ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~   作:月ノ輪

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顧客リスト№56 『マミーのピラミッドダンジョン』
魔物側 社長秘書アストの日誌


「ほ~らアスト! 早くこっちこないと、こ・れ・踏んじゃうわよ~」

 

 

「ま…待ってくださいって社長…! ここ、飛んで逃げるとかできないんですから!!」

 

 

 

私の腕から降り、ちょっと先を進んでいる社長がそんなこと言ってくる…。周り、砂にまみれた石壁に包まれている一本道なのに…!

 

 

 

勿論ここはダンジョン。そして、社長が箱の端を軽く乗っけているのは…床の石レンガが一つだけ、ぴょこんと飛び出している場所。

 

 

明らかに目立ちにくくされてる配置で、明らかに簡単に押し込めそうなそれは、間違いなく……。

 

 

 

「じっかん切れ~! じゃ・あ…(トラップ)カードぉ おーぷん!」

 

 

カチッ    ガコンッ ゴゴゴ……

 

 

 

 

ほらぁやっぱり!! 仕掛けてある罠のスイッチ!!  社長が踏んだ瞬間、壁の裏らへんから変な音聞こえてきたもの!

 

 

 

こ、今回は一体どんな……。…はっ!?後ろから!?

 

 

 

 

ズズゥンッ ゴロロロロロッッッッ!!!

 

 

 

 

「今度は大岩ね! それ逃げろ~!」

 

 

「ちょっ社長!?  わわわわわっ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー! 久しぶりに正統派ダンジョンって感じね! すっごい罠まみれ!」

 

 

「そ…そう…ですね……。 はぁ…はぁ……もう……」

 

 

その罠を、社長が見つけ次第率先して起動していくからタチが悪い…。 こういう時、無駄にテンション上がるんだから…。

 

 

 

一体幾つのトラップに遭遇したか…。落とし穴や釣り天井岩、壁から槍や矢の連射というオーソドックスなものを始めとして…。

 

 

火炎や麻痺発生の魔法発動だったり、魔獣解放だったり、砂竜巻発生だったり、さっきみたいな大岩ゴロゴロだったり…。もう本当色々。

 

 

勿論そのどれもが危険な代物。下手に当たったら、即復活魔法陣送りなんだから…。

 

 

 

 

 

…そういえば、変なトラップもあった。なんか、伏せて設置されていた大きなカード?が急に起き上がる…。

 

 

裏が変な渦巻き?みたいなので、起き上がった表面が、赤紫の色で…。そして軽く光って、そこに描かれている罠がどこからともなく発生するというかなんというか……。

 

 

そしてそれを見てから、社長がさっきみたいな台詞を口にして罠を起動させていくように…。なんだったんだろあれ…。

 

 

 

 

あ、あと――。途中、白い布を被った小さい『何か』が複数体、わーって追いかけて来た。目らしきところからビーム撃ってきたんだけど、いつの間にか消えていた…。 

 

 

あれってもしかして…………。

 

 

 

 

 

 

 

…まあとにかく、散々な目に遭っている…。社長、私のことをもうちょっと考えて欲しい…。

 

 

……そりゃ確かに、あれぐらいの罠なら私は避けられるし、防御も問題なくできる。それでも危険な場合は、社長が颯爽と駆け付けて助けてくれるとは思う。

 

 

けど…こうも立て続けだと精神が保たない…。かなり、疲れ―――

 

 

 

 

――てない。さっきまでしていた息切れも、あっという間に治ってしまった。

 

 

 

凄い…。 これが、『ピラミッドパワー』…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて改めて…。私達が今回訪問しているのは、砂漠のど真ん中にある『ピラミッドダンジョン』というところ。

 

 

その名の通り、外側の見た目はピラミッド。切り出された巨大石を積み重ねて作られた、山みたいな三角形のアレ。

 

 

 

そして私達が挑戦しているのはその内部に通じる道の一つ。と言うのも…道は無数に枝分かれして、最奥へと向かっているのだ。

 

 

恐らく、空間魔法で色々拡張されている。依頼主の方にそれを聞いたら、『ピラミッドパワーである!』としか返ってこなかったけど…。

 

 

 

そして聞くところによると、行き止まりのルートは無いらしい。けど、全ての道に私達が通ってきたようなたっぷりの罠が仕掛けられており、墓泥棒に次々と襲い掛かる仕組みとなっている様子。

 

 

 

 

…いや、このピラミッドに置いては、『墓泥棒』呼びは相応しくない。 挑戦しにやってくる冒険者達は、文字通り『挑戦者』と呼ぶべきであろう。

 

 

 

何故か? それは―。丁度今しがた辿り着いたゴール地点、最奥の岩扉を開けばわかる。せーのっ!

