ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~   作:月ノ輪

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人間側 ある冒険者パーティーと巨人

 

「あぁ…やっぱりデケえ…」

 

「普通に考えたら、勝てる相手じゃねえな…」

 

「仮に紅蓮の弓矢とかあっても、効かねえだろうなぁ…」

 

 

仲間達は戦々恐々。その視線の先には、地響きの如き足音立て蠢く巨大な存在。

 

 

 

そう。その日、俺達は思い出した。ヤツらに、巨人に支配されていた恐怖を―。

 

 

 

 

 

 

 

……いや、別に支配されていない。適当いっただけだ。うん。

 

 

改めて。俺達は調査兵だ…じゃない。とある冒険者パーティー。今日はここ『ジャイアントダンジョン』という場所にやってきている。

 

ここに棲んでいるのは、巨人。あのでっかい奴ら。そいつらが、まるで集落のように暮らしている。

 

 

俺達の目標は、そんな連中が持っている貴重品だ。ヤツら、特に女巨人とかは、巨大なアクセサリーとかを持っている。

 

それには、俺達が数人でがかりでないと抱えあげられない大きさの宝石とかがついている。それを持ちかえるのが目的だ。

 

最も重すぎるしデカすぎるから、端っこを削ったり欠けさせたりして持ち帰ることが多いが。ただそれでも、結構な稼ぎになる。大きいことは良い事だ。

 

 

 

しかし当然、巨人達にバレたら戦闘となる。戦わないに越したことはないため、一応は隠れて移動する。

 

もし、気づかれたなら? フッ…寧ろ、心のどこかではそれを望んでいるのかもしれない…。

 

 

俺達は、対巨人用に作られた特殊兵装を持ってきている。この、腰につけているやつがそうだ。

 

ワイヤーを撃ち出して高いところにくっつけ、それを高速巻き取り飛び上がることで三次元的戦闘を可能にする魔法の装備。 …いや、立体的な機動を行える装置と言うべきか。

 

それで巨人の首元まで一気に駆け上がり、剣で切り付け仕留める―。最高にカッコいい戦法だ。これを考えたヤツはよほどの天才だ。有名になっていることだろう。

 

 

 

フフッ…さあ、巨人ども、進撃してこい…! 狩人(イェーガー)のように、お前らを駆逐してやる…!

 

 

 

 

 

 

 

 

―と啖呵を切ったは良いが、やっぱり戦わずに済むならそれでいい。ダンジョン内の森や山、岩陰に潜みながら進むことに。

 

決して怖くなったわけではない。勘違いして貰っては困る。

 

 

そうだ、説明しそびれていた。ここジャイアントダンジョンはかなりの規模を誇るダンジョンだが、中身はどこにでもありそうな平和で田園風な景色広がるだけの場所。

 

恐らく、ここがダンジョンだと教えられなければわからないだろう。そんなダンジョンらしからぬダンジョン。…巨人が棲んでいる時点で、瞬時にヤバいのがわかるというツッコミは無粋だ。

 

 

あぁ、でも―。とんでもなくデカい巨人用の家はある。そして、そこが俺達の目的地でもある。さて、どう行くべきか。

 

 

 

そう悩みながら、深い茂みの中を匍匐前進。なにせ巨人達は上から見下ろしてくる。少しでも身を隠さないと、すぐに見つかってしまう。

 

 

うーん…向こうの方に、巨人がかなりの数がいるな…。どうにかして通らなければいけないのに…。

 

 

お、丁度よくその手前に大木が二本生えている。ここに隠れて様子を窺おう。

 

 

 

 

 

音を立てないよう、4人全員がそこへと移動。樹の影でとりあえず休憩。ちょっと軽食をとるか。パンと、ふかした芋。

 

 

しっかしこの樹、本当に太いな…。 なんとはなしに、ペシペシと叩いてみる。…ん? なんか、やけに柔らかい…?

 

というか樹の感触じゃないな、これ。なんだ…? やけにふにふにしていて、むにむにしている。この感触、まるで生き物の足…。

 

 

他の仲間も乗じ、パシパシと。―と、その直後…。

 

 

 

「きゃあああああっ!!」

 

 

 

 

 

ッ!? 響き渡ったのは、俺達のパーティーにはいない、女性の悲鳴。 どこから…真上から…? 

 

 

「「「「は…?」」」」

 

 

見上げた俺達は、そんな声を漏らしてしまう。 は…というよりかは、『ぱ』…。 そこにあったのは、縞々の……パンツ…!?

 

 

「こ、このっ…!変態冒険者っ!」

 

 

次の瞬間、大木の片方が勢いよく引かれ―。俺達に向かって来たあっっ!?

 

 

 

ドガァッッッ!

 

 

 

瞬間、全身を襲う衝撃。俺達は勢いよく空中へ舞い上げられてしまう。

 

その時、俺は見た。顔を真っ赤にして、こちらを睨みつけている女巨人の姿を…!!

