IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男   作:運命の担い手

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かなり遅くなりましたが今回は一周年記念の話です。
この先ネタバレが多いですがまだ確定ではありません。
では、どうぞ!


エイユウ

あいつ織斑一夏と戦ってもう十年になるか。

最初はとんでもなく弱かったが、今ではかつて世界最強だった織斑千冬を越すほどに強くなった。

やはり、あの二人の子ということか。

それとも英雄となるべき者というのか。

 

「ここにいたのね。みんな集まっているわよ」

「分かっている。今行く」

 

そう、今日で何もかも終わる。全てにケリをつける。

 

 

 

 

 

 

ここには日本人、中国人、イギリス人、ドイツ人、フランス人、ロシア人と様々な人種、国籍、等々多くいる。

台座に上り、全員を見る事が出来る。マイクをオンにして話し始める。

 

「いいか。今日で世界と戦い、ちょうど一年になる。すでに多くの友を、家族を、恋人を失っている事を俺は知っている。散って逝った者達に報いるためにも俺達は死んではいけない」

 

世界は俺達にすべての罪を擦り付けてちょうど一年前。突然の宣誓布告、同時に戦闘。準備をしていなかった支部、協力してくれた企業、非戦闘員の家などが襲われた。

最初こそは押されたが、すぐに反撃に転じて戦況を覆した。押したり押されたりと繰り返し一年になった。世界の裏に隠れていたあいつら、闇を同時に殺している。

 

「俺達は勝利を勝ち取るのではない!真実を世界に付き付け、現実を見せる事だ!」

『おう!!』

 

俺達に勝利が必要じゃない。愛国者達のような支配がされていない今の世界に甘い嘘を消して、残酷な今を見せなければならない。

 

「今まで世界に隠れていた闇共も残り僅か!そして、総力戦となる今日、全てが終わる!」

『おう!!!』

 

巧妙に隠れて戦闘に赴いている所を躊躇なく殺してきた。解る者には闇を優先的殺すように指示をして解らない者には通常通り戦闘をするように指示を出している。

 

「決して死ぬなと言っても死ぬ者が出てしまうが敢えて言おう。泥水を啜っても生きろ!木の根をかじっても生きろ!何が何でも生きろ!」

『おう!!!』

 

すでに数えきれないほどの死人を出している。どう死なないようにしても誰かが死んでしまうのは現実だ。非戦闘員でも流れ弾で死んでいるのも。

 

「戦闘開始は一二(ひとにー)〇〇(まるまる)!集合はその十分前だ!それまで各自準備をしろ!解散!」

 

バラバラに散り、それぞれの持ち場に戻る者、遺言を書く者、告白する者、誓い合う者などがいる。

この総力戦でどれほど生き残れるだろうか。一割になる可能性や最悪全滅もある。

願わくば誰一人欠けることなく再び集まって欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ」

「何?」

「この戦いが終わったら、あの人を連れてどこかで三人で暮らさないか?」

 

俺の隣に恋人がいる。もう付き合って十五年もなる。付き合い始めたのは当時十歳。同じ組織にいて、気付いた時には好きになっていた。

 

「うん。そうしよう。お母さんも喜ぶよ」

「そうだな。俺にとってもう家族同然。家族は一緒にいるべきだからな」

 

本当ならこいつの父親、俺にとって恩人と呼ぶべき人はすでにこの世にいない。三年前に亡くなった。

原因は体内のナノマシンが異常になり、ガンになった。余命が一年のはずが五年も生きたのはあの人だからだろう。

眠るようにあの人は静かに亡くなった。

だが、それが決定的ではない。あの人は四十代の時に老人のように急激に老けていた。あの時は驚いた。戻って来たら、誰かと思った。

あの人は遺伝子操作されてそんなに長く生きてられないようにされていたからだ。

 

「それに孫の顔が早く見たいって言っていたから」

「ぶっ?!」

 

な、なんて事をサラッと言っているんだあの母親は……!

たく、お前も恥ずかしいんならわざわざ言うな。顔が赤いぞ。

 

「わ、私もその、赤ちゃん、欲しいんだよ……///」

 

ストレートに言うようになったなおい!

