ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~   作:月ノ輪

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人間側 とある芸人達と使い⑧

 

 

「――あ゛あ゛うぁぁ……。 ちょっと眠なってきたわ……」

 

「ふぁあうぅぅ……。 そっすねぇ……」

 

「うわもうこんな時間すか……」

 

「だいぶ経ったなぁ……」

 

「もうかなりこなしましたよねぇ……」

 

 

 

【―――時は刻々と進み、夜の帳が下りた頃合い。五人もあらゆるイベントをこなし、お疲れムード】

 

 

 

「いやしかし、色々ありましたねぇ…」

 

「ホンマな。各所のネタ披露はもとより……」

 

「今回もやりたい放題やったなぁ…。 芸人対抗のバトルあったし…」

 

「恒例の身体張り合戦もありましたね……」

 

「僕達の秘密暴露もありましたわ……しんどぉ……」

 

 

 

 

【先程までを振り返る彼らだが……ここに来て、あのイベントが五人を…もとい、()を襲う――!】

 

 

 

 

 

『――緊急連絡! 緊急連絡ぅ!! ダンジョン内の全ての魔物に連絡!』

 

『只今、全魔物に向け招集命令がかけられました。各員、速やかにホールへ集合してください。 繰り返します、只今―――』

 

 

 

「うわなになになに!?!?」

 

「急にサイレン鳴りだしたやん!?」

 

「隊長と副隊長のアナウンスが……!」

 

「何が起きたんすか!?」

 

「集合しろって…!?」

 

 

 

「――皆、今の聞いたな? どうやら何か重大事件が起きたらしい。 集まるで」

 

 

 

「あ。フジラワさん…!」

 

「え、怖っ…。何が起きたんすか…?」

 

「とりあえず行くかぁ……」

 

「せやな……」

 

「嫌な予感するんすけどぉ……」

 

 

 

【ということで、五人はホールへと。 そこで待ち受けているものとは――】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おわー…。えっらい数集まっとるわ…」

 

「んで、厳戒態勢やん…」

 

「ほんとっすね…。ピリピリしてますわ…」

 

「お、ミミック達も綺麗に整列してますね」

 

「…どっちかというと、整頓って感じやなあれは…」

 

 

 

「じゃ、五人共順番にそこに座って貰えるか」

 

 

 

「当然の如く一番前の席やな」

 

「これは……」

 

「あれっすね……」

 

「あれやな……」

 

「嫌やあ!」

 

 

 

 

 

【フジラワに指示された席に渋々座る五人。次の瞬間、急に辺りは暗くなり――――】

 

 

 

 

「――ガァッデムッッッ!!!」

 

 

 

 

「うわぁ出た!!」

 

「やっぱ出たぁ!」

 

「災難やなぁホーセ。 ……ホーセ?」

 

「…………」

 

「言葉失ってますねこれ……」

 

 

 

 

【盛大なスポットライトやスモークと共に姿を現したのは、もはやホーセの天敵、『チョノ』。今回も御多分に漏れず、ビンタが飛ぶのか――?】

 

 

 

 

「……ん? なあおい、チョノの恰好……あれって……?」

 

「へ? いつものサングラス姿じゃ…?」

 

「服装の方やろ。お仕置き部隊の服…じゃ、ないな」

 

「そういえば……。それに普段なら、チョノさんこそお仕置き部隊隊長とかの肩書持ってそうですのに」

 

「隊長も副隊長も、アナウンス役やもんな…?」

 

 

 

「全員集まっているようだな! 俺はチョノ、魔王軍所属の者だ!」

 

 

 

「……ですってよ…!」

 

「魔王軍…!? そういえばあのエンブレムはそうやな…!」

 

「ええんかそんな名乗って…!?」

 

「あでも、ドラルク公爵でてはりますし…!?」

 

「……絶対なんかあんなぁ……」

 

 

 

「お前達に集まって貰ったのには理由がある! 実は先程、俺達が守る宝物庫から、ある物が無くなった!」

 

 

 

「なんや…?」

 

「なんでしょ…?」

 

「んー…?」

 

「ある物…?」

 

「…………」

 

 

 

「だが付与されていた追跡魔術により、それがこのダンジョンに、もっと言えばこの中の誰かが持っていることが判明した!! …そこの五人! 何か覚えはあるか?」

 

