IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男 作:運命の担い手
週に一回更新できればいいと思います。
なにわともあれ、どうぞ!
六月頭、日曜日。
久宇企業や研究場からの呼び出しもないので墓掃除に行った。大体は手入れされていたので簡単に終わった。やったのは精々花の水替えと墓石を拭くだけ。
後はIS学園に戻って訓練でもしようと思ったら一夏に会った。どうやら友達の家に行くというので俺も行くことになった。
「それにしても意外だな」
「何がだよ?」
「士郎と弾が友達になっている事にさ」
「蘭も入っているぞ」
「そうだった。て、いきなり奥義使うなよ!」
五反田食堂。つまり、弾と蘭の家に来ている。
一夏と弾はゲームをしていて、俺は護身用の銃を磨いている。
「で、どうなんだお前ら?」
「は?」
「何がだ?」
「女の園の話だよ。いい思いしてんだろ?」
何回目だろうかこの話は。IS学園でいい思いをするのはごく僅か。残りは精神を削られることが大半。
「まあそれはいいとして。士郎それはマジもんか?」
「そうだ。正真正銘の銃だ。外に出る時は必ず護身用として所持している。弾はゴム弾だが、当たると結構痛いぞ」
「当てんなよ。てかいいのかそんなもん持って?」
「ふ、大丈夫だ。バレなければ問題にはならん」
「えー……」
気にしたら負けだ。仮にバレても許されるだろう。なにせ、世界で二人しか男でISを動かす事が出来るからな。稀少価値というヤツさ。
「で、話しは戻るが、鈴の事は―――」
ドカン!
「お兄!さっきからお昼出来たって言ってんじゃん!さっさと食べに―――」
ドアを蹴り破って入ってきたのは蘭だった。それにしても、ずいぶんとラフな格好。IS学園ですでに見慣れた。寮の中だと女子は薄着とかになっているからさ。
「あ、久しぶり。邪魔している」
「元気で何よりのようだな」
「い、一夏さん!?士郎さんも!?」
さらに夏が近いのか暑くなってきたので胸元が開いた服を着ている女子が大半となっている。
服装に文句とは言わないが男子がいることを忘れては困る。特にノーブラの時が一番こちらが困る。
簪も周りの女子と同じく薄着になっていて部屋を訪ねた時に恥ずかしかったようだ。
しかし本音は相変わらずあのキツネのような服を着ている。他にもあるそうだが熱くないのだろうか。何か特殊な作りになっているのか。疑問だけが残る。
「お、お二人とも来てたんですか?全寮制と聞いていましたけど……」
「今日はちょっと外出。家の様子を見に来たついでに寄ってみた」
「俺は両親の墓掃除に。帰り道に一夏に会って成り行きで来た」
「そ、そうですか」
話には聞いていたが蘭も一夏が好きなんだな。それに気付かないのはなんとも。
「蘭、お前なあ、ノックくらいしろよ。恥知らずな女だと思われ―――」
ギンッ!!
鋭い眼光を放った蘭は弾を委縮させた。恋する乙女は怖い怖い。
「……なんで、言わなかったのよ……」
「い、言っていなかったか?それは悪かった。ハハハ……」
せめて一言言えば良かったかもしれん。と言っても今気が付いた。
「あ、良かったら一夏さんと士郎さんもお昼どうぞ。まだですよね?」
「そうしよう。久しぶりに食べる事にするか」
「ああ、そうだな。いただくよ。ありがとな」
「い、いえ……」
嵐が過ぎ去ったかのように静寂が訪れる。
「しかし、アレだな。蘭ともかれこれ三年の付き合いになるけど、まだ俺に心を開いてくれてないのかねぇ」
「「は?」」
なんてこった。ここまで気付かないとは筋金入りの朴念仁だろう。
「いや、ほら、だってよそよそしいだろ。今もさっさと部屋から出て行ったし。士郎には心開いているけど、なんで俺には心開いてくれないのかなーって」
「「…………はあ」」
弾と一緒に溜息がこぼれ出る。弾は三年も苦労しているんだろう。一夏のせいで。
「なんだよ、二人揃って?」
「わざとじゃないのが凄いなって事だ」
「そうそう。天然というか鈍感というか、素なのが信じられねぇけど、本当なんだろうとよ」
「どういうことだよ?」
「「自分で気付けバカ」」
「なんでだよ!?」
昼食を食べるために食堂に入る。中には少数のお客さんがいる。
