ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~ 作:月ノ輪
魔物側 社長秘書アストの日誌
設置されているランプにシグナルが点灯していく。赤の光が段階を置いて、一つずつ。
それに合わせ私も、手にした大きいフラッグを握り直す。そして、出来る限りの大きい声で―。
「
――GO!! 」
シグナルが青の光を灯したタイミングにピッタリ合わせ、その白と黒の市松模様な、チェッカーフラッグなるものを勢いよく振る。
瞬間―――!
ヴォンヴォンヴォンヴォォオオオッッッ!!!
けたたましい爆音を立てながら、双陣の突風が私の真横を突き抜けてゆく。それに耐えつつ、過ぎ去った音の正体を見やると―。
「わ…もうあんな遠くに…!」
思わず、驚いてしまう。先程まで合図を待って唸りをあげていた、四輪の箱…もとい、『レーシングカー』は、既に小さくなっていたのだから…!
―さて、走っていった二台のレーシングカーが戻って来るまで、少しばかりこのダンジョンの説明を。
ここは『レーシングダンジョン』という場所。とはいっても、これまた普通のダンジョンとは装いがかなり違う。
敷地は基本的に地上なのだが、そこを構成するのは綺麗に、黒めに舗装された道路。それが長く、時には曲がり、時には坂を構成するように敷かれているのだ。
山間を縫い峠を越すルートもあるし、中には巨大なトンネルや水中ステージも。場所によっては空中を跳ぶ道すらもあるらしい。因みに観戦席とかの設備や、特殊なギミックとかもある。
これらは全て、あのレーシングカーのため。馬車よりも、鳥よりも高速で走り抜けるあの『車』のための専用コースが、幾つも用意されている特殊なダンジョンなのである。
――そう、あのレーシングカーは車。車輪を勢いよく回し、走っていくアレ。ただし、曳くための馬とか竜とかは存在せず、魔法によって搭乗者が自在にスピード調整できる代物。
ついでに、ウォータープルーフ魔法とかパラシュート魔法とか、激突防止魔法とかもたっぷりかけられてもいる。社長の箱並みに凄いかもしれない。
それに万が一に事故が起きたとしても…ここダンジョンだから復活できるし。
あ。そんなことを言っていたら、そろそろゴールしてくるみたい。中継してくれている魔法映像の位置情報的に。
なら準備しなければ。私がいるスタートラインは、そのままゴールラインなのである。 再度、チェッカーフラッグを手にして……もう微かに見えてきちゃった!
「せーのっ! それっ!」
ゴールはここです!と示すように、フラッグをブオンブオンと大きく振りまくる。するとラストスパートをかけるように、レーシングカーは更に速度を上げだした。
って…あれ!? よく見ると…二台ほぼ横並びにで走ってきている…! これはどっちが一着かわからない…!
どっちだ…! どっちだ…! どっち……!? 双方一歩も引かぬまま――。
「GOAL!!」
…私の目では、どっちが先にゴールしたかわからなかった…。私の魔眼は『鑑識眼』で、物事をスローモーションで見られる力はないから…。
というより、視力強化の魔法とかをかけておけばよかった…。もう遅いけど…。
まあでも、そんな心配はいらない。しっかりと判定用魔法も備えられているのだから。 さてさて、結果はと…。
映像画面へと目を移すと、ゴールした瞬間の映像が丁度パッと映し出されたところ。 わぁ…! ほんと僅差! 指一本分ぐらい?
