ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~   作:月ノ輪

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我が社の日常:市場で取引お買い物⑦終

社長入り宝箱を持ってくれたまま、先頭を行くラティッカさん。それに連れられ、私とネヴィリー。

 

 

そして、たどり着いたのは――。

 

 

 

「魔法アイテムショップ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その名の通りここは、様々な魔法(マジック)アイテムを売っているお店。例えば『身代わりブレスレット』とか『パワーアップドリンク』とか『魔法液晶スクリーン』とか…。

 

 

まあ要は雑貨屋。ここは結構大きめみたい。 そして…わかった。なんでここに来たのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔するよ~」

 

 

「いらっしゃいませ~! あれ?ラティッカじゃないか? 渡した代金、間違ってたか?」

 

 

「いや、今回は客として来たんだ」

 

 

店員さんに軽く挨拶をし、ラティッカさんは私達を招き入れる。そして店員さんに質問を。

 

 

「さっき卸した箱、もう並んでる?」

 

 

「あ、あぁ。さっき出したばかりだ。 なんか異常でもあったのか? それとも、その持ってる箱も売ってくれるのか?」

 

 

「いやいや、これは違うし。あーだから…客を連れて来てあげたってとこだよ」

 

 

 

そう話を交わすラティッカさん達。ということは…間違いない。

 

 

 

 

 

先程ちょろっと言ったけど、ラティッカさん達は『ミミック用に作った特製箱』を時折市場に流している。普通の箱から、特殊機構をつけたのまで。

 

 

勿論、箱工房の面々が暇つぶしに作ったものや数余り品などの所謂余剰品で、どれだけ売ったかは社長も私も報告を受け、大体は把握している。

 

 

けど、どこのお店に売るのかはほぼノータッチ。そもそも頼まれて卸しているみたいだし、私達もラティッカさん達を信用しているから問題ない。

 

 

 

だからパッとはわからなったけど…。この店は、その特製箱を卸しているところ。

 

 

そして今日も幾つか持ってきて、既に取引を終えていたということなのだろう。

 

 

 

 

 

 

「えーと…。アストがこれを買った店とは違うけど、ここも品揃えがいいぜ! …とでも言えばいいかな…?」

 

 

「…? なあラティッカ、お前なら買わんでも作れるんじゃ? というかその後ろの女の子、お前が話してくれる仕事仲間の子じゃあ…?」

 

 

「事情あんだよ…詮索すんな! ほら、早く売り場に案内してくれ!」

 

 

 

ネヴィリーにそう説明し、店員さんともコソコソ話し背を押し、こっちこっちと手招きするラティッカさん。

 

 

その様子に私がちょっと渋い顔を浮かべていると…流石にたまらなくなったのか、ネヴィリーが恐る恐る聞いてきた。

 

 

「お嬢様…。ラティッカ様は箱作りもなされているのですか…?」

 

 

「いや…まあ…その…。色々作れる人というか……」

 

 

「…あの…では……。お嬢様が購入なされたあの箱は……」

 

 

「えーと…なんというかそれは……。…あー…えっと…同業他社の市場調査がてら…ついでに性能確認のために…とか…なんというか……」

 

 

今しがたのラティッカさんの会話で、こっちもちょっとボロが出始めた気が…。

 

 

本当にテキトーな…というか嘘を言うしかなかった…。同業他社なんているわけないのに。

 

 

…ちょっとネヴィリーの顔を見ると…。うん、信じてはいなさそう…。さっきのことがあるから詰め寄ってくることはないけど…。

 

 

 

まあ、ラティッカさんのせいだけじゃない。そもそもが無理やりの誤魔化しだったんだもの。仕方ない。

 

 

……もうバラしちゃおうかな…。今のネヴィリーなら…。…でもなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを悩みつつ、ラティッカさんの後を。すると店の一角に、突如として大量の箱が並んでいるコーナーが。

 

 

そしてそのどれもこれもが…見覚えあり。やはり全部、『箱工房』製である。そして、各ダンジョンのミミック用に作った代物。

 

 

 

「どうだ、沢山あるだろ!」

 

 

店員さんを追い払ってから、胸を張るラティッカさん。…いやまあ、作って卸したのあなた方ですしね…。

 

 

あぁもういいや! 幸いこのコーナーにはミミックも他魔物もいないし…ちゃっちゃと選んじゃおう!

