ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~ 作:月ノ輪
ということで、模擬戦再開! 因みに既に見て貰っている通り、皆基本的にルーファエルデを狙うのだ。
時折目が合ってしまった時は、その相手との戦闘に興じることもあるけど……そんなことをしなくとも、ルーファエルデが受け止めてくれるのだもの! だから――。
「はっ!」
「ほら、やはり謙遜が過ぎましてよメマリア! 幾つもの扇子を刃とし髪で操るそのスタイル、まるで部隊を相手どっているようですわ! 見事な闘いぶりですわ~!」
「ふふっ、変わらず容易く払い除けておいてよく言うわ!」
―――――単独攻撃を仕掛け……。
「それそれそれ~★ どんどんいっけ~★」
「まあネルサ、更に召喚を?
「って、片っ端から薙ぎ倒してってんじゃん! ちょっ…! ちょいタンマ…!」
「後は任せて、ネルサ!」
「あらアストも召喚を! エルフ、ゴーレム、ハーピー、マーメイド、スケルトン、ジン――! こちらもまた、苛烈ですわ~!」
―――――波状攻撃を仕掛け……。
「ベーゼ、もう一度よ!」
「今度は私も!」
「わぉ! ありがとメーちゃんアーちゃん! 漲ってくるぅ! てりゃりゃりゃりゃあ!」
「うふふっ! ベーゼの技のレパートリー、尽きることはございませんわね! しかもメマリアによる髪鎧強化に加え、アストによる属性付与まで! 容易くは近づけませんわ~!」
―――――協力攻撃を仕掛け……。
「展開完了! ネルサ!」
「りょ! 皆、かっかれー★」
「お~っ!!」
「今度こそ!!」
「ふふふふふっ! やはりこの連携力、胸が熱くなってしまいますわ~~!!」
―――――連携攻撃を仕掛け! 他にも色々と、普段やれない戦法戦術、普段試せない技や魔法を! 彼女相手に使わせて貰うのである!
最も、やっぱり何一つ彼女の身に当たらないのだけど! というか、これだけやってもまだまだ余裕なのがルーファエルデなのだ。それが目に見えてわかりやすいのが、本体側であろう。
そう、今闘っている分身ではなく、離れた位置で椅子に座り操っている私達の方。戦闘中にチラリと皆の様子を見てみると……。
「むむむ~……! これも通らないか~……。じゃあ~…これはどうだぁ!」
――と、椅子から立ち上がらんばかりに身体が動いてしまっているのがベーゼ。フンスフンスと鼻が鳴ってしまっている。
「やばっ! この角度からも防げんの!? いやマジ
――と、ベーゼに負けず劣らず騒がしいのがネルサ。ベーゼほどではないが身体が軽く動いてしまっていて、身を乗り出すようにして分身を操っている。
「……………………。」
――と、基本無言なのがメマリア。扇子で口元を隠しているが、それは隙を逃さないために傾注しきっている証だったり。手が力んでしまっているし。
こんな風に、三人共形は違えど分身操作に集中していて、自身の周りが見えていない様子なのだ。この状態で何か悪戯…例えば軽く頬を突いたとしても、すぐには気づかないであろう。
かく言う私も、こうして本体側を窺うことこそできるが…それだけ。頬を突きに行くなんてとてもとても。けど、ルーファエルデだけは違って……。
「ふふっ…! やはりこの茶菓子にはこの紅茶ですわね…!」
唯一人優雅に、余裕綽々と紅茶を傾けているのだ! そこだけ見れば完全に観戦を楽しんでいるお嬢様だが、当然私達の攻撃を全て斬り払いながらである。しかも私が見ていることにも気づいていて、『これが楽しみの一つだからお許しになって』とウインクで謝ってくるぐらい。
もはや
私達もだいぶ強くなったはずなのに、これなのだもの。うーん……そろそろ、どうにかして一矢報いたい。あの余裕ある表情をなんとかして脅かしてみたいところなのだけど――。
「駄目だあ~……! 覚えてきた技ぜ~んぶ弾かれちゃった…! む~~後は…………あっ!」
――おや? ベーゼが? 分身と本人が同時にポーズをとって……。
「タイム! 作戦タ~イム!!」
「構いませんわ~!」
ルーファエルデもタイム宣言を認め、一旦試合はブレイク。ネルサとメマリアも一息つくことに。…あの顔、多分私と同じ気持ちになっていそう。作戦というベーゼの言葉に期待を寄せているのがわかる。
「ちょっと待ってね~……えいっ!」
と、ベーゼが詠唱し、妖精サイズの
「えっとね~。ごにょごにょごにょ~……」
ベーゼは一体どんな作戦を? ふんふんふん……――!?