 

 

そうか…俺達が隠れていたのは…女巨人の足元だったのかぁ…! 近すぎて、気づかなかった…!

 

 

これが本当の丸太のような足…。 言ってる場合かあああああああぁっ!! ど、こまで吹き飛ばされるんだあああっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ぐへっ…!」」」」

 

 

くるくるくると宙を舞い、俺達は何かに叩きつけられる。痛たたた…。

 

「なんだこれ…」

 

「壁…?」

 

顔を上げると、そこにあったのはどでかい壁。しめた、蹴り飛ばされたことで、目標である家へと辿り着いたらしい。

 

お、表札もある。えーと…『マリア』って書いてあるな。ということはさしずめ、これはウォール・マリ…

 

 

っは! そうだ、装置は!? 立体の機動ができる装置、さっきの激突で壊れてないよな…!?

 

 

―よかった。大丈夫そうだ。……さっき女巨人に蹴り飛ばされた際、これを使って張り付けばよかったんじゃないかって? 

 

いや、そんなの無理だろ…。巨人の動きに敏感な、面構えの違う奴らとかじゃなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

「よーし…丁度不在みたいだ。急いで金目のものを探すぞ」

 

そんな装置を使い、壁をよじ登る。そして家へと侵入を果たした。幸い、ここの住人はどこかに出かけているらしい。

 

この対巨人用の装置、クライミングにも使えるから実にありがたい。なにせ巨人の家具ってサイズに合わせて馬鹿でかいばかりだから。

 

 

ただ、巨人の連中は時折小さくなるらしく、それ用のミニチュア家具もある。シル●ニアファミリーか。

 

…ミニチュアといっても、俺達サイズだが。最悪ここで暮らしていくことも出来るのかもしれない。借りぐらしして。

 

 

 

 

 

 

「お! あったぞ! アクセサリー入れ!」

 

そんなことを考えているうちに、先に家具の上に登っていた仲間が声をあげる。目的のものが見つかったらしい。

 

俺もよじ登り、ご対面。立派な超巨大宝石箱だ。これを開ければ、ビッグサイズの指輪やネックレスがたっぷりと。

 

 

よしよし、重厚な鍵はかかっていない。パチンと留めてあるやつだけだ。まあ、鍵がかかっていてもこじ開けるだけ。

 

そこが俺達と、動物が違うところ。いくらカギをかけても、カチリカチリと解除できる。寧ろ、巨大な分やりやすいまである。鍵穴に入れたりするから。

 

 

さて、では肝心のお宝の様子を…。パカリと…!

 

 

「「「「おぉおーー…!」」」」

 

金銀、ダイヤモンドにルビーにエメラルド…!それが、大石サイズでゴロゴロと! これでも、巨人にとっては欠片のようなものなのかもしれない。

 

なら、一個ぐらい貰っても構わないだろう。ど・れ・に・し・よ・う・か・な…。…ん?

 

 

「なんだあれ…?」

 

 

 

 

 

 

 

綺麗に収まっているアクセサリー群の中に、妙なものを見つけた。指輪とかを入れる場所に、すっぽり嵌っているあれは…。

 

 

「宝箱…?」

 

 

別に、巨人サイズではない。他のダンジョンでもよく見る、普通サイズの宝箱。ただ若干豪奢な見た目。

 

なんでこんなところに宝箱が? 眉を潜めていると、仲間の1人がポンと手を打った。

 

「もしかして、宝箱型のアクセサリーとかじゃねえか?」

 

 

なるほど、そういうのもありかもしれない。丁度いい、あれを貰っていくことにしよう。

 

そうと決まれば、と仲間の1人が取りに向かう。よいしょ、と力いっぱい引き抜くと―。

 

「…あ?」

 

…あの宝箱、指の輪部分も、チェーン部分も、金具部分もついていない…。これじゃ、ただの宝箱…。

 

 

カパァッ

 

 

え…? あのアクセサリー、可動式…? 勝手に蓋部分が開いたぞ…。 あぁ、そこにチェーンとかが入って…。

 

 

バクゥッ!

「ぎゃああっ!」

 

 

!? 食われた…仲間が…!? いやあれ、ミミックじゃねえか!!

 

 

 

 

 

 

 

なんでこんなところに…!? その疑問が頭をよぎる隙すらなく、仲間の1人を呑み込んだ宝箱型ミミックはこちらへと跳ねてくる。

 

こうなれば、戦うしか…! そう決め、剣を引き抜いた瞬間だった。

 

 

「あば…あばばば…!」

 

背後にいた仲間が、麻痺したかのような声をあげて倒れた。ハッと見やると、そこには麻痺毒持ちの宝箱ヘビ…!

 

一体どこから…! なっ…! アクセサリーの一つが、何故かパカリと半分に割れている…! 不良品…なわけない! あれが棲み処だったのか!