 

「ま、まあ、この戦いが終わったら、その、なんだ。小さくても式をしようと考えているから、それは式が終わってからな///」

「う、うん!」

 

こんな大戦がなければすでに結婚していただろう。実は開戦したあの日は結婚の事を話そうとしていた。それが今日まで言いそびれていた。

 

「話しが変わるが本当に良かったのか?」

「何が?」

「俺がお前の兄と戦う事を」

「………………」

 

こいつの兄は織斑一夏。もう何度戦ったのか100を超した辺りから数えていない。織斑一夏と織斑千冬は今でもあの真相を知らない。知るのは恐らくこの戦いが終わった後になるか。

 

「今度はどちらかが死ぬかもしれない。もしかすると両方死ぬかもしれない。それでもいいのか?」

「……うん。言っても聞かないでしょ」

「ああ。あいつと決着をつかないといけない。それはあいつも望んでいる」

 

今日で何もかも終わる。これから先は、未来は戦争なんてさせはしない。今日で人類最後の流血にしてみせる……!

 

「時間までまだある。それで二人でいよう」

「うん」

 

こいつも戦場に出る。俺より後ろの前線だが危険であるには変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボス、全員揃いました。いつでも出撃可能です」

「分かった。戻っていい」

「はっ!」

 

ボスか。そう言われてもおかしくないか。俺より年が上の奴なんて大勢いるのにそいつら全員に「お前の方がボスが似合う」て言うんだ。

指揮をするのは確かに上手いと思うが俺でいいのかね。ほんと。

すでに全員、ISと全身装甲のようなロボットを装着している。

全身装甲のようなロボットには男女関係なく乗れる。

名前はブラスト・ランナー。世に出たのはISとほぼ同じ時期だが、白騎士事件でISの方が目立ったのでブラスト・ランナーは世間から忘れ去られた。

ここの組織はISの収集と同時にブラスト・ランナーの研究、開発をしていた。ISは確かに強力な兵器だが、万能ではない。そこを補うためにブラスト・ランナーが必要だった。

ISとは違い、絶対防御やシールドエネルギーがないので死ぬ確率は高いが、それでも十分な性能。基本移動はブースターや歩行、走行だが、オプションの付け替えで空を飛んだり、水中に潜ることが出来る。当然極地対応もだ。

全体としてはISの技術流用をしているので高性能。高い順で言えば、IS、ブラスト・ランナー、既存兵器となる。

男女関係なく乗れるのでISと違って女だけではないので戦術、戦略の幅が広がる。

敵は十年前から研究、開発しているのでブラスト・ランナーに限ってはこちらが優勢。俺達の組織は二十年前から研究、開発をしていたので十年という差はとても大きいといえる。

タイプが多い。汎用性のもあれば分厚い装甲、索敵性能が高いといったモノが数多くある。

 

「行くぞ!今日で全てにケリをつける!」

 

俺は指揮官だが最前線に出なければならない。真っ先に行く必要があるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『弾が足りない!誰かくれ!』

『ぐっ!まだまだぁぁぁぁ!』

『ここまでか。だが、お前も道連れだ!』

『こちらポイントD63-A!至急応援を、があ!』

 

戦いが始まり数時間が経つ。通信が乱れ、敵味方かさえ分からない。分かるのは確実に死人が出ている事。それだけは確かだ。

 

「士郎……」

「分かっている。あそこにいかなければ全てが無駄になる。だから俺達は進まなければならない」

 

破壊すべきモノがある。それを破壊せねばこの世界は終わる。

 

「見えた。あそこだ!」

 

目標に続く洞窟が見える。中には何が待ち受けているのか分からない。だが、それでも進む。

 

「行くぞ!」

「了解!」

 

洞窟に入り、突入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが……」

「ああ。これが破壊する目標だ」

 

なんともコレはデカイ。想定していたより倍以上。破壊するのは骨が折れそうだ。

 

「やっぱり来たか」

「いると思っていた。織斑一夏」

 

悠然と立つのは織斑一夏。専用機、白式を装着している。白式は四次移行(フォース・シフト)している。世界で初めてだそうだ。

 

「いるのはお前だけか?」

「二人連れて来た。数だと俺達の方が有利だ」

「役に立てればな」

 

傍にいるのは分かる。一人は見知らぬ男。もう一人は―――死んだと思っていた初めての友達。

 