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり実用的なものとなると、この辺かなって」

 

 

「それでも色々ございますね…。こちらはどのような?」

 

 

「それはケンタウ…じゃなくて、馬の背に乗せる箱です。負担がほぼ無く、全くずり落ちないような造り…って書いてあります」

 

 

「なるほど…。あら、こちらは…?」

 

 

「それは『クーラーボックス』で…。周囲の魔力を使い、箱の内部を常に冷やし続けられる…らしいです」

 

 

「まあ!便利でございますね! おやこれは? 料理のサーブ用の…?」 

 

 

「あぁそれは中が温められるようになっていて、どんなときでも常に美味しい温度を維持できる……んですって」

 

 

「それは素晴らしい…! ……因みに、あちらの方にある箱…箱?は…? 樽やら機雷やら毛玉やら…。しかも、あちらの方が種類が多い…」

 

 

「…見なかったことにしてください……」

 

 

 

 

 

まあそんな感じに、色々と物色。そんな中、ネヴィリーが一際興味を示したのは…。

 

 

「こちらは? 見たところ、普通の箱のようですが…」

 

 

「…あれ? これって…何…?」

 

 

私でもわからない、抱えられるサイズの大きめ箱。『超大人気商品、ついに再入荷!』とPOPも張ってある。

 

 

ここに置いてあるという事は、間違いなく箱工房製なはずだけど……。あんまり見覚えがない…。

 

 

そう首を捻っていたら…ラティッカさんが説明を挟んでくれた。

 

 

 

「あぁ、それはミミ…とある魔物を参考にしたヤツだね。 ちょっと横に置いてある砂袋を入れてみな」

 

 

そう言われ横を見ると、明らかに重そうな袋が幾つも。中には箱を超えるサイズすら。 それをよいしょと持ち上げ、入れてみると…!?

 

 

「わっ!? どんどん入る!?」

 

 

まるでスポンと奥底に消えるように、砂袋が入っていく。更に幾つも幾つも入れて…ようやく箱一杯に。

 

 

なるほど…。ミミックの収納能力を参考にした一品らしい。ミミック無しでこんなのも作れちゃうんだ…。そう感心していると―。

 

 

「んで、持ち上げてみな?」

 

 

…え。 入れた砂袋の量は、私の体重を上回るぐらいにはなってるはず…。流石にそれは…。

 

 

「では、(わたくし)めが失礼いたしまして…」

 

 

と、代わりにネヴィリーが腰をかがめる。そして力をいれて…―。

 

 

「わわっ!? か、軽い!?」

 

 

立ち上がった勢いで、背後にズッコケそうになるネヴィリー。私が慌てて支え事なきを得たけど…。この箱…!

 

 

「な? 重さもかなり軽減される造りなんだ! 中も潰れることがないから、大量の買い出しとかに便利だと思うぜ?」

 

 

そう笑うラティッカさん。ネヴィリーの目は今日最高の輝きかた。中の袋を取り出し詰め直し持ち上げを何度も繰り返している。

 

 

…その隙に、私はラティッカさんに耳打ちを…。

 

 

 

「あんな箱、いつの間に…?」

 

 

「アストから教わった魔法とかを組み合わさったら偶然な。前に術式作ってって頼んだことあったろ?」

 

 

そんなこと、あったようななかったような…。けどそのレベルということは、大分前のこと。つまり、あの箱が完成したのはかなり前…。

 

 

なのになんで知らなかったんだろう? そう思っていると…。

 

 

「作ったは良いけど、ミミックが持ってる力そのものだからな…。アストも要らないだろ?」

 

 

 

…あー。そういう…。 確かにあれ、ミミック達が必ず持っている能力そのまま。それなら誰も必要としないだろう。

 

 

私も重い物持つときは魔法使うし、ラティッカさん達もあの箱を必要としない。そりゃ知らない訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その箱をお買い上げすることに。勿論、支払いは私。

 

 

因みにラティッカさんが、『一応それ、うちに在庫あるから買わなくても―』とか漏らしかけていたが…即座に社長の宝箱から触手が伸び、口封じをしてくれた。

 

 

 

……あと怖かったのが…。お会計までの途中にあった、魔法液晶スクリーン…。

 

 

性能紹介のため色んな映像を流しているのだけど…。その中に、我が社のCMが流れていて…!

