IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男 作:運命の担い手
「では私は終業式に行くから部屋から出るなよ」
「分かってます」
今日はどうやら終業式のようだ。千冬さんはスーツに着替えて部屋から出て行った。ちなみに朝ご飯は部屋で食べました。食堂で食べたかったけど女子がいるのは明白なので部屋で食べることになった。朝ご飯は俺が作りました。冷蔵庫に色々入っていたのでおかずには困りませんでした。
しかし、俺料理が出来たんだな。体が覚えているのか調理方法が分かっていたな。まあ千冬さんがおいしく食べてくれたからいいか。部屋は鍵で閉められたので出れないので(外部から人が入るのを防ぐため)やることは限られている。
よく考えてみればこれは軽い軟禁だな。
「さて、戻ってくるのは昼前だから昨日出来なかった掃除の続きをするか」
食器を洗って部屋の掃除を始めた。
「はあー……」
「どうしました織斑先生?」
「あー山田先生か。いや、士郎をどこに泊める所を探しているのだがどこもいまいちなのでな、困っているのだよ」
「大変ですね」
終業式は先程終わり、早速士郎を泊めるための場所を保護プログラムの資料と要人警護の資料を見て探しているのだがどこも穴だらけだ。士郎はISを動かした二人目の男だ。
それ相応の警備が必要だから他の資料と見ても決定打がない。どうしたらいいか……。
「……そうだ。更識に預けるのがいいな」
「更識?ああ、織斑先生が担任をしていた生徒の一人で、生徒会長ですよね」
「そうだ。あいつの家はそれなりに有名だからな。適材だろ」
よし、そうと決まれば放送を流して呼ぼう。
「失礼します。織斑先生に呼ばれてきました」
「来たか。お前に用がある。ここではあれだからついて来い」
「はい」
更識が来て、場所を変えて話しをする。
「いいか今から話すのはお前が信用しているからだ。いいな?」
「はい」
こいつは生徒会長をやっているから何度も狙われているし更識の当主だから状況の呑み込みが早いな。
「私の弟、織斑 一夏が男でありながらISを動かしたのは知っているな?」
「はいそれはもう。今でも話題になっていますし、今年の新入生ですから」
情報はまだ更識には届いていないな。
「実はつい先日、ISを別の男が動かしたのが判明した」
「え、それは本当ですか?」
「本当だ。だがそいつは少々厄介な問題を抱えているのでな」
「問題?」
「記憶喪失だ。名前は覚えているがそれ以外はさっぱりだ」
「ふむ……」
「泊める場所はこちらが探しているがどこも決め手が欠けているのでな、そこでお前に相談がある」
「まさか、その男を私の家に預かれと?」
「話しが早くて助かる。つまりそう言うことだ。それにお前は専用ISを持ち、ロシア代表だ。お前がまず負けることはないだろ。もしもの時はISの使用を許可する。無理なら他にあたるぞ」
更識は少し考えて答えた。
「分かりました。その男を入学式まで私の家で預かりましょう」
「すまないな。本来、生徒に頼むべきことではないのにな」
「いえいえ、狙われるよりよっぽどいいですから」
更識に士郎に関する資料を渡して部屋に案内した。
「これでよし。あとは千冬さんが来るのを待つだけだ」
