ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~   作:月ノ輪

178 / 245
人間側 とある上級勇者の冒険Ⅲ 終

 

 

!! 今ミミック達、『終わりにする』って……! この戦いを終わりにするって…! 確かに私達、正直言って限界だけど……! 容赦なんて欠片もない……!

 

 

う、うぅ……! た、ただで負けないから……! 最後まで……諦めないから! ……ぐすっ…。

 

 

「そうだ、諦めるなユーシア! 私の技は効くとわかった。お前の攻撃だって当たればバサクのように!」

 

 

っ! クーコさん…! クーコさんのその言葉に、剣を握り直す…! アテナさんとエイダさんも、なけなしのアイテムを使って体勢を立て直す! そうだ……まだ負けた訳じゃないん……――

 

 

「不っ屈ー! 脅威なの、わかるわ!」

 

「じゃ、心折っちゃお~っと!」

 

 

――ひっ!? さっき倒した方のミミックが、勢いよくこっちに! アテナさんとエイダさんが力を振り絞って魔法を放つけど、当然の如く掠りもしない高速回避!

 

 

「もう一度良いですよ~!」

 

 

そして私達を煽るように、目の前でぴょいんって…! こ、このっ……!

 

 

「ぶ、ブレイヴスター……!」

 

 

「それっ!」

 

 

「――きゃっ!?」

 

 

は…弾かれた…! 箱の角っこで、いとも容易く……! く、クーコさん……!

 

 

「逃さん! 『ボックス・ピアッシングカッター』!」

 

 

「おっとっと~!」

 

 

「なっ……!」

 

 

嘘…!? 狙い澄ましたクーコさんの技も、そのまま刃の動きを流すようにクルリッて空中一回転して避けて…!? さっきまでと動きが全然違うじゃん…!

 

 

「まずは…あなたの動き止めましょ~!」

 

 

――しまっ……! ミミックが、クーコさんの目の前へ跳ねて…! 何を…!

 

 

「――『うっふ~ん♡』」

 

 

「!? きゅうっ……♡」

 

 

 

は!? 箱から乗り出しセクシーポーズ!? なんで突然!?? で、でも…な、なんかすごくえっちな……!

 

 

「ちゃ、『魅了魔法(チャーム)』!?」

 

 

アテナさん!? えっ、あれ魅了魔法なの!? あっ…言われてみれば私もちょっと見つめちゃってた…! 余波的な……?

 

 

「くっ……♡ あっ……んっ……♡」

 

 

って、クーコさんがしっかり食らっちゃってる!?  艶っぽい声を出しながらふらついてる!!

 

 

「流石、社長のお友達サキュバスが調教してただけあるわねー!」

 

「ね~! 耐性下がってて効きまくり~!」

 

 

ハッと気づくと、ミミック達はいつの間にか離れた位置で笑ってるし! 何でかわかんないけど、攻めてこないうちに急いで状態異常の解除を……――。

 

 

「も……申し訳ございませんユーシアさん……! 魔力が……! 回復薬も、もう……!」

 

 

エイダさん!? そんな……! さっきまでので全部使っちゃって……――!

 

 

「――嘘……あんな…ものまで……」

 

 

今度はまたアテナさん!? どこを見て…………うそ…………。

 

 

 

「大きくなーれ、大きくなーれ!」

 

「まだまだ~! 太陽みたいにおっきく~!!」

 

 

 

ミミック達の頭上に……超超超巨大な、燃え盛る火の球が!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達の魔力ぜーんぶ使った、とっておきの魔法!」

 

「これを以てして、勝負の決着としま~す!」

 

 

この場全体を真っ赤に染め上げる火球を頭上に、そう宣言するミミック達……! あんな巨大なの、避けられない……! 食らっちゃったら、間違いなく身体が蒸発しちゃう……!!

 

 

それだけでもヤバいのに……クーコさんは魅了にかかっちゃって、エイダさんは魔力切れで、アテナさんは怯んで動けなくなってる……なんて…………。

 

 

終わった……。私たちの負け……。ありったけの力を振り絞ったのに、勝てないどころか傷一つつけられないなんて……。一回倒せたけど、あれはノーカンになっちゃったもん……。

 

 

もうこのまま、あの火球でジュッてやられて王様の前にとんぼ返りになるしか道は……――。

 

 

「――あ、そーだ。 お望みなら帰りの道開けてあげるけど?」

 

「満足したしね~! お宝もつけちゃいますよ~! ど~します?」

 

 

――! そういえば、そういうシステムだったんだ! そうすれば、とりあえずは誰も死なずに帰還できる!

