「……腹…減った…なぁ〜……。」
俺は燃え盛る街並みを無視して地面に寝転び辺りを見渡す。何でこんなことになったのだろうか?
俺の名前は雄二・石田、いや?石田雄二、10歳だ。名前に関しては両親の宗教上名前が前、名字が後ろになっていたが、俺自身これに違和感しかないしどちらかといえば神道の方が好きだ。両親は聖陽教の信者で俺の父である雄大・石田は消防官で母のアリス・石田は元シスターだ。組織形態についてよくは知らないが職場結婚の元、母はシスターを辞めたそうだ。
お気づきだと思うが、そんな環境で普通の子供が10年育ったなら自分の名前や宗教観に違和感を覚えるはずがない。俺は所謂、輪廻転生をして前世の記憶というものを持っているからだ。
俺の前世については省略する。他人が聞いたところで面白みがない充実した人生だったと伝えておく。また、記憶を完全に思い出したのは割と最近である。あれは、そう2年前に母が死んだ時の事だ。母が死ぬ前、俺は母と夕飯の買い物に行っていた。
「雄ちゃん、今日の晩御飯何にしようか?」
「母ちゃん、今日オムライス食べたい。」
「オムライスね。それじゃあ卵やネギ、ベーコンも買わなきゃね。雄ちゃん、しっかり覚えているのよ?」
「分かったー。」
「ふ〜ふふ〜ふ〜ん、ふっ!?うっ、あぁっ!?」
「痛ったー!………へっ?……。」
「嗚呼っ!にげ、…雄ぢゃん、ニゲデー!あああああああ!」
俺が母と近所のスーパーに行っている時に突然、苦しみ出し母の身体が燃え始めて焔ビトになった。母は最初俺に逃げるように叫んだが、当時の俺は年相応。腰が抜けて声も出ず思考が停止した。
「^_^」
「わ、うわあああー!」
焔ビトとなった母は笑いながら近くにいた俺を襲おうと此方に向かってきた。そこで漸く本能に従って逃げたが、すぐに捕まってしまった。
「母ちゃん!やめてよ!痛い痛い熱い!痛い!熱い!離れてよ!」
全身炎の母が俺を抱き寄せる。身体中がすごく痛くて熱い。しかし、何故か火傷しない俺の体。そんな事を思っていると消防官の父と仲間たちが到着し俺を見つけ救出する。
「大丈夫か!っ!?雄二!今助けるからな、待ってろよ!この!」
父は第3世代の消防官で掌から炎を放つ事が出来るそうだ。父達は火傷していない俺を見て不思議そうにしていたが、シスターアンジェラの祈りの元父が鎮魂した。
「シスターアンジェラ!祈りを!」
「はい!炎ハ魂ノ息吹。黒煙ハ魂ノ解放。灰ハ灰トシテソノ魂ヲ永遠ノ炎ニ帰セ。ラートム」
「「「「ラートム」」」」
「雄二!痛かったか、無事か?」
「うん、痛いけど、熱いけど、痛い。」
「そうか、もうちょっとしたら救急車来るから待ってろな。うん?雄二、母さんは?はぐれたのか?」
「うんうん、母ちゃんが突然燃え出して」
「はっ?えっ?ちょ、えっ?ごめんな。雄二、父さんちょっと疲れているみたいで聞き取れなかったんだけど、母さんは何処だって?」
「あっち…。母ちゃん、突然、燃えちゃった…」
「「「「………。」」」」
「………。うそ…だろ…。つまり、俺が…殺したのか…。」
「雄大さん!殺したのではなく鎮魂です。貴方が鎮魂しなかったら雄二君はアリスさんに殺されていました。アリスさんを子殺しする前の苦しみから救ったのです。」
「そうだ!それに、俺だって知らないとは言えシスターアリスに銃で撃った。その点で言えば俺だって同罪だ。いや、お前に鎮魂を命じた俺の方が重罪なはずだ。」
「俺もっす!」
「私もです!」
「自分もです!」
「シスターアンジェラ…。槇原中隊長…。みんなも…ごめん。ありがとう。少し落ち着いたよ。」
