ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~   作:月ノ輪

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人間側 とある冒険者達と暗雲①

 

「そんな装備で大丈夫か?」

 

「大丈夫だ、問題ない。 …軽装以外に選択肢はないだろう?」

 

 

笑いながら聞いてきた仲間の魔法使いへ、私はそう返す。なんだって毎回そう聞いてくるんだか。他はないのは重々承知だろうに。今から暫く空を飛ぶんだぞ。

 

 

さて、参加者は揃ったか。各パーティーの魔法使いによる浮遊魔法付与も済んでいるようだ。今回も中々に手練れ連中が集まったな。

 

 

「そろそろ参加費徴収の時間といこう。全員、そこのギルド職員に支払いをするんだ。変に渋るなよ、この後幾らでも儲けられるんだ」

 

 

周りに促しつつ、率先してパーティーを代表し支払いを。はあ、全く。こう言わないと私も渋りたくなってしまうな。それほどにまでに、この魔法陣スクロールのレンタル料は高い。冒険者ギルドは相変わらず足元を見る。貰い物の癖に。

 

 

まあいい。おかげであの『天界ダンジョン』まで一直線に飛び込めるのだから。支払いと引き換えにギルド職員から貸し出された超巨大なスクロールを皆で開き、描かれた魔法陣に全員がかりで魔力を流し込めば――。

 

 

「召喚成功だな。全員乗り込み、しっかり捕まるんだ。でないと振り落とされるからな」

 

 

作り上げられたそれにしがみつき、準備完了。あとはこれを打ち上げるだけで良い。これが何か、か? 残念ながら、私も良くわからない。

 

 

この魔法陣を編み出したのは、今話題の冒険者パーティー、勇者一行に所属する魔法使い。名前は確か……アテナ、とか言ったか? このスクロールもそいつがギルドに譲渡したものなんだ。

 

 

その魔法の内容だが……仲間の魔法使い曰く、『見えない魔力の糸を射出しダンジョンへ貼り付け、それを逆バンジー式に辿っていく』代物らしい。意味が分からないだろう?

 

 

ただこいつが言うには、魔術式が複雑すぎてよっぽど興味がある奴でも、余程の手練れでも模倣は無理なようだ。アテナとやらは勇者一行のメンバーだけあって腕が違うのだろう。そんなのを魔力を流せば誰でも使えるようにしてくれているんだ。英雄様様と言うしかないな。

 

 

ただ気になるのが……なんでこの召喚したこれは、巨大な蜘蛛の形をしてるんだろうか? いやアラクネだなこれは。脚が多い分掴まりやすくて良いが……。

 

 

まあ使えれば形なんてどうでも良いか。さて、起動だ。勢いよく飛んで向かうとしよう、私達冒険者の楽園、天界ダンジョンへと――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――今だ! 全員飛べ! 蜘蛛を捨てて雲に乗り込むんだ!」

 

 

私の合図で、総員巨大アラクネを蹴り捨て雲の中へと。あれは役目を終えて消えていった。さあ、ここからが本題だ。各パーティーごとに点呼を取り、準備を始めるとしよう。

 

 

「あ、あのちょっと…。ここまでくれば大丈夫なんですよね? もし落ちても……」

 

「ん? お前達は初参加か。その通りだ、このダンジョンにこうして足を踏み入れるだけで復活の力が付与される。落下死しても問題はない。当然、死んだら稼ぎも無くなるが」

 

 

怯え気味のパーティーを宥めつつ、私達は着々と用意を整える。ここの魔物はそう敵ではないとはいえ、上手く立ち回らなければ面倒なんだ。

 

 

どんな魔物か? それは、エンジェルだ。背中に羽を、頭に輪をつけたあの綺麗な連中。私達の最大目標はその羽根を毟り取ってやること。

 

 

連中はふわふわとしか空を飛べないから、案外捕まえやすい。そしてそうなれば、幾らでも毟り放題狩り放題だ。ただ無論抵抗は微弱ながらあるし、ここは慣れない空の上。下手に上位のエンジェルを呼ばれるとそう簡単にはいかなくなる。

 

 

だから事前準備は出来るうちに入念に、手慣れた冒険者の基本だろう。運も合わさればここの主である大天使ガブリエラの羽根も奪えるかもしれない。一枚でも手に入れば……ハハッ、想像しただけで楽しくなってくる!

 

 

罰あたりだって? そんなの知った事じゃないな。稼げるなら相手は誰だって良いだろう? 金儲けできるなら、私達はエンジェルを堕天させる悪魔になってやるさ。

 

 

「そういや聞いたか? 前にここに来た連中……」

 

「あぁ、なんか空飛ぶ宝箱に襲われて全滅したって話か?」

 

「なに、空飛ぶ宝箱って……?」

 

「それどころか、天使を悪魔が守っていたのも見たとか」

 

「なんで悪魔が天使を?」

 

「もしかして寿命を吸い取って…!? そしてそれを武器に……」

 

「いや、ただの別種族の友人とかじゃ?」

 

「なんにせよ失敗した言い訳だろ。高い金払ったのになあ」

 

 

他の連中の雑談を聞き流しながら、準備完了だ。これで空を翔け、エンジェル連中を翻弄することが出来る。後はこの人数を活かし、一気に畳みかけて……ん?