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ……

 

 

社長と力を合わせ、扉を開く。 中の様子は……。

 

 

「やっぱり、ピラミッド内には見えないわね~」

 

「ですよね。 綺麗な水路があるし、果物なっているし、心地よい気温だし…」

 

 

 

 

 

なんと、周囲の砂漠や通ってきた石壁の一本道とは全く違い…まさしく人工のオアシス。長椅子で横になって、うたた寝したくなってしまう。

 

 

そして、罠通路の裏スペースらへんは全部こうなっているらしい。これが出来るのも…。

 

 

「流石、ピラミッドパワーね!」

 

 

…と、社長が口にした通り…。依頼主曰く、ピラミッドには『ピラミッドパワー』なる神秘の力が宿り、ピラミッドの内部ならば色々できるのだと。

 

 

空間拡張やら作物栽培やら道や水路やトラップ形成、そしてヒーリング(体力回復)効果などなど、なんでもござれ。凄い。

 

 

 

 

あと更に…。どうやらそのピラミッドパワー、ミミックと相性が良い様子。 

 

 

ピラミッドパワーは、ピラミッドの中に籠ることで得る力。そしてミミックは、何かの箱の中に籠る魔物―。

 

 

ということで、『籠る』存在同士、抜群の関係性らしい。だから社長もさっきからテンションあがってるわけで…――。

 

 

 

 

 

 

―あっと。いけないいけない。 話は、『何故ここに来る冒険者達を【挑戦者】と呼ぶか』だった…。ズレちゃった。

 

 

では、話を戻してと…。

 

 

 

 

 

そんな人工オアシスなここ最奥だが、正しくは他のオアシス箇所とは装いが違う。寛ぐスペースではないのだ。

 

 

扉をくぐり、少し先に進む。する現れたのは……広めの、石畳の広場。 いや、『戦闘フィールド』というべきか。

 

 

そして、その中央で待っていたのは……。

 

 

 

 

「フハハハ! よく辿り着いた『挑戦者』よ! 我が『闇のゲーム』を切り抜けてくるとは、中々やるではないか!」

 

 

 

 

仁王立ちをし、高笑いを響かせる謎の人物が。長杖をコンと床に突き、威風堂々と立っている彼は、金と青に輝く独特な被り物を。

 

 

そして何より…。全身余すとこなく、包帯を巻いている。最も顔には、片目を隠すように、斜めに横断させているだけではある。

 

 

 

怪我しているのではない。そういう魔物なのだ。もっと言えば、ミイラが魔物になった感じ。 ただ、ピラミッドパワーのおかげで生気溢れる姿だけど。

 

 

 

 

 

そう―。魔物名は『マミー』。スケルトンやキョンシーと同じく、死後の人間が動き出した存在。

 

 

そして目の前の彼が依頼主であり、名を――。

 

 

 

 

「えぇ!『ファラオ・ミレニアテム』! 私達を他の挑戦者と同じに見てもらっては困ります! あんな罠は『遊戯』みたいなもの!」

 

 

 

……えっちょっ!?  社長、すごくノリノリ!? そ、そう…彼の名前は『ミレニアテム(ファラオ)』いうのだけど…。

 

 

って…! そのミレニアテム王の方も、社長が乗ってきたことが嬉しいのか、楽しそうに笑って…!!

 

 

 

「ほう! ならば今度は、ドン☆ とぶつかり合うとするか!」

 

 

「望むところ! 強靭!無敵!最強! な私の力、お見せしましょう!」

 

 

 

…ファラオも、社長も、何を…!?  双方、止める間もなく構えて…!!

 

 

 

「「いざ……! 『決闘(デュエル)』ッ!!」」

 

 

 

なんか変な宣言して、戦闘始まっちゃった!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッハッハ! 良い戦いだったぞミミン社長よ! よもや我が切り札、『封印されし最強神』すらもを打ち破るとはな!」

 

 

「いえいえ!あと一(ターン)対処が遅かったら、こっちが負けてました! それにファラオ・ミレニアテムもとんでもなかったですよ! すっごい天空竜とか巨神兵とか翼神竜とか、召喚しまくってましたし!」

 

 

 

…戦闘後、招かれた応接室でミレニアテム王からもてなしをうけつつ、談笑する社長……。さっきの戦い、とんでもなかった…。

 

 

なんか色んな種類の召喚獣やら魔法やらが、ミレニアテム王のカード?…パピルス?…パピルスカード??から、次々と飛び出してきて…。

 

 

曰く、それもピラミッドパワーらしい…。もうなんなんだろ、ピラミッドパワーって。

 

 

 

 

 

 

……あっ! また『何故ここに来る冒険者達を【挑戦者】と呼ぶか』を説明しそびれてた! この、『社長達が何かしらをしでかし、話が中断』パターン、多い気がする……。

 

 

 

こほん、えっと―。ミレニアテム王の先程の行動…最奥の戦闘フィールドで待っていたというのを思い出して貰えれば話は早い。

 

 

彼、ミレニアテム王はこのダンジョンにやってくる冒険者達を『挑戦者』として受け入れ、罠まみれの道を乗り越えてきた実力者と対峙することを愉しみとしているのだ。

 

 

 

 

 

因みに挑戦者は、力を示せれば、やはりピラミッドパワーで生成されたお宝類を持ち帰ることができる。

 

 

中には召喚術用のパピルスカードがあり、その中でもレアものは、プレミア価格で取引されるとか。

 

 

 