掃除は終わって、その後は部屋にあったIS関連の本を読んでいた。昼が近くなったので昼ご飯を作って、待っている。
「ここが私の部屋だ。入れ」
「失礼します」
どうやら戻ってきたようだ。千冬さんの後ろにはIS学園を着た女子がいた。髪は水色で目は赤い。
「千冬さん後ろにいる人は?」
「こいつは更識 楯無。今日からお前が泊めてもらう人だ」
「はい?」
ホテルとかで泊まるのじゃないのかよ。千冬さんが信用しているから大丈夫なのか。
「更識 楯無よ。よろしくね、世界で2人目の男のIS操縦者さん」
「喋っていいんですか千冬さん」
「こいつはこう見えても生徒会長をやっているから大丈夫だ。それに私はこいつの元担任だからな」
おそらく言っているのは嘘じゃないな。まあ千冬さんがこう言っているからいいか。
「昼食は食べました?」
「いやまだだ。作ったのか?」
「はい。良ければ更識さんもどうですか?」
「それじゃ頂こうかしら。それと更識じゃなくて楯無でいいわ。お姉さんと呼んでいいわよ」
「いえ、楯無さんと言わせていただきます」
三人分の皿を用意して分けた。作ったのはご飯、だし巻き卵、ほうれん草の和風サラダ、人参とじゃがいもと玉ねぎの味噌汁だ。てか冷蔵庫の中、結構あったな。作るのに困らなかったが整理ぐらいはしてほしい。
「あら?おいしいわね。特にこのだし巻き卵が私はいいわね」
「味噌汁もちょうどいいくらいだな。材料は困らなかっただろ?」
「はい。味噌汁は多めに作ったのでおかわりはできますよ」
しかし、俺はいったい何者なんだろうな。もしかして料理人だったか?いやいやそれはないだろ。俺より料理がうまいやつなんているだろうな。
「昼食を食べ終えたら更識と一緒に更識の家に行くのだぞ。私はまだ仕事が残っているのでな。それと士郎」
「なんです?」
「お前の事を夕方には全国放送で流すからな。当然ISを動かしたこともだが、何よりお前の事を知っている者がいるかもしれん。手っ取り早いだろ」
「そうですね。俺に関する情報が入って来るのと同時に世界から注目されますけど」
これしか方法がないと言えばないな。これで少しでも記憶が戻るきっかけが増えることは確かだ。
「ここが私の家よ」
「屋敷じゃないですか」
昼食を食べ終えて楯無さんが呼んだ車で楯無さんの家に来た。それなりに家が有名と聞いていたが家が屋敷とは驚きだ。
「荷物は少ないですね」
「元々何もありませんし。あるのは俺を診てくれた医者の古着を貰ったくらいですから」
虚さんが聞いてきた。この人は布仏 虚さん。二年生、いや四月からは三年生か。布仏家は代々更識家に仕えてきた家系で楯無さんとは幼なじみだそうだ。俺がISを動かしたことを知っている。
「それじゃ付いて来てね士郎君」
「はい」
玄関まで来たのだがなぜか嫌な予感がした。
「ただいま。今帰ってきたよ」
「おかえり、楯無」
「お父さんただいま。紹介人がいるんだ。出てきていいわよ」
楯無さんのお父さんか。なんか普通のサラリーマンのような感じだな。
「えっと、俺は…」
「……たせん」
「はい?」
「娘は渡せんぞ!!」
何を言っているんだ?それに怒っているような、いや怒っているな。しかしなぜ怒っているんだ?うお!?冷静に分析してる場合じゃなかった!この人いつの間にか木刀持っているし!
