ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~ 作:月ノ輪
「ふーっ!」
書庫から出た瞬間、安堵交じりの息を強く吐いてしまう。さっきの父の冗談のせい…おかげ?で、大分心が軽くなった。
結局書庫にも社長の箱は無かったが…もはやそれは些事。どうでも良くはないが、まあ予想通りだし。
因みに、魔法の宝箱の使用方法も予想通り。本や書類を運ぶ際に使用していると聞いた。……会社では魔法を使っているけど、私も事務作業に導入してみようかな。
あ、やっぱりいいや。気づいたら社長が入り込んで寝ていそうだから。 というか、社長自体を運ぶのに用いれば解決である。
――おっと、そうだった。 父に言われた通り、祖父の元へと向かわないと。
しかし祖父が私を呼んでいるとは、どのような要件なのだろう。母や祖母、そしてさっきの父と同じく、私の仕事の冒険譚…じゃなくて体験談を聞きたいというのならば問題ないのだけども。
先程の家族勢揃いの際、私を気遣って部屋へ戻してくれたのは祖父であった。けど当の私が元気に家中を遊び歩いているとなれば、顔を見たくなるもの当然かもしれない。
――そんなことを考えつつ、祖父の書斎へと。社長にはしっかり隠れて貰ってと…。……あれ…?
「扉が…開き切って…? 灯りも……ついてない…??」
ここは間違いなく、祖父の書斎。 だというのに…扉は完全に開き切っており、中は真っ暗。……私の居ない間に、物置に変わったわけではないはず…。
いや仮にそうだとしても、扉開きっぱなしは問題。 …ちょっと中を覗いて…。
…――うん、間違いない。扉近くの装いからして、祖父の書斎である。 そしてどう見ても、祖父はおろか誰一人として居る気配はない。
勿論、掃除の最中という訳でもないだろう。 だって、周囲にすら使用人の気配はないのだから。
ならば祖父が一旦席を外しているだけ? でもそれなら扉は閉めていくだろうし…。こうも開き切っているとなるとわざとだとしか…。うーん…?
とにかく、今ここに祖父はいないことは確か。なら仕方ないし、誰か使用人を探して今度は祖父探しを……―
ボスンッッ!!
「わっ!? どうしたんですか社長、そんな急に飛び出してきて…!!」
勢いよくぬいぐるみから顔を出してきた社長に、びっくりしてそう聞く。しかし、社長は答えない。真っ暗な祖父の書斎をじっと睨んでる……。
「社長…? 一体何が……?」
「……アスト、私の勘が告げてるわ…! 私の宝箱、この部屋の中にある!!」
「えっ!?!?」
社長が身じろぎもしないままに発したまさかの一言に、私も目を見開いてしまう…! なんで、ここに…!?
説明するまでもなく、社長の勘はかなり鋭い。特にミミックであるために、地形や建物の把握や箱の存在の認識等は抜きんでている。特に今回探しているのは社長お気に入りの箱だから猶更なはず。
そんな社長がこの表情……。つまり、探し物はほぼ間違いなく、
あ、もしかして私を呼んだ理由って…宝箱!? 確かに祖父が持っていたならば、私やネヴィリーが見つけられなかったのも当然かも…。
……でも……本当になんで? 社長の箱が誰かに持っていかれた時には、祖父は私と話していたはずだし…。確実に間には使用人の誰かがいるはずだけど…。
「ね、アスト。入っちゃってもいーい?」
そう首を捻っていると、社長が私の顔を窺って来た。 …勝手に入るのは非常識ではあるのだけど…。
「そうですね。 少し、確認させて貰いましょうか」
「お祖父様? アストです。 御在室でいらっしゃいますか?」
開き切った扉をノックし、暗い書斎の中に声を投げかけてみる。 しかしやはり、返答はおろか物音ひとつなし。
本来ならば、祖父を探し出して許可を得てから入室するべきなのだが…。社長もぐいぐい来てるので無作法を許してもらおう。 それに、部屋の様子もおかしいといえばおかしいんだし。
とりあえず、部屋の中のどこに社長の宝箱があるか見定めよう。広めの書斎だから、灯りつけないと奥は見えない…………あれ……?
