ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~   作:月ノ輪

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アストの奇妙な一日:グリモワルス女子会⑲終

 

 

『――そこで我は言ってやったのだ。【この地の平穏を乱したくば、まず我を倒すが良い。さすればこの地と言わず、魔界全てが貴様らの望み通りとなるであろうよ】とな』

 

 

「おお~~ッ★ 超カッコイイ誘い文句~★ 魔王様の頼もしさがもうギュンギュンに伝わってきて、あーし痺れちゃいます★」

 

 

「それで魔王様、手をゆっくり一度払うだけで荒くれ達全員宙に浮かせて、何百キロも遠くにある監獄までビュンッて吹き飛ばしちゃったんですよね~! つんよ~!」

 

 

「えぇ、しかもありとあらゆる攻撃を一切の身じろぎなくお受けになった後に。それで攻め入られていた村は瞬時に救われたのよ」

 

 

「はぁ……羨ましいですわメマリア……! 私も是非魔王様の御傍でそのご活躍ぶりを……! いえ、それよりも御身の盾と――!」

 

 

「気持ちだけで充分よルーファエルデちゃん。どうせ魔王様から飛び出していったんでしょうし。誰の制止も聞かずに、それどころか誰も寄せ付けずに戦いはじめたんでしょ? ――ほらやっぱり!」

 

 

「ふふっ! 民を護るために自ら御出陣なされるなんて! 魔王様の偉大さはまさに天井知らずですね!」

 

 

「うふふ♡ 昔からそうだもの♡ 魔王様ったら、誰かが危険に晒されてると聞いたら居ても立っても居られなくなっちゃって♡ 『最強トリオ』のエピソードも大体そうなのよ♡」

 

 

 

 

 

ということで、早速魔王様とのおしゃべ……会談を! その内容は多岐にわたり、こんな風な直近に発生した事件の顛末についてや――。

 

 

 

 

 

 

「じゃあじゃあ魔王様! 次もその最強トリオ英雄伝の話の中からぁ……!」

 

 

『ベーゼよ、少し落ち着くがいい。先も述べた通り、我らのそれは英雄伝と言うべきものでは……』

 

 

「あら良いじゃない♡ うら若い皆が私達のヤッてきた事で興奮♡してくれるなんて♡全身に快感が走っちゃうもの♡ 身体に正直になると……♡ちょっとは気持ちいいんでしょう♡」

 

 

『む……。……まあ、悪い気分ではないのは確かであるが……。 ……なれば、次からは我ではなく貴様らが語るがいい』

 

 

「もう女子会中に幾つか話したって言ったじゃない。だから皆、魔王様にお話して貰いたいのよ。でもそれでも渋るなら……代わりにアストに話して貰おうかしら! この前の飲み会の時の、あなたの真似をして貰いながら!」

 

 

『なっ……! ミミン、貴様! くっ…! アストよ……』

 

 

「あはは……。許されるのであれば憚りながら務めさせていただきたいところですが……。欲を申しますと、私も魔王様からお伺いしたいです。あの時も、今しがたのも、とても素敵な語りでしたから」

 

 

「超わかるあっすん…! 魔王様がお話してくださるの、演説なさっている時みたいに凛々しくてエモくてクールで★ けどチルさや温もりみたいな優しい暖かさも感じて★ まるで魔王様方と一緒にその伝説を体験してる気分になってます★」

 

 

(わたくし)からも是非! つい先程、各地に残る伝説の数々が魔王様方の手によるものだと初めて学ばせて頂きまして、その御本人を前にして、昂りが抑えられませんの……!」

 

 

「魔王様、どうかお願いいたします。ここに揃う面々は私と同じくいずれ貴方様のお傍に仕える身。なれば今この時こそ、かの輝かしき軌跡を示す絶好の機会だと存じますわ」

 

 

『むぅ……わかった。では語るとしよう。どの話を好む?』

 

 

