あべこべ世界でVやろう 作:ヨォ
今回はVtuber要素はないです
チュンチュン、と小鳥が
睡眠時間に邪魔をされたから怒ったのだろうか。
僕がいつも通りかかる時は、
すり寄って甘い声を出すような人懐っこい犬でも、寝起きは機嫌が悪いみたいだ。
思いがけない一面を見れて少し新鮮に感じる。
☆
道端に10円が落ちていた。
拾ってみるとギザギザが付いているのに気づく。
ちょっと得した気分。
せっかくなので貰っていこう。
☆
「空き瓶が落ちてる…それにこれは…薬の…」
ゴミが落ちていたので近づいてみる。
どうやらマナーの悪い人間が酒盛りでもしていたようで、菓子やチーズの袋、紙コップ…そしてコンビニで見たことある酒瓶が散乱していた。
なにやら薬(錠剤)が入っていたと思われるゴミまで捨てられている。この辺にはゴミ捨て場がないので適当にポイっと捨ててしまったのかも。
ご近所さんはちゃんとゴミを【燃えるゴミの日】など、指定された日に分別して捨てているから、多分観光客だと思う。
……祭りをやっているわけでもないのに態々この田舎に来る理由…。
ちょっと身震いした。
☆
バス停に到着。
ジャリッ、と石を踏む音が歩くたびに鳴る。
住宅地から離れ、周囲には一本道の道路に少し汚れた公衆トイレと雨除けの小屋、ジャリジャリと踏んだ時の音が楽しい砂利があるくらいで、後は森しかない田舎的風景だ。
……なんか車が一台停めてある…珍しっ。
車中泊でもしているのだろうか。
ホテルもパーキングエリアもないし、泊まる場所が無ければ、ある程度広いここに停めて寝るのは正しい選択と言える。
禁止されているわけでもないし、特に注意する必要はないか。
僕は車から意識を外して、小屋の中にあるベンチに座り、スマホを取り出す。
電源ボタンを押して起動させ時刻を見てみると…バスの到着時刻(発車時刻)まであと15分程度の待機時間があることが分かった。
一本早く乗るため早めに家を出たのが裏目に出たみたいだ…いつもよりゆっくり歩いて、道端を観察しながら歩いてもこの程度余ってしまう。
「あー…なにしてようか」
ちゃんと待つと15分は長い。
(そういえば朝トイレに行ってなかったし、ここで済ませてしまうのもアリかな)
そう考えるとなんだか催してきた。
バスが来ないうちにさっさと済ませよう。
「よっこらせっ」
お婆ちゃんみたいな声が思わず口から飛び出た。
ちょっと恥ずかしい。
誰も見てなくてよかったよ…。
一人で勝手に気まずくなりつつも僕はトイレの方向に歩き出そうとして…嫌な匂いを嗅ぎ取った。
(誰かが用を足した直後?
にしては何か匂いに違和感が…)
近づかないとわからないレベルだけど、公衆トイレから少し嫌な匂いがする。
ここにいたら不味いと本能が警笛を鳴らしている。
僕はその本能に従って、トイレに伸びていた足を小屋へと引っ込め、再びベンチに腰掛ける。
…あっ、壁に都合よく向こう側が見える小さな穴が空いてる。
誰かが覗くために開けたんだな…。
TVで女性はトイレから出たばかりの男性の仕草だけでも興奮できると聞いたことがあるが…この穴も、きっとその目的の為なのかもしれない。
嫌悪感を隠せないが今は好都合だ。遠慮なく利用させてもらおう。
そしてそのまま少し観察していると、
女子トイレから人が出てきた。
「ふぅ〜スッキリしたぁ。
中々楽しめたわよぉ?お坊ちゃん。
またよろしく頼むわ〜」
高身長。筋肉質。茶髪。ピアス。大きくはだけた胸元。ヘソだし。短いスカート。茶色く焼いた肌。派手な装飾のついたスマホ。いかにも、と言った感じの…遊び慣れた印象を受ける。
発言で1アウト。
格好で2アウト。
「ついでにっと…これでよし。これで色んなお姉さん達に可愛がってもらえるからねぇ〜」
女子トイレ前に何か紙を貼ってるのが見えた。
目を凝らして読み取ると…えーと。
『0円肉バイブやってます。
どうぞご自由にお使いください』
(にくばいぶ…!?)