「灯りが…つかない?」
灯りのスイッチを幾ら押しても、明るくなる気配がない。故障中なのかも。 なるほど、扉が開けられているのは修理のためとかなのだろう。
となると、どうしよう。少し待てば使用人の誰かが戻ってくるかもしれないが…。
「入っちゃダメ…?」
……社長がうるうる目で訴えてくる。 ということで―、お祖父様、失礼いたします。
「…やっぱりよく見えませんね……」
入室したものの、扉からの光だけでは何もわからない。外はもう日が沈んでおり、窓には厚手のカーテンがひかれているため本当に真っ暗なのだ。
「灯りつけちゃいますね」
このままだと上手く探せないどころか、椅子とかに躓いて転んでしまいそうだし…。 えーと、部屋全体を照らせる光魔法は……。
「待ってアスト! 灯りは小さめにしない?」
へ? 社長からまさかの提案。 なんでかと聞くと…。
「ほら、下手に煌々と灯りをつけちゃうと使用人の人達や
とのこと。まあ、見つかっても謝れば許して貰えるだろうけど…。 すると社長は私の考えを遮るように満面の笑みを。
「そ・れ・に! 小さい灯りで探したほうが、宝探し感あるわ!」
ふふっ! そういう理由であれば!
ということで光魔法の大きさを変更し、自分の傍に浮かぶ小さなウィル・オ・ウィスプのような形状に。手元足元がぼんやり見える程度の明るさである。
…うん…! これ結構、雰囲気出る…! 誰かに見つからないかというスリルも上乗せされて中々…! 冒険者っていつもこんな気分なのだろうか…!
「どこかなどこかな~! あ、これってアストの子供の頃の写真?」
そんな中、楽しそうにきょろきょろしていた社長が壁を指さす。そこに掛けられていたのは、幼少期の私の写真…!
「可ん愛い~っ!! 私とおんなじぐらいの身長ね! このぬいぐるみを頑張って抱えちゃって!」
それを見つめながら、まるで悶えるかのように弾んだ声をあげる社長。そんな社長の方が、私にとっては可愛いのですけど。
しかし、そこまで反応して貰えるとは…。そうだ、少し恥ずかしいけども…。
「あとで私の部屋にあるアルバム、見ます?」
「えっ! 見たい! 見せて見せて!! さっさと箱見つけなきゃ!」
わぁ、すっごい食いつき…!!
ということで、捜索続行。けど、中々見つからない。 祖父はミミックではないから、どこかに普通に置かれているはずだけど…。
「ん? この本何かしら?」
ふと、何かを見つけたらしい社長がそんな声を。見ると、書斎机の上に一冊の本が安置されている……って、この表紙…!!
「前にネヴィリーが市場へ受け取りに来た…魔導書!!」
前にネヴィリーと市場で出会った際、一緒に魔導書商人さんの所へ赴いたのだ。注文の品を受け取るために。
勿論私は自分用の魔導書だったのだけど、ネヴィリーは主人…つまり、私の両親達が依頼した魔導書を代理受け取りに来たのである。
それが、これ…! 見間違い勘違いではない。間違いない…! 今は祖父が使用している様子。
……そういえば…どのような内容の魔導書なのだろう…。 …えーと、周りには(社長以外)誰もいないし…。失礼して……!