「やったー! アタシ、『数日のみ顕現せし存在し得ぬ空中浮遊庭園』のお話が聞きたいでーす!」

「あーしはヤバそうな『彗星分裂』のお話をお願いしたいです★」

(わたくし)は『悪神集会の壊滅及び更生』についてを…!」

「差し支えなければ『千尋巨竜群の鎮圧』についても宜しいでしょうか?」

「酒席時の繰り返しとなり恐縮ですが、『崩落ダンジョン群からの総員救出作戦』のお話を、もう一度…!」

 

 

『お、おぉ。全員か。 フッ、構わん。とくと聞くがよい』

 

 

「私はぁ♡魔王軍と人間合同騎士団の両成敗の♡事後♡の処♡理♡のトークを……♡」

 

「私は三人が初めて会った時の話が良いわね! なにせ、ねぇ……?」

 

 

『貴様らには聞いておらんわ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

――勢ぞろいした最強トリオによって、かつてのエピソードを思う存分聞かせて頂いたり……!

 

 

 

 

 

 

 

 

『ルーファエルデよ。其方の両親より、そして魔王軍の勇士よりその武勇は聞いておる。その齢で既にあのバサクすらも下す腕を備えているとな。それほどの実力を備えながら、気品を忘れず美しくある。【軍総帥】一族として実に素晴らしい。先が楽しみよ』

 

 

「勿体なき御言葉……! 不肖ルーファエルデ、魔王様の剣に相応しき煌めきを得るために日々邁進していくことを誓わせていただきますわ!」

 

 

 

『ネルサの交流関係についても色々と耳にしておる。元気を分けて貰えるかの如く快活で、それでいて思慮深いと、我を訪ねる者の中からも其方を誉め立てる声はあがっておる故な。見事なる【全大使】一族の血よ、我もあっという間に絆されてしまったわ』

 

 

「わわ…★ 畏れ多いです…★ でも、にひひ…★あーしのことをそこまで仰ってくださるなんて、思わずイヤッホーッて飛び跳ねたくなっちゃうぐらい幸せ気分です★ とっても超ラブです魔王様!」

 

 

 

『ベーゼもまた学び多い漫遊を繰り広げているようだな。【催事長】一族はそれこそが肝要。時が来るまでその可憐な笑顔を忘れず精進を続けるが良い。――そうだな。其方が望むのであれば実力試しとして、小規模のものではあるが催事を任せてみるとしようか』

 

 

「え~っ! 良いんですか!!? ううん、宜しいのですか!!? ぜ、是非! アタシ色々やりたいことがあったんです! やった…っ! 魔王様ありがとうございます~!!!」

 

 

 

『メマリア。この場を借りて礼を言おう。どのような時も冷静沈着で臆せずに我の補佐を行う其方の【王秘書】たる振舞いようは、未だ其方が修練中の身だということを忘れてしまうほどに惚れ惚れとしてしまう。今後も我が傍らを託すとしよう』

 

 

「っ……! そ、そのような……! 未熟の身に余る光栄にございます! あぁ…どうか今だけは、冷静さを失うことをお許しくださいませ……! あの魔王様から、あぁ……!」

 

 

 

『アストよ。…フフフ、アストよ。クッフッフッ……! 何と無しに面映ゆいな。我が心腹の友たるミミンの優秀なる秘書を務め、オルエと交流を持ち、我と酒席まで共にした其方と改めてこうして向かい合うのは……! 古来より金庫番には誰も敵わぬものだが…其方が【大主計】を継ぎし時は、我もミミンと同じ目に遭いそうだ』

 

 

「へっ!? きょ、恐縮です…!」

 

 

「ちょっとぉ! なに私を引き合いに出してんのよ!」

 

 

「良いのかしら魔王様♡ アストちゃんの攻♡め♡ 結構キくわよぉ♡ 従うことしか考えられなくなちゃうぐらい♡」

 

 

「ちょっ…オルエさん!?」

 

 

『フハハハ! 今更であろうアスト。その一端は酒席でも披露していたではないか。手柔らかに頼むぞ。我相手にも、ミミン相手にもな』

 

 