 

 

なんていう魅力的な提案! その提案に頭を下げさえすれば、無事に帰れる! 帰れる……んだ……けど、もっ!!

 

 

「お――……」

 

 

「「お?」」

 

 

「お・断・り!! 誰がミミックなんかに頭を下げるかっての!! 最後まで戦い抜いてやるんだからぁっ!!!」

 

 

 

ブチッてキレて、つい叫んじゃった! そういう卑怯な提案してくるなんて…本当、ミミック大大大大大ッ嫌い!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ユーシアさん…!」」

 

 

あっ…! 気持ち任せだったけど、勢いよく言い切った甲斐があったかも…! アテナさんとエイダさんが感動してくれてる!

 

 

そうだ、クーコさんの言う通り、諦めちゃいけないんだ! 諦めないからここまで来たんだ! 復活魔法陣送りになるまで、勝負はわからないんだ!

 

 

というか、死んだところで王様に変な事言われるだけだしね! それとミミックに頭下げることを天秤にかけたら、どっちが良いかなんて一目瞭然!

 

 

「おおおー! お見事、勇者パーティー!」

 

「格好良い~! 素っ敵~!」

 

 

ミミック達もパチパチと褒めてくれてる。嬉しいようなやっぱりムカつくような。……あ、それならもしかして、このまま帰らせてくれたりとか……。

 

 

「なら――」

 

「これ、なんとかしてみて~!」

 

 

だよね! うん、わかってた! そりゃそうだよね! でも…今ので気力が戻って来た! 

 

 

「アテナさん! エイダさんに魔力わけられない?」

 

 

「はい、やってみます……!」

 

 

「ですがユーシアさん……あの火球は……」

 

 

心配そうなエイダさん達。私はクーコさんを二人の元に寄せながら、ニカッと笑ってみせる!

 

 

「イチかバチかどころじゃないけど……試したいことがあるんだ! 死んだらゴメンね!」

 

 

「「……っ! はいっ!!」」

 

 

良かった、二人とも頷いてくれた! よーし!

 

 

 

「こいっ! 私が…勇者ユーシアが、なんとかしてみせてやるっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「良~い覚悟~! それじゃ~…そ~れっ!」

 

 

っ…! 満を持して、超超超特大火球が投射されて! うっ……もう熱い…! そして……デカくて怖い! 本当に太陽が迫って来てるみたい……!

 

 

でも……でも! 私は勇者! みんなを守る、勇者!

 

 

「みんな、私の後ろに固まって!」

 

 

そう指示を出し、剣を大きく大きく振り上げる! その間にも、火球は目の前に……視界が目が潰れそうなほどの業炎で埋め尽くされて……!

 

 

「くっ……はあ…はああああああああッッッ!!!!」

 

 

――負けるもんか! へこたれるもんか!! 私は勇者! 魔物を倒す、勇者! クーコさんを凌ぐかもしれない勇者!

 

 

 

なら……魔物が作った、この程度の魔法ぐらい、()()()()してみせるッッッ!

 

 

 

「「ユーシアさん…!」」

 

「……ぅ…。 ゆ…ユーシア……」

 

 

みんなの祈りと思いを背負い! 迫りくる業炎を……今ッ!

 

 

 

「ブレイヴゥ……スラッシュッッッッッッゥ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  ――――ザンッッッッッッッッッッッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「―――!!!!」」」

 

 

やった! やった!! やった!!! やったぁ!!!! やったあっ!!!!! 

 

 

太陽が、割れた! もとい、火球が、パッカリ半分に斬れた!! これで私達、助かっ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――ギュルッッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ぐぇっ……!?」」」」

 

 

 

……な……うぐっ……!? がはっ……首に……!? 嘘……嘘…っ!!!???

 

 

 

な……なんで……なんで……なんで……なんで……なんでっ!!?

 

 

 

 

「天晴、勇者よ! では褒美に…全滅をプレゼントしてあげる!」

 

 

 

なんで……()()()()()()()()()()()()()()()()()()の!?!?!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よいしょーとっ!」

 

 

「「「ぐっ…あ…………がふっ……」」」

 

 

ぅ…あ……! みんなが……触手で縊られて……!! 私のもどんどん絞まってきて……! なんで……どうして……!!

