ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~ 作:月ノ輪
今度は私が驚き眉を
「さいきょーとりお???」
「……んー? あーし、どっかで聞いたことがあるよーな、無いよーな……」
「何ですの、それは? チーム名…のようですが?」
「その通りよ。『最強トリオ』――、かつての…と言っても若年、それも年端も行かないようなお年頃の当代魔王様、そしてそちらの御二方が所属なされていた三人組の名称。そう聞いているわ」
でもメマリアの口ぶりからして、失言をしたと言う様子は無い……。それどころか寧ろ、目で社長達へ間違っていないかの確認をしてくるほど……。
「あら♡ よく知っているわね♡」
「まあ、その通りよ」
オルエさんと社長はちょっと驚きつつも肯定を。そうなのだ、最強トリオとは、かつての魔王様とオルエさんと社長の
けど何故それを、メマリアが知っているの!? 私ですらグリモアお爺様にお願いして古いゴシップ雑誌から見つけ出し、当人達に聞いて初めて知った情報なのに! 彼女の魔眼ではそんなことはできないはず!
慄く私に気づいたのか、彼女は目を軽くこちらに。そして軽いウインクで私を抑え、改めてルーファエルデ達へと語り出した。
「ルーファエルデやネルサならどこかで聞いたことがあるのではないかしら? 伝説や流言飛語の類として処理されている史伝。あるいは異常なほどの戦果ながら、成し遂げた者の名が不明な巷説。例えば……『千尋巨竜群の鎮圧』、『古代ラビュリントスダンジョンに潜んだ盗賊軍団の殲滅及び人質救出』」
「――!? もしやそれは……一体一体が無数の山脈の集合体の如き体躯を誇り、まるで大陸が移動しているかの如くに行く先々を蹂躙したあの巨竜達の逸話ですの!? 国すら容易く磨り潰し誰も手が付けられぬほどの存在だったのが、ある時を持って沈静化したという…強大なる神の介在すら実しやかに囁かれております、あの!!?」
「古代ラビュリントスダンジョンのその話って……あれじゃん! もう軍隊みたいな数の盗賊達が集まって、色んな村や街や国から人質を取って立てこもったっっつー……! その盗賊達以外は二度と出てこれないぐらいに超難解なダンジョンだったからどうしようもなかった時に、どっかから謎のパーティーが颯爽と現れて、人質救出はおろか数千人はいた盗賊を数時間もかからずに全滅させたっていう都市伝説系の……!」
メマリアが口にしたワードを聞き、即座に反応するルーファエルデとネルサ。それに対しオルエさん達は……。
「あのすごぉくおっきい…♡巨竜達のことね♡ ちょっとメッて叱るついでに弄んだら大人しくなってくれたわ♡」
「あーあのダンジョンのね。いや数千人は言い過ぎよ。召喚兵もいたから…実質千人ちょっとだったかしら」
懐かしむ口調で補足を。それはまさしくメマリアの説明が真であることの証左…! しかしそれだけには留まらない。目を丸くするルーファエルデ達へ、メマリアは更に幾つかのエピソードを明かす。
「他にもあるわ。『地図を書き換えなければならないほどの巨大湖の一夜出現』、『悪神集会の壊滅及び更生』、『数日のみ顕現せし存在し得ぬ空中浮遊庭園』、『暴走ゴーレム大隊の沈静化』、『崩落ダンジョン群からの総員救出作戦』、『彗星分裂』、『月消滅幻視によるワーウルフ蜂起収束』『大噴火による噴煙溶岩の突如回収消失事件』『先代魔王様を標的とした強豪冒険者大クラン3分返り討ち』『魔王軍と人間各国合同騎士団との大規模衝突を潰滅両成敗』……これだけ挙げてもたったの一部よ」
「……あーし、全部聞いたことあんだけど……!!?」
「えぇ……
「アタシも何個か聞いたことある~! ししょー達だったの~!?」
ベーゼは目を輝かせながら、顔を上へと。そんな彼女の頭を胸でぽいんっ♡と受け止めながら、オルエさんは笑みを零した。
「うふふふ♡ そうね♡ 今メマリアちゃんが口から出したお話は、ぜぇんぶ私達三人でシたコトよ♡」
「こう人からさも伝承みたいに言われると…よくやったわねぇ、私達」
社長も私の膝の上で頷きを。かく言う私も、社長と同じく頷いていた。なにせ今しがたのエピソードは全て聞いたことがあるのだ。ただし、伝説や流言飛語の類としてではない。全部当人達に……魔王様方との酒席時に聞いた話である!!