 

 

「――待て。全員、手を止めてくれ。パーティーメンバーが揃っているか確認するんだ」

 

 

何かがおかしい。私の声かけに、連中は訝しみながらも従い――。

 

 

「は!? 一人いねえ!?」

 

「こっちは二人消えてる!!?」

 

「私の仲間は!?!?」

 

 

やっぱりか。雲で視界が白いせいで気づきにくかったが……この雲に入った時と比べ、()()()()()()()()。異常に気付いた場は騒然と。

 

 

「もしかしてここに来る途中に落ちたか!?」

 

「いや、さっき点呼は取ったろう!? そんな訳は……」

 

「じゃあなに? もしかして抜け駆け!?」

 

「おいおいおい! それはしないってのが取り決めだろ!?」

 

「お前んとこのパーティー、どんな教育してんだ!」

 

「そっちこそ! ふざけやがって!!」

 

 

「全員、落ち着いてくれ! 下手に騒いでエンジェルに気づかれたら元も子もないだろう。そことそこ、両方とも人が減っているが、面識は?」

 

 

あわや掴み合いになりかける場を一声で収め、私は近場の数人に問う。するとそいつらは身の潔白を証明するように首を横に振った。

 

 

「いや、ない! 初めて会った!」

 

「同じくよ! 名前すら知らないわ!」

 

 

まあそうだろう。もし抜け駆けするならばパーティー単位でいなくなるのが道理。それぞれのパーティーから数人ずつ消えるなんて、それにこのタイミングでなんて、示し合わせたにしてもおかしい。ならば――。

 

 

「よく聞いてくれ。これは間違いなく何かが起きたということだ。例えば――何者かに襲われたとか、な」

 

「そんな!?」

「聞いてた話と違うぞ!!?」

「ここは雑魚のエンジェルばかりじゃ!?」

 

「あぁ。だがここは自由に出入りできる雲の上。時たまに竜やロック鳥といった奴等も訪れる。完全に安全とは言い難い。とはいえ――どうだ?」

 

 

皆を鎮めながら、傍らの仲間の魔法使いに問う。そいつは委細承知しているように肯いた。

 

 

「大丈夫だ、問題ない。魔法による索敵をかけたが、特にそのような反応はない。静かなものだ」

 

「ということだ。抜け駆けの可能性は薄く、巨大魔物の線もない。即ち……私達は今、未知に包まれている」

 

 

魔法使いの報告を合わせ、全体に周知させる。そして息を呑む連中へ――。

 

 

「総員、今一度気を引き締めてくれ。稼いで美酒を浴びるほど飲むためだ。あぁ、いつも天使にとられている分(エンジェルズシェア)、ここで取り返してやろう!」

 

 

「「「「「おおおおぉおっ!!!!」」」」」

 

 

これで警戒度も士気も上がったはずだ。消えた連中のことは確かに気掛かりではあるけれど、ここで止まる運命ではない。私達は素人ではないんだ。さあ、進むとしよう。

 

 

 

 

 

 

「――っと、居た。が……数体だけか」

 

 

雲に身を潜めながら移動し、時折顔を出して外を偵察。このダンジョンでの常套手段だ。エンジェル連中は雲の中をあまり気にかけないからな。私達が地面の中を気にかけないのと同じだろう。

 

 

そのおかげでこうして陰からこっそりとエンジェルの動向を探ることが出来るんだ。丁度見えたのは数体、何かをして遊んでいるようだ……ん? あれはなんだ?

 

 

「どうかしたのか?」

 

「あぁ、あれを見てくれ。あのエンジェル連中を」

 

 

眉を顰めていると、仲間の魔法使いを始めとした数人も顔を出してきた。そいつらへ示すと、全員私と同じような顔に。

 

 

「あれは……なんて呼べばいいのか」

 

「何してるんですかあれ…?」

 

「バトミントンか?」

 

 

あぁ、恐らくそうなのだろう。少し離れた位置にいるエンジェル数体は、光輝くラケットで、シャトルのようなものをポンポン打ち合って遊んでいる。だが……私が気になった点はそこではないんだ。

 

 

「連中の背を見てくれ。何か背負っていないか?」

 

 

そう促すと、仲間達は改めて確認を。そして先程以上に眉を顰めてみせた。そうなってもおかしくはない。なにせエンジェル連中、何か()()()()()()()()を背負っているのだから。

 

 

「ふぅむ……?」

 

「ありゃあなんだ? バッグではありそうだが……」

 

「変なの。なんか四角張ってて。赤とか黒とか」

 

「……なんかガキが学校行くのに使ってるのに似てるような」

 

「あれ確かランドセ――」

 

 

騒ぎを聞きつけ、更に幾人もが顔を出してきた。これは少し危険だ。もし気づかれてしまえば――っと!

