色んな世界を渡り歩く男は、早く元の世界に戻りたい。 作:アラランド
男は消えていた。
確かに俺はアイツの首をへし折ったはず、聞いたら少しトラウマになるような、骨が砕ける音が耳に入ったのをしっかり認識しているのに、あいつは倒れるどころか吐いた血一滴どこにも見当たらないのだ。
「あいつ、いったい何者なんだ……?」
俺はどうやら、この辺りで絶え行ったようだ。
先程の驚くほど冷静な思考判断は、一種のアドレナリンブーストのようなものだったのだろう。
並々ならぬ緊張が解けて疲れがどっと押し寄せた結果、俺は葉っぱが舞う林の中で、尻餅をつくようにして倒れてしまった。
意識が薄れる最後にかすんで見えたものは、拡散して消えていく俺のスタンドと、俺に近づく謎の人影。
その影は、何かが描かれた紙を俺の前に突き出した。
そうして、俺は意識を失ったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……っ、ここは……」
森林公園のベンチのようだった。
どうやらこの固いベンチの上で一晩横になっていたようで、体の節々が疼くように痛い。
走馬灯のように昨晩の出来事が脳裏によぎった後、痛む体に鞭を打ち、起きて辺りを見回した。
「……誰もいないな」
やはりそこには誰もいなかった。
刃物を突きつけた黒づくめの男と謎の人影、それらの痕跡はどこにも見当たらない。
俺に残されていたのは変わらず空腹だけだった。
「飯を、探さないと……」
眠っていたから少し空腹は和らいでいたが、それでも今日中に何か食べておかないとまずい事になるのは理解できる。
俺は重い腰を上げて微かに記憶に残る道を辿って、町へ戻ろうと歩を進めた。
時刻はおよそ朝10時、日照りが首元に差す快晴であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「
俺は自分のスタンドに、そう名前を付けた。
このスタンドが殴る蹴る以外にどんな特殊能力があるのかを理解したのだ。
昼の12時くらいだろうか、俺はしばらく歩き続けてやっと、人がいる街中へと戻ることができた。
昨日の反省を生かし、ちゃんと人に道を尋ねた。
駅はどこにありますかと問うと、彼らはとても丁寧にわかりやすく教えてくれた。
案内を元に道を辿っていった結果やはり、昨日は駅とは真逆の方向に向かってしまっていたようで、目覚めた場所から多分10分もかからない程度の場所に駅を見つけた時は、昨日の自分をまたも殴りつけたい気分になっていた。
「おいおい、そんな格好でおめえ何してんだ?」
黒の上下のスウェットに裸足だから、多分俺のことを指しているのだろう。
振り向くと、学ランに身を包んだ見るからに不良連中の5人組が、俺の方に好奇と嘲笑の視線を向けていた。
「……」
変なのに絡まれたな……、まるで4部の最初、仗助に絡んで鼻をひん曲げられた不良のような輩だ。
無視してその場を立ち去ったのだが、どうやらそれが気に食わなかったらしく、道中薄暗い裏路地を横切るところがあって、俺はその5分後くらいにそこで俺の後をつけてきた連中に絡まれたのだ。
今日も昼から忙しい。