【天王寺瑚太朗宅】
そのまま家に帰ったものの、やはり心は落ち着かないでいた。
・・・まあ、無理もない。
小鳥がすぐそこに居ながら、俺は引き返してしまった。のちにそれが好判断だったと言われても、この行動を割り切ることはたやすくない。
「・・・」
「何しょげた面してんだよ」
元気のない俺に耐えかねたのか、ぎるが音を上げる。
それでも、こいつらにかまけてられる元気が、今の俺にはなかった。
「・・・やっぱり、気にしてるんですか?」
「・・・悪い。こんな雰囲気のままで」
「分かってんならなんで行かねーんだよ」
「簡単に森に入れるほど魔物が弱くないことくらい知ってんだろ!」
ついカッとなって大声を上げる。
ぎるは不満げに不貞腐れ、ぱには少々おびえていた。
「・・・悪い。ちょっとそっとしといてくれ」
「でも・・・」
「いいから、行きますわよ。瑚太朗さんがこう言ってるんですから」
状況を察したぱにはぎるを引きずりながら部屋から退出していった。そうして、部屋には俺一人が残る。
時間は21:00。静流が帰ってくるには、まだ早い時間。
『大丈夫だ』
静流はそう言った。それが気休めなのか、本当に自信にあふれたものか、俺には分からない。
けど、言うほど簡単じゃないことくらいは、分かってる。
だからこそ、もどかしい。
俺にもっと力があれば・・・こうしてビビッて森から出ることもなかったのかもしれない。
俺が能力に目覚めなければ、昔みたいに小鳥を森から引き上げる係になれたかもしれない。
俺が・・・。
「違うだろ!!」
バンとベッドを強くたたく。
そんなことじゃない。そんなたられば、何の意味があるんだ。
見るべきは過去じゃない。もしもじゃない。これからの事。
こんな俺でも、出来ることを探さなければいけない。
「だからって・・・何ができるんだよ」
オーロラに頼らず体を強化しようとして、この間失敗したばかりじゃないか。
戦士には向かないとも、いろんな人に言われた。
・・・でも、それで諦めていいわけじゃない。
俺は、静流の隣を歩きたいんだ。静流が、好きなんだよ。
だから、迷惑かけないくらいの人間にくらい、ならせてくれよ。
そのためなら・・・どれだけ痛くても構わない。俺のことはいいんだ。
「・・・力」
望みすぎてはいけない。分かっている。
いくら強くなろうとしても、俺は英雄になんてなれないし、なんならなりたくない。
でも、せめて自分で自分を守るくらいできる人間になりたい。
そのために俺は・・・。
先ほどかけた電話番号につないでみる。先ほどはそれこそ返信はなかったが、毎回そうとは限らない。
一部の可能性に賭けてつないだ電話は、繋がった。
『もしもし、私だが』
「すいません江坂さん。こんな夜中に」
『そんなことはいい。それよりどうした?』
「今からフォレスト、行ってもいいですか?」
『なんだ? 話を聞くだけならこの電話でも構わないが』
「いえ、会って直接話したいので・・・」
『ふむ・・・』
江坂さんは何かに勘づいたのか、しばしの間無言でいた。
やがて、いつもより少し低い声で答える。
『ようがあるならこちらにこい。住所は送っておく』
「えっ、あ」
俺が答える前に、江坂さんは一方的に通話を切った。
その数秒後に、俺の携帯にどこかの住所が送られる。
「ここに・・・」
迷うことなく、俺は家を飛び出した。
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【ガーディアン日本支社本部】
江坂さんに指定された場所は、言うまでもなくガーディアンの本部だった。
俺は、来て、しまった。
外で一人白髪交じりの紳士が立っているのが見える。それは間違いなく江坂さんだった。
「江坂さん」
「来たかね。天王寺君。・・・それより、こんな時間に呼びつけるとは、何事かね?」
「えっと・・・その」
言ってしまえば、後には戻れなくなる気がした。
けれど、覚悟は変わらない。静流と歩くために、俺はどんなことでもすると決めた。
だから否定されようと・・・俺は。
「江坂さん。・・・俺を鍛えてください」
「・・・」
江坂さんは目を閉じたまま、何も言わない。
俺が聞き返そうとすると、目をカッと開いてたちまち俺を睨んだ。
「前にも言ったが、君は戦士に向いていない。・・・それに、ガーディアンの戦場はゲームのような優しいものではない。どこまでも残酷で汚い争いだ。それに君は足を
踏み入れるのかね?」
「生半可な覚悟じゃだめだってことは・・・分かってます。けど、俺は静流に守ってもらってばかりじゃ嫌なんです。せめて、黒犬ごときで躓かないくらいには・・・」
「たかがそのために、貴様は力を得ようとしているのか?」
その表情は、先ほどまでとは打って変わって、黒い怒りのようなものへ変わっていた。その前で俺は凍り付く。
「・・・いいか。私たちは常に死と隣り合わせだ。少なくとも、貴様が組織に入らずそのままでいる方が生存率は遥かに高い。そうまでして、どうしてここを望む?」
「・・・静流のためです」
「本当にそれを、静流君が望んでいると思うのかね?」
「・・・」
「まあいい。この話は保留だ。それに共鳴が近い。いずれにせよ、君にかまけていられる時間は少ない。・・・本当にどうするかは、静流君と話してからにしろ」
「・・・はい」
俺の覚悟は伝わらなかったんだろうか。
少なくとも俺自身はこんな風に終わっていいものじゃないことだと・・・まだ思ってる。
それをどうにかして・・・伝えないと。
しかし、そんな俺をよそに、江坂さんは振り返り、本部へ戻ろうとしていた。
その時、ひとたび大きな声が本部外でこだまする。
「医療班だ! 道を開けてくれ!」
「医療班・・・? 怪我したのは誰だ?」
江坂さんが少々不安げに尋ねると、医療班は少しだけ声を落として、はっきりと述べた。
「中津 静流さんです!」
「「!!」」
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【リライトメーター】70%
さて、二話です。
史実とはだいぶ違うので、展開政策に苦労しますね。
さあ、ここからどういたしましょうか。作者の苦悩は続きます。
今回はここらへんで。感想、評価等お待ちしております。