 

 

「?」

 

 

間一髪で間に合ったか! エンジェルの一体が気づいたが、私達は揃って雲へ顔を引っ込めた。恐らく誰もバレては……いや。

 

 

「「「「あっ……」」」」

 

 

一組、今回初参加のパーティーが間に合わなかったようだ。顔を出したままのそいつらの元へ、エンジェル達はふわふわと。仕方ない。

 

 

「囮になってくれ。そいつらの羽根毟りは好きにしていいが、私達が事を起こしてからで頼む」

 

 

「「「「うわっ!?」」」」

 

 

雲の中からそう告げ、パーティー全員を雲から押し出す。私達が狙っているのはもっと大量のエンジェルが集っている場所。ここで数体相手に戦闘を行い、下手に勘づかれる訳にはいかないんだ。

 

 

だからあのパーティーには責任を持ってあいつらの対応をして貰う。上手くやって数体分の羽根を毟れれば初めて来た甲斐もあるだろう。

 

 

寧ろ警戒されないかって? その心配はいらない。なにせあいつらはエンジェル、だから、ほら見ろ。

 

 

「えっ!? ちょ、ちょっと!?」

「わ、私達にも羽が!?」

「頭に輪っか!? え、死んだ!?」

「待ってどこに連れてくの!? ……遊ぶの!?」

 

 

あんな感じだ。戦闘態勢をとっていない侵入者への警戒なんて、無いに等しい。目を輝かせて加護を付与し、遊び相手として連れて行ってしまった。

 

 

そして背のバッグから新しいラケットを出して、それを渡してバトミントンに参加させだした。……ん? あのサイズ、あのバッグに入るのか? まあ良いか。

 

 

さて、この場はあいつらに任せよう。私達は今の内に雲伝いに探索を続けて――ん? 仲間の魔法使いが神妙な顔を…。

 

 

「報告だ。少々きな臭くなってきた。また数人、消えたらしい」

 

「なっ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――良い狩場を見つけた。ここで構わないか? …よし、全員賛成だな。なら最後の準備をするんだ。伝達魔法を忘れるな。それと、警戒は絶対に怠らないでくれ!」

 

 

エンジェル達が大量に遊んでいる場に辿り着き、雲に潜みながら仕掛けるタイミングを見計らう。急ぎ足気味だが、仕方ない。くっ、なんだかわからないが、やってくれる…!

 

 

魔法使い総掛かりで索敵をかけ、残る面子で周囲を睨みながら移動してきたおかげでこれ以上数を減らさずには済んだが……戦力は大分減ってしまった。無論、いなくなった連中が戻ってくることもなかった。

 

 

冒険者としての勘が告げている。恐らく何者かにやられたのだと。しかし、エンジェルが物音も立てず悲鳴も上げさせず私達を始末できるとは考えにくい。つまり――エンジェル以外の何かが、ここにはいる。

 

 

そのことは最初に人が消えた時に予測がついていたとはいえ……日和る訳にはいかず、無駄に力を割くしかなかった。しかしそれももう終わりで良いだろう。今こそ、やられた連中の――!

 

 

「仇を取るんだ!」

 

「「「「「オォオオオオッ!!」」」」」

 

 

一斉に雲から飛び出し、戦闘開始だ! ここでも総じて背負っている謎のバッグを引きちぎり、羽根を毟ってやろう!

 

 

「事前の打ち合わせ通りにやってくれ! 攪乱、回避、隙を突くんだ!」

 

 

魔法を、武器を、技を、人数を活かし、空中で素早く動いて集まっていたエンジェルを取り囲む! 一体たりとも逃がさない!

 

 

今更ピンチに気づいたエンジェル達が急ぎ戦闘態勢を整え出すが、もう遅い。その矢も光弾も雷もへなちょこで、私達には全く当たらない。まさに駄目天使、いや駄駄駄駄ダメ天使というレベルだものな。

 

 

後は頃合いを見て決着をつけるだけだ。っと、気をつけなければ。ラッパを吹こうとしているエンジェルはいないか? あれは吹かれると、戦闘の心得のあるエンジェルやそれこそ大天使までやってきてしまう。少なくとも今は制しておかないと――……。

 

 

 

……妙だ。いつもなら誰かしらはラッパを取り出し吹こうとするはず。けれどそんなエンジェルはいない。というより、怖がっている連中はほぼおらず、一体たりとも逃げようとしていない。まるで何か策があるかのような、楽しもうとしているような……って、ちょっと待て!

