ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~ 作:月ノ輪
【晴れやかな空の朝。とある広場に五人の芸人が集められる。 そう…今回もまた、あの企画が始動する――】
「はー。また来たなぁ、これ」
「なんなら今からケツ痛いわぁ……」
「今年はどんなんなんでしょうねぇ」
「変わらず気合入ってるとか聞きましたけど」
「嫌やあ……」
【揃った五人…ハダマ、マツトモ、タカナ、エンドオ、ホーセ。 彼らの前に、いつものあの使いが】
「よう揃ったな、皆。 皆のダンジョンがいっ…ガイド役を務める、先輩魔物のフジラワや。 見ての通り、悪魔族や。 今日一日、よろしくな」
「今年はそういう趣向かぁ」
「ダンジョン行くんすね」
「似合ってへんねんあの衣装……」
「さ、とりあえず正装に着替えてくれるか。 そこに着替えボックス用意があるから」
【悪魔族フジラワに促され、それぞれの着替えボックスに入る五人。今回はどのような衣装が用意されているのか?】
「着替え終わったみたいやな。じゃ、1人ずつ出て来てくれるか。 まずはマツトモ」
「はい。 よっと…角が…」
「ほう、マツトモは鬼族だったんやな。道理で身体ムキムキやと思ったわ。 じゃあ次、タカナ」
「はい……」
「なるほど、タカナは妖怪族のカッパやな。 頭の皿が輝いてるわ。 じゃあ次、エンドオ」
「はい。 付け耳、これでいいんすかねぇ」
「ほー。 エンドオはエルフやったんか。 道理でイケメンやと思ったわ。 じゃあ次、ハダマ」
「…………。」
「…フッ…!」
「ッハ…!」
「ふふっ…」
「おおー! ハダマ、希少種族のイエティやったんか! もしかしてと思ったら、もしかしてやったなぁ。 じゃあ最後、ホーセ」
「……いやあの、これヤバないすか!?」
「はー。ホーセはスライム族やったんか。しかし変わった姿やな。青い玉ねぎの着ぐるみみたいや。 しかも胴体のとこに、にやっと笑った顔が……」
「いや、その顔の目のとこ、黒線で目隠しされてるんやけど!? これ、どう見てもド……」
「ほな、そろそろ車が来るから並んでくれるかー」
「ちょっと!!」
【何はともあれ、魔物に扮した五人。するとそこに、ダンジョン行きの車がやってくる――】
「ん? あれ? いつもと違うなぁ?」
「でもあれですよ。『ガーキー禿げ光りダンジョン行き』って書いてありますし…」
「前まで乗合馬車でしたよね?」
「これはな、『バス』や。 イダテン神様にお願いして貸して貰ったんや」
「ハァッ!? あのイダテン神様に!?」
「……ということは…」
「おうとも! オレが運転だ! 安心しろって、目的地までは安全に行くからよ!」
「―――ぅおお!?」
「マジやん…! マジのイダテン神様やん…!」
「ここで登場って…勿体なさ過ぎません……?」
「まあ良いから乗れって! あ、そうそう。乗ったら『笑ってはいけない』スタートだからな? それと、フジラワ?」
「そうです。っあ、そや。 今回、他の先輩魔物達も参加してくれとる。 まず『ケツ叩き隊』は、ダンジョンお仕置き部隊の種族が担当してくれる。 この方々や」
「わっ!? バス?ん中から宝箱が降りてきた!?」
「あっ…! 僕知ってます、彼女達『ミミック』っていう種族の…」
「冒険者が怖い魔物№1っていうあれか……!」
「いつもの目出し帽やなくて、舞踏会とかの黒マスクなんやな」
「鞭使い上手そうっすね……。アッ怖…! バットと触手振り回しとる…!」
「そしてもう一つ。 お仕置きのためのアナウンスは、お仕置き部隊の隊長達が務めてくれとる。 このお二方や」
『どうもー! アナウンス①、隊長です!』
『アナウンス②、副隊長です…! 本日はよろしくお願いいたします…!』
「あら可愛い声」
「録音じゃないねんな。……丸一日二人でやるんか?」