「え゛っ!?」
――あっ……! つい声出しちゃった!! ルーファエルデは……。
「~~♪ ~~♫」
良かった、自分で召喚したインプで耳を塞いでくれてた……! 鼻歌交じりにどんな作戦が来るのかワクワクしながら待っている様子。……いやでも、この作戦は……。
「ん~ちょいズルくさいけど…。いけっかも★」
「良いかもしれないわね…! ふふふ……!」
う……! ネルサもメマリアも乗り気! 嬉々として作戦会議に……!
「アーちゃん、ど~お? アーちゃんが鍵なんだけど……」
ベーゼからもそう聞かれ……うぅ……。あぁもう! 毒を食らわば皿まで! 私もルーファエルデに一泡吹かせてみたいし!
それに、
「じゃあ、任せて貰いたい役割があるのだけど……!」
「それ良いかも★ じゃああーしは……」
「アタシは話した通り……!」
「私はその役ね……――」
「――作戦タイムしゅ~りょ~! オッケーだよルーちゃん!」
分身とインプをルーファエルデの前で動かし、相談終了をアピールするベーゼ。ルーファエルデは耳栓を外し……。
「ウフフフっ! さあ、どのような策で来るのでしょう! どんな搦め手でも大歓迎ですわ~!!!」
シャキンと剣を構え、臨戦態勢に! 対する私達は頷き合い――!
「いっくよ~!」
「そっれ~★」
開幕動いたのは、ベーゼとネルサ! ただし、先程と同じではない!
「くらえルーちゃん! ひっさつぅ~…魅了刻印パンチ! 魅了刻印キックぅ!」
「まあ、桃色の霞が手足を包んで! 魅了魔法を手足に付与とは面白い発想ですわ! 動きが掴みにくいだけではなく、そのレベルの魅了魔法を受けてしまえば
「おっと隙あり★ あーしのとっておき! おんぬらっちサンダー!!」
「まあまあ、雷! それも、オンヌラ様の操る雷と同じ強力さ! これまた掠りでもしてしまえば黒焦げは必至! とっておきに相応しいですわ~!」
それぞれの隠し玉を手に、攻め立てる! ルーファエルデは回避を余儀なくされている! ……まあ作戦を楽しむためにわざと避けてる節がありそうだけど……。
「逃がさないわ!」
「囲んで!」
更に彼女の動きを制限するため、メマリアと私も参戦! メマリアは髪と扇子で周りを囲み、私は――!
「今回もアストの召喚はバラエティに富んでおりますわ~! エルフ、鬼、河童、スライム、イエティ…それにミミッ…クっふっ…!」
――よしっ! この反応……イケるかもしれない! 他の三人もそれで確信したのだろう、一気に勢いづき、先程と同じぐらいの攻撃飽和度に!
そして、またも私とルーファエルデは遮断され……作戦決行は、今!!
(行くわよ!)
目で合図してきたメマリアは、髪の一部を私へと! これは髪鎧を纏わせてくれているのだが…ただの髪鎧ではない!
(こんなものかしら…! やっつけになってしまったけど…!)
(いい感じめまりん★ 後はあーしが! こっちもちょいテキトーになっちゃうけど…!)
