星条旗を継ぐもの   作:吉高 礼一

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都構想否決きちゃ


#02 入学編②

──式は滞りなく進み、達也は学校生活で必須のIDカードを作るための列に並んでいた。

 

予め個々人のカードが作られている訳ではなく、その場で本人確認を行って交付となるため、こうして長蛇の列が出来るというわけだ。

 

アルフたちはすでにカードの交付を済ませ、人垣から一歩外れた所で達也を待っていた。

 

「待たせてすまないな」

 

「問題無いよ、それでタツヤは何組?」

 

アルフにそう言われ、達也は胸元に入れていたIDカードを見せる。

 

「E組!僕も一緒だ!」

 

「やたっ!同じクラスだね!」

 

「私も同じクラスです」

 

達也の返答に、アルフは彼を抱き寄せてハグし、エリカは飛び跳ね、美月は一般的なリアクションをして見せた。

 

「アタシはF組だ〜」

 

「アタシも違う〜」

 

エリカたちと一緒に来ていた二人の女子生徒はクラスが違ったため別れを告げて各々のホームルームへと友人を作りに行った。

 

「どうする?アタシたちも教室行く?」

 

「いいね、行こう」

 

エリカが達也とアルフレッドを見上げて聞く。アルフレッドは乗り気なようで、達也は用事があるので断った。

 

「妹さんと待ち合わせって…もしかして妹さんって?」

 

「新入生総代のシバ・ミユキさんか?」

 

「当たりだ、アルフ」

 

力強く頷いて達也は答える。

 

「えっ、そうなの?じゃあ双子?」

 

エリカがそう訊ねたのも無理はない。アルフレッドも美月も二人が双子だと思っていたからだ。この質問も、達也にとってお馴染みの質問だ。

 

「よく訊かれるけど双子じゃないよ。俺が四月生まれで妹が三月生まれだ」

 

「ふーん…やっぱりそういうのって複雑なもんなの?」

 

優等生な妹と同じ学年、劣等感を覚えてもおかしくは無い。エリカとしてはそんな意味で言った訳では無かったのだが、達也は笑ってその質問を流した。

 

「それにしてもよく分かったな、司波なんて珍しい名字じゃないのに」

 

「そうなのか?」

 

「騙されちゃダメよアルフ、十分珍しいわ」

 

真顔で横のエリカに訊くアルフレッドに、小さく笑って彼女はそう答える。同じように美月も小さく笑っていたが、どちらかと言うと慈愛とかそう笑みに彼女のものは似ていた。

 

「オーラが似てますもんね」

 

「そうか?遠目から見たからか分からなかったが」

 

美月の言葉に、アルフレッドは首を傾げる。それは達也も同じようだった。

 

深雪は身内の贔屓目を抜きにしても絶世の美女だ。よく「天は二物を与えず」と言うが、深雪を見ているとそんなことはないとつくづく思う。

 

達也は自身の容姿はよくて中の上、と評価しており、本当に血が繋がっているのか疑ったことも一度や二度ではない。

 

「そう言われれば…うん、似てる似てる。司波くん結構イケメンだしさ、こう…雰囲気も似てるよね」

 

「そうだな…確かに二人のオーラは似ている気がする。なんて言えばいいんだろうか、エリカ」

 

「私も今喉でつっかかってるのよね…なんて言えばいいんだろう?」

 

二人がうーんうーんと唸っていると、美月が助け舟を出した。

 

「お二人のオーラは凛とした面立ちがよく似ていますね」

 

「そう!それ」

 

「そうだな、その言葉が一番あっている」

 

エリカとアルフは大きく頷く。今度は達也が小さく笑う番だった。

 

「千葉さん、アルフ…君たちって実はお調子者だろう?」

 

「ムードメーカーと呼んでくれ」

 

お調子者ォ?ヒドーイと棒読みで抗議するエリカを無視して、アルフはそう冗談を言う。

 

「それにしても」

 