「なによぉ……マオのくせにぃ……。今になってようやく、準備していた皆への賛辞を言えるようになったくせに…! 開幕言うつもりだったの言い出せず、ネルサちゃん達に呑まれてたくせに…むぐっ」

 

 

「ふふっ。社長、後で聞きますから…! ――今はただ魔王様の鷹揚な御心に恐れ入るばかりでございますが、その時となり必要とあれば、アスタロトとして相応しき進言をさせていただきます。どうか、御覚悟を?」

 

 

『うむ、見事見事! ……少しばかり怖くなってくるほどだな。手柔らかに頼むぞ……?』

 

 

 

 

 

 

 

――そんな風に、私達を魔王様が褒めてくださったり!! 更には……!

 

 

 

 

 

 

 

「うふふ♡ ちょっと喉が乾いてきちゃったわねぇ♡」

 

 

『む。確かにな。まさかここまで話の花が咲くとは。面倒であろう我の相手など早々に切り上げさせ、すぐに返してやろうと考えておったが……』

 

 

「そんな! 面倒だなんて1000パー思ってません! 寧ろあーし達の方が、魔王様の御手を煩わせて……!」

 

 

「良いわよネルサちゃん。あれ照れ隠しだから。皆の前で話すのを恥ずかしがってただけだから。というかそれよりも、なんでこんな転移のさせかたしてんのよ」

 

 

『む……』

 

 

「こんな……ってどういうことですか社長?」

 

 

「見てなさいな。よいしょ」

 

 

「わっ!? しゃちょーの触手が、シャンデリア貫通してる~ぅ!?」

 

 

「いえこれは…。触れられないのですね」

 

 

「そ。私全然魔法の知識ないから説明できないんだけど……私達転移はしてるんだけど、実はしてないのよ。あぁ、てか使った本人いるんだから説明して頂戴な」

 

 

『ふむ……。噛み砕いて語るとするならば――其方らそれぞれを周囲の空間ごと場よりくり抜き、それを一時的にこの場へ疑似転移させているのだ。理解できるか?』

 

 

「「「……???」」」

 

 

「成程。『ソラ・ゲンエ・ジョバンイベ』の多元空間魔法理論、その亜種ですね! ですがあの複雑な術式を実際に使いこなされている方なんて……!」

 

 

(わたくし)も初めてお目にかかりましたわ! あぁ、偉大なりしや魔王様! 魔法の腕も非常に優れておりますわ~!」

 

 

『おぉ! アスト、ルーファエルデ。知っておったか! その通りだ! ……フフッ、嬉しいものだな…!』

 

 

「……結局どういうことぉ……?」

 

 

「えっとねベーゼ。私達の存在自体は女子会会場に居たままなの。いや、うーんと……とんでもなく雑に今の状況だけを説明すると、私達の周りに自在に伸びる壁が全面に張られて、その外側に本物の謁見の間が幻影魔法みたいに広がっている……感じかな?」

 

 

「ですので言葉や波動こそ伝われど、私達から魔王様へ、あるいはその逆においても干渉はできませんの。空間の場所が違うと申しましょうか……。床にも触れられぬはずなので、恐らくは違う感触ですわ」

 

 

「そうなん? ……わ!? ホントじゃん! なんか変な感じ…! 床みたいで床じゃないんだけど! さっき気づかなかったわ~……」

 

 

「緊張してしまっていたものね。私も一瞬、オルエさんの幻影魔法かと思ってしまっていたわ。魔王様の凍てつくかのような波動によってそれが考え違いだとわかっのだけれど」

 

 

「うふふ♡ 流石に魔王様の怒張♡されたご立派♡な威容♡を再現するのは、私でも難しいわぁ♡ け♡ど♡だからといってこんな手間のかかるコト、しなくてもいいのに♡ 怖がりなんだからぁ♡」

 

 

『む……!』

 

 

「ホント。どうせ、この間アストを(カーテ)連れてきた時みたいに(ンめくり)されるのを警戒してるんでしょ? そんなんだったら初めから私達に頼ら――」

 

 

『ともかく、皆のティーセットも転移させた。好きに振舞うがいい』

 

 

「わっ! 机とティーセットが急に出てきた~!?」

 

 

「これは触れるし★ 有難うございます魔王様!」

 

 

「「「感謝いたします」」」

 

 

『うむうむ。……貴様らもこの娘らぐらいに可愛げがあればいいものを』

 

 

「そっくり返すわよーだ」

「うふふふ♡」

 

 

 

 

 

 

 

謁見の間で紅茶を頂く許可を頂いてしまったり! こんなこと、当代グリモワルスの皆様方でも許されないのでは……! そしてそのティーセットを用いて――!

