器具の使い方も教えた。なにせ野菜や魚を切る時なんかまな板がダンッ!と音が鳴るくらい力一杯に切ったんだぞ。まな板もそうだが包丁が欠けそうで危ない。料理を教える前に調理器具の使い方になるとは驚きだった。
でも、今では料理は一人で出来るようになった。スポンジが水を吸収するかのようにドンドンと覚えるので思ったより上達が早いし、小まめにメモを取るので教える身としては嬉しい。
今日は唐揚げを教えた。調節も大切だが揚げ方も大切だ。普通に一度だけで揚げるとベタベタになるが二度揚げる事によって中ジューシーを保ちつつ外サクサクになる。順序は一通り教えたのであとは箒自身がどうアレンジをするかが楽しみだ。
「もう十分に料理が出来るようになったんだから一夏に食べさせたらどうだ?喜ぶはずだ」
「それは近い内にする。一夏は放課後も訓練をしているから時間はないから昼に弁当を渡そうと思っている」
「弁当か。それなら冷めてもおいしいように工夫しないとな」
「うっ。私に出来るだろうか……」
「今まで教えて来たのを復習すれば大丈夫だ。自信は持っていいぞ」
「お前がそう言うのなら大丈夫なのだな。では部屋に戻る」
「ああ。分からないのがあったらいつでもいいぞ」
作った唐揚げは昼に食べるそうで持って行った。本来なら剣道部があるはずだが顧問の先生、藤ねえが設備点検で使えない事を伝え忘れて急遽休みになったそうだ。明日は日曜なので部活はないが自主練をするそうだ。
「はあ………暇だ」
本当なら無鉄の調整や試作武装を試すはずなんだが出来ない。
理由は無鉄が整備中だからだ。
無人機に黒い打鉄と連戦でボロボロになったが自動修復でなんとかなるのだが、念のため久宇研究場で検査してもらった。検査の結果は大丈夫だったが、いい機会なのでオーバーホール、つまり全解体して隅々まで見る事になった。なので今俺には無鉄がない。戻って来るのは明日の夕方になるそうなのでそれまでIS学園から出れない。街に出かけ、食材を買う事が出来ないのは残念だが諦めるしかない。
「そうだ。今日は本音達が訓練機で練習する日だ。アドバイスぐらいだけだが行っても大丈夫だろう」
訓練機一つで複数で使うのはそう珍しくはない。IS学園には多くISがあるがそれが全て生徒が使えるわけではない。
例えばこの前の黒い打鉄の時に対応した先生達が使用するように非常事態に備えて何機か出撃待機している。数は知らないが十機以上なのは確か。それを引くと一気に数が減るので必然的に生徒で使えるのが少ない。なので一つの訓練機で複数で使うのはなんら珍しくもないという事だ。ちなみに使うには申請しなければいけない。しかも紙が多いので書くのが大変だと箒が言っていた。
専用機持ちは自分達のISを使うだけなので使えるアリーナを把握するだけ。
「その前に弓道場に行くか」
腕はすでに完治したが念のため休めと美射部長に言われたので弓道が出来ない。的張りでもしようと思ったんだがとにかく休めと強く言われたので雑用も出来ない。なのでここ数日の放課後は暇になった。完治した後はトレーニングで鍛えているのでそれほど衰えていない。だが、感覚は実際にやらなければ分からない。
とはいえ、言った所で怒られるがオチなのでデザートを渡すだけにする。それぐらいは
「量はこれで十分。人数分と予備も揃っているから不備はない」
弓道場に行くか。デザートが少々重いが。
◇
「持ち手が緩い!しっかり持て!」
「的完成!」
「ずれてるよ」
「やり直しだー!」
「少し的を下にした方がいい。そうそう」
やっているな。俺もせめて的張りだけでもしたい。
「あ、士郎君。どうしたの?」
「よ、正弓。実は―――」
「何をしている士郎!」
「「「ひっ!」」」
突然の怒号。そのせいか何人か怯えた。二、三年生の先輩を含めて。
「的張りも雑用もしてはならんと言ったではないか!」
「まだしてませんし、しません」
「なら何しに来た!」
美射部長は弓道となると厳しい。これが良くも悪くあるんだけど。邪魔になるのはこちらとて嫌だから早めに済まそう。
「これをどうぞ。人数分あるので分けてください」
「む、中身はなんだ?」
「デザートです」
『!』
なんだろう。弓道場が一気に静かになった。怖いくらいに。
「ああ、部長。休憩にしません?そろそろ時間ですし」
「そうじゃな。頃合もよい、休憩にしよう」
『やったー!』
歓声というくらいに喜ぶ。そんなに部活きつかったのか?