達也は美月の方に向き直る。

 

「柴田さんはホントに目がいいね」

 

その言葉に、美月の目が見開かれた。

 

「ん?ミツキは眼鏡をしているぞ、タツヤ」

 

「そういうことじゃないよ、それに彼女の眼鏡には度が入ってないだろう?」

 

達也にそう言われたアルフレッドは腰を屈め、美月と視線を合わせて彼女の眼鏡をよく見る。緑色の瞳に見つめられた美月はちょっとだけ頬を赤くし、顔を下に向けた。

 

「本当だ。…にしても、タツヤ」

 

「何だ?」

 

「妹さんが君を見つめているけど、放っておいていいのかい?」

 

アルフレッドにそう言われ、達也は後ろを振り向く。そこには、彼より一回り小さい待ち人がニコニコ笑顔で立っていた。

 

「お待たせしました、お兄様」

 

そう言って達也に向かって一礼する深雪。微笑みを浮かべている彼女だが、明らかに目が笑ってない。

 

(リーナも時々あんな目をしてたな…)

 

アルフレッドは深雪の目を見たことで、USNAに残してきたガールフレンドの姿を思い出した。

 

「早かったね」

 

達也は振り向きざまにそう言ってたが、何か思うことがあったのか、疑問形が文末に付いた感じだった。達也と深雪の話しているのが終わるまで待っていようとアルフレッドは講堂の柱にもたれかかろうとして、予想外の同伴者に気付いた。

 

「…マユミ先輩?」

 

「あら、また会いましたね、ロジャース君、司波君」

 

「美人の先輩とまた会えて嬉しいです、マユミ先輩」

 

「お世辞がお上手ね、ロジャース君」

 

「本気で言ってますよ?」

 

軽いジョークを交えて挨拶するアルフレッドとは対照的に、達也は無言で彼女に頭を下げる。無愛想な対応をされても微笑みを崩さないのは、流石「七草」の一員か、と達也は内心感心していた。

 

──七草真由美の実家、七草家は日本魔法師界のトップ、「十師族」のメンバーである。この十師族という括りは日本政府の持つ第一から第十まである研究所がルーツの強力な魔法師を代々輩出する家系であり、表立ってこそ行われないものの裏で行われている数々の優遇から彼らは現代の”華族”とも言われている。

 

「お兄様、その方たちは…?」

 

何故真由美と深雪が一緒にいるのかの説明より先に、深雪は達也にそう訊いた。別に隠す必要もないので、達也はすぐに答えた。

 

「こちらは千葉エリカさんと柴田美月さん。そしてこちらがアルフレッド・グラント・ロジャース君だ」

 

「そうですか…早速、クラスメイトとデートですか?」

 

「えっ、僕は君の眼中に無いのかい?それとも僕も含められてる?」

 

深雪の言葉に、真っ先に反応したアルフレッドだった。素っ頓狂な声を上げて、彼は抗議の声を上げる。大柄な体格に見合わぬ可笑しさに、思わず深雪がクスリと笑う。

 

「やぁ、ミユキさん。ご紹介に預かったアルフレッド・グラント・ロジャースだ。タツヤのボーイフレンドだよ、気軽にアルフと呼んでくれ」

 

そこを見逃さず、アルフレッドが手を差し出す。”ボーイフレンド”という言葉はそのままの意味だが、この話の流れだと些か誤解を生みそうだった。が、深雪は笑いながら差し出された手を握り返した。

 

「はじめまして、アルフ。私は司波深雪、一年生としてよろしくね。…なんて言うか、貴方って面白い人なのね」

 

アルフレッドの後にエリカと美月も続き、お世辞の十字砲火にあっていた深雪には砕けた態度のエリカとそして物腰柔らかな美月は合ったみたいで、達也は置いてきぼりな感が否めなかった。

 

「ありがとうな、アルフ。深雪も少しばかり気が楽になった」

 