 

 

 

 

 

 

 

『ほう、それは見たことのない菓子であるな。どこのだ?』

 

 

「これはアストちゃんがお菓子の魔女にお願いして作って来てくれたケーキです! とっても美味しいんですよ~! 宜しければ魔王様も如何ですか?」

 

 

「あら…! ベーゼから迷いなくそんな申し出をするなんて…! 魔王様、これは受けたほうが宜しいかと。ふふっ」

 

 

「も~メーちゃん! アタシそんな欲張りじゃないよ~! ……あ、でも、どうやってこれ魔王様にお渡ししよう……? 確かくーかん?が違うんですよね?」

 

 

『フッ。造作もないことよ。なれば本当に転移させればいいだけのこと。……良いのか、我が貰っても?』

 

 

「勿論です! 皆で食べたほうが美味しいですもん!」

 

 

『フッ、輝くような奴よ。どれ、では頂戴するとしようか』

 

 

「わっ!! ケーキがちょっと歪んで……浮き上がってる! おお~★ ふよふよ魔王様のとこに動いてってる~★」

 

 

「しかしそのまま進めばカーテンにぶつかってしまうのでは……まあ! 透過を!?」

 

 

『フフフ…! おぉ、良い菓子だ。フォークを入れるのが惜しく感じるほどにな。これならば味も……うぅむ、見事! 感謝する、ベーゼ。そしてアストよ』

 

 

「魔王様、よかったらあーしのも是非! じっくり選んできたマジウマなのあるんですよ★」

 

「ベーゼやアスト、ネルサには及びませんでしょうが…(わたくし)が今日のために選んで参りましたものも宜しければ!」

 

「勿論私もですわ。どうかご賞味くださいませ」

 

 

『おぉおぉ…! 待て待て、1人ずつ頂くとしよう。フフフフ……こうも楽しき迷いは中々に――』

 

 

「……そのお菓子のどれかに私が入り込んで、そっちに転移するって手段あるわね」

 

 

『ッ!? ミミン貴様…ッ!』

 

 

「ふふっ、冗談よ! そんな酷いことしないっての。それよりも……魔王様、これもいかが?」

 

 

「? って社長、その大袋……!」

 

 

「まあ♡ アストちゃんがたぁっぷりの♡愛を注いで♡作ったクッキーじゃない♡」

 

 

「いやなんで知って……あっ、持ち込んだ食糧ってそれもですか!?」

 

 

『ほう。アスト手製か。以前言っておったな、菓子作りが趣味の一つだと』

 

 

「え~美味しそ~っ!! なんでアーちゃんそれを今日の(女子会用お菓子)に入れてないの~?」

 

 

「いやだって、あれ会社で食べるように適当に作ったやつで……。皆に食べてもらうほど立派なものじゃないから……」

 

 

「あら♡ とぉっても美味しかったわ♡ 口当たりのイイ硬さで♡濃厚で♡それでいてしつこくなくて……♡虜になっちゃったわ♡」

 

 

「ごくり……! ね、アーちゃん……ちょうだい? アタシ食べたい……!」

 

「あーしもあーしも! あっすんクッキー、絶対美味しいじゃ~ん★」

 

(わたくし)も興味がございますわ~! いつ以来でしょうか!」

 

「そういえばアストのお菓子を食べるなんて久しぶりね。ふふっ」

 

『オルエにそこまで言わしめるクッキー、我にも裾分けて貰いたいものだが……』

 

 