「お前はまだソレが本当に平和のためだと思っているのか」

「当たり前だ。コレは人類にとって重要なモノだと知っている。なのになんでお前達は壊そうとするんだ」

「つくづく甘く、現実を見ない奴だなお前は。ソレはあってはいけないモノ。だから俺達は破壊しに来た。死にたくなければ退け」

「退くつもりはない。それに千冬姉の腕をよくも……!」

「お互い様だ。織斑千冬は利き腕の右腕を。俺は右目を。天秤に賭けても釣り合っている」

 

半年前の戦闘で俺は右目を失っている。織斑千冬が乗っていた暮桜(くれざくら)の雪片の単一仕様能力(ワンオフアビリティー)「零落白夜」で斬られた。しかも競技リミッターなしで。

お返しとばかりに雪片を投影して「零落白夜」で右腕を斬った。

後で分かった事だが、競技リミッターがない「零落白夜」は傷の再生が出来ないと知った。目が少々不自由になるが左目があるので後の戦闘は眼帯をして戦いに挑んだ。

織斑千冬も再生技術が効かないようで前線から身を退いて指揮官になったそうだ。義手を付ければいいのにと思ったが、医者が言うには義手の取り付けもナノマシンが必要となるので当然

出来ないと言っていた。

 

「互いに退けない。なら、戦うだけだ」

「そうだな。こっちにはもう"サーヴァント"はない。そっちにはお前も含めて"サーヴァント"がいるがそれでも戦う」

 

サーヴァント。それは英雄の力を持ったISの事。

何故なるかは定かではないが、ISに聖遺物が混入していた、操縦者が子孫や血をひいている事など言われている。

サーヴァントになるタイミングは一次移行(ファースト・シフト)二次移行(セカンド・シフト)の時になるとされている。

俺の時は二次移行(セカンド・シフト)だった。

 

「なら行くぞ。正義の味方を語る、織斑一夏!」

「お前を倒す。ビッグアーチャー、弓塚士郎!」

 

ここで止まるわけにはいかない。アレを破壊するまでは!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!」

「はあ……はあ……」

 

戦いは俺達の勝ち。織斑一夏は地面に倒れ、連れて来た男は円夏が気絶させた。

そして、初めての友達は、彼女は――――――俺が殺した。

彼女はあの事件の後、生きていた。ただし、世間にそれが露呈してしまってはいけないのでお偉いさんが安全な場所で過ごし、IS学園にも通っていた。

卒業後はある企業でテストパイロットをしていたがガンになった。もうそんなに生きられる体ではないと。

ナノマシンによってガンの進行を遅らせていたが、それももう限界。

最後は俺に殺されたいためだけに今日まで生きていたと最後に語ってくれた。

 

「では破壊させてもらう。お前はそこでじっとしていろ」

「くそっ……!」

 

持って来た爆薬を出して設置しようとした時、爆発した。

 

「爆薬が!?誰だ!」

 

咄嗟に退避したので大丈夫だったが持って来た爆薬が全て爆発してしまった。

爆発する寸前にナニカが飛んで来たのを見たので飛んで来た方向を見ると気絶していたはずの男が立ていた。

 

「ソレは(オレ)のモノだ。貴様のような雑種が触れて良いモノではない」

 

色が変わっていた。髪は黒から金に変わり、目は赤になっていた。

 

「なるほど。お前、サーヴァントを持っているな」

「ああそうだ。すでに我は持っていた。だが、あいつらは見せるなと煩くて堪らないからしぶしぶこのガラクタで戦っていた」

 

ガラクタとはブラスト・ランナーの事だろう。気絶したのはただの芝居で機会を窺っていたか。

 

「最後までいい見物だ。地面に這いつくばっているその男の様は」

「お前!ブラスト・ランナーのエースだろ!なんでこんなことを!」

「貴様はどこまでも現実を見ないのだな。我は最初から仲間だと一言も言っていない。貴様が知っているのは全て偽物。哀れな道化よ」

 

情報は全て偽物か。正体はもう闇で間違いない。

 

「お前が最後の闇で間違いないな?」

「ふん。そうなるな。で、どうするつもりだ?」

「殺す。お前を殺して、コレを破壊する。ただそれだけだ」

「貴様……」

 

黄金の鎧を身に纏い、空間が歪み、そこから数多の武器が見られる。

剣、刀、斧、鎌、槍等ある。サーヴァントは英雄の力を持つ。どの英雄でもあれほどの量を持つ者はいない。

いや、知っている。担い手ではなく、所有者として。

 