しかし、しっかり差があったというのが明らかとなった。ということは、この先に出ているレーシングカーの搭乗者が―。
『只今のレース。【イダテン神】の勝利!』
そんな場内アナウンスが響き渡り、観戦していた他魔物達は良いレースだった!と歓声をあげる。私としては、ちょっと残念ではあるんだけど…確かに、白熱したレースであった。
と―。その結果発表を聞き、勝利したレーシングカー…孔雀のような塗装が施された車の扉が、バンッと開く。そして、威勢の良い女性の声が。
「よっしゃああああ!! ギリギリだったけどオレの勝利だ! 神の面目、なんとか保てたぜ!」
ひと振りの宝剣の絵が描かれた甲冑のような柄の、ぴっちりとしたレーサースーツなる姿の彼女は、その胸をガバッと開け風を入れる。
そして、派手めの兜柄のヘルメットをスポンと外す。現れたのは、勝利の高揚と安堵で上気した、格好いい女性の顔。
彼女は『イダテン神』。数いる神様の、その一柱である。
このダンジョンの様々な特殊機構、コースやレーシングカー諸々にかけられている魔法、そして幾台もある、様々な大きさや形、模様の車たち…。
それら全て、イダテン神様のお力によるもの。 ここは彼女が作った『遊び場』なのである。
なんでもイダテン神様、本来は守護や戦闘などなどの加護を持つ偉大な神様らしいのだが…どうやら『走り屋』の側面があるご様子。
そのため自らの分霊を作り出し、レーシングカーという特殊な乗り物まで作成して、日夜ここを走り回っているらしい。 コースに飽きても、神様だから自由に改造できるみたい。
因みに厨房を守る神様でもあるみたいで、料理の腕も素晴らしかった。 先程、『御馳走』を作ってくださったのだ。
今のこれは、その腹ごなしレースということ。 …私、へそ出しで生地がつるつるな『レースクイーン』衣装を着せてもらっていたんだけど……。お腹、膨らんでないよね…?
へ?社長はどこかって? まあ大体想像できるでしょう。
イダテン神様が乗っていたレーシングカーは、孔雀柄。お気に入りの柄らしい。
対して、それと競っていたもう一台のレーシングカー。そちらの柄は…宝箱。
もうおわかりなはず。そこからバンッと扉を開けて出てきたのは――。
「くぅぅうう! あとちょっとでしたのにぃ!」
―と、悔しそうな声を上げる、子供サイズのヘルメットとスーツを着た、宝箱入りのミミック。社長である。
そう。社長とイダテン神様、レースで勝負していたのだ。 結果は先の通りだが、双方歩み寄り健闘をたたえ合う。
「流石イダテン神様! 一回もまともに追い抜けませんでしたよ!」
「へっ!よく言うぜ! 初乗りの癖にオレと並び続けるなんてヤツ、見たことねえよ!」
がっしりと互いの手を握り合い、談笑するお二人。その顔には一切の恨み辛みはなく、爽やかな笑顔が。
……え?『初乗りの癖に』? えぇ、はい。嘘じゃありません。
社長、あれに…レーシングカーに乗ったのは今日が初めて。なのに、あの腕前。
一応私もちょっと乗せてもらったのだけど…丸いハンドルとか各レバーとかの操作を全くできなくて、あわや激突事故を起こしかけた。だからレースクイーンをしているわけで。
しかし社長は違った。乗って、軽く説明を受けたらあら不思議。まるで自らの手足の如く、もとい、自分の入っている箱のようにすいすいと走り出したのだ。
そして色んな技を魅せてくれた。急な曲がり角を、車輪を横滑りさせながら走る『ドリフト走行』なるものや、車輪痕で地面に円を描く技とか。
そして片側の二つの車輪だけでレーシングカーを立たせ、片輪走行なんかも。 とんでもない荒業だっていうのは、見ただけで分かるほど。
その様子は私はおろか、その場にいた他の魔物達、そしてイダテン神様すらも驚いていた。なんで初めてでそんな動きが出来るのか聞いてみると――。
「ほら、
―とのこと。 つまり、ミミックだからということ…? なら、考えるだけ負けかも…。
まあただ、レーシングカーを箱に置き換えて考えると…、確かに普段からやってることではあるのかな…?