 

 

それ以前にこちら側……また人数が減っていないか!? 間違いない、減っている! 雲に隠れている可能性を加味してもだ! 嫌な予感は当たって――。

 

 

「仕留めるぞ! 俺についてこい!」

 

 

っ! ある奴が呼びかけ、それに答えた数人がエンジェル一体に突撃していく! 弱い相手にも油断をしない連携攻撃で、簡単に羽根を……。

 

 

「ぐへっ…?!」

「がっ……!」

 

 

なっ……!! 今、何が!? 先頭の連中が、勢いよく墜落していっている!? エンジェルはただ狼狽えていたというのに!!? いや、一瞬だけ、エンジェルの背負うバッグが動いたような……! 

 

 

「ちょっ、えぇっ!?」

「な、な、何が!?」

「い、一旦散開!」

 

 

その異常を眼前に突きつけられた他のメンバーは即座に分かれ、一時避難を。雲の中に隠れ態勢を立て直し……はッ!?!?!?

 

 

どういうことなんだ!? 数秒も経っていない間に、その連中が気を失い雲から落下してゆくのが見えたぞ! 一体何が……いや、考えるより先に!

 

 

「総員、警戒だ! 警戒してくれ!! エンジェルのバッグと、雲の中! 何かが潜んでいる可能性が高い!! 気をつけるんだ!!!」

 

 

飛び回りつつ、伝達魔法を介しそう呼びかける! 成程辻褄は合う…さっきから人が消えていた理由は、雲の中の魔物に仕留められていたからか! しかも索敵にも引っかからず、音もなく私達を始末できるほどの魔物とは!

 

 

他の連中も警告でそのことを察したらしく、エンジェルからも雲からも距離を取る。しかしこれは攻めあぐねているのと同義、この間に応援を呼ばれるかもしれない。数秒の逡巡が事態を悪化させてしまうだろう。

 

 

だからこそ即座に対処に動く! まずは――その謎の魔物の見極めから!

 

 

「あの雲を散らしてくれ! 何かが隠れられなくなるぐらい細かくだ!」

 

「君の頼みは断れないよ」

 

 

指示を送ると、魔法使いは即座に魔法を詠唱。つい今しがたあの連中を墜落させた雲を文字通りに雲散させる。これで……くっ。

 

 

「何もいない…。逃げたのか…?」

 

 

散り消えとなった雲の跡には、ただの青い空だけ。あれが毒雲だった可能性もあるが、それならばさっきまで私達がやられなかった理由が――今! 頼む!

 

 

「私のサポートが心配なのか?」

 

 

ハハッ! 流石だ! 仲間の魔法使いが意図を組み、間髪入れずに雲の四散に驚いているエンジェルの方へ魔法弾を! 何をしてきたかはわからないが、これでも食らってお前も墜落してしま……は!?

 

 

「弾いた!?」

「ほう…!?」

 

 

俺も魔法使いも目を丸くするしかなかった…! 今のは間違いなく直撃コースだっただろう! なのに……何かがその魔法弾を弾き、何処かへと飛ばしたぞ!?

 

 

バリア?いや、そんなのを張っている様子は無い。自力で跳ね返した?それが出来るとして、あのエンジェルにそんな高等技ができるとは思えない。なにせ魔法弾の飛来に目を瞑って怯えていたし、弾かれたのを知って無邪気に拍手してるのだから。何が……。

 

 

「なんだかわからねえけど、これなら躱せねえだろ! 食らえ! なすび爆弾、乱舞!」

 

 

考えこんでいると、他のパーティーの魔法使いが攻撃を。…そのナスみたいなの、爆弾なのか? よくわからないが、乱射攻撃なら可能性は――なっ!? 危ないっ!

 

 

「なぁあああぁ!? ッス……」

 

 

それすら全部弾き返してきたぞ!? 私達は躱せたが、ナスを打ち込んだそいつはその反撃を諸に受け……上半身が巨大なナスに変化した!? そのまま真っ逆さまに落下を! どんな呪い攻撃なんだあれは!?

 

 

いやそっちはどうでもいい! あれほどの乱射攻撃を捌いたんだ、幾ら謎の魔物と言えど、少しぐらい、正体を見極めるぐらいの隙は――見えた! が……ん!?

 

 

なんだあれは!? 一瞬だけ、あのエンジェルの背負うバッグから出ていたあれは……! バドミントンラケットを握っていた、あれは!!?

 

 

恐らくそのラケットで魔法やらを弾いたのだろうが……。肝心なのはそれではなく、それを握っていたあの……()()だ! なんなんだ、あれ――。

 

 

――待つんだ、あの触手…やけに見覚えがあるような……――ッ! そうか! そういうことだったのかッ!