社長達が懐かしみながら話していた数々の思い出武勇伝は、各地ではそのような奇譚と扱われ、ある話は吟遊詩人の手を借り大々的に、ある話は眉唾の嘘話として一笑に付される形で残っているようなのだ。ルーファエルデとネルサ、そしてベーゼは各地を巡っている故、どこかで耳にしたのだろう。
しかし……それが最強トリオの行いだということは、見ての通り誰も知らない。最強トリオの存在自体がトップシークレットじみていることもあるが…普通に考えればそれらの噂と子供三人組の行いなんて、到底繋げられないであろう。私だって信じられなかったんだから。
――なのに! 何故それを、メマリアが知っているの!? 社長達を前に堂々と、さも当然の知識の如く!! 一体なんで!?
「頭こんがらがってるんだけど……」
「理解が追いつきませんわ……」
「ねぇねぇ! どうやったのししょ~!?」
皆、混乱気味。そんな様子を横目に、再度私へ視線を向けてくるメマリア…。聞いてみるしか……!
「なんでそのことを……『最強トリオ』について知っているの、メマリア……?」
恐る恐る、そう聞いてみる。すると彼女は扇子越しに楽しそうな表情を浮かべ――。
「ふふっ。私、修練中とはいえ登城している身よ? 【王秘書】として、当代あるいは先代以前のグリモワルスの方々から色々お聞きしている、と言えば貴女にならわかるでしょう」
そう答えた……! ――成程。納得は出来た。その最強トリオというのは、先代魔王様方公認(黙認の節もある)のチームなのだ。だから時には先代魔王様の命で動いたこともあるらしく、当時のグリモワルスの面々も恩恵に預かったり収拾に追われたりと色々関わってはいるのである。それは私の両親祖父母も例外ではない。
そんな方々にとっては公にこそしないが今でも語り草、いやもしかしたら重大申し送り事項となっているのかもしれない。そして次代王秘書…即ち魔王様の最側近となるメマリアは、それを聞き及んでいてもおかしくは――……。
「成程そういうことねぇ。ま、そりゃそうか。メマリアちゃんの方がアストより
「うふふ♡ アドメラレクのお姫様♡だもの♡ 食えなさは一番かしら♡ 素敵な魔王様の懐刀…いえ、首輪♡になりそう♡」
「ふふふっ。御二方よりそのようなお褒めの言葉を頂けるなんて、光栄ですわ」
――……ん? 社長とオルエさんが、メマリアを褒めて……? 今打ち明けられたことについて……じゃなさそう? なんだか、三人だけ訳知り顔…!?
「んー。まだアストは気づいていないみたいだし、どうする? もうちょっと温めておく?」
「あらミミン♡ アストちゃんにそんなことしちゃうなんて♡ド♡S♡ でもメマリアちゃんもソッチの気があるし……イイかも♡」
「ふふふっ…! 正直、このままアストのおろおろする顔を見ていたい気持ちもありますが……別に困らせたいわけではないですもの。それよりも、大切な友人である彼女とその先についてお喋りをしたい思いで一杯ですわ。 ……実を言いますと、今のようなこの瞬間をずっと心待ちにしておりまして。御二方には感謝してもしきれませんで」
え……え!? 今度は揃ってニヤニヤしながら私を見て来て!? メマリアに至っては興奮と照れが少し入り混じってるような感じで……!? 察していないって……何を!? 何か見逃した!!?