 

 

「いや…ないっす」

 

「ないですわ…」

 

「特に心当たりは…」

 

「わからないっす…」

 

「…………」

 

 

 

「ん? おい、そこのスライム。 お前だお前、ホーセとか言ったな。 何か様子がおかしいなぁ」

 

 

 

「い、いや……僕も、特に、何も……!」

 

 

 

「あー? にしては目が泳いでるんじゃないかぁ?」

 

 

 

「そん…わけ…ないじゃないですかぁ! 何言うてはるんすかぁ!?」

 

 

 

「ふっ…! 必死か…!」

 

「ガン見しあわなくとも…!」

 

「目ぇ逸らしたら負けやと思ってるんちゃうか?」

 

「頑張りますね……ふふっ…!」

 

 

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、マツトモ、タカナ、エンドオ、OUTぉ!』

 

 

 

 

「「「「あ゛だっ…!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ふん、まあいいだろう。すぐにわかることだからな。 まずは何が無くなったかを明かしてやろう!」

 

 

 

「あ、大きめのフリップ運ばれてきましたよ」

 

「布かけて隠してあんな」

 

「何が書いてあんねやろなぁ」

 

「なんでしょうねぇ…。ふふっ…! あ。 痛っあっ!」

 

「………………」

 

 

 

「白を切る犯人のために、探し物の図を見せてやる! これだ!!!」

 

 

 

「お、布が外されて……ふははっ!」

 

「あー…! そういう…! ふっふふっ…!」

 

「変だと思ったら……! あははっ…!」

 

「盛大に巻き込みましたね…! ふふふっ…!」

 

「嘘やん……嘘やあん…!!」

 

 

 

 

「「「「「『世界の半分をあげる券』やんか!!!」」」」」

 

 

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、マツトモ、タカナ、エンドオ、OUT!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛てて…なるほどなぁ…。サンタさん巻き込んでたんかぁ…。 何させとんねんマジで……」

 

「まあ薄々そんな気はしてましたけども……」

 

「言われてみれば、確かにサンタさんらしくなかったしなぁ…」

 

「それにやけに仰々しい代物でしたしねぇ。何ですか、世界の半分をあげるって」

 

「………………」

 

 

 

「なんだ? おいそこの五人! 今これを見て、やけに反応したな? 明らかに知っている素振りだったな? そうだろう!?」

 

 

 

「あー…えー……いやまあ、そうっすね…」

 

「心当たりはありますわなぁ……」

 

「バリバリにあります……」

 

「というか、持っとるでしょうし……」

 

「ちょっと…!! こっち見ないでくださいっ…! 前向いたままで…!!」

 

 

 

「やっぱりお前達の中に犯人がいるのか! どいつだ!?」

 

 

 

「……探されとるでホーセ」

 

「だから今、話振らないでくださいって…! でも今回は大丈夫です…!」

 

「? やけに自信満々じゃないですか?」

 

「だって俺、そのチケット部屋に置いてきたんやもの…! 証拠は無い…!」

 

「えっ!? それ大丈夫なんですか…!?」

 

「俺がビンタされないことが一番大丈夫な結果に決まっとるやろ…! フフフ…俺の勝ちや…!」

 

 

 

 

\デデーン/

『ホーセ、OUTぉ!』

 

 

 

「うっ……! だぁっ…! けど、ビンタに比べればこんぐらいぃい……!!」

 

 

「ふっ…! そこまでかいな…!」

 

「どうなりますかねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――どうやらお前達のいずれかが持っているらしいな。チェックさせてもらうぞ。 まずは…鬼族のマツトモからだ」

 

 

 

「うわめっちゃ近い……持ってませんてば」

 

 

 

「ふぅむ。どうやら本当に持ってなさそうだな。 なら次は、イエティ族のハダマだ」

 

 

 

「同じく持っとりませんわ。…毛の下に隠してもいないですって!」

 

 

 

「まあ良いだろう。次は…河童族のタカナだ」

 

 

 

「お二人と同じく持ってませんよ…。 別に皿は捲れませんから」

 

 

 

「そうか。 その次は…エルフ族のエンドオだな」

 

 

 

「僕も持ってません。 ……ですけど」

 

 

 