 

 

「気をつけろ! 潜んでいる魔物の正体は、ミミックだ! ミミックが潜んでいるぞ!!!」

 

 

即座に伝達を! ようやく謎が解けた。索敵に引っかからず物音を立てずに私達を始末できたのは、エンジェルがバッグを背負っているのは、ミミックだからか! 本当、やってくれる!

 

 

だが、種が割れてしまえば脅威は薄れるものだろう! 私達は幾度も死線を潜り抜けてきた冒険者なんだ、ミミック程度、立ち回り次第で容易く――。

 

 

「バレちゃったなら仕方ないのぅ☆ んま、お前さんらが負ける運命には変わりないがな!」

 

 

「!? ッく!!?」

 

 

「おぉ、流石一際警戒していただけあるの。見事な反撃じゃ♪」

 

 

か、間一髪……! 背後を取られていたとは……! なんとか剣で弾き、事なきを得られたが……こいつは!

 

 

「上位ミミック!」

 

 

「ふふ~☆ ようやく気付いたか?」

 

 

 

 

 

 

 

振り返ったその場に浮いていたのは、天使羽の生えた宝箱にすぽっと入り、頭に天使の輪を光らせ、背にも羽をぱたぱた揺らしている上位ミミック! 何故か手に輝くバットを持っているが……このッ!

 

 

「おっと! 効かぬのぅ~」

 

 

剣とバットで切り結ぶが…強い! なら、手数を増やすまで! 仲間の魔法使いへ合図をし、支援攻撃を! 一気に決め――

 

 

「カッキーンっとな♪」

 

 

全部撃ち返し……危っ!? こいつもか! どうしてミミックがそんな簡単に魔法反射を! もしや、さっきのラケットやそのバットが……!

 

 

「これかの? エンジェルが作ってくれた只の光製バットよ。ランドセルや宝箱に入れといて、遊ぶ時に使う、な。何でもできちゃうバットではないぞ~?」

 

 

私の視線を読んだのか、ミミックはバットをわざとらしく振り回してみせる、そして――なっ!?

 

 

「さ、お前さんらのお手並み拝見といこうかの☆ ワシら相手にどこまでやれるか見物じゃなっと♪」

 

 

バットを箱の中に仕舞い、今度は触手で魔法弾を弾き返しながら!? ミミックは空を蹴り下がるように、離れた雲の中へとくるくる回転しながら消えていった……!

 

 

「どうやら魔法対処の心得があるようだ。難敵だな」

 

 

唖然としていると、援護をし続けてくれていた仲間の魔法使いが傍に。くっ……まさか気楽に狩りのできるはずのダンジョンに、あんな敵がいるとは。急ぎ追いかけ、討伐しなければ――。

 

 

「そうも言っていられないようだ。見てみるといい」

 

 

ん? 魔法使いは面持ちを重いものにしながら、他の連中の方を指して――っと…!

 

 

「これは問題だな…!」

 

 

雲に隠れられず、エンジェルにも近づけず。日頃の戦法を封じられたせいで、共に来た冒険者連中は立ち往生してしまっている。

 

 

そんな状況ともなればエンジェルのへなちょこ攻撃でも脅威となるし、潜むミミックに簡単にやられてしまうだろう。このままでは本当に負ける運命、それは避けなければ!

 

 

「全員落ち着くんだ! まずは周囲の雲を徹底的に散らしてくれ! それでミミックの脅威は減らせるはずだ!」

 

 

急ぎ策を伝達する。そしてこちらも、あのミミックが隠れた雲を吹き飛ばす!

 

 

「うむうむ、良い策じゃの♪ それで、次はどうする?」

 

 

散り散りになった雲の中から平然と姿を現したぞ、あのミミック…! けれどこちらへ攻撃をしかけてくる様子は無く、ニヤニヤと様子を見守ってくるだけだ。

 

 

あからさまに舐められている。なら……これを見ても平静を装っていられるか? 魔法使いにミミック警戒を任せ――。

 

 

「雲が消えている内がチャンスだ! 複数パーティーで手を組み、エンジェル一体に飽和攻撃をしかけるんだ!」

 

 

聞くが早いか指示に従い、各所でチームを組み攻撃を集中させる仲間達。大してエンジェルは、もといミミックは、ラケットやらで必死に弾き出す。これならば!

 

 

さっきの奴のナス乱射、結局は効かなかったが僅かながらミミックに隙を作ることができた。なら単純に、あれよりももっと、防げない程の攻撃を仕掛ければ良いだけの事。

 

 

なにせミミックは近距離攻撃が主体の魔物だ。あれだけの距離を取り、一方的に魔法弾やらを打ち込めば手出しは不可能だろう。さあ、これでも笑ってみていられるのか?

 

 

「ほっほう♪ あれはキツいのぅ~。防ぐのでまさに手一杯。こちらかそちらか、どっちが力尽きるのが先か、ってとこじゃな」

 

 

なっ……笑っている? あれだけの攻撃を仲間のミミックが、エンジェルが受けているのというのに? 

