色んな世界を渡り歩く男は、早く元の世界に戻りたい。   作:アラランド

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第三話 始まりの町、杜王町 その③

すっかり傷は治っていた。

 

「……波紋だ、これは」

 

喉に手を当てて体を起こした俺は開口一番、そう呟いた。

 

ジョジョの奇妙な冒険。

30年以上連載を続ける超人気漫画だと確信づいたのは、弓と矢、そして呼吸によって傷が治った現象だった。

M県S市杜王町……、時間軸はどうやら第4部、20世紀末あたりらしいが、俺が今行った呼吸法は主に第1部、第2部で使われているものだ。

 

「波紋の呼吸」

作中では別名「仙道」とも呼ばれる、チベットを発祥とする呼吸法。

特殊な呼吸方法を取り血液に波紋を起こすことでエネルギーを生み出す。

このエネルギーは太陽光と同じ波を持つ性質があり、これによって本来人間の医療行為に使われる波紋を攻撃手段として、敵として登場する太陽光を苦手とする吸血鬼、柱の男と戦うのが、ジョジョの奇妙な冒険第1部と、第2部の大まかなストーリーだ。

ジョジョと言えば背後に現れるスタンド、というイメージが強いが、このスタンドという概念が生まれたのは第3部からで、それ以前の2つの部においてはスタンドは登場しないのだが……、どうして第4部の世界に来て波紋なのか?

というかそもそもどうして俺が波紋の呼吸を使えるのだろう?

 

謎が深まるばかりだが、波紋の呼吸による身体の治癒が起きたという事は理解できた。

息が出来ずに無我夢中だったあの瞬間に自然に行ったあの特徴的な呼吸法の仕方は、どう考えたって波紋にしか考えられない。

 

「……もう一度やってみるか?」

 

心と体を落ち着かせ、さっき行ったように息を吸う。

コォォォォォォという呼吸音と共に、何かが体を伝わる感覚がある。

 

「……やっぱりコレ波紋だ、間違いない」

 

薄くだが稲妻のようなものが腕の筋肉を伝わっているのが見えた。特徴的な波紋のエネルギーだ。

 

「なんでスタンドのストーリーで波紋の呼吸なんか覚えたんだ……? スタンド……?」

 

そうだ、俺は今スタンドを開花させる矢に撃ち抜かれたんだ。

恐らく今さっきの青年の名は音石明、スタンドの矢を求めて確か名前は……形兆とかいった男と戦闘した後な筈の男だ。

作中で音石は、電気と同化するスタンド「レッド・ホット・チリ・ペッパー」を使って彼をコンセントへと引きずり込み、スタンド能力を目覚めさせる弓と矢を奪った。

 

「……あの丸焦げの人間は形兆だったのか」

 

全てが繋がった。

今俺はジョジョの奇妙な冒険第4部の世界の序盤、主人公の東方仗助が虹村億泰と出会い、形兆によって広瀬康一がスタンドに目覚めた後すぐの時間軸にやってきたんだ。

 

「俺にも、スタンドが……?」

 

自分の胸に手を当てる。

背後に謎の冷気を感じ、引き込まれるように振り返った。

 

「お前は……!」

 

俺はどうやら波紋の呼吸法の他に、スタンドも身につけてしまったようだ。

いきなり能力を2つも……。

 

「……ご都合主義だな」




以降主人公の得た能力を下記に記しておきます。
・波紋の呼吸法
特殊な呼吸を取る事で血液中から波紋エネルギーを生み出す。医療行為や太陽光を苦手とする相手に効果は抜群で、大量の波紋エネルギーは人体にも有害。
・スタンド
幽波紋とも言われる。精神エネルギーを具現化したもので、超能力を見える形に視覚化したような存在。様々な姿のスタンドがあるが主人公のは人型。名前、能力ともに現在は不明。
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