続けざまにやってきたのは、ネルサ。もとい……ネルサの操る櫛! メマリアが上手く隠してくれている間に、私の分身の髪を整え出した! 更に、髪鎧の色調整も!
おっと、私もぼーっとはしてられない。召喚魔物の数を調整していって……! それと一応…本体の私も、
(準備完了!)
(あとはベーゼね!
(おっけーっ★ べぜたん、いつでもいいよ★)
(すぐいくよ~! それっ!)
「幻影魔法だ~っ!」
「まあ…! これは……!?」
満を持してベーゼが発動したのは、幻影魔法! 周囲の風景を変える代物なのだが……コロシアム調の景色から一転、どこかで見た王道ダンジョンのような見た目に!!
「これは――! もしや、先程の…!?」
ルーファエルデ、気づいたみたい! ――瞬間、ネルサが明るく声を張った!!
「デデーンッッ★」
「――ぁんふっ……!?」
その効果音と同時に、彼女の雷と私の召喚魔物…いや、召喚ミミック達は道を作る!!! 吹き出すの堪えるようなルーファエルデと、私を向かい合わせるように――ううん!
ルーファエルデと、
「ルーファエルデ、お尻キックっ!!!」
「――ブフッ!!!」
やった! ルーファエルデ本体が紅茶を噴き出した! 分身も揺らぎ……その瞬間に!!
「キーック!!!」
ベーゼのキックが、その分身お尻にクリティカルヒット!!! どちらのルーファエルデも…へなへなとへたり込んだ!!!
「やったやった~!! とうとうルーちゃんに当てた!!」
「作★戦★大成功~!! やりぃ★」
「ふふふ……! こうも上手くいくなんてね…!」
喜ぶベーゼ達…! いや本当、ここまで上手くいくなんて! ちょっとルーファエルデには悪い作戦だったけど……!
ベーゼ主催…もとい提案の作戦概要はこうだったのだ。――まずは出来る限りみんなで攪乱し、先程のような『ルーファエルデから私が見えない状況』を作り出す。ついでにミミックで反応を窺う。これがファーストステップ。
セカンドステップは、その状況構築後、私を変装させること。メマリアが髪鎧でお仕置き部隊副隊長の服や仮面を作り、ネルサが微調整。その間に私は召喚魔物を全てミミックへと切り替える。あと、先程残していたベーゼとネルサ製の服&仮面を本体の私も身につけた。
そして最後サードステップはベーゼが笑ってはいけないダンジョンの舞台を幻影で作り、ルーファエルデの前にわざとらしく私…じゃなくて、副隊長を立たせること! そしてお仕置き台詞も!! 見事に決まり、ルーファエルデはまたも紅茶を噴き出し、隙を晒してしまった!
そこへ、ベーゼの一撃がシュート! 大快挙である!!
「それにしてもアスト、よく乗ってくれたわね。拒むかと」
「ね~★ ノリノリじゃん★」
「かっこよかったよ~!」
「あはは…。まあ、ルーファエルデに一矢報いたかったし…?」
皆に言われ、私は肩を竦める。なにせ雰囲気を高めるため、わざとミミック
ふふっ、とはいえその甲斐はあった。とうとうメマリアに一撃を与えられたのだ! 今まで攻撃を掠らせることすらできなかった彼女へ、盛大にお尻キックを与えられたのである! ……まあ、中々に卑怯だったかもしれないけれ……――
「――ふふ……フフフフ………ウフフフフフフフフッ……!」
「「「「!!?」」」」
急に耳に飛び込んできたのは、ルーファエルデの恐ろし気な笑い声……!? 本体はへたったまま噴き出してしまった紅茶を拭っているせいで表情がよく読めないが…お尻を蹴られた分身の方は立ち上がり、チャキッと音を立てるかのように剣を構え直した!!?
「全くもう……!」
「えっちょ待っルーちゃ……!?」
そして明らかにベーゼに剣先を定めている! あっ、姿が消えっ…! って、瞬間的にベーゼの目の前に――!
