ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~ 作:月ノ輪
ちょっ……!? 皆、声を揃えて!? 入るに入れない間に、トントン拍子で推察が! 職人の正体はミミックって……!
「アーちゃん、ど~ぉ~?」
「アストに聞いてしまってはいけないでしょうよ」
チラッとこちらを窺ってくるベーゼをメマリアが窘める。いや、ラティッカさん達はドワーフなのだけど……。これは嫌な予感が的中してしまったかも……!
「までもそうなるわ~★ これまんま、ミミックだし!」
「えぇまさしく! ミミックの持つ特殊な能力、それを見事に再現した逸品ですわ~!」
ぅ……。でも、ネルサとルーファエルデの言う通りであろう…。こんなミミックのような宝箱、その発想に至らない訳がないか……。実際
正直、
問題なのは……よりにもよって四人全員が、揃ってミミックを思い出してしまったことである!!
「そういえばさ、これ系以外にも普通の箱売ってたんだけど…むっちゃミミック買い求めてたわ★ デザイン良いのも多くて、アクセ入れにあーしも買っちった★」
「ふふっ! かなりの質の高さですものね。ミミックの方々のお眼鏡にも叶うのでしょう!」
「もしかしたら私達がわからないだけで、ミミックが好む造りをしているかもしれないわね」
……『職人はミミックかも』という予想を元に、宝箱の話で盛り上がる皆……。誰も彼もミミックミミック言ってしまっているけど……このままであれば、大丈夫。
そう、このまま宝箱の話に終始してくれればそれでいい。そのまま違う話へと伸びていってでもくれれば……――!
「……なんか今日、ミミックの話多くない?」
――って、ベーゼぇ!!?
「それな★ あーしが最初だっけ? あの笑ってはいけないヤツ!」
「クフッ……! ――コホンッ、その次は
「そして今、この宝箱の話。そうね、確かに多いわね」
っ……! ベーゼの一言に反応して、ネルサ達も今日を思い返す……! ……これこそが私が懸念していたこと。
さっき頑張って綱渡りを渡り切り、地雷原を凌いだ。でもそれは、点と点が繋がっていなかったから可能だったこと。それぞれの話が別々のタイミングで来たから、ギリギリながらも捌けたのだ。
だけど……それが同時に来てしまったら? 情報が出揃ってから、再推測されてしまったら!? 一個一個その時で終わっていた話が、全部繋がってしまったら!!?
そう、『私の隠し事』というクイズの、ほぼ答えとなる危険なヒントになってしまうのである! 魔眼という答え確認がなくとも、そんなヒントがあったら……――!
「――あ、そいやさ~。
――なっ、ネルサぁ!!?
「そういえば最近、よく目にいたしますわ。
「確かに! じゃきょーだんのダンジョンとか、氷の女王様のお城にも、お菓子の魔女のとこにもいた!」
「ミミックだからダンジョンであればどこに居ても不思議ではないのだろうけど……グリモア様の図書館にもいるのよ。流石に驚いたわね」
っっ……!! ど…どんどん出てくる! 我が社のミミック派遣先ダンジョン! さっき名前が挙がった時点でちょっとビクビクしてて、ミミックの話題が出てこなくてホッとしてたのに……! もしかしたら気づいてないかもと思っていたのに……!
それが今の話を皮切りとして、引っ張り出されてきてしまった! 『言われてみれば』ぐらいの認識だったっぽいのに!! ミミックの意識付けが強化されてしまった!!
……ただ幸いなのは、誰もそのミミック達がミミック派遣会社から来ているのを知らないこと……! メマリアが言った通りダンジョンにミミックはつきもの。ちょこんといても部外者は『あれミミックいたんだ』と特に気にしないだろう。
同じように、多少数が増えていても『こんなにいたんだ』と勝手に解釈されるのがオチ。そもそも基本潜んでいる魔物だし、ネルサ達の前に現れた子はそう多くないはず。……派遣したミミック達の性格上、ちょっと怪しいけど……。
だから上手く纏まれば、『よくあること』で話が終わるはず……! ……グリモアお爺様に関してもちょっと怪しいけど……!
「え! グリじーのとこにもいんの!?」
「それはじっちゃのとこに住んでる、ってことなん?」
「いえ、色々と手伝いをしているらしいわ。グリモア様の人徳かしら」
「うふふっ! 流石はグリモア様ですわ~! ――そうだ、グリモア様と言えば先日の! アスト、天晴でしたわ~っ!」
……あ! と思ったら、グリモアお爺様のおかげで話すらも切り替わって! 有難うございますお爺様……!