 

 

流して貰えるのは凄く有難いのだけど…今回ばかりは肝が冷えた…。慌ててネヴィリーに見えないように身体で遮ったし。

 

 

 

それでも、『ダンジョンからのご依頼、承ります!』と社長と私の声で宣伝していたから…。気が気じゃなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に幾つかお店を巡り、アスタロト家の召使全員で食べられるぐらいに大量のお菓子を箱に。ついでに両親達への一筆も入れ…これで良しと。

 

 

 

「じゃあネヴィリー。また帰った時に! 皆によろしくね」

 

 

「はいお嬢様。お心のこもった戴き物、大切にいたします。 どうか、お身体にお気をつけて」

 

 

 

社長入り宝箱を抱えた私に、お菓子入り宝箱を抱えたネヴィリーが深々と一礼を。…なんともシュールな図でだけど、とりあえずお別れ。

 

 

 

 

「……教えてやっても良かったんじゃないか?」

 

 

ふと、隣を歩くラティッカさんがそう聞いてくる。それに私は肩を竦める。

 

 

「隠していた方が気が楽だと思いまして…。…まあ、どっと疲れましたけど…」

 

 

「ははっ!みたいだな。 社長に感謝しときなよ?」

 

 

「えぇ、本当に。 有難うございます、しゃちょ――」

 

 

 

 

「ケッ! どいたどいたァ! 道開けろ一般人共! うちの大将様がお通りだァ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「わっと……!」」

 

 

突如として正面からやってきた変な集団に、私達は押しのけられる。しかしそれを謝ってくることなく、幾人かが更に息巻いた。

 

 

「こちらの方をどなたと心得る! 畏れ多くも先の副将軍…じゃないが、大富豪様であらせられるぞ!」

 

 

「しかも、有名貴族…の親戚筋…のはとこ…の御友人でもある! テメエら頭が高い!」

 

 

 

……なにあれ…? 荒くれオークやトロルや獣人に導かれ、無駄に華美な服を着た人物が…。

 

 

…―あ。つい魔眼で見ちゃった…。身につけている宝石とか、結構偽物混じってる…。でも周りの装飾は立派だし…多分、騙されて買っちゃったパターン。

 

 

というか『有名貴族の親戚筋のはとこのご友人』とは? 若干意味が被ってるし……最終的にただの他人では?????

 

 

 

「んー? あいつの顔見たことあんな…。成金でそこそこ大きくなった奴だった気が…」

 

 

ラティッカさんも、そう首を捻っている。どうやら『権力を振りかざす匹夫』的な存在らしい。周囲の目も冷ややか。

 

 

なんか絵にかいた悪人面と馬鹿みたいな行動だし…。 気にしないでさっさと帰ると…――。

 

 

 

 

 

 

「おいそこのメイドぉ! うちの大将がお呼びだぜ、こっち来な!」

 

 

…! その成金の人の取り巻き1人が、そんな声を上げた…。 メイドって…。まさか…!

 

 

「お止めください…! お放しくださいませ…!」

 

 

やっぱり、ネヴィリー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら成金の人がネヴィリーに一目惚れ?したらしく、無理やり連れていこうとしている様子。酷っ。

 

 

そしてネヴィリー、10人以上の悪漢に囲まれてしまっている。それでも彼女の実力ならあれぐらい切り抜け、逃げ出すことなんて簡単なはず…。

 

 

…あ…。もしかして…私があげた箱が邪魔になって…? それを大切に持ってくれているから上手く動けなくて…?

 

 

うーん…ちょっと罪悪感…。いやそんなこと思う必要が無いのはわかってるけども。

 

 

 

ま、とりあえず――。

 

 

 

 

 

 

 

「あのー…。その人、私の召使なんです。止めていただけませんか?」

 

 

私とラティッカさん(それと社長)は、すぐにネヴィリー達の元に。そしてそう交渉を試みる。

 

 

「んだテメエら!?」

 

「へぇ…? 中々…いやかなりの美女じゃねえか!」

 

「お前らもちょっと来いよ!」

 

 

 

…残念ながら、交渉にすらならない。―と、成金の人がずいっと割って入って来て…。

 

 

「ほうほう…!ではアンタ、良いトコのお嬢さんということで? そうは見えませんなあ!」

 

