静流IF~愛してるだけじゃ足りないから~   作:白羽凪

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長らく小論対策のために休んでおりましたが、終わったのでぼちぼち再開します。


#6:暗闇の中の約束

【風祭郊外の森】

 

 気づかれないように、うまく小鳥の後をつけて森の中へ入る。隙間から入る日光に照らされた森は、そこに危険性がないことを示す。

 

 もう少し・・・しっかり後を追えば小鳥に・・・!

 

 その瞬間、ふと目を閉じ、開くと目の前の小鳥は姿を消していた。

 

「なっ!!?」

 

 しっかり目の前を凝視していた。それなのに、急に小鳥がいなくなった。

 少なくとも目の前は他と比べて開けている。見失いようがなかった。

 

 ならば、この光景は何だというのだろうか?

 

 幻、怪異、あらゆる可能性を考える。

 その解もあってか、俺はほんの少しの違和感に気づいた。

 

「・・・これ、は?」

 

 手に取って持ち上げる。それは小さな折り紙だった。

 

「なんだ・・・これ」

 

 手に持っているものの意味が分からないまま前に進むと、先ほどは見えなかった小鳥の姿がもう一度見えた。

 

「・・・どういうことだよ、これ・・・」

 

 本当に、理解が追い付かなかった。ただ目の前に小鳥がもう一度現れた事実だけ変わらないで。

 

 

「とりあえず、小鳥が止まるまでは追いかけよう」

 

 

---

 

 

【風祭郊外の森 中腹】

 

 それからほどなくして、小鳥が足を止めた。それに合わせるように俺も足を止めて木陰に隠れて、小鳥の動きを見た。

 

「(何をするつもりなんだよ・・・こんなところで)」

 

 そんな事を思う瞬間、何か強大な存在感のようなものを俺は人知れず感じた。

 

「!」

 

 とっさに出てきそうな声を抑えて、違和感の正体を確かめる。

 

 

 一本そびえる大きな樹木。

 そこに、【彼女】はいた。

 

 赤いリボンをひらひらと回せ、感情の見えない瞳をこちらに向ける。

 それは、オカ研が崩壊するきっかけとなったあの日と同じ。

 

 そして、俺はそれが誰であるかを知っていた。

 

「鍵・・・なのか?」

 

「・・・」

 

 思わずつぶやいた声に返事はない。

 代わりに、聞きなれた声音だけが、俺の耳にこだました。

 

 

「瑚太朗君、だよね?」

 

「あっ・・・」

 

 小鳥はとっくに俺の存在に気づいていたみたいで、いつの間にか俺のすぐ近くまできていた。

 備考はあっさりバレていたみたいであった。

 

「・・・小鳥」

 

「お話はあと。ちょっとやらなきゃいけないこと、ある」

 

 動揺しかける俺をよそに、冷静に小鳥はその場から離れたかと思うと、ほどなくして戻ってきた。

 

 

「おっけ。乱れた結界は直してきた」

 

「結界・・・? それってさっきの・・・」

 

「うん、あの折り紙がそう。瑚太朗君が動かしたもんだから、調和が崩れてね」

 

「・・・」

 

 明らかに現実とかけ離れたことを口にする小鳥を、俺は信じることが出来なかった。

 

 こいつは、今回の件とは全く関係ない人間だと思っていた。

 けれど、小鳥は【そこ】にいた。

 

 【鍵】という少女とともに。

 

 

「・・・さすがに、ここじゃ逃げることも出来ない、か」

 

 小鳥はあきらめたようにため息を一つついて、普段は見せないような瞳を俺に見せた。

 その瞳は、使命に燃えた人間のそれをしていた。

 

 

「瑚太朗君。こういうことになっちゃった。ごめんね」

 

「理解できねえよ・・・。なんでお前が、なんでこんな戦いに」

 

「それは言えない。だって、言っちゃったら私がここにいる意味なくなっちゃうから」

 

「なくなっていいだろ! お前がここでこんなことする理由なんてない!」

 

「あるよ」

 

 短く、端的に。

 しかし確かに意味のあるその言葉は俺を瞬く間に貫いた。

 

「っ!」

 

「・・・落ち着こうか。私、瑚太朗君の事傷つけたくないから。だから・・・まずは冷静になってほしい」」

 

「・・・分かった」

 

 自己判断、独断、焦り、それらは人を狂わす。

 冷静であることが今は何より重要事項だった。

 

 

 近くにある切り株に腰かけて、俺は小鳥の言葉を待つ。

 小鳥は気まずそうに、目をそらしながら、事の核心に通ずるものを問ってきた。

 

 

「瑚太朗君は、【鍵】が、見えるの?」

 