余談だが蘭にはここ五反田食堂のアイドルのような感じだと弾が言っていた。いつだったか、蘭に文句をつけたお客がいたそうだ。一方的に言われて当然蘭は涙目になってたまたま?常連のお客達+厳さんによって物理的交渉術、いわゆる粛清を受けて蘭に土下座をした。
その後、その客はどうなったかというと蘭のファンになったそうだ。
俺達が座る所に蘭がいてテーブルの上にはすでに料理があった。蘭の格好は白いワンピースになっていて髪もおろしている。一夏のためにわざわざ着替えたのだろう。
「あれ、蘭」
「は、はい?」
「着替えたのか?どっかに出かける予定?」
「い、いえ。これは、えっと、ですねっ」
こいつはなんで分かろうとしないのかな。敢えて聞くなよ。
「なあ、弾。蘭は何度も今のようにした事はあるのか?」
「ああ。それでもあのバカは気付きもしないんだ。わざとじゃないんだよな、これが」
このままだと一生独身で終わりそうだ。学園にいる間の内に俺も何かしてみるか。
「分かった!デートだ!」
「違いますっ!」
ダンッ!とテーブルを叩いて全力で否定した。周りの客も驚いているぞ。
「ご、ごめん」
「い、いえ……とにかく、違います」
「兄としては違って欲しいもんだ。にしても気合入った服装だな。精々するのは数ヵ月にいっか――――――」
ガッ!
速い。瞬時に弾の口と鼻を同時に片手で塞いだ。つまり、弾は今呼吸が出来ない状態。
ちなみに織斑先生の出席簿を振り落す速度に近い。
「……!…………!」
「(コクコクコク!)」
アイコンタクトで何やら言っている。俺には分からないが弾は分かるのか、ただひたすら頭を縦に動かした。
その後、厳さんに注意された。で、弾がいらない
「あ?そうだ。一夏さん」
「なんだ?」
「私、来年IS学園に受験します」
「お、お前、何言って―――」
ヒュ―――ガン!
おたまが弾の顔面に当たった。出て来たのは厨房から。料理しながらとは器用だな厳さん。ちなみにおたまはブーメランのように厨房に戻っていった。
「なんで受験するんだ?確か、蘭の学校はエスカレーター式で大学まで出れるし、ネームバリューは超が付くくらいのあるところだろ?」
名前は確か聖マリアンヌ女学院だったか。有名私立女子校でその学院から卒業した生徒達は大手企業に就職する者はもちろん多いが、国会議員や海外で活躍する者達が数多くの優秀な人材だと言われている。
「心配はいりません。私の成績なら余裕のよっちゃんです」
「IS学園には推薦ないぞ……」
よろよろと弾は立ち上がった。それより蘭。それはどこで知った。あ、厳さんか。
「お兄と違って、私は筆記で余裕です」
「いや、だけど……実技があるんだぞ!」
「あったな。IS起動試験っていうのがあって、適性がない人はそれで落とされるらしいぜ」
「女性全てがISに乗れることには乗れるらしいが、適性つまり相性がいい方だけを取った方が後にも先にもいいからな」
この世界全ての女性はISに乗れることには乗れるらしいがそれでもISとの適性が合わなければ満足に動かす事も出来ない。無駄に時間と金を消費しないためにIS委員会が設けたそうだ。
「これ見れば文句ないでしょ」
「なんだよ………………げぇっ!?」
蘭が弾に紙を渡す。それを見た弾はなぜか驚いている。
「IS簡易適性試験……適正A……」
「問題は解決済みです」
なんとなく決め台詞に聞こえる。しかし、簡易とはいえAとは凄い。
IS簡易適性試験は各国の政府がIS操縦者を募集する一環として希望者が受けられる。値段はタダである。
「で、ですので」
こほんと咳払いをして姿勢を正す。
「い、一夏さんにぜひ先輩としてご指導を……」
「ああ、いい―――」
「ダメだ」
「―――ぜ、て、え?」
このバカが。考えもなしで返事するな。
「なんでダメなんだよ?」
「お前が指導できるわけがないだろ。知識もそうだが、一度でも勝ったことがあるのか?」
「…………ないです、はい」
ようやく理解できたか。理解できなかったら、千冬さんに言うつもりだった。
「えっと、どういうことなんですか?」
蘭がどういうことかが分からないようだ。まあこれは知らなくて当然か。