 

 

「じゃ・が・良いのかの~う? また雲が流れてきたぞ?」

 

 

眉を顰めていると、上位ミミックはひょいっと指し示す。見やると、確かに雲が流れてきているが……どれも攻撃している連中に激突するコースじゃあない。

 

 

仮にあれにミミックが潜んでいても、中に入らない限り、密着しない限りは大した脅威ではないだろう。それに、この飽和攻撃に参加できない近接担当の連中が警戒をしている。何も問題なんて――ハッ!?

 

 

しまった、何を示されるがままに視線を誘導されてしまってるんだ! いくら魔法使いに警戒を任せているとはいえ、そんな油断を見せてしまえば――!

 

 

「隙ありだの☆」

 

 

ッ! やはりブラフ、こちらの隙を作ることが本当の目的か! 反撃、間に合うか……って、は? 

 

 

 

……ミミック、あの位置から全く動いていないじゃないか…。それどころか羽をぱたつかせ、拾ったのだろうか雲を捏ねて遊ぶというこちら以上の油断振り。なんなんだあいつは……!

 

 

肩透かし食らい、思わず歯ぎしりを。すると、あのミミックはもっとよく戦いを見とけと言うようにちょいちょいと指差しを。その先に居たのは、攻撃の対象から外れていたエンジェルだ。

 

 

っと、動きを見せたな。エンジェルは背のバッグから矢を取り出し引き絞り――魔法弾を撃ち続けているパーティーへ射った! ……が、警戒している近接担当に軽く弾かれて終わった。

 

 

それでもへこたれずに矢を射りまくるエンジェルだが、やはりへなちょこ。そもそもが上手く向かわず、変な所へ飛んでいってしまっている。パーティーの後ろの雲にまで飛び刺さるものすらある。

 

 

……これだけか? 上位ミミックをチラリとみると、捏ねたせいか少し大きくなった雲に箱を置き、鼻歌交じりに感触を確かめている。何故あんな余裕なんだ?

 

 

まあいい。そろそろ何処かのチームが押し勝つだろう。私達が負ける運命だなんて適当なことを――なっ!?

 

 

「「「あばばばばば……!?」」」

 

 

何が起きた!? チームの一つが、()()()()()()()()墜落していっている!?

 

 

間違いなくミミックの仕業だろうが……何故だ!? 何故、雲に包まれたんだ!? あの位置に雲はなかったはず! さっき見た通り、コースすら違って――。

 

 

「よいせっと☆ 何故かの~う? わからなければこれまでだの~う?」

 

 

待て待て待て! バットを取り出した上位ミミックが迫って来ている! とりあえず逃げ……空を蹴って追いかけて来る!? 魔法使いの妨害を全て弾き、光球を打ってきながらつかず離れず!

 

 

「ちょ後ろ…!」

「いつのまに雲が!?」

「「ぐへぅっ……!?」」

 

 

その間にも、また一チームが雲にやられた……! しかも、あの場には近くに雲の欠片すらなかったというのに! いつの間にか雲が現れていて、呑み込まれたぞ! 

 

 

少なくともミミックの仕業なのは間違いないが……雲にミミックが潜んでいるからこそ、それにやられてッ!? なっ、あれは!? 急ぎ忠告を――!

 

 

「そこのパーティー! 下だ! 真下! 真下から雲が迫って――っ!」

 

 

「「「「へっ? っ!? はぶっ…ぎゃああっ!!」」」」

 

 

間に合わなかったか……! だが、見えた! 雲が明らかに風に逆らって異様な軌道を取り、あのチームを飲み込みにいったのが! ()()()()()()()()()()()()直《・》()()()()()()()()()が!

 

 

まさかミミック、入っている雲を箱のように扱えるのか!? なら、もっと広範囲の雲を払う必要が……! くっ…もはや雲は俺達の味方にはならない。全ての雲が怪しく見えてしまう……!

 

 

だが、今ので分かったこともある。さっきの垂直移動を見る限り、空を蹴って笑いながら追いかけて来続けているあの上位ミミックのような奴は少ない。なにせそうでなかったらああして雲に入ってゆっくり迫る必要はおろか、そもそも雲やバッグに隠れる必要すら大してないのだから。

 

 

恐らくほとんどのミミックはエンジェルと同じく、ふわふわとした速度しか出せないのだろう。エンジェルの加護に頼り切りという訳だ。が、そこで疑問が湧く。

 

 

ならば、ミミックはいつから雲に潜んでいるんだ? 雲が遠くにある内に潜みここまで来ていると考えていたが……無論その可能性はどうやっても消えないが、それだと策としては弱い。

 

 

雲の速度は風任せ。それに加えミミックが入り動かしたとしても、あの速度では下手すればここに着くまでに戦いが終わっていることだろう。そうでなくとも俺達はその場に留まらず飛び回っている。偶然を狙っているならまだしも……。

 

 

ということは……この場の何処かでミミックが入りこんだのか? 都合よく流れてきた雲を利用して。しかしそれならば一体、どのタイミングでだ?

