IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男 作:運命の担い手
初夢見れましたか?自分は……ありませんでした。なんでさ。
それではどうぞ!
一日だけの入院をしてから一週間が経った。これといって問題はなかったが、俺の周りは騒がしかった。
まずはクラス全員に心配をかけた。腹は大丈夫とか体が真っ二つになったとか首と体が別れたのかなど色々言われた。
どうやらあの事故?が学園中に広まったようで知らない者はいないそうだ。
幸いと言ったらいいのか分からないが世間には漏れる事はなかったが、IS学園はIS委員会に報告義務があるそうなので事実知っているのはIS学園の者とIS委員会だけになっている。
で、事故?を起こしたのは二年生と三年生だった。
発端はただの接触しただけだったがそこで三年生が難癖付けて言い合いになった。後は俺が知っている通りにISによる戦闘が始まり、折れた近接ブレードが俺の腹を裂いたとなった。
「放課後、いつものように訓練するけど士郎もどうだ?」
「参加する。無鉄も返ってきてから一度も動かしていなかったからな。最初は慣らしから始める」
今は四時限目が終わり昼休みになっている。
一夏から訓練の誘いは一日一回聞かれる。部活をしているからいつも訓練に参加出来るとは限らないからだ。
「そうだ。あの二、三年生がどうなったか聞いているか?」
「それなんだけどな、なんでも最初は裁判ごとになりそうだって千冬姉が言っていたな」
「普通そうだよな。命にかかわったから」
「でも、最終的には一ヵ月の反省室に反省文になったみたいなんだ」
「そうなのか」
これには俺が関係している。一日入院して退院した翌日に織斑先生に呼ばれた。
内容は二、三年生の処遇について。強制退学させて裁判にかけると言われた。
だが、俺にはどうも納得がいかなかった。そこでなんとか学園に在学できないかと言った。当然織斑先生は呆れていた。被害者が加害者を庇うようなことを言ったのと同じだからな。
話し合った末に三ヵ月以内の反省室に反省文となった。織斑先生に無理なお願いをさせてしまったのが心苦しかったが二、三年生も悪気があって事故?を起こしたわけではないから退学にさせてほしくなかった。
「所で話しは変わるが勉強は大丈夫か?」
「ギリギリな。箒、セシリア、鈴に教えてもらっているから入学した時よりは大丈夫だ」
「それは良かった。だが注意しておけ。織斑先生だからいつ抜き打ちテストをするか分からないぞ」
「げ、そうだよな。ははは……」
時々我がクラス、一組では織斑先生による抜き打ちテストがある。いつ来るが分からないので他のクラスよりは平均点数は上と俺は思っている。
ちなみに最低点数を取った者はありがたい
「それはそうとして飯食いに行こうぜ」
「ああ。今日は弁当を作っていないからな」
今日は朝から織斑先生がいない。学園にはいるようだが山田先生に聞くと用事があるので今日は来れないと言っていた。
◇
同時刻。
「食事を持って来たわ。ちゃんと食べてね」
IS学園には地下が存在する。この間の無人機を解析した場所よりもずっと上である。地下一階のここでは全教師と一部生徒が入ることが出来る。
「……………………」
この地下一階には監禁室があり、ここはその一室。その中にはIS学園の服を着ていてリボンは赤色。つまり三年生である。
「返事をしてほしいんだけど。まあこんな所にいると気が滅入るけど一ヵ月経てばここから出れるんだから辛抱して」
「……………………」
この三年生こそ事故?を起こした張本人。あの後すぐに教師達に押さえられてここ、監禁室に入れられた。
「織斑先生の力で退学の取り消し及び裁判沙汰はなし。それに事故とはいえ、死にそうになった本人、弓塚士郎君からも在学させてほしいと言われたからね」
「……………………」
反省室に入れられて一週間。部屋の中はトイレがある。刑務所のように見えるようにはなってはいない。ここはあくまで反省するための部屋なので精神的苦痛をなるべく与えないようにしている。
食事は毎日三食出される。いくら反省室に入れられているとはいえ、食事は栄養のある献立にしている。
