IS〈インフィニット・ストラトス〉 射手の男 作:運命の担い手
「……各駆動部の反応が悪い。どうして……」
春休みに入ってから実家の倉庫でメカニカル・キーボードをひたすら打ちながら、空中投影ディスプレイを私は凝視する。
―――未完成の機体を独力で実用化する―――
かつて姉さんが『ミステリアス・レディ』で行ったことを今、私もしている。
姉さんにできて私にできない、とは思わないけど、最低でもこのくらいはできないと姉さんの影さえ踏めない。いや、そうしないと一生追いつけはしない。
「コアの適正値も上がらない……。タイプが向かないの……?」
リヴァイブの汎用性を参考に全距離対応型に組み上げられている私の専用ISの名前は『打鉄二式』。
「まだ時間もあるし、大丈夫……。最悪でも今年中にひとりで完成させよう……」
春休みを全部を使っても終わらない。それは最初から分かっていることだ。そうなると、入学してからの専用機持ちのIS関連行事には出られない。けど、私ひとりで完成させたい。
「おー。中は結構設備が整っているな」
「?」
倉庫に入ってきたのは昨日から家に泊まることになった世界で二番目に動かした男、弓塚 士郎。彼はIS学園の浜辺に倒れていて記憶がないとニュースでも姉さんの話でも言っていた。
打鉄二式は本来、入学するころに完成して私に届く予定だったが、世界で一番目に動かした男、織斑 一夏のせいで完成が遅れている。今、倉持技研は織斑 一夏の専用機ISを全員で作っているので打鉄二式は私ひとりで作っている。
「これが簪の専用ISなのか?」
「うん……」
打鉄二式は打鉄の後継機であり、発展型。打鉄が防御型であるなら、二式は機動型。腕部装甲、肩部ユニットなどほとんど打鉄と共通点がない二式だけど、頭に装着するハイパーセンサーは同じデザインのもの。
「邪魔にならないように俺はあっちで作業をするからな。もし手伝いが必要なら言ってくれ」
「分かった……。分からないことがあったら聞いてもいいよ……」
「了解」
なにするのだろうか?彼はISのことを知っているみたいけど基本とか分かるのかな?
「なにをするの……?」
「無鉄の整備、改良。あとは武器の設計図を書いてから製作をする予定だ」
「え?」
整備は分かる。けど、改良に武器の設計、製作は驚いた。
「ISのこと分かるの……?」
「ああ。参考書とか読んで気が付いたんだが、どうやら俺は基本基礎は知っていて、おまけに武器を作れるみたいだ」
記憶はなくても体が覚えているからなのかな?彼については十年前の事故の生き残りだけしか分かっていない。
「そう……。私はこっちでやっているから……」
そんなことは私には関係ない。作業を再開した。
さて、楯無さんのお願いもだけど、無鉄の整備をしないとな。待機状態の無鉄を呼び出して無鉄を全体にスキャンをかけた。
「やはり当時のままか。手を加えないとダメだな。さて、どれから取り掛かるかな」
当然といえば当然だが、無鉄は原因不明の解体不可能になっている。そのせいで誰も手を加えないまま、中身は当時のままになっている。
まず最初に各部異常がないか確認し、最新のデータに書き換える。
性能は第二世代だが、改良次第では第三世代にしたいと思う。ちなみに無鉄は万能型を目標にして作られたISである。そのためか、武装は接近戦から遠距離戦まで戦えるように揃っている。
日本を意識した武装は刀、、短刀、薙刀、槍、弓、矢、くない、手裏剣。
他はアサルトライフル、スナイパーライフル、グレネードランチャーの合わせて十一個ある。
「改造は明日からにして武器の設計図を書くか」
机に大きめの白い紙にスラスラっと鉛筆と定規で書いていく。ちなみに書いているのは狙撃銃だ。無鉄にあったスナイパーライフルを参考にしているが外見と中身は別物にしている。
あくまで参考だからな。
なぜ狙撃銃を作るのかというと弓を使うように応用すればISで戦うときにできそうだからだ。確信はないが俺は銃や弓といった飛び道具を使うことがうまいと思っている。
「単発の威力は低くして使いやすいようにして、相手に数多くの命中弾をどのような状況でも与えられるような作りでいいか」
威力を上げるのはこの狙撃銃の出来次第だな。最終的には単発の威力が高いような作りでボルトアクションを作ろうと思う。
「せて、フレームから取り掛かるか」
設計図を書き終えて材料を一通り揃え、狙撃銃本体の製作に移る。弾は火薬を使うので最後に作るようにしよう。
昼には狙撃銃本体が出来たので、午後には弾を作るようにした。
「火薬の量を間違えないように何度も確認しないとな」
弾を作るのには火薬が必要不可欠。量を間違えると発射時に少ないと発火せず、多過ぎると暴発するので何回も確認する必要がある。
さほど問題は起きず無事に完成した。一応、試射のためにペイント弾も作った。
「簪、なにか的のような物はないか?あと撃っていいところはあるか?」
「危険な物じゃなければいい……。撃つところは倉庫の地下で……。じゃないと、近所迷惑……」
「分かった。簪も無理せずがんばれよ」
倉庫の地下は上と大体同じ広さだが物が置かれていないので上より広く感じられる。
的は木の板にスプレーで二重丸を書いて真ん中に点を書いたものだ。
「いっちょやるか」
無鉄を展開して製作した狙撃銃を構え、弾はペイント弾を装填する。
――センサー・リンク問題なし、FCS異常なし、全システム良好――
目標を的の真ん中に定めて撃つ。
パンッ!!