 

 

なにせ私達周囲の雲は払われ、視界は広く確保できている。これだけ凝視の目があるんだ、幾らミミックと言えど、低速浮遊で雲に入り込もうとする姿があれば誰かしらが目撃していてもおかしくはないんだが……。

 

 

それに、何もないところから雲が現れたように見えた謎も解明できていない。あの上位ミミックのような奴が高速で接近してきたのならば話は別だが、それならばもっと被害甚大でも……っと!

 

 

エンジェルの矢が傍を掠めてきたな。とはいえ容易く回避はでき、矢はそのまま離れた位置の雲へと突き刺さった。全く、邪魔くさい。あんな刺さりにくそうなヘンテコ矢なんて……ん?

 

 

待つんだ……あの矢……他の矢。それにさっき、上位ミミックが指し示した、矢を射るエンジェル……まさか…!

 

 

「エンジェルの矢を一本で良い、無傷で確保できるか?」

 

「お安い御用さ」

 

 

魔法使いにそう頼むと、丁度飛んできた矢を魔法で止め、私へと。これは……間違いない。光の矢だが、()()()()だ。よくある矢の形をしている。

 

 

しかしさっき私の傍を掠め雲へと刺さった矢は、いや矢先は、変な形をしていたように見えた。こういう刺さる矢先というよりも、まるで何かを入れられそうな膨らみ方を……ともすれば玩具みたいな、子供が宝箱にしてそうな――ッ!

 

 

「矢だ! 矢にも気をつけるんだ! 恐らくだが……矢の幾つかに、ミミックが潜んでいる! それを雲へと撃ち込み、不意打ちを狙っているぞ!!」

 

 

「おぉお~やるのう! もう見切るとはな!」

 

 

雷に打たれたように警戒を促すと、ミミックは追うのをピタリと止めてきた。当たり…で良いんだろう。腹が立つが。――と、またあの小さい雲を揺り籠にしながら、今度はニマニマ笑みだした。

 

 

「それで、次はどうする~? どう対処する気かの~?」

 

 

相変わらず……! 落ち着け、心を乱されるな。まずは新たな指示を送ろう。

 

 

「雲破壊担当を分けるんだ! 近づく雲を全て壊し続けてくれ!」

 

 

結局のところ、雲に隠れてくるのに変わりはない。ならば徹底的に防衛をすれば良いだけのことだろう。無論、矢の直撃を防ぎつつだ。

 

 

そしてどうだ、上手くいっているぞ! 払った雲の幾つかには、天使羽をぱたぱたさせて撤退していくミミックが見える! 今しがた矢が打ち込まれた、私達の傍の雲からもだ! 

 

 

ならここぞとばかりに追撃をしたいが……くっ、直ぐに千切れた雲の隙間に姿を消す。まあいい、戻ってくるのは時間がかかるだろう。標的は変わらずエンジェルだ!

 

 

「くふふ~☆ そっちが通ればこっちが通らず。大分エンジェルとの距離が狭まってきておるぞ~?」

 

 

ふと、上位ミミック煽ってくる。あぁ、そんなのは承知の上だとも。雲破壊に戦力を割く以上、エンジェルへの攻撃は半減してしまう。それを好機と捉え、エンジェル連中が近づいてきていることはな!

 

 

無論その背にはミミックがいるのだろう。だが近づいてくるということは、こちらの魔法攻撃や射撃が当たりやすくなるし、威力も上がる。更に、遊ばせるしかなかった近接職の連中が動けるようになる。これが何を示すかわかるか?

 

 

そう、ミミックが防御に勤しんでいる隙を突くことが出来るようになるんだ。ミミックは奇襲に強いが、正面堂々は弱いのがセオリー。

 

 

加えて私達の目的はエンジェルの討伐ではなく、羽根を毟ること。一気に刈ることはできないだろうが、その程度! ミミックめ、油断したな――。

 

 

「油断しておるのはそっちじゃがな☆ ワシらがその程度の対策をしてないと思うたか?」

 

 

ッ!? 上位ミミック、何を言って…!  何か隠し玉があるのか……! しかし、ひけらかすには早かっただろう。まだエンジェルとの距離はそこそこある、回避指示は充分に間に合――は? は!?!?