しかし負けてしまえば……。ミレニアテム王の臣下のマミーたちにより、包帯でぐるぐる巻きにされ外にポイッ。 まさにミイラ取りがミイラという感じに。

 

 

……まあ、その巻かれた包帯も『マミーの魔包帯』とか呼ばれる便利な魔法アイテムなため、冒険者達にとっては充分な戦利品みたいだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。そんな冒険者ホイホイなダンジョンから、なんで我が社にミミック派遣依頼が来たかと言うと…。

 

 

「して、どうだミミン社長よ。我がダンジョンへのミミック派遣は可能か? 新たなる罠として―、そして道を(なみ)し裏を通り、我が臣下を貶め神々を愚弄する不敬者共への仕置き人として!」

 

 

―と、ミレニアテム王が社長に迫っている通り。 一つ目の理由は罠のレパートリー増加のためである。

 

 

 

ピラミッドパワーとやらで色々できるミレニアテム王達ではあるが、個々では限界があるため、手は幾らでも欲しいもの。

 

 

だからこそ便利で強力なトラップとして、我が社のミミック達を採用したいということらしい。一本道でミミックに追いかけられるのは、冒険者達にはかなりのトラウマとなるだろう。

 

 

 

 

そしてもう一つの理由が……。悪賢い連中もいるもので、という案件である。

 

 

 

 

 

ピラミッドには、幾つもの隠し通路や隠し部屋が存在する―。風説されている噂ではあるが、少なくともこのピラミッドダンジョンにおいては事実。

 

 

罠の調整用だったり、移動用だったり、待機している魔物用だったり…。まあ用途は色々なのだろうけど、そこかしこにあるのだ。

 

 

多分、ピラミッドパワーによる集中力強化のおかげなのだろうけど…。私でさえ、『あ、ここのを動かしたら道がある…』ってわかるところが何か所もあった。

 

 

 

なら、無駄に目敏い冒険者連中ならば見つけてしまうだろう。なんとかほじくり返し、見つけてしまうのも目に見えている。

 

 

そして即死級の罠がわんさかの道と、ワンチャン無事で済む可能性の隠し通路、どっちを選ぶかと言われたら…。まあ、そうでしょう。

 

 

 

 

しかもそのワンチャンスは大当たりで…。ほとんどの隠し通路が、マミーたちの生活スペース(人工オアシス)に直結してしまっているのだ。

 

 

そこまで来てしまったらもうおしまい。『挑戦者』は『墓泥棒』に早変わり。お宝を盗みまくり、酷い時にはマミー達の服…もとい包帯までクルクルと剥ぎ取っていくほど。

 

 

また、マミー達もそうなってしまえば力を発揮できず、そのまま放置されれば昇天。まさに由々しき事態なのである。

 

 

 

 

しかし都合上、隠し通路を減らすわけにもいかず、そこに罠を設置するのも危ない。 と、くれば……。

 

 

「ええ! 我が社のミミック達にお任せを! 罠役も防衛役も、見事果たして見せましょう!」

 

 

ドン☆ と自信満々に胸を叩く社長。契約成立である。歓喜するミレニアテム王に、社長は更に一言。

 

 

「悪い冒険者連中は、粉砕!玉砕!大喝采!しちゃいましょ~!!」

 

 

 

……だから社長…何言ってるんですか…?

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

ピラミッドダンジョンからの帰り道。貰った『マミーの魔包帯』を何故か頭に撒いた社長は、私の腕の中でやけにワクワク調子でごそごそ。

 

 

「これ、開けちゃいましょう!」

 

 

そう言いながら取り出したのは…これまた先程ミレニアテム王から代金の一部として貰った、お宝の一部。 あの、召喚術用パピルスカードが入っている袋。

 

 

最も、袋と言うよりは包帯がグルグル巻かれて保護されている形ではあるのだが。

 

社長、それをするすると解いていく。 …あ、中には何枚か入ってるみたい。

 

 

 

「わ! みてみてアスト! これレアじゃない!? キラキラしてるわよ!」

 

 

「おー、本当ですね! えっと…『ブルーアイ…―」

 

 

「ね、これって幾らぐらいなのかしら!」

 

 

 

社長にせがまれ、私は鑑定眼を発動。どれどれ…わっ!

 

 

「かなり高価ですよそれ!」

 

 

「へー! でも格好いいし、飾るだけでも価値あるかもね!」

 

 

どうやら社長、それを気に入ったらしい。ホクホク顔してる。……あれ? 

 

 

 

 

っっっっっっっ!?!?!? あ、あのカード…ね…値段が…!!?

 

 

 

 

「しゃ…社長…。ま、まだ袋の中に入ってる一枚が……」

 

 

「ん? あ、ほんとだ。えーとこれは…。 キラキラはしてないけど、綺麗な絵ね! 黒い…蓮かしら?」

 

 

……無邪気に手に取り、鑑賞する社長……。ふと、私の顔に気づいたらしく……。

 

 

「? ちょっとアスト、どうしたの? 顔固まってるけど」

 

 

 

…………その理由は……察して欲しい……。

 

 

 

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