 

と、下卑た感じで大爆笑。まあ確かにそうは見えないような服を着てるんだけども…。 すると、その成金はにんまり。

 

 

「まあ、一応お聞きしましょうかあ? アンタ、どこの似非ボンボンで? んま、どうせ私に敵わないちょっとした金持ち程度でしょう!」

 

 

 

 

……うーん!鼻につく! 市場の道行き客に、自分以上の権力者なんていないと言わんばかりである。

 

 

さて、どうしよう。『この紋所(もんどころ)が目に入らぬか~』とでも言ってアスタロト家の紋章でも出せば飛び逃げそうではある。

 

 

けど信じないで襲い掛かってくるかもしれないし、こんな輩に正体を明かしたくもない。さてさて…。

 

 

 

…おや? ラティッカさんがずいっと一歩前でて…?

 

 

 

「ハッ! 似非ボンボンはどっちだ成金豚ヤロウ! アンタらに名乗る名前なんてないっての!」

 

 

 

あちゃー…。啖呵切っちゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶひっ……!? こ、この私を…コケにするとは…!」

 

 

予想外の一言を食らい、後ずさる成金の人。そして悪い顔を更に悪くして…周囲に命令を。

 

 

「後悔してももう遅い! お前達、やってしまいなさい!」

 

 

それに従い、ポキポキ手を鳴らしてこちらへと迫る荒くれ達。総勢20人とかそれぐらい?

 

 

それに対抗するように、ラティッカさんも首をコキコキ。全くもう…。血の気が多いんだから。

 

 

 

―ま、ネヴィリーに『はしたない!』と怒られそうだけど…。 私もやりますか。

 

 

 

まずは…せーのっ!!

 

 

 

「社長、お願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

開幕荒くれの集団へ、手にしていた宝箱を投げつける。すると箱は一瞬空中停止。そして勢いをつけ…砲弾のように彼らに突撃っ!

 

 

 

「「「「「ぐへえっ!?!?」」」」」

 

 

訳も分からず吹っ飛ぶ悪漢達。更に衝撃波でも出ていたのか、それとも社長の高速アタックかはわからないけど…明らかに箱から離れていた面々まで巻き込まれ、地面にばたばたダウン。

 

 

おかげで相手戦力は、半分に減少。 さてと…。

 

 

「あんまり大怪我させないでくださいよ?」

 

 

「わかってるよアスト!」

 

 

そう返事し、ラティッカさんは突っ込んでいく。 私はその場から動かず…―。

 

 

「峰打ち程度でお願いね」

 

 

使い魔達をポンポンと召喚し、攻撃を仕掛けさせる。 ここじゃあ大仰な魔法なんて使えないし、こんな相手ならばこれぐらいで充分。

 

 

「な、なんだ!? ぎゃああっ!」

 

「しょ、召喚したってのか!? ぐわああっ!」

 

「詠唱したように見えなかっ…ぐはっ…」

 

 

そして使い魔達の一閃を受け、次々と倒れていく荒くれ達。――と…。

 

 

「どりゃああっ!!」

 

 

「「「ぎゃーーーーっ!!!?」」」

 

 

一方のラティッカさんは、力自慢のトロルをねじ伏せ持ち上げ、他の荒くれ相手にぶん投げていた。それで一網打尽。

 

 

 

…―あ。というかあれで全滅らしい。えっとタイムは…。20秒ぐらい? 支度(したく)をもう一回ぐらいする余裕はあるみたい。なんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…な…?は…?え……?」

 

 

あっという間に取り巻きをやられ、成金の人は目をぱちくり。ラティッカさんはそんな彼に一言。

 

 

「これに懲りたら、威張るのは止めとくんだな」

 

 

カラカラと笑う彼女。周囲からは歓声も。その間に私は社長の箱を回収し、へたり込んでいたネヴィリーの元へ。

 

 

「怪我はないですか? ネヴィリー」

 

 

「は…はい…お嬢様…有難うございます…。 えっと…その…は…」

 

 

「『はしたない』とは言わないでくださいね?」

 

 

「い、いえ…そうではなく…。箱は…その箱は一体…?」

 

 

 

…まあ当然の問い。貴重品用宝箱が、筋骨隆々な荒くれ達を吹き飛ばしたのだもの。『宝箱の自衛機能です』と言っても絶対信じない。

 