「恥ずかしいですわ~ッ!!!」
「み゛ゃーーっっっ!?」
あぁあっ!! ベーゼが細断されたぁっ!? 一応ベーゼも防御の構えをとっていたんだけど……全く意に介さず切り刻まれた!!!
「立つ瀬がございませんわ~ッ!!」
「次あーし!? ちょっ…雷…!!」
ベーゼ消滅後即座に標的になったのは、ネルサ…! 目の前に瞬間移動してきたようなルーファエルデに、彼女も先程の雷で対抗しようとしたが……。
「えっ!? マジ!!? 剣で巻き取るとかそんなん……ひゃああぁあっ!!?」
ルーファエルデはまるで剣に布を纏わせるかのように雷を回収し、ネルサへ撃ち返した! あぁ…黒焦げ消滅……!
「合わせる顔がありませんわ~ッ!!!」
「くっ…!」
そしてお次はメマリアの元へ…! 彼女は髪を幾重にも張り、身を護るが……!
「なっ……! たった一刀で!? きゃあっ……!!」
まさしく一刀両断! 鎧にも転用できるメマリアの髪が、彼女ごと叩き切られた……! ……残りは私一人、次どうなるかなんて考えなくとも……!
「まさに恥晒しですわ~ッ!」
やっぱり私を仕留めに来たぁっ! ミミック達でガードを……あっ駄目! 瞬きする暇もなく一閃された! 残るは完全に私だけに!!
……でも……さっきからのあの動き、なんだかどこかで見たことがあるような…! なら……イチかバチか!
「――ここっ!?」
―――ガキンッ!
「――!」
やった…! 彼女の一撃を…受け止めることができた!! ……でも……!
「ハァッ!」
―――ザンッッッ!!!
「…っぅ…!」
一撃目を止めたら二撃目が来るのは当然。そっちはもう止めきれなくて……ああぁ……。
……全滅である。攻めに転じたルーファエルデによって、あっという間に殲滅させられてしまった……! 強すぎる……!!
…………というかこれ、ルーファエルデ怒っているんじゃ……。無理もない……卑怯な作戦でお尻を蹴られたんだし……。さっきから口にしていたのも、そんな手段に訴えた私達を非難する言葉で……――。
―――キンッ!!
ぅっ…! ルーファエルデが打ち鳴らした手甲の音に、私だけでなく他三人も身を竦ませてしまう……! コロシアムも彼女の分身も消えて……。
「本当にもう……!」
こちらへ向き直った彼女はわなわな震えている…! これはすぐに謝るべき……――。
「
――ん…? なんだか思っていたのと違う反応…。怒っているのではなく、羞恥から身悶えしているという感じである。
「ルーちゃん……怒ってないの?」
「怒る? 何故ですの?」
恐る恐るベーゼがそう聞くと、逆に返されてしまった。そんな彼女に、今度はネルサが説明を。
「ほら、あーし達、ちょい卑怯っぽい方法使っちったじゃん? るふぁちんの笑いのツボを突いた……」
「あぁ成程! ふふふっ、『どんな搦め手でも大歓迎』と申し上げたではないですか! それに相手の弱点を突くのは戦いの基本、見事な戦術でしてよ! そして……そのための適材適所の連携、感涙ものでしたわ~っ!!」
……褒められてしまった…。嬉しいやら少々バツが悪いやら…! ――っていうことはもしや……!
「急に私達を倒したのって……」
「うふふ…! えぇ、身の置き所を失った故、無理に切り上げさせて頂きました。お許しくださいまし……!」
身を軽く縮こませ、はにかむルーファエルデ。やはり照れ隠しによる試合強制終了だったらしい。可愛いのだけど……それであの殲滅具合なのは恐ろしい……!