父達は俺の無事を喜んだが、母の居場所を俺に聞いた。俺は父達が鎮魂した場所を指差し答えた。全員何を言っているのか理解出来ず、父も酷く混乱して再度聞いてきた。今度も答えると絶句し父は両膝が崩れ落ち落ち込んだ。そんな父を見たシスターや父の仲間は励ましの声を掛けた。父は顔を上げると真っ青で呼吸が乱れていたが徐々に落ち着きを取り戻した。
「雄大、今日はもう帰って休め。中隊長命令だ。大隊長には俺から言っておく。」
「そうです。雄二君は私が付き添うます。中隊長よろしいですか?」
「ああ。シスターアンジェラお願いします。それでは、全員撤収。」
「ねぇ、父ちゃん、母ちゃんはどうなったの?」
「雄二….。母さんはね神様のところにお出掛けしたんだ。俺と一緒にお祈りしてくれるね。」
「雄二君、私の真似をして、ラートム」
「「ラートム」」
シスターと父と一緒にお祈り捧げていると救急車のサイレンが鳴り俺は疲れとかもあり意識が途絶えた。その後俺は父が言うには1週間高熱で目覚めなかったそうだ。
目が覚めた後、如何やら俺は第2世代の能力者らしく母が抱きついて全身火傷を負わなかったのはこの為だと教えてもらった。能力は"適応力"だって言っていた。本来第2世代、第3世代は必ず炎に適応出来ているから炎を操る事や放出する事が出来る。
でも俺の能力は身体の許容範囲以上の熱に対して適応して限界を伸ばす能力に特化しているらしく最早体質変化の域に達しているそうだ。その為に適応力に能力の全てを使っているから炎を操る事ができない。また、この能力は常時発動していて俺自身能力の操作は出来ず発動中は兎に角腹が減る。体質変化のためにエネルギーの消費が代償らしい。1週間高熱で眠っていたのは緊張や疲れもあったそうだけど体質の変化途中だったからと身体の休眠が理由じゃないかとお医者さんは言っていた。まあ、この時に俺はついでに前世の記憶を完全に思い出したのだ。
その後はと言うと、俺と父は父方の祖父母と共に暮らした。母は孤児院出身らしく頼れるのが祖父母だけだった。父は消防官を辞めなかった。母を鎮魂した事にショックを受けていたが「俺は消防官を誇りに思っているから、ごめんな、雄二。」と言って仕事に行った。
そんなこんなで2年暮らしていたが、今度は父が焔ビトになった。父は母とは違い何か角が生えていた。頭は爬虫類を思わせる様な形になり、両肩から翅が生えていた。下半身は蔓のような触手のような状態になり、正直目の前で変化しなかったら俺でも分からない異様な変化をしていた。焔ビトとなった父は飛んでは燃やし、飛んでは燃やしを繰り返し街を燃やし尽くした。今度はしっかり逃げられたが体力尽きて冒頭に戻り地面に寝そべった。
街中から沢山の悲鳴や叫び声、助けを求める声、肉の焦げる匂い、臓物をぶちまけた死体、半分焼け焦げた死体など、父が起こした事は色々あったが俺の頭は空腹を満たしたい事で頭いっぱいだった。非情だろうか?申し訳なさよりも空腹で理性が消えそうだった。
(あぁ…腹減ったなぁ…婆ちゃんの鶏胸肉野菜炒め…食い損ねたなぁ…。もう何でも良いから…なんかねぇかなぁ…。あっ。そう言えば、炎と言うか火って熱エネルギーじゃね?火に適応し続けた今の俺なら熱エネルギー食べれるのでは?よし、やってみよう。何とかなるだろ。)
空腹を満たすものがないか辺りを必死に探す。有るのは燃えている建物、焔ビト、死体、炎。今のところ生存者には会っていない。俺は餓死寸前の空腹感と現状について現実逃避した思考回路より導き出された答えが"火を食べること"だった。死体も美味しそうだったが、火や焔ビトの方が本能で美味しそうって思ったからだ。如何やら頭までおかしくなった様だ。