「ぅ~……! お口に合うかどうかわからない粗末なものではありますが、それで宜しければ是非……!」

 

 

「ということでこれまた箱から取り出したる大皿に、ざらざらざら~っと! さ、皆召し上がれ!」

 

 

『「「「「頂きま~す! ……! これは……っ!!」」」」』

 

 

「……美味しくない……かな?」

 

 

「ううん! 逆! 逆だよアーちゃん! すっっっっっっごく美味しい!」

 

「これマジであっすん手作りなん!? なにこの超クオリティ! ヤバ、最強でしょ★」

 

「まさにオルエ様の品評通りですわ~!! 硬すぎず柔らかすぎない歯当たりの良さ、紅茶に合う濃厚ながらも残らぬ甘さ……!」

 

「それに、愛情もしっかり感じられるわね。えぇ、確かにこれは虜になってしまうわ!」

 

『手が止まらなくなってしまうな……! すまないが、もっと貰ってゆくぞ……!』

 

 

「ふふーん! 美味しいでしょう、アストクッキーは!」

 

 

『何故貴様が自慢げなのかはわからんが……。アストよ、これは見事だ。褒美をとらせよう』

 

 

「い、いえ滅相もございません!」

 

 

「あら♡ じゃあ私からゴ♡ホ♡ウ♡ビ♡を……♡」

 

 

『「貴様(あんた)は動くなっ!!!」』

 

 

「「「「「ふふふふふっ!」」」」」

 

 

 

 

 

 

――と、ティータイムを楽しんだりと! 他にも沢山、時が過ぎるのを忘れて楽しませて頂いた! 今日の女子会は今までの中で一番だったかもしれない! ううん、間違いなく最高だった!

 

 

ふと考えると、そうなったのはやはり社長達のおかげであるのだろう。社長とオルエさんはものの見事に潤滑油役を果たしてくれたのだから。それは魔王様との会話への茶々だけではない。

 

 

確かにネルサ達であれば、魔王様相手にもいずれ本調子を取り戻したのだろう。だけど、社長達がいなければそれはもっと遅れてしまっていた気がする。魔王様を前に物怖じしてしまっていたと思うのだ。

 

 

けど、それを解消してくれたのが社長達。潤滑油としてでもあるが……それより前に、ああして私達をビックリさせるために現れてくれたのが大きいんじゃないかなと。なんと言うべきか……段階を踏んで驚かされたせいで、魔王様が現れても必要以上に怯まなかった感じがするのである。

 

 

社長が姿を現した時私に向けて言った『今の内から出ないと収拾がつかないから』という言葉には、そんな意味合いもあったのかもしれないと、今更ながらに思うのだ。……まあ、オルエさんの暴走に向けて言ったのかもしれないのだけど。

 

 

ふふふっ! ともあれ、そのおかげでとっても幸せなひと時を堪能できている! 欲を言えば、このままずっと話していたいぐらいなのだけど……――。

 

 

 

 

 

 

 

『――む。すまぬな、皆よ。我はそろそろ公務に戻らねばならぬ。此度はここで離脱させて貰うとしよう。……こうであればもっと時間を取っておくべきだったな……』

 

 

残念ながら魔王様の方にお時間の余裕がなくなったようで、惜しくも宴もたけなわでの解散が決まってしまった。嬉しいことに口惜しがるような素振りを見せてくださって……!

 

 

「ふぅん? そんなに楽しかったの? なら予定通りいきましょうか、オルエ?」

 

 

「はぁい♡ ベーゼちゃん、お耳を貸して頂戴な♡ ……こそこそ♡ごにょごにょ♡ふぅうっ…♡」

 

 

「ひゃうんっ~! ししょ~くすぐったいぃ~! うへへへ~」

 

 

――と、そこで急に動き出したのが、潤滑油役のお二人。社長の合図を受け、オルエさんがベーゼに何かを耳打ち……? ……本当にあれ耳打ち?