「皆まで言わなくていい。 ――スライム族のホーセ。どうせ、今回もお前だろ」

 

 

 

「なんで僕にだけそないな聞き方なんですか!? 他の人が持っているかもしれないでしょお!?」

 

 

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUTぉ!』

 

 

 

 

「狙いはしっかり定められとるなぁ…。 あぐっ…!」

 

「だあっ…!  逃がしはしないって感じですねぇ…」

 

「まあでも、策?というか、現物はここにないみたいですから…」

 

「もうはよ諦めて叩かれてくれんかなぁ…」

 

 

 

 

「――と、お仲間は言っているが?」

 

 

 

「いいや知りませんね!! あんなチケット、見たことも聞いたこともありません!」

 

 

 

「本当か? 嘘を言ったらただじゃおかないぞ?」

 

 

 

「本当ですとも! 特にあのフリップの図みたいな、でっかいチケットは知りません!」

 

 

 

「馬鹿かお前。見やすくするために大きく描いてあるだけに決まっているだろ。 …待て、つまり小さいチケットは見たことあるということか?」

 

 

 

「…………ッッ!! …み、見たことありませんねっ!! ええ見たことないです!!」

 

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUT!』

 

 

 

「いやだから……睨み合うなって…! だぅっ…!」

 

「しかもテンパったのか、変な事口走りましたね…。 あがっ…!」

 

「もう目が震えまくってますわぁ…。 うっ…!」

 

「はよ降参しぃよ……。 づぁっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このまま続けても良い事はないぞホーセ。早くゲロれば、そのぶん早くお仕置きが終わるんだぞ?」

 

 

 

「だから僕は皆目見当もつきませんよーだあ! そんなチケットのことなんて! なんなら、身体検査でもしてみればいいじゃないですか!!」

 

 

「お。とうとう伝家の宝刀引き抜いたで」

 

「わぁすっごいしたり顔…! まあそのせいでケツ叩かれとんの、本末転倒すけど……」

 

「……部屋に探しに行かれたらどうすんでしょ?」

 

「あー…。そん時は俺らに頑張って(なす)り付けようとすんかもなぁ」

 

 

 

 

 

「――なら、望み通り身体検査をしてやろう! 先に聞くが…もし出てきたらどうする!?」

 

 

 

「そん時は…………大人しく罰を受けますよ! ええ受けてやりますわあっっ!!!」

 

 

「怒鳴るなやもう……」

 

「売り言葉に買い言葉っすねぇ…」

 

「もし出てきたらどうすんねやろ」

 

「さあ……。でも間違いなく置いてきたみたいですし……」

 

 

 

「よし! 言ったな! そのへらへらした顔で言ったな! 男に二言は無いぞ!」

 

 

 

「へらへらしてるのはこのスライム着ぐるみの顔だけですよ! しかも目線引かれてるからそんな―――」

 

 

 

「おいなんだこれはァ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「え゛っ!?」

 

 

「なんや…!?」

 

「チョノさんどうしたんすか…!?」

 

「あ゛っ! ホーセさんの着ぐるみのチャック部分…!」

 

「どこや…? ――あ。 ぶふはははっ!!」

 

 

 

 

「どういうことだホーセェ! お前の中からミミックが出て来て、『世界の半分をあげる券』を差し出してきたじゃないか!!!」

 

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、マツトモ、タカナ、エンドオ、OUTぉ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そーかぁ……そういうことかぁ…!」

 

「確かにアレなら、どう足掻いてもホーセさんに責任負わせられますね…」

 

「あ、てか…! 最初ヘルメーヌ様に会った時の、別のスライム着ぐるみ……!」

 

「あー! あん時ミミック入ってたわ! あれも伏線やったんか…!?」

 

 

 

「スライムの身体の中にチケットを潜ませ隠すなんて、良い度胸してるじゃないか! なあホーセ!!」

 

 

 

「へ……へぇ…??  えっ…確かに部屋に置いて来たのに……なんでぇ……???」

 

 

「ふっ…! あまりに予想外過ぎて、放心気味っすよホーセさん…」

 

「いつから潜んでたんやろなぁ、あのミミック…」

 

「恐ろしい種族っすねぇ……」

 

「おぅホーセ、もう逃れられへんのちゃうか?」

 

 

 