 

 

「あの技が最後って……決着のって……!」

 

 

「そーよ。私が火球の中に入って完成の技だもの!」

 

 

そ……そん…な……! だって……だって……!!

 

 

「両断……したのに……!」

 

 

「あれだけのサイズ、両断しただけじゃねー」

 

「ね~! ま、さっきの騎士さんの攻撃も箱の中で躱せたんですけど~!」

 

 

 

も…もう一体の触手も…首に……!! ぁ…ぐ……な…ん…で……!

 

 

 

「なんで……あんな火球の中に…魔法の中に、潜めて……?」

 

 

「そんなの簡単じゃない!」

 

「私達が、ミミック(潜む魔物)だからで~す!」

 

 

そ…そ…そんな……ズルじゃん……っ!! 卑怯じゃん……っっ!!! ミミック……――

 

 

「じゃーね! また来てね!」

 

「待ってま~す!」

 

 

 

――がふっ……………………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ 勇者 たちよ  全滅してしまうとは 不甲斐な――」

 

 

「王様ッ!」

 

 

―――ハッ!? 王様と、大臣さんの声! ということは、ここは王城の復活魔法陣の上! みんなは……!

 

 

「私と……したことが……いっそ殺してくれ……」

 

「なんで……ミミックがあんな魔法を……なんで……」

 

「神よ……何故あの魔物にあれほどの力を……神よ……」

 

 

っ……。三人共、涙を浮かべて放心してる……。そりゃそうだよ……。私だって、あの瞬間を思い出したら……。

 

 

灼熱の火球がパカリと割れ(開き)、中から眩しさに塗りつぶされた、暗黒の化身のようなミミックが……邪悪なミミックが、魔の触手を唸らせつつ私達の首元に……っ! う……あっ……!!

 

 

ふぅう…ふゥう……はぁ……はぁ……! あんな頑張ったのに、あとちょっとで勝てるかもって何度か思ったのに……! その度に全部……全部、こともなげに打ち砕いて来て……!!!

 

 

あんな……あんな……! ズルくて、卑怯で、やりたい放題なんて!! みんな頑張ったのに、頑張ったのにぃ……ぐすっ……うぅぅうぅ……!

 

 

「ど、どうしたというのだ勇者達よ。何があったというのだ…!?」

 

 

「人払いを…! 兵は急ぎ捌けなさい…!」

 

 

…ひくっ……王様達も……流石にあわあわしてる……ずずっ……怒られないのは……良かったけど……ふぅう……涙…止めなきゃ……えぐっ……。……あ…そうだ……。

 

 

「おうさま……」

 

 

「おぉ、どうした勇者ユーシアよ?」

 

 

「なんで私達、魔王討伐を命じられたんですか……?」

 

 

 

 

 

さっきもちょっと考えてた、私達の任務の詳細な理由。ミミックにやられたせいか、また気になっちゃって……。涙を拭いながらそれを王様へ尋ねてみると――。

 

 

「む……。それは……かの魔王が邪知暴虐の存在であり……」

 

 

「それは聞きました……。ですけど、どんな悪いヤツかってよく知らなくて……。見せてもらった魔王の演説の映像も、ダンジョン増やすって話だけでしたし……」

 

 

「む……ぅ……。それは……だな……」

 

 

――なんか、口ごもっちゃった……。と、大臣さんが王様へ耳打ちを。

 

 

「いい加減、真実をお明かしになられたら……」

 

 

「う……うむ……」

 

 

そう言われ、ゴホンと咳払いをする王様。そして、厳かに話し出した。

 

 

「実はな……詳細は明かせぬが、当代の魔王に戦乱を呼ぶ奸計が見て取れた。今はただ時世を窺っているだけに過ぎない。いずれ、世界を狂瀾怒濤の渦に巻き込むことだろう」

 

 

「そうなんですか…!?」

 

 

「うむ…! そう、考えて見るがいい、勇者よ。以前見せた演説映像はダンジョンの新設についてだったが……それが指し示すのは、軍備の拡張ではないか?」

 

 

「……! 確かに……!」

 

 

「おぉ、納得してくれたか! そしてだ……。私は知っている。当代魔王の実力、そしてその残忍さを!」

 

 

 

 

 

「それは一体……!?」

 

 