 

――うん。もういいや。やっぱり真実を話しちゃおう。今のネヴィリーなら驚きこそすれ、怒ってくることはないだろうし。

 

 

「実はねネヴィリー。この箱の中には…―」

 

 

 

……と、説明しようとしたその時だった。ラティッカさんに睨まれていた成金の人が、叫んだ。

 

 

 

「な…何をしているお前ら! 高え金払って雇ってんだぞ! 早くこいつらをボコボコにしろ!じゃねえと、金を払わねえからな!」

 

 

 

本性剥き出しのようなその声に、ふらつきながら立ち上がりだす悪漢達。もう…折角優しく倒してあげたのに…。

 

 

こうなったら仕方ない。もう一度…今度はもう少しキツく…! …ん?あれは…?

 

 

 

「「「我らがアストちゃん達に、何すんのっ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

…不意に飛び込んできたのは…宝箱の大群。 そのとんでもない光景に、周囲の人々や荒くれ達、ネヴィリーまでもが唖然。

 

 

 

……けど、私達には勿論わかる。えぇ、そう。あれは……―。

 

 

 

「「「『ミミック派遣会社』とっつげきーー!」」」

 

 

 

――今日一緒に市場に来た、我が社のミミックの面々…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「み、ミミックぅ!?」」」

 

 

突如の来襲に、荒くれ達は驚愕。本来ダンジョンからほぼ出てこないミミック達が、こうも大量に現れればそうなるのも当然。

 

 

「「「かっかれーー!」」」

 

 

その隙なんて逃さない。 ミミック達は次々と彼らに飛び掛かり……あーあー…!ちょっと!ちょっと待って!

 

 

……あっちゃぁ……。

 

 

 

 

 

…結果、私が止めるより早く戦闘終了。具体的には…今しがた荒くれ達が集っていたその場に、今は宝箱が山盛り。

 

 

 

つまりはミミック達、あの荒くれの面々を丸呑みしてしまったのだ…! これは少しマズい…!いや味覚的な意味じゃなく…!

 

 

 

 

「ちょっ、ちょっと皆さん! 助けてくれたことは凄く有難いんですけど…! 食べちゃダメですって!ここダンジョンじゃないんですから!」

 

 

慌ててミミック達に駆け寄り、お礼と注意をする。 ネヴィリーと社長宝箱は一旦放置…!

 

 

「蘇生魔法はありますけど、ダンジョンよりも魔力とか素材とかの用意が手間なんです! だから『ペッ』してください、『ペッ』!」

 

 

「「「は~い!」」」

 

 

素直に言う事を聞いてくれ、荒くれ達をペッと吐きだすミミック達。 …ミミック内部に詰め込まれたのがトラウマになったらしく、彼ら全員、震えている…。

 

 

「「「ひ…ひぃいいっ!!」」」

 

 

そして、雇い主を置いて散り散りに…。するとラティッカさん、成金の人の肩をポンと。

 

 

「お前もいっぺん、食われてみるか?」

 

 

瞬間、ミミック達は一斉に、成金の人へ牙をギラリと。…まあ、そんなことされたら……。

 

 

「た、助けてくれええええええ!!!」

 

 

…彼もまた、脱兎の如くどっかに逃げていった――。あの調子じゃ、今後そんなに威張らないだろう。

 

 

 

 

 

 

なにはともあれ、一件落着。そう息をつき、ネヴィリーの元に戻ると…。

 

 

「お…お嬢様…。あの方々は……一体…???」

 

 

本日最大の困惑っぷり。いくら私の職場に秘密があると察していても、まさかあれだけのミミックが同僚だとは推測できなかっただろう。

 

 

「ネヴィリー。あのミミックの皆こそが…―」

 

 

「アストに秘書を務めてもらってる、『ミミック派遣会社』のメンバー達なんですよ!ネヴィリーさん!」

 

 

 

 

 

あ。社長パカリと出てきちゃった。私には見慣れた光景だけど、当然ネヴィリーは初体験。

 

 

口をパクパクさせ、社長の姿と入っていた宝箱を凄い勢いで見比べている。と、社長はにっこりと。

 

 

「どうも! 私、アストの上役をさせてもらっている社長のミミンと申します! 今日は楽しかったですよ!」

 

 