「士郎君私にちょうだい!」
「私が先よ!」
「いや、私が!」
「えっと、私が……」
「「「どうぞどうぞ」」」
「ふぇ!?」
なぜに漫才している。そんなこんなで全員に配り終わり、渡したデザート―――豆乳プリンを食べている。
「甘い!そしてヘルシー!」
「ああ。久しぶりに食べた~」
「士郎君の作るのは全部おいしいよね!」
「うんうん分かる!」
「でも、私達女子よりうまいとなんか悔しいわ」
「あたしは気にしないけど?」
豆乳プリンはそれほど難しくはない。豆乳、砂糖またはグラニュー糖、粉ゼラチン。これで十分。好みによっては生クリーム、バニラエッセンス、黒蜜、杏子などある。料理する者によってそれぞれバランスも味も違う。注意すべきするとしたら、冷やす時間を間違えない事だ。早過ぎると液体で遅すぎると固くなり過ぎて味がダメになる。
「よ、士郎。元気か」
「元気も何も腕が完治しているのにやる事が限られていますから暇ですよ」
「まあそうだよな。お前のISは修理中だし、部長には念のため休めって言われているからそれは暇になるな」
声をかけてくれたのはマナ先輩だ。
「今日は部活がきつかったんですか?」
「ん、どうしてだ?」
「みんながデザートの事を言ったら目が怖かったんで」
「ははは……。部活はいつも通りだ。お前のお菓子が欲しかっただけだよ」
「そうなんですか。それは嬉しい」
「結構抑圧されていたようなもんだからな。お前が雑用もしないように部長が言った日から」
「はい?」
少し怖いが聞いてみよう。
「それはどういうことですか?」
「お前のお菓子だよ。週に三回ぐらいお菓子かデザート作って持ってくるだろ。それがお前が来なくなったイコールお菓子&デザートが食べられない。これ以上言わなくても分かるだろ?」
「なるほど」
女子は甘い物が好きだとよく聞くがここまでとは。しかし嬉しいものだな。そこまで思ってくれるのが。
「お菓子かデザートなら大丈夫そうなので来るようにします」
「そうしてくれ。チカと正弓だけならともかく弓道部のほとんどがうるさくて敵わないよ」
俺がいない間に色々と苦労しているようだな。顔出しでもしとけばよかったか。
「それじゃ部活頑張ってください。俺は他の所に行くので」
「そうか。早く部活に出れるといいな」
「まったくです。それじゃ」
弓道場から出る。さて、本音達の所に行くか。
場所は確か、第四アリーナだったか。何人で練習するかは聞いていない。練習するのにそこまで聞くのは無粋だ。
◇
アリーナの中は土曜という事もあるのかそれほど多くはいなかった。見かけない女子もいるようで二、三年生の上級生だろう。
「よ。頑張っているな」
本音達はすぐに見つけることができた。集まっているメンバーは本音を含めてえーと……四人か。
「あ、士郎どうしたのー?」
「練習すると聞いていたから見に来たのさ。ついでにアドバイスをしに」
やるとしてたら無鉄を使いたいが、今手元にはない。出来るのはアドバイスだけ。それでも彼女たちには多少なりともプラスになる。
「やっほー士郎君」
「調子はどうだ清香。ISには慣れたか?」
「まあまあかな。まだ飛べないけど歩行ならね」
ガシャンガシャンと音を立てて来たのは打鉄を纏っている相川清香。本音といつもいるメンバーの一人だ。部活はハンドボールだったか。
あとの二人は癒子とナギだ。
それにしてもISスーツは水着のように見える。女子なら気にしないが
「士郎君も災難だったね。専用機が修理する事になって」
「正確にはオーバーホールだがな。先月は忙しくて時間が取れなかったからしょうがない」
