静流IF~愛してるだけじゃ足りないから~   作:白羽凪

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#4:足りないものだらけ

【ガーディアン日本支部 病室】

 

 結局、静流の状態はと言うと、命の危機は脱したものの、よくはない状態だった。

 原因不明の傷があるらしく、処置はなかなかに困難だったみたいだ。

 

 ・・・それでも、死ぬよりははるかにましなそれに、俺は何も言えない。

 

 そうして静流が運ばれて二日目。今日も俺は静流の病室にいた。

 鍛えてもらうことを急ぐより、今は静流の傍らにいる方が正解だと思ったし、それしか考えられなかった。

 

「なあ静流。俺、どうすればいいのかな」

 

 答えるはずもない静流に問う。そうまでして俺は答えが欲しかった。

 自分が戦えるようになるべきか。

 

 静流が何を望んでいるのかは知らないけど、少なくとも俺はそうしたい。

 

「・・・」

 

「様子はどうかね」

 

 ふとした時、病室のドアから江坂さんが入って来る。

 結局、この人に会うのはあの日以来だった。

 

 

「・・・」

 

「そうか」

 

 無言の俺と静流を見るだけで、江坂さんは全てを察したようだった。

 

「あの・・・江坂さん」

 

「話は西九条に聞いた。君がまだあきらめていないこともな」

 

「・・・すいません。でも俺には、もう、そうするしかないと思ってるんです」

 

「その道をたどって、果たして普通の幸せと呼べるものに辿り着けるのかね?」

 

「・・・普通の幸せなんて、定義が分かりませんよ」

 

 幸せの価値は人それぞれ。一概にこうあることがそうとは言えない。

 俺はただ、静流と長いこと一緒に居れたらそれでいいんだよ。

 

 ただ・・・。

 

 ちゃんと一緒に、歩いて行ける、関係でありたいけど。

 

「・・・戦士になる覚悟はあるのか?」

 

 俺は無言でうなずく。

 

「さすれば君は未来永劫、ガーディアンという組織に仕えなければならなくなる。それでも構わないのか?」

 

「そこが静流の居場所なら・・・俺は構いません。・・・それに、俺にはガイア主義はちょっと理解できないので」

 

 それは、どこか昨日今日の話ではなく、ずっと昔からそうであったように思えることだった。しかし、必要なのは過程ではなく結果。そこが変わらないのであれば、伝える義務もなかった。

 

「・・・そう、か」

 

 江坂さんは残念そうに言葉を吐いて、改めて俺の肩を持った。

 

 

「では天王寺、今日から貴様を私がじきに鍛えよう。後任指導の担当に任せておけるほど君は簡単な状態ではないうえ、あまり人員も割きたくないのでな」

 

「江坂さんが?」

 

「もとより貴様は私の師事を望んだだろう。それに答えてやるのだよ」

 

「江坂さん・・・」

 

「ただ、何度も言うがガーディアンに入ると覚悟した以上、一切の甘えは捨てろ。駄々こねて許される学生気分はここにはいらない。一歩踏み出せば戦場だ。分かってるな?」

 

「はい」

 

 

 俺の返事はどう響いただろうか。

 江坂さんはただ振り向いて小さな声で呟いた。

 

 

「やれやれ・・・再び君を持つというのも感覚が狂うな」

 

 

 

---

 

 

【ガーディアン日本支社】

 

 

 そこから数日間は、はっきり言って地獄と呼ぶにふさわしいものだった。

 

 

「一日一時間。貴様への鍛錬はそれだけだ。私とて暇ではない。後は今宮のもとでモニターとして働け。貴様ならまだ、その役割は出来るだろうからな」

 

 という、江坂さんとの約束を守るように俺はそれを全うした。

 静流がいつ目を覚ますかは分からない。その間に俺は俺に出来ることをやろうとした・・・が。

 

---

 

 

 今日も今日とてナイフを構え、江坂さんへ挑む。

 ガーディアンとして戦う以上、能力頼りの戦いはそうそうやっていられない。

 基本体術、イメージトレーニング、戦闘理論・・・学ぶことはたくさんあった。

 

 それを学ぶには、あまりにも時間が足りない。

 その上、ここで身をすり減らしては静流のためにはならない。その境での調整は果てしなく難しかった。

 

「くっ!」

 

 目の前で両手を構える江坂さんの隙を探して、そこへナイフを突き出す。

 しかし、江坂さんは当たり前のようにそれを躱し、俺の腹へ拳を入れる。

 

「がはっ・・・!」

 

 

「目で敵を追うな! 全てが全ての人間が馬鹿正直に攻めるとでも思ってるのか!」

 

 膝をついている俺の胸倉を容赦なくつかむ。

 たちまち右のほほを強く殴られた。

 

「ぐっ・・・!」

 

「・・・一時間か。今日はここまでだな。後で今宮から指示をもらえ」

 

 江坂さんは殴り飛ばした手を拭いて、厳しい顔つきのまま俺から遠ざかる。

 遠ざかっていくその背中は、自分のものよりもはるかに大きく見えた。

 

 

 ・・・くそっ。

 

 ここまで数日間、何度も何度も江坂さんに攻撃を打ち込もうとした。けど、その全ては無残に砕かれる。

 

 分かってはいたけど・・・ここまで力の差があると、心が折れそうになる。

 本当にこれで俺は、静流のためなんかになれるんだろうか。

 

 

「・・・はぁ。今日もダメか」

 

 数日間の間でもらった拳の数は10をたやすく超える。右の頬、左の頬共に腫れと引きを繰り返したためか、もはや痛みを無くしていた。

 

 触れてもただごつごつとしかしない頬を触る。やっぱり痛くはなかった。

 

 

「・・・どれだけ戦ったら、俺はあんなになれるんだろうな」

 

 などと言っても意味はない。俺はすっくと立ちあがって今日の仕事を承りに今宮さんの元へ向かう。

 これが日課。静流の隣を歩くために必要なこと。

 

 

 

 そのためなら俺はいくらでも頑張れるから。

 だから・・・早く目を覚ましてくれよ。

 

 

「・・・静流」

 

 

===

 

【リライトメーター】70%




何話目処でしょうかね・・・正直予想が出来ません。
まあ、私はただ書くだけです。結果はいつも後ろから。

といったところで、今日はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。

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【お知らせ】

作者は来週より入試工程にはいるので、投降頻度が下がります。
ご了承ください。
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