「そういうことだ。 大人しく檀上まで来てもらおうか!」

 

 

 

「いやちょっ…! 待って待って! 違うんすよこれはぁ! 違うんですって!!」

 

 

 

「何が違うんだ? あぁ?」

 

 

 

「いやそれは…貰いもんなんです! サンタさんから貰ったんです!」

 

 

「あー…言いおったで」

 

「サンタさんに責任押し付けましたね」

 

「いやまあ事実ではあるんですけど……」

 

「でも無駄ちゃうか。 どうせ――」

 

 

 

「お前、子供じゃなくて結構なオッサンだろ! それに今日サンタクロースが来るわけないだろうが! もっとまともな嘘をつけ!!」

 

 

 

「ほんとなんですってぇっ!!!!」

 

 

「まあそうなるわなぁ……」

 

「そのための配役でしょうしねぇ…」

 

「突然にあわてんぼうのサンタクロースが現れた言われても…」

 

「信用されんわなぁ……ふふっ…」

 

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUT!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ったく。なあホーセ、お前さっき言ったな? この『世界の半分をあげる券』が出てきたら、大人しく罰を受けるって? なあ?」

 

 

 

「……言ってません……!」

 

 

 

「あ゛?」

 

 

 

「言ってません! 聞き違いじゃないですかあ!?」

 

 

「うわ無駄な抵抗しくさって…」

 

「こっから長いですよ……」

 

「今回はどんぐらいごねるんでしょうね……」

 

「……――ん? あれでも……チョノのヤツ、笑ってへんか?」

 

 

 

「クックック……。 そうか、そういう態度をとるのか。 そうかそうかァ」

 

 

 

「……な、なんですか…!?」

 

 

「えっらい怪しいんやけど……」

 

「すごいニヤリって感じですわ…」

 

「なんかあるんですね…対策……」

 

「怖ぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

「実を言うと、そのチケットは然る御方の宝物でな。だから俺が動いてるんだが――」

 

 

 

「おっ? チョノ、檀上に戻っていったで?」

 

「ホーセさんはおろか、チケットまでそんままで……」

 

「……何故か、心臓バクバクしてきたわ……」

 

「タカナ、このチケットはよ受け取れ! さっき交換したいって言ってたやろ!」

 

「いやそれは…! あ、待ってください…! チョノさんが…跪いて……!?」

 

 

 

「その御方が、今この場にいらっしゃっている! ホーセ、面と向かって言い訳してみろ!! ――お願い致します!」

 

 

 

「は…!? なんでそんな恭しい態度……――っぁ…!?」

 

「な、なんですこの地響き…!? いや…震え…!? み、耳鳴りが……!」

 

「ダンジョン全体が…波動で揺らされているような……!? 身体が…重い…っ!?」

 

「うわっ…!? なんか厳かで、恐ろし気な音楽まで聞こえ始めたで…!? 怖怖怖…っ!!!」

 

「あぁっ! 見てください! 壇の奥の壁全体が……とんでもなく歪んで……―――!」

 

 

 

 

 

 

「『God damn!!(ガァッッッデムッ)』――とな。  そこなる五人の魔物達よ、余の顔に覚えはあるか―?」

 

 

 

 

 

 

「……は……?」

 

「…………へ……?」

 

「……え……え……え……!!!!?」

 

「嘘…………やん………!???」

 

「………………ッッッッッッ!!!!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「せ…先代……先代魔王様ぁ!?!?!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は……へ…………え……へぇ……????」

 

「え…幻覚とか見せられとる訳……ない……よな……?」

 

「いやですけどあの御姿……! それにこの潰されそうな圧……凍てつくような波動というか……!」

 

「身体とか心とか魂とかに、えげつなくビシビシ突き刺さってきとるわ……!」

 

「本物……じゃない、御本人……ご、御前様?? ですよね間違いなく…!!」

 

 

 

「如何にも。余は『オウマ・ルシフース・バアンゾウマ・ラスタボス・サタノイア84世』。知っての通り、今は隠居の身であるが、な――」

 

 

 

「こ、答えてくださって……! は、はい…! 勿論存じておりますぅ……!」

 

「どうすればええんやこれ…!? とりあえず敬服の姿勢とるべきやろ…!!」

 

「――って! ビビり過ぎて気づいとらんかったけど…周り皆、跪いとります…!」

 