羞恥と憤怒で顔が真っ赤になった。
3年前、河原で拾ったアレな本によれば…
それは女性の性的欲求を解消するためだけに存在する男性のこと!
その本はビリビリに破いて捨てたのでもうこの世には存在しない。けれど、いくら創作でもあんなに酷いことがよく出来るものだと悪い意味で感心していたのだが…。
まさかその現場に居合わせるとはね…これで3アウト。要するに、あの女は紛れもない
まだ確認はできていないけど、
公衆トイレで男性を襲った可能性は…大!
女子トイレの中にいる男性は無事…いや、きっと『楽しめた』と言う発言からして…無事ではないだろう。体はともかく心が再起不能に陥る。
早く警察を呼んでこれ以上被害が出ないうちに捕まえてもらわないと!
お姉ちゃんは多分仕事で気づかないかもしれないし、直接警察に電話しようものならすぐに居場所がバレて僕も襲われかねない。
…よし、圭に頼んで警察呼んでもらおう。
僕はメールアプリを起動させた後、スマホの通知をオフにし消音モードに変更した。
来ないだろうけど、万が一返信が来た時の音で居場所がバレないための対策だ。
『バス停に性犯罪者発見。警察呼んで』…っと。
メールを送信し終えたので再び観察に戻ると、あの女は機嫌良さそうにスマホをいじっていた。
恐らくまだ僕には気づいていない。
気づいていたら真っ先に声かけてくるだろうし。
このまま動かず、ジッとしていればバレたりはしないだろう。けど、それじゃダメだ。高確率であの女に逃げられる。
最高なのはこのまま時間だけが過ぎることだけど、そんな都合のいいことは起きない。
今はスマホに夢中でも、
いつ気が変わるかわからないのだから。
…まぁ、僕が被害に遭わないだけなら隠れているだけでいい。寧ろそれが最良の選択肢だろう。
だがここで見逃して次の被害者が出たらどうする?
少なくても、僕は僕を許せない。
ただでさえ僕たち男は弱く、脆い生き物なんだ。
だからこそ、ここまでの最小限の被害で押し留める必要がある。
圭が呼んだ警察が駆けつけてくれるまで…どれくらいかかるかはわからない。もしかしたらバスが来る方が早いかもしれないね。
…バスか警察か。
どちらにせよ、後10分強。それまで僕があの女をこの場に縫い付けなくてはいけない。
仮に10分経ったとしてもギリギリでカーチェイスに持ち込まれて逃げられたら元も子もないから、足止めできる作戦を考えないと…。
最悪しがみつける距離に…いや無理だな。
あんなビッチに触るとか生理的嫌悪が勝る。
手袋持ってくればよかった。
近距離がダメなら遠距離だ。
足を滑らせる道具とかなかったっけ…?
あ、ただ単に石を投げるでもいいかもしれない。
頭に直接ぶつかればそれなりによろけるでしょ。
ここは砂利道。大きな石も沢山落ちてるし、バックの中にも硬い物は幾つか入っている。残弾の心配はないだろう。
あっ、
でも別に攻撃しなくても言葉で翻弄すれば…。
——————ザッザッ
「!?」
砂利道を歩く音!
それも少しずつ遠ざかっていく!
方角は…車が止めてあった方!
移動を始めたのか!
くっそまだ9分もあるのに!
(勇気を出せ佐藤巧!ここが正念場だぞ!)
手が震え足はすくむ。本能は行くなと叫び散らす。
それでも僕は、覚悟を決めて小屋から飛び出した。
「そこの茶髪のおねーさん。
少しお時間よろしくて?」
次回はガッツリVtuberしていくヨォ