「――コホン! ところでアスト! 先程、
――と、照れ隠しの延長なのだろう。咳払いしつつ、今度はルーファエルデから話を振ってきた。私自身、あの状態の彼女の攻撃を防げたのは奇跡な気がするけど…それはどこか見覚えがあったからなのだ。
「えっと……多分だけど、コチョウさんの得意とする技を参考にしている気がして。虎穴道城ダンジョンの……――」
その答え合わせのために、正直に伝える。以前訪問してミミックを派遣したダンジョンの主、そしてバサクさん等の強者同士の繋がりがある彼女ならルーファエルデともきっと――!
「ご明察ですわ~っ! えぇ、まさにその通り! 先程の技は、あの方の『風林虎山』をベースにして編み出した技ですの! それを見抜くとは……慧眼ですわ~っ!!」
目を輝かせ頷くルーファエルデ! やっぱり、知り合いだったらしい! ふふっ、社長も自分アレンジのその技を使って遊んでいるから、なんとなく覚えてしまっていたのだ! 最も、ルーファエルデのは分身による威力控えめ攻撃だったから抑えられたのだろうけど。
「ということはアスト、貴女もあのダンジョンに挑戦しておりまして?」
「まあ、ちょっと…。 とはいっても虎の巻は貰えていないのだけど――」
適当に誤魔化しつつ、ルーファエルデとその話題で歓談を。ふふっ、彼女とこういう話ができることはあまりないから、なんだか嬉しい! なにせ最近は特に――……
「あぁそうですわ! 一つ聞いても宜しくて? 先程貴女が仰っていた『鍛錬相手』、その中にミミックがおりませんこと?」
「――へっ!?」
急に!? 鍛錬相手というのは、さっき私が出まかせで乗り切った『強くなった秘訣』の…! 適当なワードで有耶無耶にしたけど、要はそれ、社長達のことで……なんで見抜かれて……!?
「先程の召喚ミミック、解像度が実に高かったですわ~! 召喚魔物というのは術者のイメージの精確が如実に反映されるもの。あのミミック達は他の召喚魔物と比べ、緻密さ、且つそれに付随する強度及び戦闘力の高さが段違いでしたわ~!」
ぅっ……! そうかも……! で、でもできる限りバレないようにしたはずなのに……! というか、十把ひとからげに薙ぎ倒していたというのに見抜いてくるなんて! 剣に伝わる感覚とかで…? どこまで規格外…!!
「そして、私の一撃を防いだあのガードの仕方。ミミックのガード方法とどこか似ておりましたもの! 盾ではなく、蓋や箱自体を活かす防御方法に! ふふっ、良い師を務めるミミックの方がいると推察いたしますわ~!」
嘘ぉ……!? それに関しては私、自覚すらないのだけど!? 社長達に戦闘法を教わっているから多分間違いないのだけど……。百戦錬磨の彼女はそれすらも看破するの……!?
「ま、まあ……」
思わず生返事を……。このままこの話を続けるのは危険…! 私とミミックの話なんて、ネルサ辺りが勘づきそう! これまた話を逸らさないと――……
「うふふっ! その御方から更に学んでくださいましね! ――さて! 皆様の戦闘力を確かめさせて頂きましたが……これならば安心かもしれませんわ~!」
……ん??? またも話が変わった? なんだか閑話休題というように。本当にただ自分の読みを確認したかっただけみたい。私としては有難いのだけど……。
「……実は、今回戦眼使用及び試合を敢行させて頂きましたのには、いつもとは違うとある理由がございますの」
それより、急にルーファエルデの調子が真剣なものに……! その圧によって、和やかなムードであった場へ少々緊張が走る。
「なにルーちゃん…? なにかあったの?」
「…最初に言ってた『とある重要な予定』っての、関係してたり?」
「えぇ、繋がりはございます。因みにその御約束の時刻はまだもう少し後のことですわ」
ベーゼとネルサへそう答え、ルーファエルデは再度咳払い。皆の注目を集め、こう言い放った。
「単刀直入に申し上げます。今現在、魔王様の身が脅かされているのですわ」
「ええええっっ!?!?」
「それマジなんるふぁちん!!?」
ガタッと席から立ち上がるベーゼとネルサ…! 私も驚きを隠せない……! いつの間にそんなことに……! だって、酒席を共にさせていただいたのもつい最近だと言うのに……!