「じゃアスト、私からちょっとしたヒント! さっきメマリアちゃんは『貴女にならわかるでしょう』と言ったのよ。断定的な言い方でね」
「私になら、わかる……?」
社長の言葉に、もっと眉を顰めてしまう。うーん……? さっきのメマリアの台詞は、『最強トリオについては【王秘書】として、当代あるいは先代以前のグリモワルスの方々から色々お聞きしている』という内容で…………――ん?
あれ、待って……? それを…当代先代グリモワルスの方々が情報源だということを伝えて『私にならわかる』という言葉に包んだと言う事は……つまり、
その含まれた意味とは当然今しがた納得した通り、最強トリオが魔王様方…グリモワルスの方々公認の存在であり、かつて暴れていた故にめいめいの記憶に残っているということ…なのだが……。――ッ!
……その事実自体には問題はない。けどその事実を理解するためには…私が、社長達の過去関係について、
つまり……社長がグリモワルスと関係が深いということを私が知っているという、その『前提条件』を、
……メマリアが社長の顔や台詞から、その前提条件を推測したという可能性もある。しかしメマリアは社長の言う通り、断定的な言い方をした。もし推測した程度であれば、『~かしら?』といった多少の手探りが混じるはず。最も、鎌をかける意図があれば別ではあるが……今の様子から見る限り、それはなさそうである。
ということは…間違いなく彼女は、私が社長の過去を知っていることを知っていた。それがどういうことを指すかと言うと……私と社長が知り合いであることも、予め把握済みであるということ!
そして、私と社長が知り合いである理由なんて……ただの一つしかない!!!!!
「まさかメマリア……貴女……!」
大体、おかしかったのだ…! 思い返してみれば、社長達が現れてから、彼女だけ少し反応が薄い…! 登場にこそ心底驚いていたが、すぐに心を落ち着けたかのような口調だったし……!
そもそもその前! 私が失言し、彼女に詰め寄られた時! 彼女の魔眼は何故か正常に機能せず、代わりに機密を自ら暴露する形で、私を助けるような予測を立てて来て! 強いミミックが、私の師匠だなんて!! ルーファエルデや私の台詞を逆手に取り、見事に……!
「うふふふふ……!」
メマリア、肩を揺らすほどに笑みを…! そして悪戯娘のような表情で、ルーファエルデ達の方へと顔を戻して……!?
「そうそう。もう一つ最強トリオについてのエピソードを追加しましょうか。『アスタロト家令嬢が、その最強トリオの御三方とつい最近、プライベートな酒席を共にした』というお話を」
「ちょっ!?」
「……はい?」
「……へ?」
「……えっ!?」
「「「ええええええっ!!!? つまり、魔王様と!!!!?」」」
順に、そして声を揃えて驚嘆を露わにするルーファエルデネルサベーゼ……! 更に次には――!
「まだあーし、直接お会いしたことないのに! あっすんいつの間に!?」
「
「アタシも魔王様とお酒飲んでみたいのにぃ!! アーちゃんだけなんでぇ!?」
「因みに私もそんな栄誉に浴してはいないわ。正直、羨ましい限りよ」
一斉に立ち上がって私に質問攻めを! そんな様子を見ながら、メマリアはクスクスと笑ってそう付け加えて……!
「メマリア……! やっぱり貴女!」
それを知っているということは、もう疑いの余地はない! そう睨む私に、彼女は扇子を軽やかにパチンと閉じ、喜色満面の笑みを露わにして頷いた!
「えぇ。アストが今日一日かけて隠していた秘密…ミミック派遣会社の秘書として社会経験を積んでいること、私は最初から知っていたわ♪」
「…………………………はぁ……もう…………」
「ちょっアスト…わぱっ!」
蓋を上半身で押し閉める形で、私はへたりと社長の箱にしな垂れかかる……。……もう、叫ぶ気力も起きない……。驚きが一周回ったというか…メマリアの謎行動の理由が理解できたからというか……あれだけ頑張って隠そうとしていたことが、メマリアにだけとはいえ見苦しい抵抗だったからか……。
「……いつから黙っていたの…?」
「言ったじゃない。今日一日、最初からって」
「そうじゃなくて…!」
力の抜けた身体を社長宝箱に委ねたまま、顔だけを起こす…! そんなことはわかってる。私が聞きたいのは……!