「っっぷっはーーっ!! ひとっ走りした後のジュースは美味しいですね~!! お酒だったらもっと良いんでしょうけど…」
「呑むなら、もう今日は運転しないと決めてからだぜ。 酔っぱらっての運転は、いくらオレの力があっても危険だからよ!」
「はーい! 後にしまーす!」
コース端の休憩所で、冷たいジュースを飲みつつ語らう社長とイダテン神様…そして、私。 ということは、社長まだまだ遊ぶ気らしい。
…一応私達、依頼で来ているのだけど…。 なら今のうちに、商談を纏めておいた方が良いかな。そのほうが気兼ねなく楽しめるだろうし。
「イダテン神様。ご依頼内容をお聞かせいただいても?」
「お!そーだったそーだった! あまりにも社長の腕が良いモンだから、すっかり忘れかけてたぜ!」
私がそう話を切り出すと、危ない危ないと笑うイダテン神様。そして、ジュースをグイっとあおりながら教えてくださった。
「いやよ、ここって他の魔物やら人間やらにも開放してんだよ。ほら、そこら中にいるだろ?」
彼女にそう言われ、私は辺りを見渡してみる。確かに色んな場所に、人間達や亜人獣人など様々な人々が。
そんな彼らが、色んな車に乗って走り出している。四輪車だったり、二輪車だったり、小さいのだったり大きいのだったり。
自分の乗り物の持ち込みも問題ないらしいし、なんなら走ってコースを楽しむのもOKらしい。まさに様々な走り屋のためのダンジョンである。
おや、あそこの方は結構なご老体なお婆様だけど…。…わっ!? 凄い速度で、足で走り出した!? 時速100…いや140ぐらいは出てるんじゃないかって速さで消えていった…!
…あぁ…! そういえば聞いたことがある気が…『ターボおばあちゃん』という妖怪の方を…。もしやその御方かもしれない。
…えっ!? 他にもお爺様だったり、毬をついている女の子だったり、赤ちゃんだったり、ホッピングや棺桶を手にしていたり、ミサイル?に乗ってたり…。
なんか、すっごい妙な集団が、走っていっちゃった……。 なんか、伝説になりそう…。
気を取り直して…あちらの方には、側面に『95』と数字が描かれた、真っ赤な色のレーシングカーが…。…あれ!? なんか…正面に大きな目があるような…!? その下に、口もある!?
そこに、ちょっと古びた様子の、背の荷台にクレーン?のような物を乗せた車が…。 それにも目と口が…! しかも出っ歯!
他にも、何台か…。 何かを話しつつ、タイヤを上げたり下げたり妙な動きをしながら行ってしまった…。
レーシングカーの集団…。 レーシング『
そして向こうの方には、真っ黒なピッチリスーツ…『ライダースーツ』というらしいそれに全身を包み、同じように真っ黒な二輪車に乗っている方が。人の姿である。
どうやら女性のご様子。かなりスタイルが良い。 あと、黄色なネコ耳つきヘルメットを被って…あ、外した…わ!
首が…ない…! どうやら『デュラハン』の御方らしい。 しかし、普通デュラハンの方は鎧と馬に乗っているイメージがあるが…あのような方もいるんだ。
お、走り出した。 …? 多分、結構離れているせいなのだろう。 駆動音が変に聞こえてきた。『ブロロロ!!』とかじゃなく、『デュラララ!!』って。
おっとしまった…。つい来訪者観察に夢中になってしまった。改めて、イダテン神様のお話へと。
「―んでよ! 最近ここの噂を聞きつけて遊びに来る連中が多くてな。千客万来ってやつよ! そうすると、悪いこと考える奴も増えちまって…」
そう話を進めつつ、手にしたジュースを飲み干すイダテン神様。そして面倒そうに肩を竦めた。
「勝手に賭けを始めたり、走っている奴を誰彼構わず煽ったり、中にはレーシングカーを盗もうとするヤロウもいるんだ!」
と、話していて怒り心頭に達したのか、イダテン神様は手にしたジュースの缶をぐしゃりと握り潰…というか、消滅させた…!
「オレぁ、そういうのは許せねえタチでよ! 見つけ次第ブッ飛ばしに行ってるんだが…。ついついやりすぎちゃってよ、車ごと『メッ』しちまうんだ」
…そのメッ、は、『滅』であろう…。まあ神様のお膝元で悪さするのがいけないし。
それにダンジョンなので、復活魔法陣によって復活できるから…やりすぎという事は、ない…?