部屋には監視カメラが設置しているので異常が起きたら別室に待機している人がいるので即時対応が出来る。
「じゃあね。私もお昼食べるから戻るわ。夕食も楽しみにしてね」
そう言って去ろうとした時、反省室から何かが聞こえた。
「…………い」
「え?どうしたの?」
「お腹が……痛い」
見るとお腹を押さえてうずくまっている。よほど痛いのか額には汗が出ている。
「待てて。今人が来るから我慢して!」
そう言っている間に別室に待機していた人が来た。手には医療薬品を持って来ている。
「状況は!」
「この子が急にお腹が痛いと言ったの。食事は衛生に配慮されているから問題はないわ。多分ストレスによる腹痛ね」
「ここにいればそれが妥当だな」
手際よく部屋のロックを解除して中に入った。
すると――――――
「きゃ!」
「ぐっ!」
跳ね飛ばされた。さっきまでお腹が痛いと言っていた三年生に。
「こんな所にいられない。どこかに逃げなきゃ……」
三年生はとにかく必死で逃げ出した。だがここはIS学園。人工の島なので周りは海。唯一の交通手段のモノレールには遠い。
「こちら反省室!三年生が逃げ出した!すぐに対応に当たって欲しい!」
『了解。すぐに対応する。そちらは残っている二年生を見張るように。あとで二人ほど送る。それまで待機』
「了解!」
このあとこの三年生が思いもよらぬ行動をするとはこの時、誰も予想がつかなかった。
◇
「今日もおいしかったな」
「ああ。IS学園だから料理する者は一級品の腕前だろう。今度教えてもらおうと思うのだが一夏も来るか?」
「マジか!行く行く!でもなんで教えてもらえるんだ?」
「それなりに食堂の人と交流があるからな」
「へえ。すごいな」
食堂で食事を食べ終えた俺と一夏は適当にぶらついている。食堂で箒、セシリア、鈴がいた。俺は敢えて一人で別の場所で食べようとしたが鈍感な一夏は「一緒に食べようぜ」と言って一つのテーブルで食べた。
三人には謝った。恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死ねというからな。
「ん?」
「どうした?」
「いや、なんだか騒がしくないか?」
「昼なんだから騒がしいのは当たり前だ。とはいえ、生徒より教師の方が騒がしいのは事実だ」
普通は昼だから生徒達が騒がしいのは当然だが、教師の方が騒がしいのは何かおかしい。問題でも起きたのか?
「っと!」
ものすごい勢いで女子が来たので咄嗟に避けた。なんなんだ?
「なあ。今走って来た女子は三年生だったよな」
「ああ。一瞬だが胸のリボンが赤だったから間違いはない」
限定メニューを食べるために走っていたのか。限定メニューとは一日十食しかないはかなり値段が高いが非常においしいと評判のメニューだ。今度食べてみるか。
「織斑君に弓塚君、あ、あの今三年生を、見ませんでしたか……」
「見ました。というか何で走っているんですか?」
山田先生が走って来た。息がぜいぜいとなって顔が赤い。運動不足か。
あと関係ないと思うが走っている時に胸が揺れているのを見ていた一部の女子が舌打ちしたような気がする。
「それは、ちょっと言えないんです」
「え?」
それにしてもさっきの三年生どこかで見たような。あ。
「思い出した」
「なんだよ急に」
「さっきの三年生だ。この前、俺が死にかけたきっかけを作った人だ」
「はあ?その人なら二年生と一緒に反省室に入っているだろ」
「そんなの知らん。待てよ、山田先生もしかしてあの三年生は―――」
「織斑、弓塚。今三年生が通らなかったか?」
いつの間にか織斑先生がいた。山田先生ほどではないが息が少し荒れている。
「ついさっき通りました。その三年生は俺が死にかけたきっかけを作った人で間違いありませんね」
「………ああ。そうだ。その三年生なんだが―――」
『発見しました!至急、校舎屋上まで来てください!』
「分かった。すぐに行く。山田先生行くぞ」
「は、はい!」
すぐに走って屋上に向かったようだ。
「なんで屋上に行ったんだ?」
「俺に聞くな。そんな分かるわけ―――」
もしかして、自殺するつもりじゃないだろうな。
だとしたら!