そう言われ、完全に固まり声を失ったネヴィリー。私が、ネヴィリーが一日持っていた箱の中に、社長がずっと入っていた――。

 

 

そんな嘘みたいな事実を受け、彼女は……。

 

 

「きゅう……」

 

 

…気絶しちゃった…。とりあえずラティッカさん達と別れてと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…―はっ!?」

 

 

「あ、起きました?ネヴィリー」

 

 

近くにあったベンチで膝枕をしてあげていたら、ネヴィリーはすぐに目覚めた。良かった。

 

 

「気分はどう?おかしくないですか?」

 

 

「は、はい…。…お、お嬢様…あの…」

 

 

口ごもるネヴィリー。そこへ…。

 

 

「飲み物買って来たわよアスト! あ、ネヴィリーさん起きたの?」

 

 

三人分の飲み物を買ってきてくれた社長が。ネヴィリーの顔、『夢じゃなかった…!』という感じ。

 

 

もう隠す必要もない。では……。

 

 

「実はねネヴィリー……――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうことでございましたか…」

 

「えぇ、そういうことだったんです」

 

「そういうことだったんですよネヴィリーさん」

 

 

私達は飲み物を飲みつつ、会社についての話とか諸々…隠していたことを全部話した。 なお社長は定位置…即ち私の膝の上に。

 

 

「全ては私のせいにございますね…。 ご迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳ございません…」

 

 

「いやいや!……まあそうっちゃそうなんですけど…。気にしないでください! あと、他のメイドたちには一応秘密に…」

 

 

叱ってくることもなく、寧ろ謝ってくるネヴィリーを私は宥める。とりあえずこちらも一件落着、わだかまりも無くなって…―。

 

 

「そうだネヴィリーさん! ちょっとお耳を拝借……」

 

 

ん? 社長が身体を伸ばして、ネヴィリーに何か耳打ちを?

 

 

 

「はい…えぇ!? そんな…! 嘘では…!? 本当にございますか…!? でも…。あぁ…なるほど…! それならそうと早く仰ってくだされば…!!」

 

 

…??? 何を話しているんだろう…。やけにネヴィリーが驚きまくっているけど…。

 

 

そしてコソコソ話が終わると…。ネヴィリーはまたも謝罪の礼を。

 

 

「私めが間違っておりました。 お嬢様の職場は素晴らしい職場にございます」

 

 

????? 一転…というほどでは既にないけど、何この心変わり…?

 

 

 

「社長、何を伝えたんですか?」

 

 

「ひ・み・つ!」

 

 

聞いても、社長は笑うだけ。それでちょっと頬を膨らませると、ごめんごめんと言いながらちょっと教えてくれた。

 

 

「教えたことの一つは、『私が魔王様と知り合い』ということよ。そして、既にアストを魔王様に会わせたということもね」

 

 

確かに。それは私もびっくりしたけど…。すると社長、意地悪な笑みを。

 

 

「今更だけど…。最初にその話を伝えたら、ネヴィリーさんもすぐに引き下がったんじゃない?」

 

 

 

…………あ。 あーー!!!! 確かに!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな今日一日の努力が悲しくなる台詞に打ちひしがれつつ、ネヴィリーを見送る。

 

 

と、彼女、最後に何かを思い出したかのように振り向いた。

 

 

「そういえばお嬢様。丁度お手紙をそちらへお送り直したところなのですが…。『グリモワルス女子会』開催のお知らせが届いておりました」

 

 

「え、本当? 教えてくれてありがとう!」

 

 

「いえ。それではお嬢様。またその日にお会いいたしましょう」

 

 

 

そう残し、去っていくネヴィリー。彼女の姿が見えなくなるまで見送りつつ、私は社長にお願い事を。

 

 

 

「社長、まだいつかはわからないんですけど…お休みを…」

 

 

「勿論良いけど…なにそれ? 女子会?」

 

 

「んーと…。前にも何回か休みを貰った時と同じ理由で…あ。それ以上は秘密にします!」

 

 

「あ、さっきの仕返しかしら? このこのー!」

 

 

ちょっと戯れる私と社長。そして、社長はぐいいっと身体を伸ばした。

 

 

 

「さてと…。集合時間にはもうちょっとだけあるわね。 もう一回、お茶しにでも行く?勿論私の奢りで!」

 

 

「是非!」

 

 

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