静流IF~愛してるだけじゃ足りないから~   作:白羽凪

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#3:明けない夜

【ガーディアン日本支社 内部】

 

 あれから30分。内部に用意された医務室の《使用中》の文字は一向に消えない。

 俺は一人その外の椅子で静流の安否を願う。

 

「いったい何が・・・どうしてこんなこと・・・!」

 

 どうにもできなかった自分への悔しさ、訳も分からずこうなってしまったことへの理不尽な怒りだけが、表立って湧き上がる。

 

 軽く三回目の地団駄を踏んだ時、奥からヒールのコツコツとした音が響く。

 青い髪をまわせてこちらに来たのは、西九条先生だった。

 

「先生・・・」

 

「まだここにいたのね。天王寺君」

 

「・・・すいません。でも、どうしてもここにいなくちゃいけない気がして・・・」

 

 それは静流がどうなろうと。

 好きな人の容態を待つことのどこにおかしなことがあるのだろうか。一周回って俺はふんぞり返る。

 

「・・・あなたが待ったところで静流ちゃんはどうにかなるわけじゃない。・・・分かってるわよね?」

 

「・・・もちろん、です。ここで待っていようと、どこで待っていようと・・・俺は静流のために何もできやしない」

 

「あなたが安全なところにいることで静流ちゃんの居場所を作れる。それが静流ちゃんのためだと言われたらあなたはどうするの?」

 

「・・・」

 

 西九条先生の言ってることは、遠回しに俺が戦士になることを否定するものだった。

 先ほどの江坂さんに続いて、この人もそう言う。

 

 分かってる。

 俺が進もうとしている道がどれだけ愚策で、阿呆の所業か。

 

 けど、ただ待つだけの存在は、もう嫌だった。

 静流が俺の事、どこまでどう思ってるかは知らないけど。

 俺は少なくとも、静流の事が好きだから。

 

 静流の事、待つだけじゃなくて、時にはあいつのことを待たせる存在になりたい。

 そうして隣を歩けるころにはきっと・・・。

 

 

「それでも俺は・・・変わりたいんです。こんな無力な自分を書き換えたい。・・・オーロラなんて頼らずに、少しでも強くなれたら」

 

「安直に力を求めることがいかに罪か、分からない天王寺君じゃないでしょ?」

 

「分かってます・・・分かってますよ・・・!」

 

 

 悔しくて悔しくて、あざが出来るほどまで俺はこぶしを握る。

 それが伝わったかそうでなのかはいざ知らず、西九条先生は一つため息を吐いた。

 

 

「・・・戻れないわよ。学校にも、元の生活にも。・・・平和とは縁遠い場所に生きることになる。自分を汚してでも、あなたは進むの?」

 

「進みます。・・・静流が自分を汚して進んでるなら、そのつらさを一緒に乗り越えてやりたいんです。・・・俺、あいつに叶うところなんて何一つないですけど、だから追いつきたくて・・・」

 

「・・・はぁ、男ってホント、頑固なのね」

 

 どうにもならないと西九条先生はため息をついて、珍しく目を見開いて俺を見つめた。

 

 

「江坂団長には私が話すわ。・・・そこから先はあなたがどうにかしなさい、天王寺君。ガーディアンになることを望む以上、一切の甘えは捨ててもらうことになるわ。家に帰ることもない。友達と会うことも容易には許されない。分かってるわね」

 

「・・・はい、分かってます」

 

 きっとここが最終確認。次江坂さんと話すころには、俺は候補生としての俺になっているだろう。

 それでも、引き返すつもりはみじんもない。

 

 俺が一番に思うべき相手は・・・この扉の奥にいるのだから。

 

 

 西九条先生は俺の意志を受け取ったのか、仕方なさそうに笑った。

 

「・・・天王寺君。これは、私個人の願いなんだけどね」

 

「なんですか?」

 

「・・・静流ちゃんのために、ここにいてあげてくれないかしら?」

 

 さっきこの人は、そんなことに意味はないと言った。

 でもそれはあくまで組織としての立場であって、個人の意見ではない。

 ましてやこの人は一時とは言え静流の教師をやっていた人間である。静流に対して思うところがあるのだろうとは容易に想像できた。

 

 だからこそ、俺はもとよりの言葉を口にする。

 

「それが許されるなら・・・俺はずっとここにいますよ」

 

「・・・そう」

 

 少しだけ安堵したように西九条先生は呟く。

 そのままもともと用事があったのか、そちらを目指して再び歩き始めた。

 

 その足が踏み出される前、西九条先生は言葉だけをその場に残した。

 

 

「ねぇ、天王寺君」

 

「なんですか?」

 

「誰もが幸せになる世界って・・・どうやったら作れるのかしらね」

 

「・・・すべての人間が同じ方向を向いて歩けたとき、ですかね。・・・でもそれは」

 

 そこで俺の言葉は止まる。

 言っても意味がないから。

 

 何がどうあった時、世界に生きる全ての人間は同じ方向を向けるのだろうか?

 それは案外、世界からすべてが無くなれば簡単に達成できるのかもしれない。

 

 でもそれは・・・。

 

 世界を、壊さなければならないから・・・。

 

「・・・ええ、分かってるわ。・・・だからね、天王寺君」

 

「はい」

 

「間違い続ける人生は、私たちの代で終わらせたいわね」

 

 その返事を待たずに西九条先生は行ってしまう。

 そして俺は再び、静流を待ち続けた。人の流れも気にせず、使用中のランプが消えようと気にせず。

 

 

 でも。

 静流は。

 

 一向に、目を覚まさなかった。

 

 

 

===

 

【リライトメーター】70%




 2000めどに書くと尺が暴れるんですよね・・・。
 この辺な癖直したいところです。

 と言ったところで、今日はこの辺で。
 感想、評価等お待ちしております。
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