「お前のサーヴァントの正体は今分かった。だから、お前に必ず勝てる」

「口が随分達者だな、贋作。いいだろう、塵一つも残さず消えろ」

 

パチンと指を鳴らし、空間の歪みから三十ほどこちらに向かって来るが、向かって来る三十ほどを投影してぶつければいいだけ。

 

「なに?」

「何を驚いている。防がれた事にか?それとも、偽物が本物と同等だという事か?」

偽物(フェイカー)風情が調子になるなよ。いいだろう。貴様は我自ら葬ってやる!」

 

俺は勝てる。所有者であって担い手ではない。

あいつのサーヴァントは――――――

 

「いくぞ英雄王――――――武器の貯蔵は十分か」

 

人類最古の王、ギルガメッシュ。それがあいつのサーヴァントの正体。

 

「思い上がるな、贋作―――!」

 

"門"が開け、無数の武器を展開する。

最後の激突が開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐは!贋作風情が……」

 

結果的に言えば俺の勝ち。ただ、体は満身創痍。今なら治療が間に合うがそれは出来ない。

 

「妹の事を頼む」

「……うん、分かった」

 

そう言って円夏は織斑一夏と死んでいる■■を連れてここから脱出した。ここにいるのはもう俺と亡骸の英雄王のみ。被害は最小限に留まる。

 

「さて、最後の仕事をするか」

 

目をそっと閉じてあいつが使っている剣をイメージする。

 

「――――――投影開始(トレース・オン)

 

手に重みを感じる。握っているのは勝利の剣。

 

「コレはあってはいけない。これ以上失わないためにも、これから生まれて来る命のためにも、コレは存在してはいけない」

 

目の前にあるコレは禍々しい。ただこの一言に尽きる。こんなモノのために闇共は戦っていたのか。理解出来ん。

そんな事はもう考える必要はない。破壊するだけだ。

 

「さらば、織斑一夏。円夏、約束守れなくてごめん。そして■■、一度も会わずにすまない」

 

最後の言葉を残し、真名解放をした。

 

 

ゴッ!!

 

 

アレから膨大なエネルギーが溢れ出し、瞬く間に飲み込まれた。被害はここだけになるので犠牲は俺だけなる。

痛みはない。いや、すでに満身創痍なのか神経が麻痺して痛みを感じない。

 

「ふ。悪くない人生だったな」

 

これで俺は終わる。間違いなく地獄行きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから一ヵ月から過ぎた。

あの場所は完全に崩落して原型を留めていなかった。

俺は世界中から英雄だの正義の味方だと称賛された。そんな事言われるような事はしてない。

あいつ、弓塚士郎こそが英雄に相応しい。俺はどこまでも甘く、決断が出来なかった。信じていた者が裏切っても何かの間違い、脅されていると思い込み、事実と真実に向き合おうともしなかった。

弓塚は非情だったが、どこか寂しそうにしていた。決断して故の表情だったのかも知れない。

つい先日、俺の妹と母親と名乗る人が来て、あの日の事を話してくれた。

まだ受け入れることは出来ないが時間をかけて受け入れようとしている。俺も千冬姉も。

 

「なあ、箒」

「どうした一夏?」

 

俺と箒は結婚している。他にも妻が四人いて計五人。今はそれぞれの国に戻って、落ち着いたらすぐに戻って来ると言っていたのでそろそろだと思う。

 

「俺は正しかったのか」

「………………………」

 

幼なじみの箒に聞いても正解はない。いや、誰に聞いても恐らく正解はないのだろう。

 

「私には分からない。戦いが終わってから世界中に真実が(おおやけ)になった。この一年間の戦争や今まで隠され続けて事が。そして、一夏と私にとって永遠に忘れる事が

出来ない白騎士事件も」

「………………………」

 

戦争の事は俺達もあとから知った。闇の事は知っていたが全部が全部あの組織のせいと思っていた。

 

「これから俺はどうすればいいんだ」

「それは……」

「知らなかったとはいえ、大勢殺した。それが正義と信じていた。でも!結局俺は言われたままに動いてだけだ!小さい子供から年老いた老人まで殺した!そのことに疑問を持たずに!」

「一夏………」

 

命乞いをしたのに俺は殺したんだ。殺す事に疑問を持たないままただ言われるがままに動いた。俺は、罰を受けるべきなのに!