「一体いつから……どのくらい前から、私の仕事先のこと知っていたの!?」
このグリモワルス女子会は、私が社長秘書となってから何度も開かれている。それだけじゃなく、メマリアと普通に会ったことだって何度も……! なのに彼女、そのことをおくびにもだしたことは……!
「ふふっ、それもほぼ最初からね。正確には私が登城するようになって、少し経ったぐらいかしら。具体的な月日は――」
「やっぱり言わないで……!」
そんな正確な数字を言われたら、心が折れてしまう…! 既に羞恥で倒れそうなのに……! ずっと隠せていると思っていたのに、長い間彼女の手のひらの上だったなんて!!
……でも冷静に考えると、メマリアが私と社長の関係を知っていることは何もおかしい話ではない…! 社長達と関係が深いグリモワルスはなにもアスタロト家だけではないのだもの! 恐らく、当時の全グリモワルスが該当するのだ! アスタロト家だけではなく、バエル家やレオナール家やエスモデウス家やアドメラレク家すら一部に過ぎないであろう!
その訳知りな方々にとって『最強トリオの一角が営む会社に、アスタロトの令嬢が社会経験を積むために入社』なんて、私の両親祖父母が語らなくとも話題の種になりそうなものである。なにせ、グリモアお爺様や魔王様を巻き込んだ裏工作の結果なのだから……。そしてそんなグリモワルスが集結している魔王城にメマリアは登城しているのだ。耳にしていても不思議ではない。
更に言えば……メマリアのアドメラレク家は【王秘書】。魔王様の最側近として様々な補佐をする立場。その修練を積んでいる彼女が仕事周りだけではなく、魔王様の過去や友人関係、そしてプライベートの時間…それも謁見の形をとった
「ずっと待っていたのよ。この時を。特に魔王様との酒席を囲んだと聞いた時には居ても立ってもいられないぐらいになってしまって。興奮を抑えるのが大変だったわ」
言いながらも多少昂ってしまったのだろう。またも扇子を開き、自身を扇ぐメマリア……。社長乱入時に、前の実家での出来事みたいに誰かが社長のことを知っているのかと頭によぎったが……まさか本当に知っているなんて……。全員じゃなくて良かったけど……いや良くないんだけど……もう全員にバレたからどうでもいいっちゃどうでもいいんだけど……はぁ……。
……でも、なら気になることがある。さっきも思い当たったのだが……――。
「……メマリア…。なんであの時…魔眼で嘘をついて
またも社長宝箱に身を預けながら、半ば呟くように問う。あの時、彼女は
「そうね…それを私から口にするのは少しばかり決まりが悪いのだけど……」
「ならまた私が変わるわ」
尻込みするメマリアに代わり、社長が宝箱の中から上半身をにゅるんと。蓋をしっかり支え安定させてくれつつ、今度は私のことを良い子良い子と撫でて。
「メマリアちゃんは敢えて詰め寄ることであなたの防波堤になったのよ。あの時ああして介入してくれなかったら、アストはルーファエルデちゃん達三人からの一斉質問責めで瓦解していたでしょうね」
「ぅ……!」
……瓦解していたかどうかと言われたら、間違いなくしていた……! なにせ両親すらも差し出してしまったぐらいのピンチだったし……。そうか、だからこそ――。
「だからこそ魔眼を交え敢えて強い口調で迫ることで『この話はあまり触れてはいけないな』と皆に認識させ、後は言葉尻を利用し納得させて――。そういうことでしょう、メマリアちゃん?」
「ふふふっ…!」
照れを浮かべた表情でその通りと首肯をするメマリア。結果としては全て水の泡となってしまったが……確かにあの場は、間違いなく彼女のおかげで切り抜けられた。皆疑わず、彼女の推測に膝を打ったのだから。
いやだって…嘘を見抜ける彼女が嘘をつくなんて誰も思わないもの! あんな堂々とそんなことをするなんて、なんだか無敵と言うか……強すぎる。なんという謀略。
――そういえば、途中私が社長を追いすぎて自滅した時、話を変えようとしてくれた。今思えばあれもその一環だったのであろう。……ん? でも……あ!