しかしイダテン神様はそれでは納得できないらしく、あぐらをかきつつ、ずいっと顔をこちらへ。
「オレとしてもできれば、反省させて改心させたいわけだ。そのためにゃぁ、バレずに連中に迫れて、とっ捕まえられる存在が適任かと思ったんだが…」
そこで不意に言葉を切った彼女は、社長を抱え上げるようにし、あぐらをかいている足の上に乗せた。
「さっきのテクニックを見たら、別に隠れる必要もねえや! な? 車を思いっきり激突させて止めても何しても良いから、連中をふん縛る手伝い、してくんねえか?」
オレの加護がかかってるダンジョンだ、大抵のことは
「えぇ!おまかせあれ! 私の所感ですけど…ミミック達のほとんどは、ここを気に入りますよ! 中でも、走り屋気質な子達を派遣いたしましょう!」
…確かにいる。社内を宝箱で爆走している子達が結構…。 私が歩いていると脛にぶつかってきそうでちょっと怖いのだ。 適材適所とはこのことであろう。
なにはともあれ商談成立。契約書にサインも戴き、後は自由。
すると、やはりまだまだ走る気満々な社長達。しかも先程とは別のレーシングカーでバトルする気らしく……。
「うーし! じゃあ、こいつで勝負といこうか!!」
イダテン神様とその眷属の方が走らせてきたのは――。
「でかっ…!?」
思わず声を出して驚いてしまった…。 さっき社長達が乗っていたやつは、体高が私の胸の辺りぐらいの大きさであった。
しかしこれは…随分と巨大…! 私が縦に2人…いや下手したら3人ぐらいは並べられそうな高さをしている…!
「これは『トレーラー』っていう種類の一つでよ! オレは『コンボイ』って呼んでるんだ!」
高いところにある運転席の窓から顔を出し、教えてくださるイダテン神様。 というかこれ…! 煙突みたいなところからすっごい煙を吹き出してるんだけど…!? うわっ!火も…!?
大丈夫かな…? 爆発とかしないかな…? 私がそう不安がっていると、イダテン神様はケラケラと。
「だーいじょぶだって! これはギミック!格好いいだろ? けど、パワーはさっきのとはダンチだぜ?」
先程以上の爆音を鳴らし、そのトレーラー?コンボイ?はグオングオンと揺れる。 確かに、とんでもないエネルギーを感じる……。
ん? 何か書いてある…? 『使用エネルギー:エネルゴン』…。 なにそれ?
それはともかく。こんなじゃじゃ馬そうなのに乗って、社長大丈夫かな…。 とか思っている間に乗り込んでるし!
仕方ない。私はさっきみたいに観戦に徹することにしよう……へっ?
身体が、動かない…!? よく見ると、社長が触手を伸ばして私を捕まえていた…。な、なんで…? ―もしかして!?
「私にいい考えがあるの! 今度はアストも一緒に楽しみましょ!」
や、やっぱり!? しかも有無を言わせる気なく、助手席に引っ張られぇぇぇぇ…………。
「さあ社長! 準備は良いかぁ!? オレもまだ、こいつには慣れ切ってない。 勝ってみせなァ!」
「えぇ!さっきと変わらず本気で! 『掟破りのミミック走り』、お見せいたしましょう!」
運転席に取り付けられた通信魔法越しに、牽制し合うイダテン神様と社長。…その社長の横で、私はシートベルトをぎっちり掴んで震えてるのだけど……。
「そう怖がるなってアスト! オレの力で怪我しないようにはなってっから!」
「そうよ! 壁にぶつかってもボヨンッてなるみたいよ! ま、そんなミスする気はないけど!」
お二人とも、そう励ましてくださるが…。 真剣勝負みたいだし、やっぱり私は降りたほ―
「「
「ほああああああああっ!?」
盛大に響く、地面が割れるほどの駆動音! グイッと、後ろに押し付けられる重い感覚! 勢いよく揺れ動く窓の外の景色ぃ!