 

「何をすべきかは一夏がこれから考えるんだ。起きた事は変えられない、なかった事には出来ない。私は姉さんをあんな目にしたのはあの組織だと戦いが終わるまでそう思っていた。

許せなかった。だから、私は殺した。何人殺したのかさえ忘れるほど」

「……………」

 

束さんは眠り続けている。二年前に何者かが束さんを襲った。幸いにも命は取り留めたが、脳に損傷が出来て植物人間状態になった。

いつ目が覚めるか分からない。明日になるか、来週になるか。もしかすると死ぬまで眠り続けるかもしれない。

 

「人を殺すのに大義名分があってはいけない。それは人を殺すのは正当になってしまう。そんな当たり前のことを私はいつの間にか忘れてしまった。

それに夢に殺した者が時々現れるんだ。だから私は決めた」

「……何を?」

「殺した者を忘れない。それは償いで戒めでもあるから。一夏はどうしたい?」

「俺は………」

 

どうすればいい。俺に出来るのは戦うだけなのに。何も分からない。何をすればいいのかさえ。

 

「箒?」

 

突然俺の手を自分を腹に当てた。

 

「実はな、私の体はもう一人だけのものではない。お前は親になるんだ」

「親?もしかして……」

「ああ。妊娠している」

「ええええ!?」

 

いや、確かにそういう事をしていたけど。なんて言うか、その、えー、あー!

 

「私だけではない。他の四人もだぞ」

「マジで?!」

「ああマジだ」

 

はは。一気に子沢山になったな俺。でもなんで今言うんだ?

 

「私からの案なんだが、父親になるというのはどうだ。それから先の事を考えてもいい。蓄えも十分ある」

「でも、俺は……」

「一夏。お前は確かに親の愛情というモノがほとんど受けてはいない。だが、それ以上にお前は恵まれている。私にあの四人。教師に親友とこれ以上ないほどに」

「……そうだな。そうだよな」

 

過去をなかった事には出来ない。ならこれからは過去を繰り返さないためにも俺は頑張るしかない。

 

「箒。俺、決めた。ISを戦いのためじゃなく、本来の宇宙に行くためにする。ブラスト・ランナーも平和利用できるようにする。そのためにも箒、付いて来てくれるか?」

「ふ、当然だ。夫のために支えるのは妻の役目。そんな当たり前の事を聞くな」

 

各国の軍事力になっているISを本来の宇宙に進出するのは途方もない。だけど俺は諦めない。それが俺の償いで戒めでもあるから。

 

「一夏さん!」

「一夏!」

「一夏!」

「一夏!」

 

玄関から声が聞こえる。彼女たちを元気に出向かう。

 

「セシリア、鈴、シャル、ラウラ。お帰り」

 

今日は豪華に作るか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ISが世に出て八十年以上が過ぎました。当初はスポーツでしたが"一年戦争"後は武器を捨て宇宙進出に各国は力を注ぎました。

今では宇宙でも生活できるコロニーが出来ています』

『いやーこれはとても素晴らしい。今の人はほとんどISは宇宙のためと思いますが私が学生の頃はスポーツと称した戦闘でした。あの"一年戦争"後は世界中の軍が武器を捨てたのを今でも鮮明に覚えていますよ』

『私が生まれた時にはすでに宇宙進出していましたので、想像もつきません。それに"男女平等"になっていたので』

『それは無理もありません。当時は"女尊男卑"のが当たり前。女性が誰しも偉いと思っていので今のように"男女平等"は当時から考えると信じられません』

『それほど信じられませんでしたか?』

『ええ。私が買い物をしていると見知らぬ女性がこれ片付けなさいと言われた事があります。他にもこれ買いなさいやらあれしないさいと言われたものです』

『今の私達には想像も出来ませんね。苦労したんですね』

『本当に苦労しました。ですが"一年戦争"後は世界中の軍がISを宇宙進出したのは皆さんも知っている"織斑一夏"さんが筆頭したからこそ出来ました』

 

茶の間でテレビを見ている。最近は体が思うように動けないので精々庭しか出れない。楽しみは週に一度の外に遊びに行くことだ。

 

「ISが出て八十年も過ぎれば体が自由に動かないのも納得。それにしても宇宙か。最初は大変だったな」

 

いざISを宇宙空間で動かそうとしても地上とは勝手が違うし、想定外の事が当たり前だった。上下左右前後が分からなくて行方不明になりかけた者もいる。あ、それ俺じゃん。

 