「ミミックに至っては、宝箱の姿に戻って震えとりませんか…!?」

 

「はよ…! はよ傅きましょ…!!!」

 

 

 

「無用だ。皆、首を上げ先の通り席につくが良い――。 私語を含めた会話も、構わぬ」

 

 

 

「は、ははあっ!!!」

 

「有難うございますぅ…!!」

 

「……先代魔王様まで出演なさるって…今回えげつなくないか……?」

 

「はい本当に…! 神様方の出演もヤバかったですけど……!」

 

「もう笑いごとやないで……。……アカン、ちびってもうた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ということだホーセェ! その『世界の半分をあげる券』は彼の御方、先代様の宝物だ! さあ、申し開きをしてみろ!」

 

 

 

「ヒッ……!?」

 

 

「無茶いうなや……!」

 

「うわホーセさん、口から泡吹いとりませんか…?」

 

「そりゃそうなるわなぁ……」

 

「本当によかったぁ……あのチケット貰わんといて……」

 

 

 

「ホーセよ。今しがたチョノが口にした通り、それは余の宝。 それが何故、其方(そち)の手元にあるか―、克明なる釈明を求める」

 

 

 

「っあ……えっ……どっ……そ、その……あっ…あっ……」

 

 

「可哀そうなぐらいどもっとるなぁ……」

 

「というか…今回ばかりはマジで可哀そうかもしれへんわ…」

 

「相手がとんでもなさすぎますものね……」

 

「下手な回答したら跡形もなく消されそうですし……」

 

 

 

 

「そ……そんのですね……あの……実は……さ……サン……が……」

 

 

 

「――ふむ…?よく聞こえぬ。 もっと声を張るが良い」

 

 

 

「ふえぁぅっ…!? え、へえっと…! そ…そひょのですねぇ…!!」

 

 

 

「……ふぅむ。 まだよく聞こえぬ。 なれば、余も――、よっと、な」

 

 

 

「ふぁっ!?」

 

 

「―え゛っ!?!? ……ふっ…!」

 

「魔王様が……巨躯の御身をお曲げになられて…!?」

 

「身を乗り出すような感じで…耳、こっちに傾けてくれとるやん!!」

 

「や……優しい……!!」

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、OUTぉ!』

 

 

 

「はっ!? 嘘やんこれ継続なんか!? ばあぁっ!」 

 

「魔王様にケツ向ける形で叩かれんのかぁ……」

 

「うわぁ…恐ろしい……」

 

「言うて笑って良い雰囲気じゃないですよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたホーセ! もっと先代様に伝わるように話せ!」

 

 

 

「そ、そないなこと言われてもぉ……!」

 

 

「はよ言えってホーセ……!」

 

「ほら先代魔王様、ずぅっと耳を傾けてくれたままやん…! 不敬やぞ…!」

 

「ホーセさん…! マジで頼んます…!」

 

「――あ…!? 先代魔王様が体勢お戻しになられて……!?」

 

 

 

「余の耳が遠くなった故か、其方(そち)が口を噤んでいる故か、どうにも聞こえぬな――」

 

 

 

「い、いえ…! ぼ、僕が口を噤んでいるんで…! あいえ、そ、その……!」

 

 

 

「このままでは埒が明かぬ。 どれ――」

 

 

 

「へ…!? うわわわっ!?!?」

 

 

「うおっ!? ホーセの身体が浮き上がった!?」

 

「魔王様のお力ですよ…! 指先ひとつで…!」

 

「そんで招くように、クイッて…!!」

 

「あぁっ! ホーセさんが壇上に引っ張られて…魔王様の目の前に!!」

 

 

 

 

「これで聞き取りやすくなったか。 さて、ホーセよ――」

 

 

 

 

「大変申し訳ございませんでした魔王様ぁああ!!  お返しいたしますぅううう!!」

 

 

 

 

 

 

「―ぶふははっ! 速攻で土下座して返却したであいつ!」

 

「いやまあそうっすよねぇ…。 チョノさん相手のいつものとは違いますし……」

 

「綺麗な土下座やなぁ…。 ふっふふ…!」

 

「こっち睨んできとりますやんホーセさん…! ははっ…!」

 

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUT!』

 

 

