僕を殺して下さい   作:ぽぽろ

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修正 いじめ→虐め
地の文が多いのは許してください。


三話

人なんて物は力を外から少し加えられさえすれば変わってしまうものだ。

悪い意味でも良い意味でも。

 

例えば、キミが恋人とのデート、会社への通勤、学校への通学、友達と遊びに行くなんでもいい。それら約束にキミが寝坊をして時間が迫っていたとする。

それなのに乗るはずの電車が人身事故で大幅に遅れているとする。

するとキミは多少なりとも苛立つだろう。

 

自分は急いでいるのに。と

中々来ない電車に苛立ちが募る。

しかし、ニュースで自殺をした人は実は、虐めを受けていて耐えきれない末の自殺、本当は母親思いの良い子供、人に優しい友達も多い後輩にも慕われていた子供だった。

その優しいが故親に言い出せなくて電車に飛び込んだのだと、その辛さを綴った遺書をキミは見たとしよう。

 

そうすればどうだろう。多少なりとも憐れみの感情を持つのではないだろうか。

可哀想に、虐めは無くすべきだ、良い子供だったのに。持つ感想は人それぞれだろうがさっきまでの怒りは少しは薄れるだろう。

 

やじろべえの様に左に重りを付ければ左へ、右に付ければ右へ傾く。

外からテレビやラジオ、ネットの情報という重りを付ければ簡単に人はそちらに傾くものだ。

しかも、テレビは大勢を傾かせる事が出来る。

素晴らしき扇動機械。

 

と、このように人は個の力が強い様で案外、外からの力には弱いのだ。

特に日本人は。

だから、虐めの周りの静観者は、周りの同調圧力という呪いに飲み込まれ加担するのだ。

五人で話していた時に内四人が好きと言ったものを嫌いと言えるだろうか。

つまりはそういうものだ。

 

最近の歌やドラマの様な表面だけを掬いとった綺麗事や意味の無い言葉を羅烈した作文の様なものじゃ人間という自分に『賢き者(サピエンス)』なんて付ける傲慢で複雑で繊細で醜い人の本質や生態というのは理解は出来ない。

彼らは醜い部分を見ようとしないからだ。

 

***

 

なぁんて、小難しい事を考えて現実逃避していても現状は変わらない訳で。

傷が癒える事もないただの傷抉り。

学校の最中は何も考えない様にして不必要に傷つく事を抑えようとしていた為急に解放されて暇になったら考える事と言ったらその事しかなかった。

考える度に心をナイフで抉る痛みが走るが特に他に考えることはなかった。

 

連れてこられたシニヨンの髪の女の子の部屋を見渡す。

あまり褒められた行為ではないだろうが、これ以上はもう精神がバラバラに砕けそうになる。

そこにあるのは黒いマントに魔法陣、淀みの入った透き通っているはずの水晶。カラスの羽の様な物。

お世辞にも普通の女子高校生と言えない物が多くある。

 

彼女は一体なんなのだ。

 

僕を自分を顧みず助けてくれた彼女。

そんな人を僕は知らないし見た事もなかった。

皆知らないフリをして自分の心地の良い空間に閉じこもる。

自分の空間内の変化を恐れ、その範囲内でしか動かない。

そんな人ばかりだった。

出る杭は打たれるから必死に仲良しごっこに励んでいた。

 

確かに目の前で人が一人死なれたらトラウマ物かもしれない。

でもあのまま海に飛び込んだ僕を助けて、そして人を一人助けたという悦に浸る事も出来た。

それなのに彼女は更に止めようとした。

自分の家に連れ込むという形で。

 

僕は若いながら白髪の混じった髪を掻きむしった。

僕には分からない

僕に味方は居ない。敵ばかり。

今だって机の上のペンや消しゴム、棚の漫画、雑誌も僕目掛けてパレードを組んで歩いてきて小人みたいなのが僕の目の球を刺してくる。

外にはたくさんの目が、口が、手が、人が、下品に笑いながら見つめてくる。

僕を指さして、ゲラゲラと。

 

払っても払ってもまた僕の身体にしがみつき、槍のような物をブスブスと刺してくる。

 

段々と息が荒くなっていくのが分かった。

早く逃げないと……!この視線から、手から、人から、物から。

追い立てられる様に僕は扉を開けた。

 

僕はドアノブへ手を掛けた。

そして回して出ようとした時に彼女は肩にタオルを乗せてお風呂から丁度戻ってきていた。

 

「どうしたのよ。」

「えっと……その……」

 

別に怒られてる訳でもないのに、僕は萎縮していた。

彼女は僕を心配するかの様な優しい口調で語りかけてきた。

 

「まぁ、いきなり連れ込む様な事は悪いとは思ってるわよ。でもそうでもしないとアンタまたフラフラと消えそうだったから。」

「なんでキミは僕を助けて……」

「アンタも早く風呂に入ってきなさい!濡れたんだから風邪引くわよ!」

 

理由を尋ねる前に中断させるように口を挟んでくる。

彼女から貰った新しいバスタオルを手に僕はお風呂場へ教えて貰いながら向かった。

 

「とても寂しそう。」

 

***

 

暖かいお湯に浸かりながら思案する。

あそこまで手を差し伸べてくれようとした人は居なかった。

彼女は僕が自殺をしようとした理由までは追求してこなかったが察してはいるのだろう。

 

優しい人なんだな。

 

彼女と少しの間接して僕が感じた彼女の印象。

不用意に探ってこず、こちらを伺いながら包み込む様な優しさ。

言動は、少しツンとしているけれど奥底にはちゃんと彼女なりの優しさが含まれている。

 

だからこそ僕は彼女が眩しくて直視が出来なかった。

彼女を太陽とするならば、僕はその強い光によって映し出された物の影。

太陽がなければ存在できず、その光が強ければ強い程影も濃くなっていく。

ただ光を羨むことしか出来ない存在。

太陽の反対の月にすら及ばない非力な存在。

 

だからこそ僕は彼女が分からなかった。

窓から覗く月の錆びが一段と周りの影を濃く映し出す夜。

 

チャポンと水が跳ねる音が寂しく風呂場に響いていた。

 

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