「さっき、社長が円卓のど真ん中に乗ってきた時……! メマリア、私の隠し事を明かすように迫って来てたけど……! じゃああれはなんで!?」
その、話を変えてくれようとした直後である。そう言った癖に彼女、急に手のひらを返してきたのだ! あまりの変わり身にルーファエルデが気を揉んで叱ったぐらいに!
「それに関しては不慮の事故…と言うべきかもしれないわ。突然に貴女が誤魔化さなくなったから、もう隠す気がなくなったのかと思ったのよ。私としてはできることなら詰問の末にではなく、自主的に明かして欲しかったのだから」
もう介入しても取り返しがつかないところにまで落ちかけていたのだし。そう笑ったメマリアは、ふいと視線をズラし、社長達へ。
「ただその時は、まさかアストが御二方に翻弄されているなんて露程も思わなかったのですもの。まさかあのバエル様の宝箱がそうだったなんて……。最強トリオの名は伊達ではございませんね」
「やぁん♡ 褒めてもココじゃおっぱいぐらいしかまろび出せないわ♡」
「出す前にアンタを外に叩き出すわよ?」
もはやコントの如くボケ(かは怪しいけど)とツッコミをするオルエさん&社長は置いといて。そういうこと……。社長達の姿を捉えられていなかったメマリアには、私が急に挙動不審になり全てを告白しだしたようにしか見えなかったのだろう。それならば確かに不慮の事故と言っても差し支えない。
でも、だからこそ…! 社長達の乱入さえなければ…!! まだ秘密は保てていたかもしれなかったのに……――。
「いや無理でしょ。だって私達が姿を現したの、あなたの限界が近いと悟ったからでもあるんだから」
――っ! 社長、心を読んだかのように! そ、そんなことは……!
「もう至る所ボロボロだったじゃない。
「正直なト♡コ♡ 私達に気づいてなくてもすぐに誰かにハメられて堕ちちゃってたと思うわぁ♡」
「うぐっ……!」
そんなことは……そんなことは…………そんなことは………………うぅ……。……うん…私が一番わかってます……。
だってあの時、絶対に来ないメイドの助力を欲していたぐらい藁にも縋る気持ちだったもの……。多少持ち直したとはいえあんな話の切り抜け方では、仮に社長達が割って入ってこなくても、メマリアが手助けし続けていてくれたとしても、いずれ自滅していたと思う……。結局、全部私の……――
「ふふっ! ほらアスト、そんな顔しないの!」
へ…? 社長、沈みこむ私を押し上げ、丸まった背筋を正すように前を向かせて…。そして私の頬を手で優しく包み、鼻がくっつかんばかりの距離で慈愛の微笑みを。
「私のことをここの皆に隠していた理由、アスタロト様方の時と同じなのでしょう? 私と皆、どちらともの関係を守るために、必死に頑張っていたのよね?」
「ッ……! はい……その通りで…」
「ふふっ! その努力は褒めてあげなきゃだけど、完全な杞憂よ! だってほら――」
私の頷きを遮り軽やかに笑った社長は、パッと手も顔も離し、私の視界を広げる。そこに居るのは……!
「あなたのお仕事を貶し縁を切るような心無い友人なんて、どこにもいないでしょう?」
「そういうことでしたのアスト!
「そ~そ~★ あっすんのことマジリスペクトなんだけど★ 社会勉強のために秘書のお仕事なんて超すごじゃ~ん★」
「しかもししょーみたいに凄い人のとこだし! アーちゃんが垢抜けた理由、わかっちゃった~!」
「ふふっ、空回りさせてしまってごめんなさい。許してくれると嬉しいのだけど…私達の大切な親友、アスト・グリモワルス・アスタロト?」
にこやかな笑みで私の秘密を受け止めてくれる、親友達が……!! よかった……本当に良かったぁ……!
