静流IF~愛してるだけじゃ足りないから~   作:白羽凪

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#5:再開へ・・・

【ガーディアン日本支社 管制室】

 

 市内の複数個所が映し出されているモニターだらけの部屋へはいると、その場を取り仕切るように椅子に座っている人がいた。

 今宮さんだ。

 

「お疲れ様です、今宮さん」

 

「おー、天王寺か。んで? 今日も仕事依頼?」

 

「まあ、そんなところです」

 

 今宮さんは俺が組織に入ると決めたときから、俺に君をつけて呼ぶことをやめた。

 曰く、

「外部からの客人ならともかく、同じ組織に入ろうとすんなら上下関係はきちんとしなきゃいけねーべ」とのことらしい。

 実際、それが道理だと思う俺に不満はない。

 

 

「森近辺のモニター要員が欠けてる。まだ危険はねーからちょっと頼むわ」

 

「分かりました。森近辺・・・って、どこらへんになりますか?」

 

「ほら、こないだお前が入ろうとしたとこ。あそこだよ。本来ならモニターの必要すらねぇところだが、なんせ今は時期が時期だ。鍵の捜索が急がれてる以上、塵のような情報も必要になる。そこんとこ分かってる?」

 

「分かってます」

 

「よーし、そんじゃま、ぼちぼち頑張んな。あぁ、何度も言うが勝手に交戦しないことだな。死にたくねぇならな」

 

 サングラス越しでもその目が鋭いことは簡単に分かった。

 死にたくないのはもちろんだ。

 俺は深く一度頷く。

 

 そして俺が立とうとするなか、今宮さんは例になくにやにやと俺の顔面を除いてきた。

 

「・・・なんすか?」

 

「いや~、結構しごかれてるみてーだなぁってよ」

 

「江坂さんにっすか? ええ、まあそれなりに・・・」

 

「・・・あの人、ホントこえーよな」

 

 今宮さんはぶるぶると肌を震わせる。俺はそこまでとは思っていないが、付き合いが長いからこそそう思えるのだろう。

 ・・・ということは、俺もいつかはこうなるのだろうか?

 

「どーよ、あの人の本気の殴りは痛ぇだろ?」

 

「そっすね・・・さすがに最初は骨が折れそうなくらい痛かったですけど・・・。まあ、それなりに慣れたんで」

 

「・・・大物だなぁおい!」

 

 驚き、今宮さんは肩をバンと叩く。

 

「何? 天王寺ってMだったっけ?」

 

「そんなつもりはないっすよ・・・。ただ、俺にはなりたい自分があるんで、そのためなら・・・」

 

「・・・あー、そういうやつね」

 

 理由を知って、どういうわけか今宮さんはがっかりしたように吐き捨てる。

 興ざめ、といったところだろう。

 

「別におめーがどうこう思うのは知らねーけど、そう燃えすぎんな。それが時に身を滅ぼすことがある」

 

「・・・分かってます」

 

「・・・。昔いた同僚は、俺なんかより全然つえー能力者だった。が、ガイアとの戦いでぽっくり逝っちまった。そいつがまた、結構な野心家でねぇ。まああれだ。高望みは気をつけなって話だ」

 

「運が悪かった・・・てわけでもなさそうっすね」

 

「・・・。ま、そういうこった」

 

 少しだけ今宮さんは悲しそうな顔をするが、その意味は俺に分かるはずがなかった。

 ここで立ち話をつづけるのは別に構わないが、仕事があることを忘れる俺ではない。

 

 そろそろ行くか・・・。

 俺は今度こそ立ち上がる。それと同時に踏み出す前に、口が勝手に動いた。

 

「結構おせっかい焼きなんですね。今宮さん」

 

「・・・別に、大したことねーよ。それよりほら、さっさと行きな。中津嬢のためにも、しっかり働いてくんな」

 

「はい」

 

 手短に返事だけ返して、俺は指定された場所へと向かうことにした。

 

 

...

 

 

 

「・・・ったく、気が狂うよなぁ、ホント」

 

 

---

 

【風祭市街 森近辺】

 

 先日小鳥を追いかけた森の入り口周辺で、俺は一般人に偽装して街の中をうろついた。

 表通り、裏路地。隅から隅へ、まんべんなく。

 そうすれば、自然と目に入ってくるものもある。

 

 黒い犬、ローブの男、吉野の舎弟・・・。

 などなどを逐次報告するのが、今の俺の仕事である。

 

 けど、はっきり言って・・・。

 

「退屈だ・・・」

 

 そうであるのが一番いいことだとは分かっていても、あまりにも動きがなさ過ぎた。

 それこそ、高校に通ってた頃と同じような考えだ。

 

 刺激が欲しい。変わりたい。

 

 けれど、今の俺には背負うものがある。ずっと眠ったままでいる静流を放っておいて一人戦いに足は踏み入れられない。

 

 それは少なくとも・・・あのころとは違うんじゃないかな。

 

 

 

 そのままビルの隅から街の動きを観察する。

 して、それは一瞬。

 

 ほんの一瞬の出来事だったが、俺にとっては何よりも重大な出来事だった。

 

 

「・・・小鳥、か?」

 

 バス停のある通りを、小鳥が歩いていた。そのピンクのパーカーには見覚えしかなく、間違えようがない。

 

「間違いねぇ・・・小鳥だ!」

 

 先日見逃してしまい、安否がわからなくなっていた小鳥。

 しかし、何事もなかったかのように今目の前で街を歩いている。

 

 疑問はあるが、まずは何よりうれしかった。

 

 小鳥まで変な戦いに巻き込まれたら、俺もやってられない。

 危険であることを伝えるためにも、俺はすぐに飛び出したくなった。

 

 しかしここは冷静に。その動きを目で追う。

 数秒も経たず、その足の進む先にあるものが森だということが分かった。

 

「・・・また、森へ行く・・・のか?」

 

 俺はビルから離れ、距離を保ちながらその後ろをついていく。

 足が進んでいくにつれて、視界に映るものの緑の量が増えていった。

 

 気が付けば、間違いなく、森だった。

 

 

 ・・・ここは、任務範囲だったか?

 

 地図を見ようとするが、小鳥を追うのにその時間すら惜しく思える。

 

 ・・・まだ、昼か。

 

 今なら森に入ってもさほど問題はないはず。

 なら・・・今が絶好のチャンスってことか。

 

 迷う理由もない。

 

 

 

 俺はそのまま、小鳥の背中をつけて歩いた。

 

 

===

 

【リライトメーター】70%

 




(ここから数日間お休みします)

 というわけで起承転結の起の終わりらへんですかね。
 次回からもぜひ読んでってくれよな!

 ここまで読んでいただきありがとうございます。
 感想、評価等お待ちしております。
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