「あれどっかで聞いたことあるような……魔界にロケ行った時…?」
「あーわかる。 なんか、どっかの会社のCMだっけか?」
「とりあえず、厳しそうじゃなくて良かったぁ…――」
\デデーン/
『ホーセ、OUT!』
『いや社……隊長、まだですまだです。まだ始まってません。 ですがこの後なら、存分にどうぞ』
「怖ぁ……」
【何はともあれ、五人は乗車。 横一列の席に座らされ、バスは動き出す。 笑ってはいけないダンジョン、開幕である――】
「……この目の前の席に色々と来るんですかね」
「せやろなぁ。わざとらしいもん」
「わざとらしいと言えば、マツトモさん、あの後ろの席の……」
「ん? ―――――っ。 …さっきのミミック達、なんやろけど……座席に宝箱並んでるのウケるなぁ……」
「あれなら今回も乗合馬車でよかったんじゃないすかね。それなら商品輸送みたいで……」
「「フッ……」」
\デデーン/
『ハダマ、エンドオ、OUTぉ~!!』
「…いや卑怯ちゃう? アゥッ!」
「ツッコんだら負けだったんですよ…ゥッ! あぁほら、ケツ叩き終わった宝箱が床滑ってって、席に…はい、ちょこん」
「「「「フフッ…!」」」」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、タカナ、ホーセ、OUT!』
「おいエンドオ…!」
「
【早速洗礼を受けた五人を乗せ、バスは進む。 そして、笑いの刺客達が次々と襲い来る――】
「あ゛ー…この座席、柔らかくて助かったわぁ…。もう結構痛いもんケツ」
「この企画専用車両なんですかね。 イダテン神様に手ぇ合わせとこ」
「俺も…。 ―しかし、さっきのは酷かったですね。あの大物歌手が鼻にクワガタ挟みだして…」
「俺はその後の、あの大物アイドルがパンツ一丁で現れたのがヤバかったわぁ…」
「んなこと言ってたらまた停まったで。はーもう…次は誰や?」
【停留所に停まり、バスの扉が開く。 そこで現れたのは―――】
「おねーちゃん! 早くするっぴょん! バス行っちゃうぴょん!」
「待って、イスタ…! よかった、間に合って…!」
「おわっ…! すっごい美女二人…!」
「って、イスタ姫様とカグヤ姫様だ…! バニーガール族のお姫様二人ですよ…!」
「あぁあのダンジョンの…! あそこの団子、ごっつい美味いよな…!」
「ロケで何度お世話になったかわからんわー。しっかし姫様姉妹でとは…」
「まーたどえらい大物を……服、村娘やなぁ」
【なんと、絶世の美女で知られるカグヤ姫様とイスタ姫様。 普段のバニースーツではなく村娘の服を纏い、何をしでかすのか――】
「…まだ出発しないっぴょん!? 運転手さん、早く出してっぴょん!」
「急がないと、あの方が……!」
「…なんか、焦ってるみたいですね」
「誰かが追いかけて来てるって感じやな」
「お、来たみたいですよ」
「誰や…? ――ッ!?」
「か…カエルぅ!?」
「おぉ間に合ったみたいだ! カグヤ、イスタ、追いついたぞ!」
【現れたのは、如何にも王子の恰好をした、カエル姿の男性。彼は――】
「フロッシュ王様……ですよね、あれ…!?」
「『悲劇の王子』として有名な、カエルの呪いをかけられた…あの方やんな…!?」
「出るんか、この企画に……!? 出てええんか……!?」
【呪いをかけられ国を追われ、今は雨季雨季ダンジョンの主となった、
「なぜ逃げるんだ、2人共! 私の后となって欲しいと頼んでいるのに!」
「それは先程からお断りさせて頂いて……!」
「嫌ったら嫌っぴょん!」
「うわー…。 確かフロッシュ王様の呪いって、『愛する者のキス』で解けるんでしたっけ…? で、まだお相手がいないと…」
「確かな…。あと、『美しき者の叩きつけ』で一時的に、やった気がする…。 どちらにせよ、ネタにしてええんか…?」
「とにかく、見守ってみましょう…?」
「――そう言わないでくれ! 一目惚れしたんだ! 頼む、どうか私と共に!」