「んー! 私にはわかんない!」
一緒に覗き込んでいた社長がギブアップというように頭をふりふり。確かにこの魔導書、かなり難しい。よっぽど魔法に精通してなければ読み解けないと思う。
「アスト、わかるの?」
「えぇ、まあ。 幾つかの魔法の展開術式、及び設営方法等が書かれてますね」
社長にそう答え、更にページを捲っていく。…うん、これはやっぱり…。
「内容としては…まず空間変化系魔法、それも歪曲系と拡張系がメインですね。そして隠蔽魔法との重ね技についても記述があります」
「へえー! 流石アスト!」
「いえ、それだけじゃないんです。後半には全く別の魔法についてが…。えーと…多分…。 『生体認証術式』系統だと思います」
「せーたい…何て?」
「生体認証術式です。要は主に『鍵』として用いられる魔法の一つです。 術者の身体情報…瞳や声や指紋や魔力形式、その他諸々を鍵として登録しておくことで、セキュリティの質を高めるといった内容ですね。 我が社の『危険物素材倉庫』の扉にもかけてある魔法ですよ」
「あー! あれね!」
首を捻った社長にそう説明すると、納得してくれたらしい。 …ただしこれ……。
「この魔導書のは、うちのより何倍も強固な代物みたいです…。 あの倉庫のもかなり厳重なんですけど…」
なにせあの倉庫には、使い方次第では簡単に街や国を滅ぼせる危険物がわんさか。入るだけでも多重防護魔法がいるほど。 だからこそ出来る限りの鍵をかけていたのだが…。
この魔導書に書かれているそれは、一目見ただけでも恐ろしいほど複雑なのが分かる術式と魔法陣。それに加え、侵入者対策として様々な反撃魔法…捕縛魔法や記憶改竄魔法、即死魔法と紐づけられてもいる。
なるほど、これほどの魔導書ならば魔導書商人さんを頼らなければ手に入らないのも道理。そして、このページ構成からして…。
「……この本は恐らく、『隠し部屋』を作るための代物ですね。 よほど重要な『何か』を守るための…!」
推測した内容を、社長に伝える。 何を重要に感じるかは個人差があるだろうが…。我が社の危険物素材倉庫すらをも上回るこのセキュリティは、何を守って…。
そう眉をひそめていると…社長はやけにあっけらかんとした声をあげた。
「まさに『秘密の部屋』ってわけね! 魔導書が古い日記じゃなくて良かった! …あ、もしかしたら中に恐ろしいバケモノが居たり!」
「なんですかそれ…? それに恐ろしいバケモノって…」
「そーねぇ…超巨大な蛇とか! 少なくとも、超巨大な蜘蛛じゃないのは確かね!」
…??? また、よくわからないことを……。
とはいえ、探していたものはその魔導書でも、隠し部屋でもない。社長の宝箱。 魔導書は元に戻し、捜索再開。
……しかし、一向に見つからない。広めの書斎とはいえ、宝箱ほど大きいものならばすぐにわかると思ったのだけど…。
やっぱり、灯りが小さすぎるのが問題かもしれない。 この際仕方ないし、少しだけ部屋全体を照らして―……
「あーっ!!!」
魔法詠唱しようとしたら、突然社長が叫んだ!? もしかして、宝箱を見つけて…!
「あの絵! この間『美術館ダンジョン』でもらったやつの、本物よね!」
…違った。 興奮しながら社長が指さしていたのは、先程とは別の壁に凝然と飾られている絵画。それは怪異にして妖美、不気味さと得も言われぬ魅力を同時に放つ逸品。
「はい、そうです。『地獄ノ辞典における大悪魔之図』―。『コラン・ド・プランシィ』、『ルイ・ル・ブルトーン』によって手掛けられた同名作品群のひとつ。その真作です」
――以前、美術館ダンジョンにて怪盗の襲撃防衛手伝いをした時のこと。社長と絵画名当てクイズをしたのだが、この絵は偶然その中に選ばれた一枚。
私にとってはサービス問題だった。美術館ダンジョンにあるのはレプリカであり、本物は我が家にあるのだから。
そしてその絵は我が家のどこにあるかというと…御覧の通り、この祖父の書斎に飾られているのである。
因みに、そのクイズに答えた直後に怪盗が私の前に現れたのだっけ。社長の姿に変装して。思い返してみても、とんでもなくそっくりだった…!