(でも、アレだ。何かのアニメで言っていたじゃないか"生きる事は食べる事だ。"って。なら仕方ないよね?俺が生きる為に食べるんだから仕方ないよね。一応感謝しておこう。"この世の全ての炎に感謝を。いただきます。")
取り敢えず近くにある炎に手を伸ばした。正直熱い。でも母に抱かれた熱さよりも温く感じる。口元に火を近づけるのか、手で掬う事が出来るかどちらかと言うと後者の様だ。手の上にある火はまるでバケツに入っているスライムを思わせるブヨブヨとした感触をしている。匂いは何故かミカンの様な香りがした事に驚きを隠せないが、(ぐぅ〜っ)って腹の音が鳴るし取り敢えず舌で舐めてみた。
(手、は熱いな。意外と炎は手で掬う事が出来るみたいだ。匂いは…ミカンだ。ミカンかぁ。めっちゃ美味そう。取り敢えず舐めてみるか。っ!?熱!そういや、俺猫舌なんだった。気をつけよう。ちょっとづつ慣れていこう。…。何だろうホカホカのみかんゼリー食べているみたいだ。気のせいかな、不思議と身体に力がみなぎる美味しさだ。美味いなぁ。今なら何でも出来そうだ。行くぜ!次元サッカーの如きシュート!。おお〜!。ぶっ飛んだ!それに足も痛くねぇ!よし!さっさと…逃げる…かぁ。腹が…減った。俺の身体燃費悪。もしかして、これって一時的な満腹感なのか?)
炎は案の定熱かった。でもそれは猫舌故の熱さで、それも次第に慣れていった。ホカホカのみかんゼリー味(仮)を食べ進めると身体中がポカポカ温まり不思議と全能感が出てきた。今なら何でも出来そうと調子に乗って近くの瓦礫を蹴ってみた。普通なら足が痛くなるところが瓦礫はまるでサッカーボールの様に飛んでいった。尚足に怪我はなく、痛みすらない。面白い感覚にさらに調子に乗ったが突然空腹感に苛まれる。如何やら俺の適応能力は火を食べる事で空腹を満たし身体能力を強化するが、一時的なものなのか、単純に身体の燃費が悪いのか直ぐに腹が減る。
(ああ。火ってエネルギー効率は良いけど、栄養分はないしなぁ。それじゃね?なら、エネルギーもあって栄養もありそうな焔ビト、食ってみるか。)
俺は近くにある炎を自身の限界まで食べた。食べ過ぎて吐きそうになったが、直ぐに空腹になると思い食べた。身体は今までに感じた事がない充実感があり、右手に拳を使って父ではない焔ビトの頭に振り下ろし地面に叩きつけた。
昔、焔ビトについて消防官である父が言っていた。焔ビトはシスターが祈りを捧げてからコアを破壊しないと太陽神の元にはいけないそうだ。
(まぁ、俺は太陽神には祈らないけど敢えて言うなら食の神には祈っているつもりだ。シスターの子供で無意味かもだけど、焔ビトさん。ありがとう。あなたの分まで俺は生きます。頂きます。)
焔ビトの味は美味だった。焔ビトの炎は塩と胡椒をまぶしたフライドポテトの様な病み付きになる味わいだった。肉体の方は芋繋がりなのかふかし芋みたいな味でバターが欲しかった。でも炎の味付けもありそれはそれで良いかも?と思った。そして残ったのは焔ビトのコア。人間で言う心臓部分。炎がまるで血の様に巡って脈動している感じがする。コアはソフトボール位の大きさで一口ではいけない。三口で行こう。
(美味いなぁ。炎とは違う味がする。スイカの味がする。炎だけとは違い満腹感もある。不思議と許容量が増えた様な気がする。だって吐き気が無くなったし。さて、バックれるかぁ。)
取り敢えず腹を満たした俺は強化された身体能力を生かし街から離れた。依然と街を燃やしている父だが、今の俺では勝てそうにないし、如何やら父の仲間さんが鎮魂したみたいだし大丈夫と思った。
(仮にこのまま無傷の俺が保護されたとして直ぐに俺の異常性がバレると思う。検査の為に灰島に行く事になるけど、父さんが焔ビトになる前に灰島が胡散臭いとか言っていたし、俺もあの大企業について何故独占禁止法とか問題にならないのか疑う気持ちがあるので行きたくないんだよなぁ。取り敢えず、銀行に行ってお金をパクってから考えよう。)