弾は見事に真ん中に当たり、色が付着する。いい出来具合だと思う。
今度は製作した実用弾を装填する。目標を再び的の真ん中に定めて撃つ。
パンッ!!
今度も真ん中に当たり、穴が開く。残りの弾を適当に撃ち、カートリッジが空になる。
「本体と弾もとてもいい出来だ。これなら戦いにも使えるな」
今の射撃データと記録データは無鉄で保存されているからそれを元に改良してみようか。
「今日はこれくらいにして簪の手伝いをするか」
十分満足したし、無鉄と銃の改造は明日でもいいか。データをプリントアウトをして、簪の所に向かった。
「簪、何か手伝うことがあるか?」
「ない……。私ひとりでやる……」
予想はしていたがこうも頑固とは思わなかったな。
「いや、あるだろ。ISをひとりで完成させるつもりか?」
「うん……。姉さんにもできたんなら、わたしにもできる……」
はあ。これはすっかり、楯無さんがひとりで完成させたと思っているな。だが、楯無さんのことは伏せておかないと俺まで断られるな。そうなるといつか事故を起こしてしまいそうだ。
「そう言わずに手伝わせてくれ。とりあえず、無鉄のデータを参考にでもしてくれ。まあ、参考になるかは分からないが」
二式も結局は無鉄からできたようなものだからな。参考になればいいんだが……
「いいの……?ISの内部データは機密で見せちゃいけないんだよ……」
「いいんだ。少しでも役に立ちたいのでな。それに泊めてもらっている身だからな」
ISの外部データは他のISからでも見れるが内部データは所有者か設計した国や企業にしか見れないようになっている。無鉄は俺にしか反応しないので、事実上無鉄は完全に俺の物になっているので内部データを見せることができる。
「どこに送信しておけばいい?」
「……二式に送信して……。アクセス許可しておくから……」
「了解した」
二式からすぐにアクセス許可が来て無鉄の内部データを送信した。
「きた……。あ、これなら一部の駆動部と伝達反応部が正常に動ける……」
「それはよかった。それよりそろそろ出ないか?夕食になりそうだからな」
時間は六時を回っていた。夕食の準備をしていてもおかしくない時間だ。
「今日はこれくらいでいい……。それじゃ、行こ……」
「ああ」
俺と簪は倉庫から出ると外は暗くなっていた。家からはいい匂いがしてきた。
「夕食の準備を手伝うか」
「…わたしも手伝う……」
「料理できるのか?」
「失礼だよ……。わたしだって料理できる……」
「すまない。さて、手伝うか」
「うん……」
家に入り、夕食の準備をした。
夕食を食べ終えて、自室に戻ってプリントにしたデータを見ていた。
「無鉄の防御性能は手を加えなくてもいいが機動性能といった伝達反応やブースターなどは改良した方がいいな。狙撃銃は弾の金属を変えるのに伴い改良すれば問題はないな」
無鉄は防御性能は十分だったが、機動性能は他の第二世代よりもやや劣っていたので改良する方針にした。狙撃銃は今後も改良することができると判明した。
「士郎……いる……?」
「その声は簪か。どうかしたか?」
戸から簪から呼ばれた。二式のことか?
「今、暇……?」
「そうだな。それがどうした?」
「良かったら、私の部屋に来て……。見せたいものがあるから……」
見せたいもの?まあいいか。行けば分かるか。
「ここがわたしの部屋……」
「これは……驚いたな」
簪に案内されて部屋に入ったのだが、部屋はアニメのDVDが大量にあった。きちんと整理されている。
「かんちゃん来たよー」
「本音も来たのか」
「そだよー。今日はなにを見るの?」
DVDは様々なタイトルがあるな。なになに?
機動戦士ガンダムシリーズ(SEED、DESTINY、STARGEZER、OO+劇場版、UC、AGEなど)、魔法少女シリーズ(なのは、まどかなど)、怪獣や戦隊、仮面ライダーなどの特撮があった。
「これを見せるために呼んだのか?」
「うん……。士郎のおかげで二式が少しだけど良くなったからお礼をしたくて……。どうかな……?」
簪なりのお礼か。この機会だからアニメを見るのも悪くないな。
「いいぞ。で、何を見るんだ?」
「今日はガンダム……。士郎、これでいい……?」
「なんでもいいぞ。俺は記憶がないからアニメは見たことないからな」
「それじゃー、魔法少女にー……」
「いや、ガンダムにしてくれ。いきなり魔法少女はハードルが高い気がする」
そうして0時近くまで見て部屋に戻り、眠りについた。