「知っての通り、俺と一夏は男でありながらISを動かせる。それまでISの知識なんてなかったから周りと比べると付け刃みたいなもんだ。知識はそれはしょうがないとして問題は訓練についてだ」
「訓練ですか?」
「ああ。知識は何とかなる。一夏は頑張っているのは誰しも知っているが、一度も勝っていないんだ」
「一度も?」
「ああ。一度もな」
蘭が信じられないといわんばかりな表情になっている。すまないがこれは事実だ。
「一夏のISは近接戦闘のみの機体だからもあるが、戦い方が猪なんだ」
「そうか?」
「もう少し頭を使え。今まで剣道をしなかったツケが廻ってきたんだ」
昨日なんか模擬戦として戦ったんだが、覚えたばかりの
地面に落ちた一夏を上に上がらないように38式狙撃銃、改、新式、遠雷の順でシールドエネルギーをゼロにした。
「それに納得していないのは弾だけではない。でしょ、厳さん」
「ああ」
「お、おじいちゃん!?」
いつもなら蘭に対して甘い厳さんだが、こればかりは厳しいだろうな。
「あら、すぐにいいと言うと思ったのだけどダメなのね」
「あ、どうも蓮さん」
五反田 蓮さん。弾と蘭の母親。五反田食堂の自称看板娘。実年齢は秘密であり、本人曰く、「28から歳をとっていない」だそうだ。つまり、28+何か月ということ。
「なんでダメなのおじいちゃん」
「お前の為だ。可愛い孫娘を危険な目にあわせるわけにはいかねぇ」
「危険って。ISはスポーツなんだよ!それのどこが危険なの!」
このままだと平行線になる。助け舟でも出すか。
「蘭。ISはどういうのか分かっているのか」
「それは……」
「ISは兵器だ。ISが出て来る前の既存の兵器を遥かに凌駕する兵器。それにスポーツと言われているが、有事の際は人を殺す事になる。そうなると当然蘭自身も危険にあう。だから厳さんはいいとはすぐには言えないんだ。それに俺達は戦争を知らないからさ」
「え?」
「厳さんが子供の頃は第二次世界大戦が起きた。戦争がどれだけ悲惨のモノか目の当たりしたから余計に行かせたくないんだよ」
そう。俺達子どもだけじゃない。今の大人も知らない。知っているのは厳さんのような老人ぐらいだ。
「ま、そうならないように俺や一夏も頑張りますよ。身近にいる人位は守れるように強くなります。それにIS学園に入ったとしてもパイロットになるか技術者になるか分からないですし、卒業しても普通の大学や専門学校に行く人もいます。入った後でも考える余裕はありますよ」
「それでもダメ?」
「んー…………………」
約一分ほど経ち、ようやく厳さんが口を開けた。
「分かった。いいだろう」
「やった!」
「ただし、困った事や相談してほしい事あったら遠慮なく言うんだ。弾と坊主二人も頼れ。いいな」
「うん!」
いつの間にか巻き込まれたが、可能であれば引き受けよう。一夏は頼りないからな。知識も実績も。
「ん?」
厳さんの近くに写真立てがある。家族の写真に少し若い頃の写真がある。それと奥には…………!!
「ごほ、ごほっ!?」
「うお!?どうした?」
な、なんで写っているんだよ!
「げ、厳さん。その写真に写っているのは?」
「ああこれか?これは俺が若い頃の写真だ」
「じゃなくてその隣に映っているのは俺の爺さんなんですよ。なんで一緒に映っているんですか?」
「そういや言っていなかったな。俺とおめぇの爺さんは親友だったんだぞ」
「はあ!?」
寝耳に水とはまさにこのこと。爺さんと親友とは驚き。
「他にもあるから今度来る時にでも用意してやるよ」
「ありがとうございます」
次来る時が楽しみだな。
夕暮れになるまで弾と一夏で色々と遊んだ。とても有意義だった。
「はぁ。お前が死んでもう四年になるのか。月日は早いもんだ」
自室で五反田食堂の店主、五反田 厳は亡き親友、弓塚 治郎が映っている写真を肴に日本酒を飲んでいる。
「それにしても
近くにあった写真立ては三人写っている。まだ若かった五反田 厳、弓塚 治郎。それに東洋人が一人。
「軍やめて、傭兵になったしか分からねぇがどこかで生きているんだろう」
写真の裏にはそれぞれの名前が書かれており、その東洋人の名字は
ジョン。愛称はジャック。
感想、誤字脱字がありましたらお願いします。
やっとIS9巻の発売日が決まりましたね。待ったかいがあった!
楽しみだな!
それでは次回もお楽しみに!