「・・・ああ」

 

 見えている。はっきりと、目の前にそれはいる。

 リボンを舞わしながら、大樹の近くにポツンといるそいつが、俺には見えている。

 

 そしてそれが、俺たちガーディアンの破壊すべき対象であることを、小鳥はおそらく知っていた。

 言葉と瞳に、警戒の色がともる。

 

「狙って、いるの?」

 

「・・・」

 

 簡単に言葉は返せない。

 この言葉が発せられるということは、小鳥は俺がガーディアンに与していることを知らない状態にあると推測が出来る。

 

 そんな状態の相手に、おずおずと自分がガーディアンに与していることを打ち明けることは出来ない。かといって、小鳥相手に嘘はつけない。

 

 だから、俺がかけれる言葉は一つだけだった。

 

 

「・・・分からない」

 

「・・・何それ」

 

 何かおかしかったのか、小鳥はぷっと噴き出した。

 

「瑚太朗君は瑚太朗君だね」

 

「俺は俺だっての。・・・でも」

 

「うん、何も話さないわけにはいかないよね。・・・見られちゃってるし」

 

「・・・」

 

 小鳥は逃げられないことを悟り、決心したのか、自分の身の丈の説明を始めた。

 

 

「私は、ドルイドって呼ばれる人間だよ」

 

「ドルイド?」

 

「うん。今の琥太郎君ならわかると思う、ガーディアンでもガイアでもない人間。その使命は、『鍵を守る』こと」

 

「鍵を守る・・・?」

 

 崩壊をもたらす存在である鍵を守るのであれば、その行動はガイアと似ているといえるものである。

 ならば、小鳥は敵対関係にあるはずである。

 

 滝のような冷や汗が、俺の背中を伝った。

 

「でも鍵って、崩壊をもたらすんだろ? 最悪の魔物のような存在だって聞いたこともある」

 

「それは嘘じゃないと思うけど、私にそれは関係ないんだ。私はただ鍵を守り切るだけ。滅びが訪れるか、そうじゃないかは、鍵が全て決めるだけだから」

 

「その言い方・・・。鍵が存在するうえで滅び以外の道があるのか?」

 

「あるよ」

 

 小鳥は純真無垢の瞳で即答した。

 

 

「この子はね、『良い記憶』を求めてるの」

 

「良い記憶なんて・・・何をもとにそんなこと」

 

「分かんない。だから私も守ることしかできないんだ」

 

 小鳥は諦めきったように言葉を吐き捨てた。

 

 

 なんだよ・・・良い記憶って。そんなの、基準が分からねえだろ。

 

 混乱が俺を包む。少なくともいえるのは、破壊以外に道があるという、可能性の破片がそこにあるということくらいであった。

 

 

 どっちでもいい。静流と生きる未来を作れるなら、何だってする。

 だから今は、ここを離れる必要があった。

 

 どのみち俺一人では鍵を破壊することは出来ない。そうするのであれば、一回は本部に帰らなければならない。

 しかし、その方法を選んだ場合、俺は小鳥を戦いの奥深くに巻き込んでしまうことになる。

 

 それは、嫌だった。

 

 会ってしまって、俺の決意は揺らぐようになっていた。

 こんなことなら会わなければと思ってしまう。

 

 けど、逃げたら逃げたで逃げたことを後悔する。人間というのはそういう生き物なんだろう。

 

 

 だから俺は精一杯悩むことにする。

 今は、時間を求めて。

 

 

「・・・俺、帰るわ」

 

「・・・そっか。・・・ね、瑚太朗君。もう一回聞いていいかな?」

 

「なんだ?」

 

「瑚太朗君は鍵を狙ってるの?」

 

「・・・言ったろ。分からないって」

 

「そっか」

 

「ただ」

 

 その言葉には続きがある。

 

 

「小鳥は、傷つけない。傷つけたくない。だから・・・ダメだと思ったら身を引いてくれ」

 

「・・・うん、頑張ってみる」

 

 きっと言うほど簡単ではない。苦しい道だけど分かってても進まなければならないのはもう知ってる。

 

 

 そうだろ? 静流。

 

 

「それじゃ、俺は戻るよ」

 

「うん。・・・お静さんと仲良くね」

 

 最後の言葉は風に流されて聞こえない。

 

 

 聞きなおすこともなく、俺は森を後にした。

 もう二度と、ここに来ることはないと思いながら。

 

 

 

===

 

【リライトメーター】70%

 

 




 再会していきます静流IF。とはいえ、期間が開いたので少しスランプ気味ですが。
 優しい目で見ていただければありがたいです。

 と言ったところで今回はこの辺で。
 感想、評価等お待ちしております。
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