「お、おい!どこに行くんだよ!」
「屋上だ!もしかするとやばいかもしれん!」
後を追うように俺と一夏も屋上に向かった。
屋上に着くとすでに事態は深刻になっていた。
「危ないから戻りなさい!」
「まだやり直せるから諦めないで!」
「そこにいないでこっちに!」
数名の教師が叫んでいる。叫んでいる先を見るとあの三年生が転落防止ネットの外にいる。つまり、今にでも自殺するつもりだ。
「なんであの三年生は自殺しようとしているんだよ!」
「お前は馬鹿か。俺達は男なのにISを動かした。今現在、世界で二人しかいないんだ。その片方を事故とはいえ死にかけたんだ。今あの三年生はどうしようもないくらい不安や恐怖で
いっぱいいっぱいのはずだ」
もし、俺が織斑先生に何も言わず、あの三年生と反省室にいる二年生は退学になり、裁判にかけられていた。憶測だが死刑判決として本人を死んだ事にしてどこかで実験体として過ごす事になっていたかもしれない。有り得なくはない。生き地獄はこの世で最も経験したくないモノの一つだ。
「私はもう……生きてられない。ISの成績がますます下がって、大好きだった弓道もどんどん嫌いになっていく」
弓道?確か二週間前辺りに美射先輩から今度会ってほしい人がいると言っていた。もしかすると、この人のことだったのか。
「それに、弓塚君を死なせるようなことをしてしまった。そのうち私は、死刑か実験体にされる……そんなのいやっ!」
今は大丈夫だがIS学園から出ればそこは日本。中立であるIS学園から出れば外で起きた事とされてどこかに連れ去られる可能性がある。それどころかあの三年生の家族も何かしろのことが起きる可能性だってある。
「死んではいけない!」
「私達が守るから!」
「まだ望みはある!」
先生達が叫んでやめさせようとしているが三年生は聞く耳を持っていない。
「それじゃ先生達ありがとう。さよなら」
すっと落ちて行く。
―――士郎。短い時間だったけどありがとう。さよなら
「!」
頭に幼い声が聞こえた。気付くと駆け出して両手に干将・莫邪を握っていた。
「はっ!」
転落防止柵を干将・莫邪で切り裂いて、落ちていく三年生に向かって無鉄を緊急展開して落下する。
そして三年生が地面に着く前に抱きしめて俺が下になる。
ドッ!
「ぐっ?!」
背中に激痛が走る。肺が圧迫されて息が止まるかと思った。絶対防御があるので死にはしなかったが死ぬほど痛い。
「う……うう……」
三年生も大丈夫。これといったケガは見えない。代わりに俺の背中を強打したが。
「大丈夫ですか?」
「え?弓塚君?」
「はい。えっと、先輩はどこにもケガはありませんか?」
とりあえず先輩と言った。名前も名字も知らなかったので。
「うん大丈夫。でもなんで私、屋上から飛び降りたのにどうして……」
「それは俺が助けたからですよ」
「なんで……」
「ん?」
「なんで助けたの。私は弓塚君を事故で死にかけさせたのよ!なのにどうして!」
「なんでって。それは目の前で死のうとしていたから助けたいと思ったからです」
考えるより先に身体が動かく。目の前で誰かが死にそうになったら誰でもそうなると思うのだが?
「先輩。IS学園は確かにISを学ぶための学校です。だけどあくまで学校なんですからあまり気にしていたら勉強が疎かになってしまいますよ」
「そうだけど。でも、大好きだった弓道が最近嫌いになって……」
「多分ですけど美射先輩からつい先日会わせたい人がいると言われました。恐らく先輩の事だと思います」
「美射が?でもなんで」
「これはただの想像なんですが先輩と美射先輩は弓道で知り合ったんじゃないですか」
「ええ」
「先輩が思いつめていたので美射先輩がどうにかしようとした。それで俺に会わせてなんとかしようと思った。だけど、中々タイミングが合わなかった」
そして限界を超えてあんな事が起きた。そこに俺が巻き込まれて余計に追い込んでしまった。運がないな俺は。
「気にするなとは言いません。むしろ、二度としないように憶えていたほうがいいです」
「でも、私このままじゃ……」
うーむ。これではまずい。どこかの後ろ盾がなければ身の保証がない。
……………………………一つだけある。
「ところで先輩。聞きたい事があります」
「え、なに?」
「近接武器と言ったら?」
「ドリル」
「…………………………」
もしかするとこの人。アレか。
「射撃武器と言ったら?」
「ガトリング」
「爆弾と言ったら?」
「C4」
「倒れている敵に向ける武器は?」
「ショットガン。ゼロ距離で撃つ」
「ISに乗ってやりたい事は?」
「全身にミサイルを装備して放つ」
「………………ちょっと失礼」
携帯電話を出して美沙夜にかける。
『珍しいわね、あなたが私に電話をかけるなんて』
「用事があって電話をしたんだ。今大丈夫か?」
『ええ。それで何?』
「この間、無鉄を取りに行った時なんだがテストパイロットを探していたようだがどうなんだ?」