動き出してしまった…! 動き出してしまった!! ひゃぁぁぁぁ!!!
もはや私は、椅子に縋りつくだけで精いっぱい。だというのに社長たちは――。
「へっ! 良いスタートダッシュじゃねえか! しかしオレの『イダテン走り』について来れるかぁ!?」
「ぬー!? 更に加速ですって! ならばミミック走りの神髄、今こそここに!」
そんな感じで、煽り合ってらっしゃる…! ってきゃあっ!? 席が…! いや乗り物自体が浮き上がって!?
「なんだとォ!? アクセル全開のまま、空中ジャンプ!? 『空中に描くライン』で…飛距離で稼いできやがった!?」
「へへ~! 見ましたか! ミミックですから、
いや、ミミックだからって出来る技じゃないと思うのだけど…!? って!?
「社長、前! 前!! 壁です!!」
「へ? やっばぁ!? けどここで! インド人を…じゃない、ハンドルを思いっきり右に!!」
触手を複数使用し、丸いハンドルを勢いよく回す社長。 うぇぇ…! 身体が持ってかれるぅ…!?
「おっとっと! 危ない危ない!」
「へっ! おっさき~!」
「あー! させませんよぉ~!!」
更にデッドヒートを続けてゆく社長たち。 私は…私は…もう……うっぷ…
「気゛持゛ち゛悪゛い゛で ず ……」
「ごめんなさいアスト…。 つい興が乗っちゃって…」
「気づいてやれなくて悪かったぜ……」
バトル終了後…休憩ベンチにへたり込んでしまった私へ、社長とイダテン神様は申し訳なさそうに。
そりゃあれだけ目まぐるしく動くのだもの…酔うに決まってる……。 うぇぇ…。
え…? 勝負の結果ぁ…? ピッタリ同着ゴールとかだって気がぁ…。よく覚えてない……。
もう暫く、乗り物全般見たくない…。 くらくらする頭でそう思っていると…お二人が何かを話し合っている様子。そして社長が―。
「ね、アスト。 えっと…もうひとっ走りだけ、付き合って貰えないかしら…?」
…正直拒否したかったけど…社長とイダテン神様2人がかりで宥めすかされ、渋々了承。
歩けるまでには回復したため、自らの足で車まで赴くと……そこにはさっきの大きなトレーラーだかコンボイだかが。
そして同じように、社長が運転で、私が助手席に…。すると、社長がちょいちょいと指さした。
「アスト、そこじゃなくてね…。 その窓に腰かけて!」
えっ!? 窓に!? けどどうやって…? 眉を潜めていると、イダテン神様が乗り方を教えてくださった。
開けた窓から上半身を出すように…、窓枠にお尻とか太ももとかを載せるように…? なんか、少なくとも正しい乗り方じゃないような…。
そして落ちないか心配だったけど、イダテン神様が魔法をかけてくださった。社長も触手で支えを作ってくれ、お尻が痛くならないようにクッション代わりにもなってくれた。
「そんで、ここのレバーを引けば音とか振動とかを極力抑えて、ゆっくりめに走るからよ。 あ、そっちは
「はーい。 それじゃ、行きまーす!」
イダテン神様から少し講釈を受け、発進させる社長。わ…速い…! …けど、気持ちいい速度…!
しかも、体を外に出しているおかげで、心地よい風が身体に…! 良い、これ…!気持ち悪さが消えてく…! そして―!
「イダテン神様に聞いたのだけど、それ『箱乗り』っていうんだって! アストもちょっと、
「はい! 凄く楽しいです!」
社長の問いに、私は元気よく答えた。 だって、本当に楽しい…!! やっちゃいけない感半端ないけど!
少し高いところから景色を見やりつつ、身に軽く叩く風を味わう。 ワクワクすら感じるこの乗り方を、私はもう暫く堪能させて貰ったのであった―。