「それより癒子の番だよ。時間はまだあるけど一通り回せないと」
「そうだね。じゃ士郎君。アドバイスお願いね」
打鉄から降りた清香のあとに癒子が乗った。ナギと本音はすでにしたそうだ。
「歩行は問題ない。だが、あまり慎重にならずに普段歩くような感じの方がスムーズに歩けるぞ」
「了解。お、よっと。本当だ。いつものように歩いたらさっきより良くなっている」
ISに乗るとどうもぎこちなく歩く者が多い。ISだからと大丈夫だと思うのだが頭のどこかで危ないと意識してしまうのでぎこちなく歩いてしまう。例えば慣れない靴を履ているような感じか。
「その調子だ。それじゃ次は――――――」
「ちょっとなんなの!」
「そっちがやったんでしょ!」
もう一つアドバイスをかけようとしたら大声が聞こえた。一年の顔は大体覚えているが見慣れない。恐らく上級生なのだろう。上級生同士での喧嘩のようだが学年は分からない。
「ケンカみたいだね」
「関わりないようにしないと難癖つけられそう」
清香とナギがそれぞれ言っている。ナギの言う通りに関わらない方が得策だな。難癖付けられるのは
「ねーね―士郎」
「どうした本音?」
「あの先輩達、ISでケンカしないよねー」
「さすがにそれはないだろ。俺達より学年は上だ。ISでの模擬戦なら周りに言ってからするはずだし、なによりケンカで使ったら先生達に大目玉を喰らうぞ」
「そうだよねー」
模擬戦なら周りに言わなければならない。これはアリーナのルールの一つでもある。さすがにISを使ってまでケンカするとは思えないが。
「やっていない言っているでしょ!」
「嘘つかないでよ!さっきから邪魔して!」
収まる所かドンドンヒートアップしてくる。これはさすがにまずいと思ったのでアリーナの管制室にいる先生に連絡を入れようとした時、それは起きた。
「きゃ!?」
「なっ!癒子大丈夫か!」
「大丈夫。絶対防御で守られたから」
信じられない事にケンカが始まった。しかもISを使って。流れ弾が癒子に当たったが絶対防御で守られた。
「はあああああ!」
「このっ!」
使っていたアサルトライフルを互いに捨てて、近接ブレードで接近戦に切り替えた。
「ここから早く出るぞ。さっきみたいに銃撃戦になったらタダじゃ済まない」
「そうだよね、早く出ないと」
清香はナギの手を引っ張り走る。俺と本音も走って出入り口に向かう。その後ろに癒子が前方にいる俺達を守るように走っている。
その間も先輩二人は戦いをしている。クソ、上級生ならISはどういうモノか知っているはずなのに……!
「あう!」
「うおっ!?」
躓いて本音が転び、癒子は踏まないように大きくジャンプする。不謹慎だがいい反応である。
「大丈夫か、ほ――――――」
ドクン
世界が凍ったかのように見える。
何かが本音に迫っていた。それは近接ブレードの一部だ。
滅多にない例だが近接ブレードが壊れる事がある。点検しても金属疲労は分かりにくいもので、そのため発見するのも難しい。
それが今起きた。
何度も打ち合ったせいかどちらかの近接ブレードが折れたのだろう。最悪なのはそれが本音に向かっている。
「―――――――――」
本音が死んでしまう。
ならどうする。
間に合うのか。
助けられるのか。
俺は―――倒れている誰かを見捨てることなんて出来ない。迷うこと必要はない。ならどうすればいいかもう分かっている。
「本音!」
全力で駆けだした。無鉄がない俺は破片を防ぐ術がない。
ならせめて倒れている本音を助け――――――
バシャ!