「話聞いた時びっくりしたもん! だって何人がかりでもわからなかったグリじーのびょーき、アーちゃんがちょちょいのちょいって治しちゃったなんて!」
「病気ではなくどちらかというと怪我なのだけど……でも本当、アストはよく気づいてくれたわ。あのままだったらどうなっていたことか……!」
「マジね~★ あーしも心配で心配で! 何度も会いに行ってたんだけどどんどん悪化してっててどうしよ…って! あっすんマジリスペクト!
「えぇ! まさしくさすあっす~ですわ! すごあっす~ですわ~っ!! お礼状諸々には乗せきれませんでした感謝の念、この場を借りて改めてお伝えさせていただきますわ~~っ!!!」
わわわっ……! 皆から割れんばかりの拍手が……! けどそんな感謝なんて! 私にとっても大恩あるお爺様だもの、ようやく恩返しの一欠けらをできたって感じで……――。
「そういえば、グリモア様が身につけておられます保護カバー。アストの手作りなのでしょう?」
――んっ!? ルーファエルデぇ!?
「あー! じっちゃがつけてる、てか被ってるブックカバーっしょ? なるほどあっすん製か~★ あれ超良いわ~★ お洒落な帽子みたいでカッコいいし!」
「えっ! あれアーちゃん手作りなの!? やわらかでふわふわで沢山魔法かかってる、あのすっごいの!?」
「ふふっ。グリモア様とても気に入っていらっしゃるのよね、あれ。おつけになっている際の御姿、見ているこちらまでなんだか嬉しくなってしまうほどにご陽気で」
ルーファエルデの発言を元に、納得するようなネルサ、驚くベーゼ、思い返し笑みを浮かべるメマリア。ちょっと待って……おかしい……!
だって提出した報告書には、『あのブックカバーを作ったのは私』なんて
――グリモアお爺様の一件についても、私は無理を頼んで報告に色々改竄を加えてさせて貰っている。理由は先程のスタッフロールと同じ。ミミック派遣会社に勤めていることを隠すためである。
だから魔王様の御依頼で社長秘書としてミミック派遣事前調査に行った時ではなく、アスタロトの娘アストとしてお見舞いに訪れた際に原因究明をした――そういう書き方にさせて頂いたのだ。
とは言っても依頼主且つ社長の心友であらせられる魔王様は真相を御存じなのだが……他の
だから、そんな報告書の中にわざわざ恩着せがましく『私が作りました!』なんて書くわけがない! いや普通の報告書だとしてもやらないけど!
とはいえ社長達の御関係はグリモワルスにとって周知の事実のようなので、その繋がりで魔王様が皆様方に真相をお話になった可能性もある。だが……それでも登城していないルーファエルデが知っているのはおかしい気がする! メマリアならともかく!
……でも私がお爺様を治したというのは伝わっているから、その治療法であるブックカバーも私が手掛けたと結びつけるのも当然か。 それなら……――。
――いや待って!! でもルーファエルデ、
もしバエル様方やグリモアお爺様がお話になられたのならば仕方ないが……。それにしては他の誰もが知らないのは変である。何故ルーファエルデだけ……?
「……そのことも伝わっているの?」
言葉を慎重に選びながら、ルーファエルデへ問う。すると彼女は軽く首を横に振った。
「いえ! ですがこの宝箱と同じように、籠められておりました魔法の癖から推測いたしましたわ!」
「あぁ……!」
そういう……! さっきの魔法の宝箱と同じ見抜き方をしてきただけのよう。なるほどそれならルーファエルデにしかわからない訳で。
……そして危ない危ない。先程の二の舞となるところだった……! さっきはつい勇者一行の機密を漏らしてしまいそれに気づけなかったが、今回はルーファエルデの台詞に気づくことができた。だから慎重に質問を返すことができたのだ。
その点に関しては、メマリアにちょっと感謝すべきかもしれない。メマリアがああして問い詰めてきたから警戒心が強くなり、そしてその後にはルーファエルデの言葉を節々までよく聞くことの重要さを理解させてくれたのだから。
ほら、さっきの魔王軍ダンジョンの協力者の話。あの時にルーファエルデが『らしい』と言っていたのがそれで、メマリアに言われて初めて気がついて……――。
「あら、ということは……。もしかしてあのブックカバー、例の職人にも協力を仰いだのかしら?」
――っ!? メマリアぁ!?