「礼を言われるような事じゃないよ、タツヤ」

 

隣に戻ってきたアルフに小さく礼を言うと、達也は流石に通行の邪魔だな、と深雪に声をかけた。

 

「深雪、生徒会の方々の用事は済んだのかい?」

 

「大丈夫ですよ」

 

達也への返答は、深雪の少し後ろから返ってきた。

 

「今日はご挨拶させてもらっただけだから…私も深雪さんと呼んでいいかしら?」

 

「あっ、はい」

 

打ち解けた表情をすぐに切り替える深雪を見て、アルフは二人はきっと裕福な、優しい両親の元で育ったのだろうな、と勝手に推測していた。

 

「それじゃあ、私たちはこれで」

 

そう言って真由美が立ち去ろうとすると、隣の男子生徒─恐らく右腕のバンドから生徒会役員だろう─が彼女を呼び止めた。

 

「しかし会長、これでは予定が…」

 

「予め決められていたものでもないでしょう。別に予定があるならそちらを優先してもらいましょう」

 

なおも食い下がろうとする男子生徒を微笑みだけで制す真由美に、アルフは感嘆の息を漏らす。人の上に立つリーダーとして彼女は有能なのだろう。

 

「それでは深雪さん、今日はこれで。司波くんもロジャースくんも、また」

 

軽い会釈と共に真由美は立ち去っていく。その後ろに続く男子生徒の舌打ちの声が後味を悪くしたが、誰もそれには言及せずに少しの沈黙。

 

「…で、どうする?」

 

その沈黙を破ったのは、アルフレッドだった。

 

 

───────────

 

高校生活二日目の朝も、アルフレッドはいつも通り5時半に起き、ベットから出ると素早くスポーツウエアに着替え、家を出た。

 

彼は彼自身の血筋に由来する特殊な体質により、何もしなくともその岩のような屈強な肉体を保つことが出来る。にも関わらず、彼が毎日鍛錬を欠かさないのは飽くなき「強さ」への欲望と、ストイックさの賜物だ。

 

ハーフマラソンを僅か15分で完走する超人的な身体能力により、彼の毎朝のランニングコースは八王子市一周という化け物じみたものになっている。

 

「ハッ…ハッ…」

 

朝靄の晴れぬ道を車と並ぶ速度で走りながら、アルフレッドは色々と思考を巡らせる。

 

汗をかきながら、足を動かしながら、肺を激しく使いながら気になることをじっくりと考える。

 

(タツヤ…見た目は完全に平凡だったが…あの体つき、明らかに只者じゃない)

 

付くべきに所に必要な筋肉がついており、あの目の鋭さは無論生来のものだが、実戦を経験したもの特有の鋭さも多少合った。

 

間違いなく、彼は何か重大な秘密を抱えている。

 

そして、それはアルフレッドが命じられた任務のターゲットに繋がるもの、あるいは…

 

その時、不意に曲がり角から一人の少女が現れた。

 

「うわぁ!?」

 

瞬時に体を横にひねり、民家の外壁へと体をぶつけて少女を避ける。

 

時速60キロの速度で110キロ近い体重が激突したために、外壁は綺麗に砕け散ってしまった。

 

「…だ、大丈夫かい!?」

 

「あぁ、大丈夫。なんて事ないよ。君の方こそケガしてないかい?」

 

少女の手を取り瓦礫の中からアルフレッドは立ち上がる。目の前の少女はボーイッシュな印象を与えるショートヘアに赤い眼鏡をしており、来ている服がスポーツウエアなのも相まって、余計にボーイッシュだった。

 

「…コンクリートの外壁砕けてるけど」

「あー…気にしないでくれ」

 

瓦礫を隠すようにアルフレッドは立ち位置を替えて、少女にそう言う。

 

「君もしかして…魔法師?」

 

「よくわかったね、どうしてだい?」

 

「そりゃあ、あれだけのスピードを生身の人間が出せるとしたら自己加速術式くらいしかないだろう、違う?」

 