俺は死体の側にあったキャリーバッグをパクり中身を捨ててから、布で見た目を隠して銀行に向かった。銀行にはATMとかあったので引きちぎる。電源が落ちているためか警報はならない。あるだけお金を詰め込んで各地を転々とした。
2年も転々としながら炎や焔ビトを食べている生活をしていた。浅草の近くに来た時酉の市と言うお祭りを開催していたので遊んでいると夜焔ビトと遭遇した。いつも通り焔ビトを食べていると浅草の消防官に食事を見られてしまった。今更他人にどう思われても仕方ないので気にしていないが、案の定バケモノを見ている位驚かれた。生かす理由も無いが積極的に殺す理由も無いので立ち去ろうとすると隊長と思われる男と出会った。その後殺し合いを行い負けたが、何を思われたのか隊長さんに保護された。俺も死にたく無いので素直に従いなんだかんだで更に4年が過ぎた。正式な消防官では無いけど委嘱消防官として、普段は飲食店の料理人として過ごしている。
そんなある日隊長さんの元に第八消防官の皆さんが来て再び俺の人生が動き始めたのであった。
〜人物紹介〜
・主人公
石田雄二
16歳
165cm 60kg 小太り
母譲りの白髪アルビノでモヒカンヘアー
第二世代?能力 "暴食適応"
元々は炎に適応する身体に変化し続ける能力だったが、限界の一定ラインを超え、餓死寸前の空腹感と炎を食べる暴挙の末変化した。アレ以降検査をしていないので第二世代と言っている。火や焔ビトを食べると一時的な満腹感を得て身体能力を強化する。この事から実際には第三世代に変化している。普段からサーモグラフィーみたいに熱量を見る目に変化した為訓練後に片目だけ切り替えができる様になった。
委嘱消防官として活動。具体的には焔ビト鎮魂により燃え移る家屋の火を食べたりして消火、片付けを行う。基本的に浅草の人の焔ビトは食べてはダメだが、他の街の焔ビトはOKと隊長さんと約束した。
白装束に襲われた時アドラバーストの炎を食べる事ができず苦戦した。しかし、死の間際に前世の真島ヒロ先生の漫画を思い出し、強制的に餓死寸前まで身体を空にして食べ適応する事に成功する。アドラバースト使いとして覚醒する。
料理人としての腕前はようやく一人前になったばかり。特定の料理に特化しているのではなく広く深くを目標に色々作れる。最近はお菓子作りに没頭中。
性格は必要が無ければ他人と関わろうとしない。仕事中は必要がある為しっかり関わっている。人はいつか死ぬものと考えているので知っている人が死んだとしても残念に思う程度にドライ。しかし、自分の楽しみである食事と睡眠を邪魔されるのが大嫌い。外見の怖さもあり浅草で1人だけ世紀末状態。バイクと肩パッドと革ジャンとかが似合いそうと良く揶揄われる。
原作主人公のシンラ達のことは元々ウゼェーと思っていたが、アドラバースト覚醒後より関わってきた為、無視して居ないものと考えている。しかし、第八のマキさんに関しては見た目や腕っ節、性格を気に入っている。
正直続けるかはわからないので短編にしています。
原作未読なので何となくありそうな能力で書いています。
もし仮に主人公がアドラリンクした時の能力は周囲(人も含む)の熱を食べる事にで限定的な時間停止を作る。シンラやショウの様な世界的な時間停止ではなく自分以外の生命が活動休止=仮死状態にしたら相手は時間が止まった様に感じるよね?理論のもとの能力。(FGO参考)
それだけの熱量を吸収して身体強化するのでそれも相まって時間停止もどきになる。