「いえほら。ああまで立派だと、まるでその宝箱のようだと思って。……全部アストの手作りだったかしら?」
「えっと……」
メマリアの問いに、今しがたのルーファエルデ相手と同じような反応になってしまう……! だって……その通りだもの! ラティッカさん達に協力してもらって作ったんだもの!
「――じ、実はそうなの。立派なものを差し上げたくて! 教えて貰ったり、難しい所は作って貰ったりしながら」
とはいえもう隠す必要はない……よね? これまた正直に。――すると、ベーゼがほえ~と声を上げた。
「箱作りの職人なのにあんな凄いブックカバーも作れるんだ~!」
「ま~腕良いからなんでも作れんじゃね? あっすんも職人さんも★」
ネルサもにひひ★と笑みを。――が、あれ……ルーファエルデだけ考えこむ仕草で……?
「……ブックカバーも箱、なのかもしれませんわ! ミミック的には、ですが!」
―――ッ!?!?!?!?!?!?!?
「ふふっ、確かにそうかもしれないわね。グリモア様の図書館でミミックがお手伝いをしていると話したでしょう? その子達、本の間に入っているのよ。勿論、ダミーや専用のものにだけど」
「まあやはり! 実は先程挙げましたコチョウ様のダンジョンの一角に、似たような潜み方をしているミミックの方をお見かけいたしまして! 他にも武者修行中、変わった『容れ物』に入っているミミックをちらほらと!」
……えっちょっ待っ……!? メマリア、ルーファエルデ!!?
「そういや
「あ! 氷の女王様のとこ! アイス冷凍庫にミミックいてすっごくビックリした! あと隠れてたわけじゃないんだけど…箱をソリみたいにして滑りまくってたよ!」
……いやっそれ待っ……!? ネルサ、ベーゼ!!?
「そんなところにもいるの? ――そういえば魔王様のお気に召されたホテル、『おもてなしホテルダンジョン』と言うところなのだけど…先日訪れたらそこにもミミックが居たわね。警備員として雇われているようで、売店の籠やサーブカートやトランクに隠れて監視をしていたわ」
「まあそのようなことが! ですが私にも警備役を務めるミミックに覚えがございますわ。エルフの女王陛下が所有する『遺跡ダンジョン』にもおりましたし、クラーケンの方々が棲む海の底にも!」
「そいやジンとかシルフィードとか、サラマンドラとかノーミードとかの精霊ダンジョンの幾つかでも見かけたわ~★ 盗掘防ぐためと、遊び相手として来てもらってるんだって★」
「前行った遊園地にもいたかも! 着ぐるみの中とかアトラクションの中で見回りして、迷惑客防いでた! あーっ! そういえばアタシの魅了魔法ししょーのダンジョンにもいた~っ!!」
……いや待って待って待って!!!? バンバン出てくる!? とんでもなく出てくる!!
しかも今度は先程まで名前すら挙がっていなかった各ダンジョンまで!!! ちょっと待って本当待って!! このままだと絶対マズいっ!!
まさにヒントの大増量…! まだ皆は見てきたことを話しているだけだけど…これだけミミックの話が膨れ上がってしまえば、ミミック派遣会社と紐づけられてしまうのは想像に難くない! そしてその次には、私のことにも繋がって……!!
うぅ……! やはり嫌な予感大的中、じりじりと崖っぷちに追い込まれていってる……!! もう逃げ場はない、私だけではどうしようもない……!!! せめて何か……偶然にも話が変わる機会があれば……!!
そう例えば…丁度召使の誰かが部屋に入ってくるとか……――!
―――キィ……
って、扉の開く音!? 本当に来た!? 来てくれた!!? 誰だかわからないけど、これでミミックの話を止められ――――――……
…………………………ん? んん?? んんん?????
召使の姿はおろか……誰の姿も無い……? でも扉は微かに開いている……。偶然開いたとか……――――――ッハ!?!?!?!?
なっ!?!? えっ!?!?!? そっ……はっ!? へっ!?!?!? ちょっ待っ……あれっ……いぃっっ!!!?
待って待って待って待って待って!!!!! なんでなんでなんでなんでなんで!!!!!
なんで……どうしてっ!!! あれは……! 僅かに開いた扉の下に、ちょこんと挟まっているのは!!!!!
どっからどうみても見覚えしかない!!!! あれは!!!!!
実家に戻る前に散々探したはずの……!! 女子会に来る前にこれでもかといないことを確認したはずの――!!!
―――