王様の話に釘付けとなる私……! 気づいたらクーコさん達も……! そんな私達へ、王様は警告を。

 

 

「これから話すことは国家の…いいや世界の機密事項だ。何人にも漏らしてはならぬ。もし微かにでも口にすれば、牢屋行きは免れぬぞ」

 

 

「「「「っ……!」」」」

 

 

怯みつつも頷く私達。それを確認した王様は、満を持して詳細を明かし出した。

 

 

「あれはかつての話だ……。当時、各国の王は手を取り合い、腕利きの騎士や兵を選出し『騎士兵団』を結成した。時の魔王に対抗するためだ」

 

 

「――! 陛下…その話は……!」

 

 

「落ち着くがいい、騎士クーコよ。 一騎当千の猛者ばかりを集めたその騎士兵団は、数万は下らぬほどの規模となった。向かうところ敵なし、無双の軍団、まさにその言葉が似合うほどにな」

 

 

クーコさんを制した王様は、まるで物語を語るかのように。そして急に声の調子を変え……。

 

 

「……だがある時、忌まわしき事件が起きた。とある地で修練を積んでいた騎士兵団の元に、魔王軍が奇襲をかけて来たのだ。『バサク』と名乗る幹部が率いる、同規模の軍団がな!」

 

 

「「「「バサク!?」」」」

 

 

バサクって言ったら、今さっきまで居たダンジョンのボスの名前! 私達が倒そうとしてた相手! だけどミミックがあんな……うっ……。今は…王様の話の続きを……!

 

 

「しかし我らが騎士兵団は即応し、次々と魔物兵を屠って見せた! 奇襲なぞする卑怯な連中は、あっという間に殲滅――!」

 

 

凄い、そんなことが……! ――あれ……? 高らかに語っていた王様だったのに、今度は拳を握りしめ、声をわなわな震わせて……。

 

 

「――できる直前のことだった。 現れたのだ……奴らが!」

 

 

「ヤツら……?」

 

 

聞き返した私に、深く頷く王様。そして、その奴らの正体を口にした。

 

 

「まだ王位継承前であった年若き当代魔王と、その従者二人! 『最強トリオ』と呼ばれる、悪逆非道の三人組が!」

 

 

 

 

 

 

 

「「「「『最強トリオ』……?」」」」

 

 

なにそれ……。ダサくない……? そう思っちゃったのがバレたのか、王様は『呼び名に騙されてはならぬ』と前置きをし、わざとらしいほどに震える声で唸った!

 

 

「奴らは正々堂々と戦おうとする騎士達をあざ笑うかのように翻弄し、蹂躙し、虐殺せしめたのだ! まさしく魔を帯びた王……魔王の名を知らしめるかの如く! 奴らの前では誰しもが無惨に散るしかなかったと聞く。そう…今しがたのお前達のようにだ!」

 

 

「「「「――っっ!」」」」

 

 

あの……ボス戦みたいに……!? どれだけ頑張っても、全力で挑んでも、ズルと卑怯な手で楽々躱され、何も出来ずに縊られた…あの戦いみたいに……!? そんな……そんな……!

 

 

「……もう言葉にする必要もないだろう。たった三人相手に、騎士兵団は壊滅してしまったのだ。――せめて笑うがいい、勇者達よ。このようなこと、世には出せぬ。各国の王は断腸の思いで歴史の闇に葬ったのだ!」

 

 

自虐気味に笑う王様。けど、誰も笑わない、笑えない……。それどころか、クーコさんは唇を噛みしめた。

 

 

「騎士兵団対魔王軍団の戦い、そしてそれを終結させた謎の存在の話は、各国の騎士の間でも与太話として囁かれております。ですが……真実であったとは……!」

 

 

「あ、あぁ。ゴホン、そしてだ! 今やヤツは、悠々と玉座に腰かけ魔界を支配している! このような暴虐、あってはならない! だからこそ――!」

 

 

演説するかのような王様は、そこでチラッと私達のほうに目を。それに対し、私は……――!

 

 

 

「わかりました……! 魔王討伐の命、頑張ってみます……ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そ、そうか!? 本当に良いのか!?」

 

 

やけに凄くびっくりする王様に、私はコクリと頷いてみせる。魔王がそんな強いなんて知らなかったけど……そんな危険な人物なら、放っておくわけにはいかない……!