『ああ、もう耳に入っているのね。実の所、募集は問題ないんだけど誰も採用されていないのよね』
「ドンマイ。それは久宇企業独自の問題だろう」
『ちゃんと変態企業としてこっちも受ける側も自覚はしているわ。でも、合格通知を出しても断るのが多くて』
久宇企業は打鉄を量産採用されたとして多く知られている。武器・武装はマイナーな物からピーキー、マイナーの物まで作られて、多くの国や企業に使われているのでIS業界で知らない者はいない。
だが、変態企業である。自他共に認める変態企業である。大事な事なので二回言ったぞ。
就職しても研究者達の趣味、趣向、浪漫などが詰まった武器・武装の試験、実験のせいでテストパイロットがやめていく人が後を絶たない。一見人数が大丈夫だと思うがそうではない。
試験、実験でのテストパイロット。警備のためのパイロット。非常時用のパイロット。これらの予備のパイロット。この四つが循環しないとバランスが崩れる。
なので現在はギリギリなのでパイロット達もストレスが徐々に溜まっている。
今一番悩みの種という事だ。
「そのテストパイロットに目星がついた。聞くか?」
『もちろんよ。それで誰?』
「俺達と同じIS学園の生徒だ。学年は三年。今しがたちょっと質問したら研究者達と上手くやっていけそうな答えが出てきた。すまないが詳しい事はこっちに来てくれないか?」
『いいわ。信号の発信地点が分かるから今行くから動かないでよ』
「分かっている」
さて、これで大丈夫。後ろ盾を確保した。問題なし。
「えっと、何の話をしていたの?」
「それは後で。今はあの人達をどうにかしますか」
「え?」
教師数名がやって来た。まったく、こうも厄介事が多いと呪われていると思ってしまう。
「大丈夫だったか、弓塚!?」
「大丈夫ですよ。今回は無鉄がありましたので。前よりは比較的いいですよ」
「まったく、お前というやつは。こっちの身にもなれ」
「状況が状況なだけにそういうわけにもいかないですよ」
「まあいい。そこの三年生をこっちに寄越すんだ」
「……その後はどうするつもりで?」
「反省室に戻すだけだ。それだけだ」
「この先輩はなんの後ろ盾がありません。この学園から一歩出れば織斑先生なら容易に考えがつく筈です」
「それはこっちで考える。早くこっちに寄越すんだ」
「いいですよ。美沙夜が来てから」
「何?どういうことだ?」
「はいはいちょっとどいて」
「こら!ちょっと君!」
すぐ来ると思ったら時間掛かり過ぎだ。にしても強引だな。
「この人がそうなの?」
「ああ。お前から説明した方がいいだろう」
「それもそうね。どうも先輩。私は久宇美沙夜です。士郎からテストパイロットに良いと聞いています」
「へ?え?」
「試験はいつにしますか?別に今すぐとは言いませんので決まりましたら私に連絡をください。この紙に連絡先を書いているのでどうぞ」
「ど、どうも」
営業トークと営業スマイル。実に完璧だ。先輩はおどおどしている。なんとなくだがかわいい。
「おい久宇。どういう事だ」
「あら織斑先生。どうもこうも我が久宇企業のテストパイロットを希望する先輩に紹介していただけですよ。何か問題でも?」
「そういうのは学園を通してからやれ。直接の勧誘は禁止されているのはお前も知っているだろ」
「ええ。ですが聞くところによるとこちらの先輩は反省室に一ヵ月だけになっていますが、その後はどうなるか決めていますか?」
「さっきも弓塚に言ったがこちらで考える」
「でしたら久宇企業にお任せください。
「……はあ。なら頼むぞ」
「はい」
普段ならこうも簡単には織斑先生が納得するわけがない。それには理由がある。
久宇企業、久宇家は旧家。正確ではないが明治より前から続く任侠一家……簡単に言えばヤクザである。
家の事情までは知らないが世間で知られているヤクザではない。普通ヤクザと言えば怖い印象を持つが久宇家ではそれがない。それに街の悩みを解決したり、事件があれば警察に情報を提供している。他にも色々あるが、良い人達と認識されているのは確かだ。
「では先輩、テストパイロットの事を詳しく話しますので私の部屋に行きましょ」
「いいけど大丈夫なの、時間?」
「そこは織斑先生がなんとかしてくれますよ」
いやいや。向こうで頭抱えているぞおい。
「あ、先輩」
「どうしたの弓塚君?」
「すいませんが俺、先輩の名字も名前も知らないので良ければ教えてくれませんか?」
「私も知らないわね」
「あ、言っていなかったね。私は古式みゆき。もう知っているけど三年生だからね」
その後は美沙夜と共に美沙夜の部屋に行った。
数日後、見事に合格して久宇企業のテストパイロットになった。三年生で最初に就職先が決まったと噂にもなった。
だが、後日。この事が無鉄にあんなモノが追加されるとは思いもしなかった。
感想、誤字脱字がありましたらお願いします。
初売りの人混みはシャレにならないな。身動きが取れにくい。
次回もお楽しみください!