『彼は一年戦争の英雄ですが忘れてはいけない組織があります。

その組織の名は亡国機業またはファントムタスクと呼ばれた組織です。当初は一年戦争を引き起こしたと言われていました。

ですが、終戦後の真実は違った。亡国機業は世界の陰で我々を守っていた。人知れず、ひっそりと。

それからは世界中が亡国機業を称賛して墓石まで立つようになりました』

 

正確には白騎士事件から一年戦争までだ。あの後、どこからともなく世界中に情報が流れた。その時に子供達が箒達に身籠っていた。

千冬姉と束さんが白騎士事件を引き起こしたと知られ、世界中が驚いていた。その責任としてIS学園で定年になるまで教師をする事になり、全うした。

そうそう、その後に千冬姉に彼氏が出来た。その人は昔中学で同じだったクラスメイトだったと言っていた。

本当に良かった。四十過ぎても結婚できないと思っていたから。

 

『他にもたくさんありますがここで一旦CMに入ります』

 

 

ブツ

 

 

「それにしても今日はいい天気だな」

 

テレビをリモコンで電源をオフにする。外は快晴で洗濯を干すにはちょうどいい。

家には俺一人。箒、鈴、セシリア、シャル、ラウラはもう亡くなっている。

今は子供と孫で生活をしているので寂しくはない。

いや、心の中はぽっかり穴が開いているような感じだ。

 

そうそう。子供達が成人式を迎えて帰りに一人で公園に立ち寄った時なんだが驚いたことがあった。

男の声がして振り向くとそこに――――――弓塚士郎がいた。

 

あの時は盛大に驚いた。なにせ死んだはずなのに生きているんだから。

だけど、そいつは弓塚士郎じゃなかった。一度だけ会った妹のマドカの息子だと言った。

弓塚士郎は知らなかったようだがマドカは妊娠をしていた。子供が出来たのを知ったのは俺に会った後の事らしい。

年は子供達と同じで名前は父親と同じ士郎だとさ。名字は衛宮と名乗っていた。

そんなに長くは話さなかった。

最後にお前は幸せか?と聞かれて俺は幸せだと答えた。それを聞いた衛宮士郎はそうかと言ってどこかに行った。

それが最初で最後で、それ以後会うことはなかった。

 

『ただいまー!』

「おう。おかえり」

 

どうやら孫達が帰ってきたようだ。孫は一番上が大学生から小学生までいる。

今来たのは小学生の孫達。

 

「ねえおじいちゃん見て、上手に描けているでしょ!」

「ああ。上手だ。よしよし」

「へへ!」

「あー!ずるい!僕も頭撫でて!」

「私も!」

「俺も!」

「わ、私も……」

「はいはい」

 

全く、目に入れても痛くない孫達だな。あ、そうだ。

 

「手を洗ってきなさい。台所にドーナッツがあるからみんなで食べるんだぞ」

『はーい!』

 

元気がいいな。それにしても今日は本当にいい天気だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ここは?」

 

目を開けると霧に囲まれていた。どこにいるのかも見当がつかない。

 

「なんでここに。あ、俺は……死んだんだ」

 

死んだ日はどうも体の調子が優れず、家にずっといて孫達と話しをしていたらだんだん眠くなってきたんだ。

そこでああ俺死ぬんだ、てふとそう感じた。苦しむことなく眠るように俺は生涯を終えたんだ。

 

「ここにいずれ来ると分かっていたが随分長生きをしていたな織斑一夏」

「誰だ!てか霧が濃くて全く見えねえぞ!」

「まあ時期に晴れる。ほら、言ったそばに」

 

徐々に霧が晴れるととてもきれいな花々が咲いていた。ここどこだよ。

 

「よ。久しぶり」

「な!?弓塚士郎!?」

 

声をかけてくれたのはなんと弓塚士郎だった。当時のままと違い右目に眼帯がなく、右目があった。

 

「ここどこだよ!?てかなんで目があるんだよ!」

「ここは"座"。簡単に言えば英雄が死後、辿り着く場所だ。あと目があるのはそれは生前の事だから目がある」

「へー。じゃあお前も英雄になっているのか?」

「一応な。それにしてもお前は長生きし過ぎだぞ」

「それは俺自身も自覚している。まさか百歳越しても生きられるとは思いもしなかった」

 