「「「「づぁあっ…!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホーセよ。余の宝、確かに我が手に。 ――して、仔細を聞こう」

 

 

 

「は、ははぁっ!! そ、それが……僕にもわからないのですけど…! サンタさんが間違えて持ってきてらしく……! それで僕にプレゼントとして…!! 魔王様の宝物とは露知らず…!! 盗む気なんて更々なくて……!」

 

 

「ふっ…! さっきまでのモゴモゴはなんだったってぐらいの早口やな……」

 

「頭床に打ちつけながらよう言うで…」

 

「魔王様相手だとこうも正直なんすね……」

 

「あれ? ホーセさん、こっち向きましたよ?」

 

 

 

「そんで! その場にはあの四人もいました! 証人です! いえ、連帯責任です! どうか僕を処すのであれば、あいつらも、一緒に頼みますぅっ!!!!」

 

 

「はああアア!!?」

 

「うーわ…いつも通りとはいえ……」

 

「最低最悪な道連れの方法選びおったなぁ……」

 

「――あれ…? 魔王様、さっきみたいに御身体を縮めて…耳をホーセさんに向けて…!?」

 

 

 

「ふぅむ…。 やはり余が年老いた故か…。 すまぬがホーセ、よく聞き取れなかった故、もう一度頼む――」

 

 

 

「へ…へぇ…? は、はぁ…わ、わかりました…。 えっと……」

 

 

 

「サンタクロースが其方(そち)にプレゼントをし、その目撃者たる四人も同じく処して欲しい――。とまでは聞こえたのだが、な」

 

 

 

「いや全部聞こえてらっしゃるやないですかぁ!!?」

 

 

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUTぉ!』

 

 

 

 

「もーまた、もーまたぁ…!! だぅっ…!!」

 

「ヘルメーヌ様に続いて、またぁ…!  あがっ…!」

 

「だからぁ…! 何させとんねんよ!! づぅっ…!」

 

「色々アカンくないすかね、魔王様のそのネタ…! でぁっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ…。 ホーセよ。余が今しがた繰り返した内容は、まごうこと無き事実であろうな?」

 

 

 

「えっ、あっ、はいぃっ!! 事実です! 事実でございます! ですから、どうか罰は…――」

 

 

 

(おもて)を上げよ、ホーセ。 ―――処を下す」

 

 

 

「ヒッ…! は、ははぁ…! どうか…どうかお許しを―――」

 

 

 

 

「――――許そう。 全てを、許す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ…?」

 

 

「は…?」

 

「へっ…!」

 

「おっ…!」

 

「おおおっ…!?」

 

 

 

「余の名を以て、此度の一件、水に流す。 そう宣告をしたのだ」

 

 

 

「えっ…えっ…!? よ、宜しいのですか!? 水に流して頂いて、宜しいのですか!?!?」

 

 

 

「構わぬ。其方(そち)に嘘をついている様子はない故な。 かのサンタクロースがなされたことだ。凡そ悪事の意思の欠片もなく、何かの手違いであろうよ」

 

 

 

「っ……っ……よ…よかったぁ……! さ、流石魔王様ぁ……!」

 

 

「ホーセ、今度は倒れ伏したで。寧ろ失礼ちゃうかあれ」

 

「いやしかし、良かったです…! こっちも思わず安堵しちゃいましたもん」

 

「――なら、今回はビンタ無しっちゅうことか?」

 

「……いや……控えていたチョノさんが動き出しましたよ…」

 

 

 

 

 

 

「先代様! 寛大な御心遣い、敬服するばかりでございます! ということは、仕置きは無しということで?」

 

 

 

「無論だ」

 

 

 

「なれば! 僭越ながらおひとつご提案がございます! この者に、ホーセに! ()()()()として、『禊のビンタ』を与えてやっては如何でしょうか!!」

 

 

 

「ふむ、良い案だ。 ……ということだホーセよ。覚悟を決めるが良い」

 

 

 

「………………はぇえ……??????????????????」

 

 

 

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUTぉ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は…え……はぁあああ!? ちょっとぉ!? チョノさん!? 何ちゅうこと言うんですかあ!?」

 

 

「痛てて…。そーくるんかぁ…! それは読めんかったなぁ……」

 

「結局ビンタは変わらないんすね…。 ふっふ…!」

 