 

 

「――へ!? い、良いの……? 言っちゃって大丈夫なのししょー……?」

 

 

「うふふ♡ ベーゼちゃんが一番適任よ♡ いつもみたいに可愛くあどけなく、カラダの隅から隅まで愛で濡らしたくなっちゃうぐらいにおねだりしちゃって♡」

 

 

一応何かは話があったらしい。ちょっと緊張するようなベーゼを撫でて安心させるオルエさん。それで落ち着いたベーゼは何度か深呼吸をし……バッと手を挙げた!

 

 

「はい! 魔王様!」

 

 

『……何を言い含められた、ベーゼよ。一応聞こう』

 

 

「ありがとうございます! えっとですね……アタシ、もっと魔王様とお話したいです!」

 

 

『うむうむ。それは我もである。だが此度は……』

 

 

「ですので~……この間アーちゃんが参加したみたいに、アタシたちも魔王様との飲み会に参加したいです! アーちゃんだけズルいですもん!!!」

 

 

 

 

 

 

「「「「!!!!」」」」

 

 

そのベーゼのお願いに、私達グリモワルスは目を丸く! そして輝きを灯らせてしまう! しかし対する魔王様は、不意の一撃に面食らったご様子。

 

 

『ぬぅっ……! くっ……ぐっ……! ミミン、オルエ……ッ!』

 

 

「良い機会じゃないかしら? いつまでもカーテンの奥に引きこもってるわけにはいかないでしょうよ。五人中二人が既に知ってるんだし」

 

 

「そ♡れ♡に♡ (そそのか)しはしたけれど♡このおねだりはベーゼちゃんの正直なコ♡コ♡ロ♡よ♡ ハーレムを築くならぁ…♡皆が気をヤるぐらいの愛♡をたぁっぷり平等に注がないと♡」

 

 

社長達が魔王様の説得に…! ならばここは……加勢を! メマリアと頷き合い――!

 

 

「魔王様、私からも嘆願を。ベーゼもネルサもルーファエルデも、酒席を共にしたことで魔王様への尊崇を強めども、不和を生じさせるような者ではありません。是非、どうか……!」

 

 

「アストに同じ、ですわ魔王様。彼女達を古くから知る身として、そして魔王様の御姿を知る身として、我が身を賭けてでもその保証は致します。……それに私も、アストのような栄誉を賜りたいですわ」

 

 

『うっ……アスト……メマリアまで……!』

 

 

「なぁに、私達が間に挟まってあげるわよ! 今日みたいに、あの時みたいにね!」

 

 

「だから魔王様はぁ♡ベッドでどっしり構えていればいいわぁ♡ 皆で尽くしちゃう♡」

 

 

「「「お願いいたします、魔王様……!」」」

 

 

私達や社長達から駄目押され、更にベーゼ達に羨望の眼差しを受け、魔王様が下した決断は――。

 

 

『っ……あ…あぁ。確かに……この語らいをこれで幕引きとするのは……うん、間違いなく心苦しさはある。 なれば…よし!』

 

 

皆に、そして自分自身に言い聞かせるように深呼吸交じりに呟き――。

 

 

 

『希望通り、近いうちに席を設けるとしよう……!! 我に……二言はない!!!』

 

 

 

少し怖がりつつも、魔王様の懐の深さを見せてくださるように、承諾を!! 最も、歓喜する私達を余所に社長達を少し恨みがましく睨んでいた気がするが……。社長達もそれに気づいているようで、煽るような言葉を返した。

 

 

「私達を送り込んだらどうなるか、不安に負けて想像できない方が悪いわ!」

 

 

「ね~♡ これぐらいは気持ち良くイカせてくれないと♡」

 

 

……もしかしたらこれ、私達を慮っての提案というより、面倒事に駆り出してきた魔王様へのしっぺ返しだったのかもしれない。それも、愛のある。ふふっ、やはり仲良し三人組!!!