 

 

さっき私達が味わったあの苦くて辛い思いを、他の人にさせちゃいけない……! だって私、勇者なんだから! …あ、でも一応……。

 

 

「みんな、良い……?」

 

 

恐る恐るクーコさん達に伺いを立ててみる。すると――。

 

 

「勿論だ、ユーシア!」

 

「このまま負けて終われませんし……!」

 

「皆の平穏のため、この身を捧げます!」

 

 

みんな、二つ返事でOKを! そう……! 諦めちゃいけないんだ!! まだ、戦ってみせるんだ!

 

 

それに、魔王はミミックじゃないのは間違いないんだから! それなら……ワンチャンあるかもしれないじゃんっ!!!

 

 

「とりあえず言ってみるものだな……ウェッホン! では、引き続き託したぞ勇者達よ!」

 

 

そんな私達を見て、安堵の息を吐く王様。……あれ? 大臣さん、溜息ついてる気が……?

 

 

「王様……」

 

 

「そう睨むな、大臣……。 ――勇者達よ、改めて我が命に殉ずる覚悟を見せてくれた褒美だ。お前達に更なる武装をやろう。我が王家秘伝の品を!」

 

 

ついてまいれ! と意気揚々に何処かへと向かう王様。大臣さんに招かれながら、私たちもその後を。『褒美』と聞いた瞬間ちょっと怯んじゃったんだけど……何をくれるつもりなんだろう……? 武装……秘伝の品……? 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだ。足元に注意するがいい」

 

 

「灯りとしてこちらをどうぞ」

 

 

兵の人を連れることなく、やってきたのはお城の一角にある古ぼけた尖塔。みんなで灯りを手にしながらそれを登って……着いたのは真っ暗な最上階?

 

 

いやほんと、真っ暗。灯りがないとほとんど見えない。明り取り用の大きい丸窓はあるみたいだけど、木の扉で締め切られてるみたいし。ここに何が?

 

 

「これだ! 勇者達よ、見るがいい!」

 

 

へ? 王様が部屋の真ん中を指し示して……ひっ――!?

 

 

 

「「「「「ミ、ミミック!!?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「? いや、宝箱だが……?」

 

 

眉を潜める王様に、私たちはハッと。ほんとだ……宝箱だ……。 そ、そうだよね…! 王家秘伝の品なんだから、宝箱に入ってて当然だよね……! 

 

 

それにこの宝箱、部屋中央の祭壇?みたいな台に固定され、更に大量の封印鎖でぐるぐる巻きにされてる。仮にミミックだとしても動けないか……。

 

 

……そういえば、前も王様がくれた宝箱を見て、ミミックを思い出して悲鳴をあげたことが……。けど、今回はそうは……。思い出さない、思い出さない……! さっきのことも忘れて……よしっ!

 

 

「大丈夫か? ――ゴホン、では教えるとしよう。この中に入っているのは、『光の玉』と言う名の装身具だ。常に暖かく神々しき輝きを放ち続けており、その美しさは魔を払うと伝えられている」

 

 

私達が落ち着いたところで説明してくれる王様。光の玉……そんなものが。でも、それがどんな効果を? そう思ってたら、王様はニンマリ笑い――。

 

 

「『魔を払う』と言ったであろう? 即ちだ……この光の玉を装備すれば、勇者の持つ魔物特効の如し力を、誰でも手に入れることができるのだ! 勇者の場合は、更なる強化にな!」

 

 

「「「「――!!」」」」

 

 

「どうだ! 無論、人数分はある。実を言うとな勇者よ、お前から見えるオーラというのは、その光の玉の輝きに類するもので……どうした、勇者よ? いや、皆、何故そう身を震わせ……」

 

 

「「「「だ…………」」」」

 

 

「だ?」

 

 

「「「「だからあッ! それを一番初めに渡してくださいって、王様ぁっ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

まただよっ! また王様のケチ! 最初は私に旅人の服&棍棒&50G(ゴールド)しかくれなかったし、その後も加護付き武器を渡すの渋るし!! 今回はこれだよっ!!!