「この―――ぶほぅ!?」
なんか横から蹴りをかまされたぞこの人。蹴った人は着物を着た女性で気品があるな。
「何をやっているのあなた?」
「楯無が男を連れてきたのだぞ!俺は認めんぞ!」
「あのね。楯無が連れてきたのはお客様。それをいきなり木刀で襲ってくるバカがどこにいますか」
「な、なんだ。そうだったのか。俺の早とちりか。あはははは!」
勘違いで襲い掛かってこないでくれよ。心臓に悪いわ。
「楯無も変なこと言わないの。分かって言ったでしょう?」
「まあね。それより紹介しないとね。士郎君」
「はい」
今度こそ自己紹介を。
「……っ!!ご、悟郎君!?」
「え?」
なぜ父さんの名前が?俺が父さんに似ているのか。記憶がないけど。
「俺は悟郎ではありません。弓塚 士郎です。悟郎は父さんですね」
「そ、そうなの。ごめんなさい。私は更識
「俺は更識
「いえ、大丈夫です」
「さて、玄関で立ち話もなんだし、さあ入った入った」
「そうですね。お邪魔します」
「さて、全員集まったわね。今日から入学式まで我が家に泊まる士郎君よ」
なぜか進行役が楯無さんなのかはあえて聞かないでおこう。
「弓塚 士郎です。入学式までお世話になります」
「それじゃ簪ちゃんに本音ちゃん自己紹介してね」
「……うん…」
「は~い」
楯無さんと容姿が似ている女子とのんびりしている女子がいた。
「…更識 簪。……よろしく…」
「布仏 本音だよー。よろしくねー」
「もしかして楯無さんと虚さんの妹なのか?」
「そうだよー。あと名前で呼んでね。かんちゃんもいい?」
「…かまわない……」
「次に和也さん、彩乃さんお願いします」
無口そうな男性とほんわかしてそうな女性が自己紹介をしてくれた。
「布仏
「布仏
「かまわん」
「そうですか。では和也さん、彩乃さん、簪、本音これからお世話になります」
さて、まず最初に聞かないといけないを聞くか。
「沙織さん」
「何かしら?」
「俺を見てなぜ父さんと見間違えたんですか?」
「実はね。弓塚家と更識家は昔から古い付き合いなのよ」
「そうだったんですか……」
まだ俺に関する情報は十年前に警察が調べたことしかないからな、知らないことがあっても不思議じゃないな。
「悟郎君とは幼なじみだったのよ。学生時代の悟郎の姿が士郎君と勘違いしてしまったの」
「そうでしたか」
やっぱり弓塚は有名だったのか。どこかに縁があると思ったら案外見つかったな。
「それより悟郎君はどうしたの?それと美樹さんは今何をしているのかしら?」
「えっと、それは……」
「お母さん。士郎君は記憶がないのよ」
「え?」
楯無さん助かった。どう説明すればいいか分からないから楯無さんに任せるか。
「士郎君は先週IS学園の浜辺で見つかったの。一時は危なかったけどね。起きたら記憶がないことがわかったの。だから今、士郎君は家族の事も今までどこにいたかも分からないの。
それと士郎君の両親、悟郎さんと美樹さんは十年前の事故でなくなっているそうよ」
「そうだったの…」
悲しい表情になっていく沙織さん。だけどすぐに元に戻った。
「ねー、一つ質問していい?」
「なんだ本音」
「入学って言っていたけど、どこなのー?」
「あーそれは……」
答えようとした時いつの間にかついていたテレビから緊急ニュースが流れた。
『たった今、話題の織斑 一夏君以外にもISを動かしたという情報がIS委員会から情報が届きました』
男性キャスターの声が聞こえて全員(楯無さん、虚さん以外)テレビのほうを向いた。
『名前は弓塚 士郎。年齢は15。日本人です。先週、IS学園の浜辺で倒れているところを発見されました。彼は十年前に行方不明になっていたそうですが、行方不明になってからの十年間の記憶がないそうなので記憶喪失になっているそうです』
テレビから俺の方に向いて凝視する。
『今後彼はIS学園に入学することが決まり、織斑 一夏君と共に話題が一層大きくなると思われます。他についてはまだ……』
楯無さんがテレビを消して今後のことを話した。
「テレビで言っていたことはほんとよ。彼は世界で二番目に動かした男。ちなみに動かしたのは打鉄のプロトタイプ、無鉄よ。まあ、それしか起動できないわよ。他のISには反応しないし」
言っていることは本当だ。あのあと、他のISを触ったけど反応しなかった。無鉄だけが起動するので無鉄は俺専用機になった。
「知っているのは織斑先生、山田先生、IS委員会、私たちだけ。このことは他言無用ね」
みんなが納得したかのように返事をしてくれた。
「それじゃ、今日は士郎君歓迎会を始めるわよ!」
歓迎会は日付が変わるまで大いに盛り上がった。
余談だが楯無さんと虚さんがいつの間にか酒を飲んだらしく、酔った勢いでストリップショーになりかけたので全力で止めた。