 

 

そんなこんなで、最強トリオ&グリモワルス女子会は大成功! 皆、満面の笑みで終わることができたのであった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――本当に帰っちゃうんですか?」

 

「もう日暮れ。是非我がバエル家に宿泊していかれては?」

 

「アタシ、もっとししょーたちとお喋りした~い!」

 

「こんままあーしたちと夜通し駄弁りましょ~よ★」

 

「まだまだお聞きしたいことは山のようにありますわ」

 

 

魔王様への拝謁を済まし、更に幾時間か。太陽は沈みかけ夜が近い黄昏時。私達はバエル家庭園の一角に集まっていた。その目の前には、社長と、社長を抱えたオルエさんが。

 

 

「その申し出はとっても楽しそうだけど、これ以上皆の女子会の邪魔はできないもの」

 

「あとは五人だけでくんずほぐれつ♡満開の百合の花を咲かせてね♡」

 

 

そう。社長達、急にお暇すると言い出したのだ。この後お泊り会もあるというのに。まだまだ話したりない私達は引き留めようとしているのだけど……。

 

 

「この後予定があるのよ。マオ(魔王様)の反省会に付き合うっていうね。あなた達と同じく夜通しで!」

 

「うふふ♡頑張ってた分とさっき虐めちゃった分、やさしぃく蕩かす♡ように甘えさせて♡いっぱいいぃっぱい慰めて♡あげないと♡」

 

 

ということらしい。だから寧ろ私達こそ邪魔になってしまうのであろう。そういうことであれば仕方ない。後ろ髪を引かれる思いで見送るしかなさそうである。

 

 

「しかしそれならば庭園を抜けるのではなく、せめて正面玄関から……」

 

 

「元々侵入者だもの私達。そこで捕まえられて戦いに持ち込まれちゃうのは御免こうむるわ!」

 

 

「まあそのようなこと……有りかもしれませんわね!」

 

 

「やぁん♡ 逃げなきゃぁ♡」

 

 

クスクスと笑いあうルーファエルデ達。と、社長は急に笑みを慈愛のものとし、私達グリモワルスへゆっくり目を配った。

 

 

「それにしても……本当、マオの未来は安泰ね。こんな良い子達が育ってるんだから。皆そのままあの子の補佐を頼むわね」

 

 

そして最後には私へと……あれ? なんだか……?

 

 

「それで、アスト……」

 

 

数秒前まで皆を見ていた目とは違い、どこか……。言葉も迷っているのか、ほんの少し言い淀んだ後――。

 

 

「…………やっぱ、なんでもないわ! 今日は悪かったわね、会社のことバラしちゃって! 私が言う台詞じゃないけど、この面子相手によく誤魔化しきれていたと思うわ!」

 

 

いつものような社長スマイルに。……あ、それでひとつ言いたかったことがあるのを思い出した。

 

 

 

「そういえば社長……お聞きしても?」

 

 

「ん? なぁに?」

 

 

「皆の前に現れる直前…なんであんなに隠れたり擬態したり暴れたりしたんですか? 魔王様の御友人であることを明かすだけであれば、あんな行動要らなかったですよね?」

 

 

「ぅっ……! そ、それは……」

 

 

「なんであんな行動したのか……私だけを弄ぶような行動をしたのか、最後に伺っても?」

 

 

「……こっそり部屋に入ってアストに気づかせた時に……良いびっくり顔浮かべてたから……その……」

 

 

「その?」

 

 

「……それで……」

 

 

「それで?」

 

 

「…………楽しくなっちゃって、つい……」

 

 

「アウトですね。お仕置き、覚悟しておいてください」

 

 

「そんなぁ!」

 

 

「うふふ♡ 本当、良いカップルよねぇ♡」

 

 

「黙ってなさいよオルエぇ……!」

 

 

「そうだ、オルエさん! 忘れる所でしたが…貴女にも言いたいことがあるんです!」

 

 

「あらぁ♡ 何かしらぁ♡ ミミンへのお仕置き用のテクを何か教えて欲しいのかしら♡ それとも…ゴ♡ホ♡ウ♡ビ♡について興味が……♡」

 

 

「私のショーツ、返してください!!!」

 

 

「やぁん♡ そんなぁ♡」

 

 

 

「「「「「「「ふふふふふっ!」」」」」」」

 

 

 

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