「…え」
「あれ?」
本音の顔にナニカがついた。アカイミズのようでどこかでミタコトがある。
「なんだ、コレ……」
身体の一部がナイ。そこからアカイミズが出ている。ああ、これは血か。
「し……ろう?」
顔を汚してしまった。これじゃ、虚さんに怒られるのは間違いない。あの人は怒ると容赦ないから覚悟しないと。
「……そうか。なんて間抜けなんだ、俺は」
本音を突き飛ばしてことはできたが、俺は避けることが出来なかったんだ。そして破片は俺に当たって、勢いもありごっそり腹をもっていかれてしまった。
「ごふ!」
こんな時に失敗するなんてザマ。らしくない。こういう大一番に限って失敗とは。
「士郎!士郎!」
立つこともままならず、本音に寄り掛かる。余計汚れるけど済まない、上手く立てないんだ。
「いやだよ!死なないで!」
顔が見えない。視界が赤一色に染まっっている。
「きゃああああ!」
「早く来てください!死に掛けているんです!」
「何……あれ……」
周りにも迷惑かけている。ああ、こうも上手くいかないなんて。
「士郎死なないで!」
声だけだが泣いているんだろうな。ごめんな本音。
だけど、本音が無事で良かった――――――。
「はっ!」
気が付くと俺はどこかにいる。
周りを見るが透明なのか白いのか、それとも元々色がない所なのか。とにかく訳が解らない所に俺は立っている。
「おい少年」
不意に声をかけられて振り向く――――――
「!」
が、突然の突風で視界が遮られる。目を開ける事すらままならない。
「ここは……」
風が止み、目を開けると白い花に囲まれていた。
「この花はオオアマナ。花言葉は潔白・純潔・無垢だ」
その中に一人、白いライダースーツのような服を着いる女性がいた。かも当然のように立っている。
「あなたは誰だ?」
「私はザ・ジョイ。戦うことに喜びを感じる女だよ」
「こう言ってはあれですけど変な名前ですね」
「そうだな。だがこれでも気に入っている」
そう言って
「ここはどこですか。いきなりここにいるのが分からないんですが」
「はっきり言うとここは夢の中。お前のな」
「俺の?」
「と言っても私が無理矢理入り込んでいるだけだ。夢というのは同じものばかりではない」
「そうですよね。でもなぜ俺の夢の中に無理矢理入ってきたんですか?そもそも夢に入れる機械あるんですか?」
人の夢に入れる機械があるとしかない。一体誰が。
「機械ではない。私は幽霊だから他人の夢に入れる」
「は?」
幽霊?あのうらめしやーというあれか?
「早く成仏しろよ」
「中々気に入っているので成仏するのは惜しい。すでに四十年以上も過ぎているからな」
「もはや怨霊になるぞおい」
「私以外にも幽霊や怨霊がいるが脅したりと色々していたら怨霊が恐れる幽霊となっているから大丈夫さ」
なんだそりゃ。あんたは生前何をやっていたんだよ。
「それよりお前に少しばかり話したくて来た」
「俺に?なぜ?」
「ちょっとした世間話みたいなものだ。それに私一人ではない」
「やあ。遅れて済まない」
振り向くとそこには眼鏡を掛けた男性がいた。
「私はザ・ソロー。ザ・ジョイの夫だよ」
「幽霊夫婦か。もうどうにでもなれ」
ツッコンだら負けのよう気がする。聞くのは止そう。
「ちょっとした世間話と言うのはお前の事だ」
「俺の?」
「記憶がないのだろう。しかも一つも」
「まあそうですけど。それがどうしたんですか?」
「私とザ・ジョイは君の事を知っていると言ったら」
「なに?」
俺の事を知っている?だったら教えてほしい。俺は何をしていたのか。
「だが教えない。これはお前自身が思い出さなければならない」
「……理由は?」
「色々あるが自分で思い出した方がいい。無理に思い出すのは脳に負担が大きいからさ」
脳に負担がかかるのか。ただでさえ記憶がないのに脳に負担がかかっては元も子もない。
「む?そろそろ時間か。案外早いな」
「睡眠ならともかく意識を失っていたからしょうがないさ」
周りを見るとさっきまであった白い花、オオアマナが一つ一つ消えていく。
「ヒントを一つだけやる。あとは自分で調べろ」
「分かりました。それでヒントは」
「一回しか言わないからよく聞け。―――お前の曾爺さんだ」
「なんでさ?」
爺さんじゃなくて曾爺さん?とにかく忘れないようにしないと。
「時間だ。じゃあな、また来れたら来る」
「戦士の魂は……常に君と共にある」
白い空間だけになり、二人の姿が薄れていく。
「あ、一つ言うのを忘れていた。
お前は影に守られている。それと闇に気をつけろ」
その言葉を最後に視界全体が白に染まった。
感想・誤字脱字がありましたらお願いします。
ちなみに明日更新する話と今日の話を合わせると10000字数を超します。
読みにくいですよね。