儚い物語は嫌いですか?
人生は黒く、汚れたものです。
ハッピーエンドの大団円なんてものは、この世には存在しません。
それでも、幸せになりたいのなら。その心に、抗いの炎を。
無我夢中で、希望を手に入れようとして...
そして、物語は始まるのです。長い長い、旅のようなお話が。
...ただいま。
優しい言葉が世界に響く。
全てが緑となり果てた、人が滅んだはずの世界。
わずかに生き延びた人間が、また未来を目指して歩き始める。
その渦中にいる、一人の少女。
俺は、静流を救えなかった。
どこまでもどこまでも堕ちきった世界の中で見つけた、ほんの小さな幸せ。
『一緒にいる』ということ。
静流の今の幸せは、それに尽きる。
...それしか、ないのである。
俺はここで、ただその背中を受け止めるだけしかできない。存在しない口で言葉は告げられず、地に張り付けられたような体は動くことを知らない。
こんなものを、俺は幸せと呼んでいいのか?
...いや、いいはずがない。こんなもので、終われない。
一緒にいることは幸せだ。けど、もうその幸せだけじゃ満足できない。
俺はこいつと、もっと違った形で幸せになりたいんだよ。
だって、すげぇいい奴でさ。こんな俺と一緒にいたいって言ってくれたんだぜ?
...だったら、それに答えてやりたい。
今がもう、全てが遅すぎた状態だなんてのは分かってる。でも、この世の存亡を決める『鍵』なんてのがこの世にいるなら、人を救う神様がいることだって、信じていいだろ?
だからさ...答えてくれよ、神様。
俺は、この結末を書き換えたいんだ。
そのためなら、何だってくれてやる。だから、せめて静流と一緒に歩く権利を、未来を、掴ませてくれよ。
その時、世界がもう一度白い光に包まれた。
世界の滅亡の時と同じ肌触りがするけど、違う。それより、もっと暖かい。
耳を澄ませると、誰とも分からないかすかな声が俺の耳を打った。
『やり直す。けれど次は、もっと最悪の結末を迎えるかもしれませんよ?』
...かもしれないな。けど、いい結末を迎える可能性だってある。
『...覚悟は、本物、ですか?』
ああ、本物だ。俺はこいつと、静流ともっと違った形で幸せになりたいんだ。
『...では、リライター。かつて人間だった者。あなたに一度だけ、旅の力を与えましょう。...そこから先は、もう私はあなたと出会うことはないでしょう』
もちろん。そのころには、絶対に幸せになってるだろうからな。
『...リライター、天王寺瑚太朗。...あなたに、よき旅があらんことを』
最後の言葉を聞き終えた瞬間、その光は一点に集中し、俺の身体に降り注いできた。
背中を預け、穏やかな表情で眠っていた静流が目を覚ます。
「コタロー!?」
悪いな。...またしばらく、お別れだ。
「どうなってるんだこれは...!? コタローが...消えかけてる!?」
ああ、消えるんだ。またお前に会うために。...今度はちゃんと幸せにするから、だから少しの間、バイバイだ。
「コタロー!!」
静流の悲痛な叫びがこだますると同時に、俺の樹木としての身体は頭から消え始めた。
静流のその姿が、次第に遠いものに思えてくる。もうはっきりととらえることはできない。
なあ、静流。
別れは辛いよな。だから、もう別れなくていい未来に俺が書き換えてやる。
向こうにつくころ、多分記憶はないと思う。...だけど、なにをすればいいかは、きっとわかる。
全てを変えたのは、きっとあの日。俺が犯した最初で最大の間違いへ、俺は帰ろう。
体は意識と、記憶とともに粒となって消え果てた。
どこか分からない空間を泳ぎながら、俺はかの日を目指す。
...やり直すんだ。
そして、次は上手くやる。
さあ、幸せを紡ぐ旅を...始めよう。
はい、はじめて行きましょう、静流IF!
絶賛作者が受験生なため、更新は不定期になるかもしれません。しかし、失踪はしないと誓うので、どうか最後までお付き合いいただけたらと思います。
書き換えて見せます。この悲しい記憶さえ。
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