 

 

「す、すまぬ…! だって惜しく感じて…! 一応秘伝だから……」

 

 

私達の剣幕に慌てて弁解をする王様。……まあ確かに、王家秘伝の品を簡単には渡さないよね……。王様にまた不敬なこと言っちゃったかな……。

 

 

「はぁぁぁ……。だから早いうちに説明をと申し上げましたのに……」

 

 

と、大臣さんが深い溜息を。そして私達の方へ頭を下げた。

 

 

「我が王の手落ち、どうかお許しを。しかし、今までお伝えしなかったのには理由があるのです」

 

 

り、理由……? 首を傾げる私達に軽く頷き、大臣さんは目を王様へ。すると王様は調子を取り戻した様子で明かしてくれた。

 

 

「そうだ、理由があるのだ! 実はな……その効果の発動にはとある条件があるのだ」

 

 

「条件……ですか?」

 

 

「うむ。その条件とは、『真に勇気ある者』と光の玉に認められること。そうでなければ折角の光の玉も、ただの灯りと同義だ」

 

 

「真に…勇気ある者……」

 

 

「お前達は既に相当な実力をつけ、勇気ある者達となっている。だが、まだ足りぬ。今以上に研鑽を積み、限界を超えなければ光の玉は力を貸してくれないであろう」

 

 

威厳を取り戻し、私達へそう伝える王様。そして、ちょっと大臣さんの顔を気にしつつも、フッと決め顔を浮かべた。

 

 

「とはいえ、その高みが目前なのは確かだ。故に、今の内から渡しておこう!」

 

 

 

 

 

 

 

「やった! 有難うございます王様!」

 

 

機嫌悪くなっちゃって渡してくれない、ってことにならなくて良かった! 私に続き、みんなも口々にお礼を。それで王様は気分が良くなったのか、上機嫌な声で宝箱に命令を出した。

 

 

「王の名において命ずる! 封印よ、解けよ!」

 

 

おおー…! 宝箱を縛る鎖が勝手に震えだした……! 封印魔法らしいのだけど、なんか見てるだけでワクワクする!

 

 

それにしても……光の玉なんてものがあったなんて! それさえあれば、クーコさんもアテナさんもエイダさんも私と同じように楽々戦えるし、私はもっともーっと強くなれる!

 

 

そしたらきっとバサクさんだって簡単に倒せちゃうし、あのミミックだって……――! ……あれ、宝箱の鎖からなんか浮き出て来て……――!

 

 

「「「「――ひッ!?」」」」

 

 

「!? どうした勇者達よ、揃ってそのような声を出して?」

 

 

「「「「あ、あれは…!?」」」」

 

 

「あれ? 鎖から浮きだした魔法陣群のことか? あれが封印魔法の……何故そう距離をとる!?」

 

 

王様が顔をこちらへ戻した時には、私達は揃って今の場所から飛び退いてた…! だってあれ、魔法陣を周りに浮かべる宝箱って……!

 

 

 

まるで、()()()()()()()()()()みたいで!!

 

 

 

「もしや……恐ろしいのか? 何故……? まあ安心するが良い。すぐに消えてなくなる」

 

 

王様が言う通り、その魔法陣はパリンパリンと次々に割れてく……! 良かった……! あ……鎖もそれに合わせて外れてって、全部……――

 

 

「「「「――ひぃッ!?!?」」」」

 

 

「今度はどうしたというのだ!?」

 

 

「「「「あ、あの光は……!?」」」」

 

 

「光? あぁ、封印が解かれたから、蓋の隙間から光の玉の輝きが漏れ出しただけ……扉にまでか!?」

 

 

わ、私達は……この部屋の扉に縋りつくように……! だって……だってあれ、光ってる宝箱って……!

 

 

 

まさしく、()()()()()()()()()()()()()みたいでぇ!!

 

 

 

「そこでは光の玉が見えぬだろう、ほらこちらへ……な、何故来ないのだ!? 何故……もしや、暗くて怖いのか? 窓を開けよ!」

 

 

いくら呼んでも動かない私達を心配し、大臣さんに命令を出す王様。大臣さんは急いで明り取り用の大きい丸窓に駆け寄り、閂を外して全開に。すると一気に太陽の…光が――!?

 

 

「「「「ひぃいいいっっッ!?!?!?」」」」

 

 

「勇者達よ!? 待て! 階段を駆け下りて何処へ行く気だ!?」

 

 

もうダメ!! だってだって……だってあれ、太陽の丸い光を背負う宝箱って! どう見たって!

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()のぉッッッ!!!!

 

 

 

 

ヤダヤダ!! 宝箱、怖い!!!!! ミミック怖いぃ!!!!!!!!!

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。