まちカド魔王   作:白黒パーカー

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1話:最低最悪の魔王を夢に見る

 

「うー、今日も桃に勝てませんでした」

 

家に帰ってきた私の第一声はすごくどんよりしていました。

今日も桃に勝負を挑んだのですが、あっさりとあしらわれいつもの負けセリフとともに走り去ってしまったのです。

 

「シャミ子よ!負けてしまうとは情けないぞ !」

「ご先祖……ごめんなさい」

 

落ち込んでいるとハニワのような置物、通称邪神像からご先祖の声が聞こえてきます。

 

「今日という今日は私がシャミ子を強くしてやるから寝る準備をするのだ!お主が夢に入ったら私がバシバシし鍛えてやるからな!」

 

今日のご先祖様は熱血です。暑苦しくてちょっぴりうんざりしちゃうのは仕方ないと思います。

 

「うへぇ、夢の中でも筋トレはちょっと。体も心もヘトヘトになっちゃいます」

「別に筋トレとは言っておらんが」

 

なんと。

たしかにご先祖は筋トレをするなんて一言も言ってませんでした。

完全に桃のトレーニングの影響です!

もしかして、桃は私のことを筋トレ洗脳して、筋肉ダルマにしてやろうなんて考えてないですよね⁉︎

 

「とはいえ、シャミ子よ。今日はいつもより体を動かしていて疲れてるだろう。だから、少しお昼寝をするといい」

「そうですね。ご先祖の言う通り今日はちょっと疲れました。まだ夕ご飯まで時間があるので休むことにします」

 

ご先祖と話しながら、布団を引く。ずいぶんと手慣れたものだ。

そのまま私は布団の中に潜り込む。

 

「おやすみなさいシャミ子」

「おやすみなさい、です……ご先祖」

 

ふかふかの布団のおかげで意識がふわふわしてて気持ちがいいです。

そして、私の意識は完全に暗闇の中に沈みました。

 

 

 

 

 

 

「——目覚めよ」

「んぅ……」

 

私を呼ぶ声が聞こえます。

ご先祖が呼んでるのでしょうか。

 

「夢の世界によく来たな常磐ソウゴ。まだ若き頃の私よ」

「……ご先祖?」

 

布団から上半身を起こして、声のする方を見ると玉座がありました。

そこに座ってるのは破廉恥な格好をしているご先祖ではなく、ニチアサに出てきそうな黒と金のパワードスーツを着た人がいました。それはヒーローというよりはラスボスみたいな。

 

「らいだー……」

 

顔にはカタカナでらいだーと書かれてますが、名前でしょうか?

 

「いい加減私のことを認めろ。私こそが最善最高の魔王。——オーマジオウなのだからな」

「あのー、すいません。たぶん人違いだと思います」

 

私が声を掛けると、おーまじおうさんが黙っちゃいました。

顔が覆われていて表情がわかりません。

 

「…………」

「…………」

 

沈黙が痛いです。

 

「常磐ソウゴではないと?」

「はい。私、シャミ……じゃなくて吉田優子って言いますけ」

 

それにしてもご先祖はどこにいるのでしょうか。

辺りを見渡してもご先祖は見つかりません。

おーまじおうさんの顔を再び見ます。

 

「…………むむ」

「…………おや」

 

おーまじおうさんが唸りながら首を傾げるのにつられて、私まで首を傾げてしまいました。

本当にこの人誰なのでしょうか。

そう考えていると、先に話題を振ってきたのはおーまじおうさんです。

 

「ふむ。いつも時空を飛ばして呼び寄せるのはマンネリだと思い、趣向を変えて若き頃の私の精神世界に入ってみたのだが、どうやら接続先を間違えてしまったみたいだな」

「あのー、あなたはご先祖。リリス様の親戚かなにかですか?」

 

私がご先祖の名前を出すとあご?に手を置いて考える銅像みたいに悩んでいます。やっぱり知り合い?

 

「リリス?……ふむ、なるほど。……なに?私は優子にそれを渡すのか……。ならば未来であろうと現在であろうと情報を共有するのは当たり前か。……それにしてもこの世界もまた不思議なもので成り立っているみたいだな。仮面ライダーはいない。代わりに魔法少女というものがいるとは。そして、怪人ではなく魔族が対立している、か……」

「あの……」

 

なにかすごい独り言をつぶやいてますが、言ってることがなにもわかんないです。

頭をパンクさせながら、おそるおそるおーまじおうさんに声をかけました。

 

「あぁ、すまない。先ほどの質問だが私はお前の先祖ではない。言ってしまえば赤の他人だな。夢のかけ間違いをしてしまった」

「なるほどです」

 

どーやら、まったく知らない人みたいです。

というか夢のかけ間違いってなんですか?

杏里ちゃんがこの前してた電話のかけ間違いみたいなもの?