だけどこれもまた探し物ではない。宝箱探しに戻るべきだが…。
「もうちょっと近くで見せて!」
そんな社長のお願いもあって、その絵に近づくことに。けどこんな灯りじゃまともに鑑賞できないだろうし、やっぱりもっと強い光を……―
「ん? あれれ?おっかしいぞ~? この絵の下…というか裏?に何か模様描かれてなーい?」
「へ?」
ふと、社長が妙な指摘を。私も目を凝らしてみると、絵画の下…額縁よりも下の壁部分、丁度無理なく手がおける場所に何かが描かれているのがわかった。
恐らく、魔法陣。そのほとんどを絵の裏に隠しているけど。 ……どこかで見たような……あ。
「…これ、さっきの魔導書に…生体認証術式の項目に描かれていたのと一致しますね……」
つい今しがた確認した、あの隠し部屋作りの魔導書の…。ということはつまり――。
「これが、『錠前』―。つまり、ここが…」
「隠し部屋への入り口…ということね!」
もはや疑いようのない事実に、私と社長はゆっくりと頷き合う。……ここにあるとは…。
「社長、見なかったことにしましょう。 宝箱探しに戻りましょう」
奥に何があるかはわからないが、祖父の秘密に勝手に触れるべきではない。そう判断し、社長を絵から放そうとしたのだが…―。
「うーん…。 でも私の箱の雰囲気、ここらへんからするのよね…。 この奥にあるのかも…」
とのこと。ならば周囲にあるかも…と思ったが、絵画を引き立たせるためにこの壁付近には物がほとんど置かれていない。勿論宝箱なんてどこにもない。
「ここ、開けられないかしら?」
「無理ですよ! せめて祖父から許可を得ないと…!」
そうねだってくる社長にぴしゃりと。許可を貰えるかも怪しいところだが…勝手に開けられるような代物ではない。少なくとも、食事時までになんて絶対無理。数日あっても多分無理。
かくなる上は宝箱探索を切り上げて、祖父探しに移るしか他はない。 しかし社長は諦められないらしく…。
「触れたら開いたりしないかしら! えいっ!」
…って!? 無警戒に魔法陣にタッチしたぁ!? 多数の反撃魔法が備えられているみたいなのに!!
慌てて社長の手を掴み、魔法陣から引き剥がす。……が…。
「……何も起きないわね」
場はシーンと静まったまま。何かの魔法が起動した様子はない。 まあ当たり前か。ただ触れただけで変に反撃されるならば、使用人による掃除なんて行えないし。
とりあえず一安心と胸を撫で下ろす。すると社長は手を触手に変え、逆に私の手を掴み直してきて…!
「じゃあ次はアストの番! ほらほら!」
「ちょっ…!?」
有無を言わさず、私の手を魔法陣へと…! けど、きっと祖父の情報しか登録してないだろうし意味ないと…。
『―――承認。 認証術式、起動します―――』
え…なぜ、ちょっ、えっ、どうして、えええぇっ…!? ええええええっ!?
突如に響き渡った、私のでも社長のでもない、特殊音声…! それと同時に、魔法陣も光り出してる…!
起動した…!? 隠し部屋の鍵が、何故か動き出した!? 私が触れたから…だよね!?
『―――スキャン開始。そのまま手を魔法陣へ触れたままにしてください―――』
そう驚いているうちに、音声はそう続く。私が動けずにいると…魔法陣は赤色の輝きに変わった。
『―――異常感知。エラーメッセージ。 何者かの関与を認識しました。登録者単独でのスキャンをお願いします―――』
「あ、これ私のせいかしら」
気づいた社長は、私の手に巻きつけていた触手をシュルリと解く。……ここで放されると凄く不安なのだけど…!
幸いな事に、魔法陣の輝きは元通りに。そして、次の音声が流れ出した。
『―――確認。登録者名“アスト・グリモワルス・アスタロト”様と認識―――』
…やっぱり。何故か、私が登録されている…。祖父の隠し部屋なのに、何故…? 私が祖父に呼ばれた真意は、これだったり…?
不可解な状況に首を捻るしかない。それを無視するかのように、音声はまだ続きを――。
『―――第一フェーズ、クリア。続いて、第二フェーズに移行します―――』
だ、第二フェーズ? 今度は何が……―
ギィイイ…ズゥンッ…!