「いえ、ですから…! あの……!」
「嫌なものは嫌なんだっぴょん! 早くどっかいくぴょん!」
「何故なんだ…! 私の城には美味しい野菜が沢山ある! 勿論食べ放題だとも!」
「その前に湿気でウサ耳カビまくるっぴょん! あと!カエルぴょこぴょこ五月蠅いっぴょん!」
「いやそこはお互い様じゃないかな!?」
「「「ふっ…!」」」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUTぉ~!』
「こんなくだんないので……アァッ…!」
「二人の独壇場やん……アゥッ…!」
「豪勢な舌戦ですね…イッ…!」
「――くっ…! イスタはなびいてくれないようだな……ならば…カグヤよ!」
「は、はい…!?」
「頼みの綱は君だけだ! どうか私の后に! さあ、既に式場の用意は済んでいる! すぐに向かおう!」
「い、いえ、ですから……その…! きゃっ……!」
「お姉ちゃんの手を離すっぴょん! 引っ張っていこうとするなっぴょん!」
「あーあー…カグヤ姫様が翻弄されとる」
「人気者は辛いですねぇ。 あ、とうとうフロッシュ王が立って引っ張り出して…」
「――お? イスタ姫様も急に立って……?」
「もーう許さないっぴょん! このぉ……食らうっっっぴょーんっ!!」
「なっ…! ゲコォッ!?」
「「「「「はっ!?!?!? ドロップキック!?!?」」」」」
「嘘やん…! ものっそい綺麗に良いの入って、吹き飛ばされたで…!?」
「そういえばバニーガール族は蹴りが凄く強いとかなんとか……!」
「うお…! おい、あのポールひんね曲がっとるぞ…!」
「下手すれば死んでるんじゃ……!?」
「――っあ…! フロッシュ王、動いて……! わっ…!?」
「「「「「えっらいイケメン!!?」」」」」
「おぉ…! 呪いが解けた!! 感謝するイスタよ!」
「えっ…そ、それほどでも…ぴょん……?」
「フッ…! この姿ならば拒まないだろう! さあカグヤ、私と式場へ行こう!」
「あ、あの……」
「どうやらまだ気が向かないみたいだな。なら…これでどうだ。 ――私が顎クイすることで、喜ばぬ女はいなかった!」
「おぉ…! 積極的っすねぇ…」
「あれは流石に惚れてまうんちゃうか?」
「…いや、カグヤ姫様の肩が震えて……」
「――あのっ! もう…止めてくださいっ!」
「ぐあぁッ!?」
「うおっ!? すっごいビンタ!?」
「思いっきし入った…!!」
「うわカグヤ姫様も立ち上がって……! まさかぁ……!?」
「しつこい人は…………嫌いなんですっ!!!」
「ゲゴォオオオッ!?」
「「「「「やっぱり、ドロップキックや!!!」」」」」
「ハッ…!
「あっ! お姉ちゃん、待ってぴょーん!」
「あ、降りてっちゃった…」
「えっぐいモン見たわぁ……。普通の馬車やったら壁貫通しとるで絶対…」
「あのカグヤ姫様の蹴り技って、とんでもなく貴重なんでは…?」
「普段、お淑やかの極みみたいな方ですのにね……」
「んで、フロッシュ王様が…生きてるかあれ……? あ、生きてた」
「く……駄目か……。これで……339回目のプロポーズ失敗…。 私の何が…駄目なんだ……」
「なんでやろうなぁ…」
「しつこいから、なんでしょうねぇ…」
「うわ、目の前まで来てこっち睨んでくるやん……。 なに…なに……?」
「――――彼女、募集中です。 ……げほっ…」
\デデーン/
『全員、OUT!』
「身体張りすぎやねん! ッァ…!」
「耐え切れなくてえずいとるやんもう…! ィッ…!」
「王族コラボのとんでもない恋愛劇でしたね…。 ッ……!」
「どっち側もよくオファー受けましたよ…。いっ…!」
「フロッシュ王様、結構今を謳歌してそうやなぁ…。 うぐっ…!」
【数多の刺客を退け、バスはようやく目的地へと。 しかしここから、ダンジョンでの長い一日が始まるのである――】