 

 

「逃げるぞ!」

「お、おう!」

 

 

あっという間に2人やられてしまったのだ、一旦退くしかない。クソ…何故ミミックが…。

 

だが…ならば別の家に潜り込めばいい。他にも巨人の住宅はある。そこで漁れば良いだけのこと。もうこんな家にいる必要はない。外に飛び出し―。

 

 

ガチャ

「ただいまー。 あっ…」

 

「「あっ…」」

 

 

 

 

 

俺達は、首を思いっきり上げる。相手―、女巨人は、首を思いっきり下に向ける。

 

…家主が、帰ってきてしまったのだ。しかも…さっき俺達を蹴り飛ばした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッッッこのッ…!! 変態盗賊冒険者共がッ!」

 

再度、蹴りをしてくる女巨人。俺達はそれを慌てて回避。お、パンツ見えた。…デカすぎて、あんまりパンツ感がわからないが…。

 

 

というか、そんなこと気にしている状況ではない。なんとか脱出しなければ…!ならば!

 

「この巨人を駆逐するぞ! 左から、先に飛び上がれ!」

 

「わかった!」

 

残された仲間一人に号令をかけ、装置を起動。近くの家具にワイヤーをくっつけ…今だ! おりゃああ!

 

 

 

 

「えっ! ちょっと…!?」

 

勢いよく飛び上がってきた俺達に、女巨人は困惑。その隙が命取りだ! その首筋、思いっきり削ってや―

 

 

「ぐええっ…!」

 

…!? 耳に入って来たのは、先に女巨人の首筋へと向かっていた仲間の悲鳴。弾かれたようにそいつの方と見ると…嘘だろ…!

 

 

「イヤリングが…開いている…!?」

 

 

さっきの宝箱ヘビ達の棲み処と同じか…! イヤリングの一部がパカリと開き、中から出てきた触手が俺の仲間を絞めている…!

 

くっ…! お前の犠牲は無駄にしないぞ…! 

 

 

 

 

 

イヤリングを大きく避け、見えた―。うなじ…! ネックレスのチェーンが少し邪魔だが、切り付けるだけなら問題ない…!

 

 

俺は空中で体を大きく捻じり、回転するように剣を、女巨人の首元に―!

 

 

「はーいストライク♪ バッターアウト!」

 

 

は…?

 

 

 

 

刹那、俺は見た。ネックレスのチェーン、やけに大きめの留め具が開いて、触手が伸び…!しまっ…。

 

 

ギュルッ!

「うげぇっ…!?」

 

あっという間に縛り上げられ、剣も奪われてしまう。こ、こいつは…!

 

「選手全滅によりコールドゲーム!」

 

じょ、上位ミミックだと…! が…がふっ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

気づけば、復活魔法陣の上。装置も、武具も全部ロスト…。何の成果も、得られなかった…!

 

 

あの女巨人…ミミックを身に着けるなんて…! そんなのありかよ…。ちくしょう…!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「みんなー! ご飯できたよー!」

 

「「「わーい!」」」

 

 

所は戻り、巨人のダンジョン内。先程冒険者が侵入したところとは別の家。どうやら、丁度食事時の様子。

 

 

 

キッチンから出てきた女巨人は、机の上に大きな皿を置く。その周りには、雇ったミミック達。

 

「ちょっと待っててね~。 へあっ!」

 

と、女巨人は自身にミニマム化魔法をかけ、小さく。そして巨大となった食事の前に。

 

「「「頂きまーす!」」」

 

 

 

 

小さくなった女巨人とミミック達は、料理の山から掬ってもぐもぐ。いくら食べても、簡単には減らない。

 

これぞ巨人達の食事風景。巨人状態で料理を作り、小さくなって食べる。好きな物をお腹いっぱい食べられる、至福の技。

 

 

 

「いやーミミックの皆のおかげで安心してお出かけできちゃう! ありがと!」

 

「いえいえテタンさん、私達も楽しいです! ジュエリーボックスにスポッと嵌るの気持ちいいですし、身に着けてもらえるとずっと高いところから景色見れますし!」

 

 

食事しながら歓談する、女巨人テタンと上位ミミック。ふと、女巨人テタンは思い出したように話を。

 

 

「そうそう、さっきマリアって子のところに冒険者が侵入してきたらしいんだけど…アクセサリー全部無事だったし、首を切られかけたのも防いで貰ったって! やるね~」

 

 

凄いと褒めるように、うんうんと頷く女巨人テタン。それだけでは感動が収まらないのか、更に褒め称えた。

 

「まさにミミック達はうちらのスター…。『巨人の星』ってやつだよ!」

 

 

「なんかそれ、野球っぽいですね~。…でも、合ってるのかしら。『ジャイアンツ(巨人)』だし…」

 

女巨人テタンに返しつつ、そんなことを小さく呟いた上位ミミックなのであった。

 

 

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