 

「私からもひとつ訪ねよう。吉田優子よ」

「えっと、はい。答えられることなら」

 

どこか威厳のある言葉遣い。

もしかしておーまじおうさんは、どこかの偉い人か王様でしょうか。

 

「私は優子とは初対面だが、この仮面ライダーの力を使いこの世界のこと、そして魔族を祖先に持ち、先祖返りをした優子のことを知った」

「かめんらいだー?」

 

どうしましょう。何を言ってるのか全然理解できないです。

頭にはてなを浮かべながらも次の言葉を待ちます。

 

「千代田桃。それがお前が最初に出会い、戦うべき宿敵である魔法少女だな」

「桃のことも知ってるんですか!」

 

知ってる名前が出てきて思わず立ち上がってしまいました。

おーまじおうさんも私の言葉にコクリと頷いてます。

 

「あぁ、もちろんだとも。優子が彼女に丸め込まれていることも、友達だと言うことを認められないこともな」

「べ、別に桃は友達とかそういうのじゃなくて、ライバルというか、宿敵なんです!」

 

友達という言葉にツンツンとしっぽが反応してしまいます。

桃がもっと素直に私に負けてくれれば、私も友達になれるのにとかそんなこと別に考えてません。

 

「ゆえに問おう。お前はその魔法少女を殺して、その先になにを求める?」

「え?」

 

ころす?

なんで急にそんな殺伐としたことになるのでしょうか。

 

「当然だろう。光の巫女である魔法少女と魔族は争うもの。今は和解できても、いつかは殺し合いをするものだ」

「そんなの……」

「ないとは言えないだろう?」

「…………」

 

たしかに桃は昔言ってました。

魔法少女の中には魔族の方々に容赦しない魔法少女がいると。

もしかしておーまじおうさんは、いつか桃との関係がそうなってしまうと言ってるのでしょうか?

 

私と桃が殺し合う。

そんなこと考えたことなかった。もし桃が死んだら……。

そう考えると体が震えてしまい、思わず目をつぶってしまいます。うっすら涙が出てきて止まりません。

 

何も見えなくなった代わりに、頭に思い浮かぶのは桃との思い出です。

酷い目にもたくさん遭いましたが、その日々は別に嫌いじゃありません。

私は桃とは殺し合いなんてしません!

 

「もう一度問おう。お前はその魔法少女を殺して、その先になにを求める?」

 

おーまじおうさんの言葉を聞いて、ゆっくりと目を開けます。

もう体は震えてません。

 

「私は殺し合いとかそういうのは考えたことないですけど。……桃とはそんなことしません!ただみんなが仲良くなれるなら、私はそれだけでいいでふ!あ、噛んじゃいました!」

 

カッコつけてたのに最後の最後で噛んでしまった。

顔が真っ赤になる。ものすごい恥ずかしー!

 

「ふふふふ。…………ははははは!」

「そんな笑わなくても!」

 

おーまじおうさんに大爆笑されました。

羞恥心で顔がもうボカボカに爆発しちゃいそうです。

今の私には両手で顔を覆うことしかできません。

 

「ははは、すまない優子よ。別にバカにしていたわけではない」

「へ、そうなんですか?」

 

どうやら私のことを笑っていたのは別に理由があるみたいです。

よかった、生き恥じにはならない。

 

「私を笑わせくれた礼だ。優子が願いを叶えるために最善最高の魔王の私からちょっとしたプレゼントをするとしよう」

「プレゼントですか?でも、ここは夢の世界ですよ?」

 

なんでしょう。やっぱりコーラとか?

それともご先祖みたいな破廉恥な衣装でしょうか?

それは恥ずかしいのでやめてほしいです。

 

「目覚めればすぐにわかる。そして、それの使い方は時がくれば自ずとわかるものだ」

 

「よき魔族になるのだ。吉田優子よ」その言葉を最後に私の意識は急に落ちてしまいました。

 

 

 

 

 

 

「シャミ子よ。目覚めよシャミ子よ!」

「うーん、もう朝ですか」

 

目が覚めるとご先祖が耳元で叫んでました。

うー、キンキンして頭が痛いです。

 

「よかったシャミ子よ」

 

どこか焦ったような声のご先祖。

 

「ご先祖?そんなに慌ててどうしたんですか?」

「シャミ子の精神世界に入ろうとしたけどなにかに邪魔されてな。ずっと入れなかったのだ」

「あー、そういえばおーまじおうさんがいたような」

「おーまじおう?」

 

上半身を起こしながら、夢の中の出来事を思い出そうとしてると指先にコツンとなにかがあたった。

 

「これなんですか?」

 

布団の中になにかが潜んでいました。

それは白色の置時計みたいなものと、おーまじおうさんみたいな顔が描かれた白い塊。でも、らいだーの文字はピンクです。

なんだろうと頭を悩ませていると、ふと頭になにかが流れ込んできました。

 

「じくうどらいばー?と、らいどうぉっち?——じおうってなんぞ?」

 

仮面ライダージオウ。

その言葉の意味はわかりません。

でも、そんな単語たちが頭の中に流れ込んできたのだけはわかりました。

 

もしかしてこれがおーまじおうさんが言っていたプレゼント?

 

 

 

 

 

 

私はあの日、最高最善の魔王に出会いました。

そして、私の行くべき未来がみんなとの関係 少しだけ変化したのはあとの話です。

 

 

 




パラレルラトラパンテ:額のライダーズクレスト上部にあるクロノグラフ状の器官。並行世界や別の時間軸に存在する変身者=自身の同一存在の意識を並列化し、感覚共有するデバイス。
すなわち、未来の優子が仮面ライダージオウになれるのなら、オーマジオウは彼女の意識を並列化し、感覚共有することもできる。
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