ここまで長生きするとは驚いている。俺が死んだのは120歳。

一世紀を生きるのは不思議なもんだった。

 

「他にも誰かいるのか?」

「ああ。あまり会えないがいるぞ」

「どんな人がいるんだ?」

「そうだな。呂布を知っているか?」

「確か三国志に出て来る人だよな」

「そうだ。その人もここにいる。会えばすぐに戦うハメになるが」

「マジか!?」

「ああ。ちなみに呂布は好戦的だが人見知りだぞ。まあ外見があれだからただの怖い人にしか見えないが」

「ええー」

 

他にも聞いてみた。アーサー王とかヘラクレスとかジャンヌ・ダルクとかいると言っていた。

分かっていたけど千冬姉と束さんここにいるようだ。

 

「まあ一番驚いたのは俺とそっくりな者がいた事だ」

「へえ。どんな感じだ?」

「外見は俺と瓜二つ。性格もほぼ同じだが、あいつは皮肉屋。だが、根底の部分は俺と同じお人好しだ」

「そうなのか。不思議なもんだな」

「まったくだ。しかも少し前までは生前の自分を殺したいほど思っていたそうだが、つい最近そんな事がなくなった。そうあいつが言っていた」

「俺そっくりな人いるかな?」

「いないな。お前ほど鈍感な奴はない。俺も鈍感だがお前ほどではない」

「うっ……言い返せないのがなんとも」

「さて、ここ座の事を話しておこう」

「おう」

 

座の事が全く分からない。知っているのは様々な英雄がいるというくらい。

 

「基本はここにいるだけ。出れるのは世界に呼ばれるだけだ」

「世界?どういうことなんだ?」

「例えば、第三次世界大戦が発生しそうな時や生態系が大きく変わりそうな時だな。地球とも限らんぞ。他にも色々あるがそれは身を持って経験した方がいい」

「なんだか大変そうだな」

「とは言うもののそんなにないから暇が多い。英雄が多いからケンカなんかしたら周りがエライコトになるなんて当たり前。無難に構わない方がいいぞ」

「ここにいる方が大変だということが分かった。うん」

 

どんなことになる分からないけどその内分かるか。

 

「まあゆっくり……ん?」

「どうし……あれ?」

 

何かが聞こえる。よく分からないけど行かないと気がする。

 

「早速か。世界に呼ばれたようだ。お前もそのようだな」

「これが世界に呼ばれるか。なんとなくだけど分かる」

「それなら大丈夫だな。なら行くぞ。どこであろうとやるだけだ」

「そうだな!」

 

さて、どんな世界かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここどこだ?暗くてよく見えない。

場所が分からねえ。

ん?前が明るくなってくる。

人影が見える。

ん?あれって……!

 

「……れが…………君の……です!」

「……の……」

 

は、ははは。そういうことか。これは驚くぜ。

そうかここは昔の相棒の中か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

む?ここはISの倉庫か?

しかし古いISが多い。打鉄にラファール・リヴァイブか。

それにしても体がピクリとも動かん。

誰か来る。一体誰だ。

あ、あれは……!

 

「織斑先生の弟さんのようにはなりませんね」

「それもそうだろ。そう簡単には見つかりはしないだろう。あいつが特殊なだけだろ」

 

そうか。ここが分かったぞ。

 

「あれは打鉄?」

 

目の前に見覚えのある少年がいる。

 

「この打鉄は何ですか?」

「ああ、これか。これは無鉄、打鉄のプロトタイプだ」

「そうですか。でもなんでIS学園にあるんですか?」

「解体できないから置いてあるんだ」

 

なぜ体が動かないか分かった。

 

「解体できないのは不明だが、これにはコアがあるからな。ここにおいてあるほうが安全だろ」

「そうですね」

 

昔の相棒の中とはさすがに考えもつかない。

 

「触ってもいいですか?」

「いいぞ。そいつは誰が触っても動かなかったからな。ちなみに私も触れてみたが起動しなかったからな」

「そうなんですか」

 

さて、この世界がどうなっているか知らんがお前と共に行こうとしよう。

少年がそっと触れると同時にメッセージを頭に流した。

 

 

―――気に入った。私はお前のISになろう―――

 

 

ここはどんな世界だ――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――弓塚士郎。

 

 

 

 

 




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