「……いやてか、流れ的に魔王様がビンタ役やるんか…!?」

 

「という…ことっすよね…!? そもそも、禊って……?」

 

 

 

「先代様。先程この者は、釈明のついでに仲間を売りました! しかもここ最近は毎回、巻き添えを増やそうと画策しております!」

 

 

 

「うむ。余としても、その様は毎度視聴し、把握しておる。 そろそろ一度、性根を清める時であろう」

 

 

 

「……えっ! 今、さらっとエライ事言わへんかったか…!?」

 

「先代魔王様…これをいつも見てくださってたんですね…!?」

 

「マジか…! お見になられるんか……!」

 

「ご出演なされた理由、分かった気がしますわ…! …ホーセさん、今それどころじゃないですけども……」

 

 

 

 

 

 

「ま…待ってください魔王様!! ビンタって…その、大きな御手で、です…よねぇ!?」

 

 

 

「如何にも。さあ、『気をつけ』の姿勢を取るが良い――」

 

 

 

「まままま待ってください待ってくださいぃ…! サイズ的にお力的に、ビンタされたら僕の頭吹っ飛ぶと思うんですけど…!!?」

 

 

 

「フッ…。安心するが良い、ホーセよ。既に其方(そち)の身には、余が防御魔法をかけておる。 痛みはチョノのビンタ……よりかは多少痛いぐらいで済む」

 

 

 

「いつの間に……!? い、いやそういうことじゃなく…!」

 

 

 

「ふむ。加えて、身体ごと大きく宙を舞うであろうが…華麗に着地ができる魔法も付与しておる故な」

 

 

 

「はぇ……!? で、ですからそれ以前の話で…!」

 

 

 

「ホーセ、先代様の御前でこれ以上の狼藉を働くんじゃあない! では先代様、宜しくお願い致します!」

 

 

 

「チョノさんは黙っててくれませんかねえ!? あっ…! 身体が…勝手に……気をつけの姿勢にぃ……!」

 

 

 

「では―。 ホーセよ、我が一撃、その身に受けるが良い」

 

 

 

「ひぃいいいっ!!?  待って待って待ってえ! 嫌です嫌です嫌イヤイヤ!!」

 

 

 

 

「『このビンタを禊とし、彼の者を悪たるスライムの道から引き戻さん――。』 ―――いざ参ろう。 ハァアアア――!」

 

 

 

 

「イヤアアアアアアアアッッッッッ!!!! 僕…僕ぅっ!!! 悪いスライムじゃないですよおおおおっっッッ―――!!!」

 

 

 

 

「喝ッッッ!!!」

 

 

 

 

「――グッッッッッバッハアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッッああ…!! と…とんでもないビンタ……ホンマにビンタなんかあれ!?」

 

「うわうわうわぁ!! マジでホーセが宙舞っとるやんか!?」

 

「ひぇええっ……!!  ――あ、あ…! おおっ…! スタッて着地した…!!」

 

「けどそのまま倒れましたよ!?」

 

 

 

 

「ではこれにて、先代様はお帰りになられる!  ガァッッッデム!!」

 

 

God damn!!(ガァッッッデムッ) 余は我がむす…我が子、当代魔王85世に叱られてくるとしよう。 さらばだ、皆の衆。 フッフッフ…ハッハッハッハ!!」

 

 

 

 

「先代魔王様、チョノと一緒に帰っていかれはった……」

 

「えっ…当代魔王様に内緒で御出演なされってことですかあれ…?」

 

「これの放送、本当に出来るんか……?」

 

「……っと、ホーセさんは……。 ふっ…! 這いながらこっちに……!」

 

 

 

「…………………………」

 

 

 

「あーと…。大丈夫ですかホーセさん?」

 

「今まで史上一番キツイビンタでしたよね多分……」

 

「まあほらあれやろ。直々にビンタされるなんてある意味名誉やろ……ぶふっ…!」

 

「わかったからその恨みがましい顔やめーやもう! 禊、なんも意味なしてないやん!」

 

 

 

 

 

\デデーン/

『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUT!』

 

 

 

 

 

 

【ということで、まさかの先代魔王様御参加の恒例行事もこれにて終了。 そろそろ、大詰めが迫っている――】

 

 

 

 

 

 

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