「……何も茶化さないのね、オルエ」
「あら酷いわぁ♡ 私だって空気は読むわよ♡ だってムードを気にしないと、そ♡の♡ア♡ト♡の盛り上がりに――♡」
「聞かなきゃよかったわ」
「あぁん♡」
もう……また社長達コントしてるし…! アウトの宣告をしたい気分である! ふふっ!
「…あー……でも…。ちょいいーい? 水差しちゃう感じなんだけど……」
――と、場が軽く落ち着いたところで、おずおずと手を挙げた親友が。ネルサである。彼女は頬をカリカリと掻きながら、にひひ…★と少し収まりが悪そうな表情を浮かべた。
「あーしだけかもしれないけど、頭ずぅっとハテナまみれで……。や! 勿論あっすんリスペクトなのは変わらんけど!」
「ハテナまみれ?」
「うん、あっすん。なんつーか…色々あり過ぎてオバヒ気味的な…★ だからちょっち確認させて貰えると嬉しいなって……★ えぇと……――」
大きめの深呼吸を行い、空を眺めるようにしながら指折りを始めた。
「――あっすんが隠していたのは社長さんのことで、めまりんはそれを最初から知ってて、社長さんはミミック派遣会社運営してて、なんならこのスゴイ魔法の宝箱も作ってるかもしれなくて、そんであーしの友達とかるふぁちんの武者修行先とかのダンジョンにミミック派遣してて、となるとやっぱりあの
諳んじてる最中でこんがらがってしまったらしく、頭から煙を噴き出さんばかりの様子で首をこれでもかと捻るネルサ。それでハッと現状を思い出したかのように、ルーファエルデとベーゼも続いた。
「そうですわ…! すっかり御二方のペースに呑まれ、心の内の混沌をどこかに追いやっておりましたわ!」
「ししょー……私達、グリモワルスとしてダメダメなの……?」
不安そうな顔を浮かべるベーゼ。オルエさんはそんな膝の上の彼女を愛でながら、私達グリモワルス令嬢へ告げた。
「私が最初に言った通りよ♡ みぃんな、超高得点♡ 食べちゃいたいぐらいご立派♡」
それを聞きホッと胸を撫で下ろす皆…! 私も安堵できたけど…うーん……? ――と、オルエさんはそのまま私と社長へクスリと。
「それにしても…ふふ♡ たぁっぷり出したわね♡ ミミン達のお♡ハ♡ナ♡シ♡」
「そうね。だいぶ怒涛の勢いだったし……説明不足になって当然よね」
「ですね……」
言われてみれば確かに。隠そうとしていたがために多くの謎を生み、乱入してきた社長達に振り回されどこかに飛びかけた、
かくいう私も…オルエさんがベーゼの師匠役だってこと初めて聞いたし、どういう顛末でそうなったのかとか、詳しく聞きたい! ネルサやルーファエルデやメマリアにも、改めて聞きたいことが沢山!
「なら♡ 皆ですべすべつるつるなお♡な♡か♡をぱっくり♡割って♡ 隅から隅までぜぇんぶ曝け出すのはどうかしら♡」
ぽんっ♡と手を打ち、そう提案するオルエさん。…と、指先を妖艶に唇へと運び、おねだりするような表情に……!?
「あぁでも…♡ そんなことをしたら私、欲しくて欲しくて堪らなくなっちゃうかも♡ 温かくて、濃厚で、喉に纏わりつくほどに美味し~い♡ 紅茶が♡」
……あぁ! そういう! 社長もすぐに理解したようで、ルーファエルデの方へ向き直り、お願いをした。
「良かったら私達も女子会に正式参加させて貰えないかしら? 今更だけど、アイスブレイクしましょ☆」
「ウフフフっ! 喜んで、ですわ~!!」