「事実よ。――最も、『その可能性有り』と言うのがまだ正しいのだけど」
メマリアも王秘書の身ゆえ、知っているのだろう。ルーファエルデの補強を。……その可能性有り、とは?
「皆様方は、魔王様の…いえ歴代魔王様方が掲げ続けております誓約を御存じですこと? 『全ての魔王軍ダンジョン並びに魔王城の備えを打ち倒し、魔王様の首を獲ることができれば、その者に
――ッ!? そ…それって……!! じゃ、じゃあ…その魔王様が脅かされている原因って!
「……え~……そんなルールあったっけぇ……?」
「あ~……あった気もするわ~…。でもそれ、超古い話じゃん?」
「古さ、というのは関係ありませんわ。魔王様、そして魔王様を守護する者達の意の現れとして今なお息づいている誓約なのですから。――そして、それを利用し迫ってきている者達がいるのも事実」
間違いないであろう……! それって……!
「既に中級者向け以下のダンジョンを制覇し、今は上級者向けダンジョンに挑み続けている冒険者パーティー。その方々は『勇者一行』と名乗っておりますわ!」
――やっぱり!! 恐らくさっきルーファエルデがメマリアへ口にしていた『中級者向けダンジョンに戻ってくる気配はない例の方々』とは、彼女達のこと!!
「未だ上級者向けダンジョンで燻っている存在と高を括ることなく。その者達の成長速度は著しく、魔王軍の中でも指折りの実力を持つバサクという者ですら苦しめられておりますわ。特にリーダー格である勇者、その方の持つ魔物特効と言うべき力は脅威に値いたします」
淡々と、されど警戒を抱かせる口調で勇者一行の説明をしていくルーファエルデ。そして歯噛みするように溜息をついた。
「誓約の手順を踏んでいる以上、
……! 彼女に、いやバエル家にそこまで言わしめるなんて……! 軍総帥一族の総意がそれとなると、あの四人はとんでもない脅威にまで成長をしていくということ……!?
「ただし! その際は魔王様親衛隊を始めとした更なる精鋭が待ち受けております。バエル家としても、そこで返り討ちにする所存でございますわ~!!」
ざわつく場を収めるように、いつもの快活なる声を弾けさせるルーファエルデ。そのまま皆へ演説をするかのように胸を叩いた。
「更に言ってしまえば、魔王様の御手を煩わせれば容易く追い払うことが可能でしょう。ですが決して、そのようなことはあってはならないのですわ! そのために身命を賭すのが、
まさに軍総帥一族の御令嬢…! その意気は誇り高く美しい! ――と、直後彼女はしおらしくなり……。
「……ですが、万が一ということもございます。その時は、戦える者総出で当たらなければなりません。ですので……どうか皆様にも、心していただきたいのですわ!」
私達へ深々と頭を下げた! ……なるほど、そういうこと。今しがたの試合も、そのために戦闘力把握だったという訳で。事情はわかった。ならば――!
「まっかせて! アタシたちも魔王様のお力になるから!」
「もち★ あーし達の力、見せたげるし★」
「えぇ! 彼女達を倒してみせる!」
拒む理由なんてない! そのために力を蓄えているようなものだもの! ベーゼもネルサも私も、すぐさま承諾! ふふっ、きっとルーファエルデ、また声を弾けさせて……。
「………………?」
……あ、あれ? 何故かルーファエルデは目を丸くして……? 即諾に驚いた、という様子ではないけど……。
「い、いえ。感謝いたしますわ! そう仰ってくださると
……なんだか様子がおかしい。歯切れが悪いというか……えっ私の方を見て首を捻って……!?
「ですが……何故アスト、その勇者一行が