間違っても「生身です」とは言えず、アルフレッドは頷く。

 

「あぁ、自己紹介がまだだったね。僕は里美スバル、第一高校1年B組だ」

 

「八王子だから何となくは分かっていたが…僕はアルフレッド・グラント・ロジャース、第一高校1年E組だ。気軽にアルフと呼んでくれ」

 

「あぁ!噂のアメリカ人二科生かい?」

 

「噂になっているのかい?僕」

 

「そりゃ、こんなに体格がよくてイケメンだったら噂にもなるさ」

 

「スバル、君も中々クールだと思うけどな」

 

「ホントかい?嬉しいこと言ってくれるね」

 

ふと腕時計を確認すると時計の針は六時十五分を指していた。六時半までには家に帰らないと、朝のトレーニングに間に合わない。

 

「じゃあ…僕は時間だから失礼するよ。もし困ったことがあれば相談して、力になれるかもしれない」

 

「ありがとう、アルフ」

 

スバルと別れ、アルフレッドは何時もより更にペースを上げて自宅へと急いだ。

 

 

 

アルフレッドの自宅は第一高校から徒歩で20分ほどの所にあり、いわゆる豪邸の部類に入る。

 

地上二階立て、地下一階からなる白いコンクリート外壁の家に帰ってきたアルフレッドはそのままタオルで汗を拭くと、地下一階のトレーニングルームへと入る。

 

サンドバックやバーベル、ダンベル、アレイなど各種トレーニング器具が揃えられたこの部屋で、毎朝彼は45分の軽いトレーニングを行っている。

 

「フッ!ハッ!」

 

アルフレッドの体の中では常に「超人血清」と呼ばれる、身体能力を人間の限界レベルまで高める特殊な薬品が生成されており、それによってアルフレッドは超人的な身体能力を発揮することが出来る。

 

特筆すべき能力しか彼にはないが、その中から抜き取るとすればまず筋力だろう。

 

彼の拳は100キロはあるサンドバックを一撃で粉砕し、キックは1トンはある車を吹き飛ばす。

 

元々の身体能力でさえこれなのに、ケミカル強化など各種身体強化を受けた今のアルフレッドは、戦車やフル装備の戦闘機さえ持ち上げることが出来る。

 

また脚力も人間を辞めている。

 

自己加速術式と呼ばれる加速魔法を使用したフルマラソンの世界記録が56分40秒、それに対してアルフレッドは魔法を使用せずに1時間5分でフルマラソンを完走する。

 

自己加速術式を使えば驚くべきことに30分足らずで彼はフルマラソンを完走することが出来る。

 

そのスピードはスポーツカーなどと同レベルであり、これもまた彼の超人性を示している。

 

「…もう7時20分か」

 

時間を確認したアルフレッドは1階のシャワールームで汗を流すと、朝食とする。

 

『ボストンよりニュースをお届けします。直近1週間で、西海岸での人間主義者による抗議活動はその規模を拡大しており…』

 

アイルランドの伝統的な朝食で、ロジャース家の朝食でもあるアイリッシュブレックファストを食べながら、アルフレッドはアメリカのニュースをチェックする。

 

(リーナが心配だな…)

 

アメリカに置いてきた、ブルックリンの下町で共に育ったガールフレンドの身を案じながら、アルフレッドはあっという間に朝食を平らげる。

 

歯を磨いたり皿を洗ったりと色々した後、アルフレッドは自室のクローゼットを開けて制服を取り出す。

 

その時、クローゼットに掛けられた”スーツ”が視界に入る。万が一を考えて取り出そうか、とアルフレッドは手を伸ばす。

 

「いや…まだいいか」

 

しかし、まだ使う時ではないだろうと思って伸ばした手を引っ込める。

 

制服に着替えた後、アルフレッドは戸締りを確認してから家を出た。




話進まないな…そして文才を下さい
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