――へ!? 扉が…勝手に閉じた!? 風…とかではない…! 窓は全て閉まっているし、扉は開き切っていたし、そもそも風程度で動く重さではないもの…!
「あ! 見て見てアスト! 扉の前に魔法陣が!」
なっ…! 光を完全に遮断した扉の前に、突如として巨大な魔法陣が生成されだした…! 輝きと重圧を放ち、何人たりとも
――いや、扉だけではない! 窓も! カーテンごと封じるかのように、全ての窓に同じように魔法陣が…! 閉じ込められた……!!
『―――防壁魔法、展開完了。 順次、迎撃魔法展開開始―――』
しかも例の魔法群まで展開しだした!? ど、どうしよう…! これ、魔法陣から手を放したら止まる…!? それとも、エラー起こす…!?
…あっ! 手がくっついて離れない…! 駄目だこれ…!!
『―――迎撃魔法展開完了。現段階においての敵対行動、感知できず―――』
そうこうしているうちに、部屋全体にを魔法陣が埋め尽くす事態に。全ての壁、そして天井や床にも迎撃魔法陣がびっしり…。
もしここで何者かが不正しようとしていたら、全ての魔法陣から即座に飽和攻撃が始まるのだろう…。恐ろしい…。
『―――続いて、詳細スキャンに移ります。“アスト”様、表示される円より、全ての者を退避させてください―――』
と、そんな音声と共に、私の足元には光輝く円が。これもまた魔法陣みたいだけど…。 とりあえず従って、社長を降ろしてと―。
『―――退避を確認。 スキャン、開始―――』
わっ…! 足元の円から、光の輪が幾つもせり上がって来て…! 私の全身を包んでは消えていく…!
『―――身体情報、クリア。 魔力情報、クリア。 全情報、登録者名“アスト”様と一致。 変装魔法等の痕跡、なし。 御本人と確定―――』
よかった…! これで終わり……じゃなさそう…。
『―――次に、領域内詳細スキャンを開始します―――』
今度は壁、天井、床の一部迎撃魔法陣が変化。私の足元と同じようなものに。そしてそこから光を発し、部屋のサイズピッタリの幕を形成した。
そしてそのまま光の幕はスライドし、書斎全体を余すところなくスキャンしていく。それが終わると、再度音声が。
『―――スキャン結果。生体反応、2。 内訳報告。 1、“アスト”様。 2、“Unknown”―――』
Unknown…!? この場に居るのは、私と社長のみ…! ということは、それって…。
『―――確認に移ります。 敵対行動を感知した場合、即座に迎撃が行われます―――』
音声と共に、部屋中の魔法陣が社長に狙いを定める…! そして更に、社長の上下左右前後を取り囲むようにスキャン魔法陣が…!
「社長、じっとしていてくださいね…!」
「はーい!」
私のお願いに、床にぬいぐるみを座らせた社長は元気な返事。と、スキャン魔法陣が動き出し…。
『―――スキャン開始。 武装、感知できず。敵対魔法、感知できず。 取得情報、データベースと照合。 種族、“ミミック族”と確定―――』
「お~~! 正解!」
楽しそうに拍手する社長。 と、今度は私の目の前に二つの小さめ魔法陣が…。
『―――“アスト”様にお伺いします。 “ミミック族”の者の同行を許可しますか?―――』
その音声に合わせ、二つの魔法陣にはそれぞれYESとNOの文字が。 勿論考える必要もなく…―。
『―――承認。同行の許可。 第二フェーズ、終了。 魔法陣より手を離してください―――』
あ、手が離れるようになっている。周りの迎撃魔法陣も光が薄くなっている。
「いよいよね…!」
「はい…!」
ぴょんっと抱っこされに戻って来た社長を抱きしめ、続いての指示を待つ。すると…。
『―――最終フェーズ。 扉を開く際は、再度魔法陣に触れてください―――』
…よし…! せーのっ、えいっ!!
『―――開錠―――』