 

 

「「「のああ!?」」」

「「「ちょおおっ!?」」」

「「「待て待て待て待て!!!?」」」

 

「「「ぎゃあああっ!!?」」」

 

 

「お~お~、肝を潰しておるのう♪ どうかの? うちらの隠し玉は?」

 

 

響き渡る仲間達の悲鳴、そして目の前で繰り広げられる、信じられない光景……。つい唖然としてしまう私達へ、上位ミミックは高らかに解説を。

 

 

「肉薄されれば直接仕留め、遠くに行かれたらその場へと送り込み――中距離ではあの通り、じゃ♪」

 

 

……全てに於いて抜かりなし、そう言いたいのだろう。それは、まあ、そうかもしれないが……だが、だがな……!

 

 

あれは、なんだ!? 何なんだ!? あの、ふざけた光景は! 理解が追いつかない、あの意味が分からない戦法は!

 

 

 

宝箱が……ミミックが……()()()()()()()、って…! いや、正確には違う!

 

 

 

ミミックが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――って、どういうことなんだ!!!?

 

 

 

 

 

 

 

まるで雪を滑るかの如く、波に乗るかの如く……もしくはそのどちらでもない……のか? 駄目だ、理解不可能が過ぎる! なんなんだ本当に!?

 

 

回らぬ頭で見たものを無理やり言語化するならば……エンジェルのバッグから現れたミミックが単独、あるいは二体重なった形で飛び出し……雲を勢いよく吐き出している! つまり、ミミックは雲を仕舞えるのか!?

 

 

そして、その吐き出された雲は細い道を象り、当のミミックはその上をついいっと滑っている! それを繰り返す形で接近され、戦っていた仲間連中はやられていく! 後に残るのは細長く尾を引くミミック雲だけに! 

 

 

「に、逃げ……うわっ!?」

「雲が!? 細雲が蠢いて!?」

「視界が! ひっ、身体に巻き…!」

「うわあああっ!!」

 

 

いやそれだけじゃあないのか!? その細雲…ミミック雲は、まるで蛇のように、龍のようにのたうち始めたぞ!? もしや、ミミックが雲を操っているのか!?

 

 

その雲は、雲上を走り接近してくるミミックから逃げようとするパーティーを別方向から包み、妨害し、呑み込んでいく…! 文字通り雲に巻かれたそいつらは……くっ、墜落していく……!

 

 

「ヒントはほんのちょ~っとだけあげてたんじゃけどのう。ま、あんまり教えすぎる訳にはいかんしな~♪」

 

 

ハッと声の方を見ると、上位ミミックは揺り籠雲を箱へと仕舞いこみ、まるで抱きクッションのように腕を乗せ寛いで見せている……! さっきからの雲はそういうことか……わかる訳ないだろう!?

 

 

「くふふっ、種明かしついでに一つ教えとこう。ワシらの潜伏場所潰しのために頑張って雲を払っておったが……あんなこともできるからのぅ?」

 

 

今度はなんだ……!? 示された方を見ると、またエンジェルが矢を放っている。しかしそれは回避しされ、そのまま矢は青空を落ちて……矢からポンッとミミックが出てきた! どうやらミミック入りだったようだ。

 

 

だがそこに広がるは何もない青空。無駄足で……なっ!? ミミックが、突然に小さな雲に包まれた!? 何も隠れられないような、誰もが見逃すような欠片の雲に! 

 

 

まさか自ら雲を出し、そこに隠れたというのか!? 声を失っている内に雲はそのまま流れだし……躱した連中の傍で急に巨大化を! そして――くっ……!

 

 

「あんなのナシだろう!?」

 

「たわけたことを言っている場合か? ほれ、阿鼻叫喚じゃぞ?」

 

 

「た、助けてくれぇ!」

「こ、こんなの聞いてないって!」

「指示をくれ! どうすりゃいいんだ!」

「ぎゃあっ……!」

 

 

……ッ…! そんなのもう見なくてもわかる…! 至る所から悲鳴が聞こえてくるのだから……!

 

 

「う、動け! いつも以上に動き回るんだ! 暫くの間、エンジェルも雲も矢も寄せ付けるな!」

 

 

まずは時間を稼がなければ…! この状況を打開する策を、何か、何か――。

 

 

「そんな暇は与えんぞ☆ そろそろワシも飽いてきたし、参戦するとしよう。雲のマシンで今日も翔ぶのさ~とな♪」

 

 

っ! 上位ミミックが雲揺り籠を、いやそれ以上の雲を取り出した!? それを乗り物のように扱い、何処かへ…! 瞬きする間にエンジェルが幾体か集っている場へと赴き――。

 

 

「準備は良いかの? 摩訶不思議にしゅっぱーつ! じゃ♪」

 

 

エンジェル達を乗せ、えらい速度で雲を動かし出した! あれで一体何を……!

 

 

「そぅれ撃て撃て~い! 撃っちまっくれっ~☆」

 

 

いやいやいや待て待て待てって! 危……危なっ!!? なんだそれは!!? 乗せたエンジェルを砲台にして、空を走りまくっている!? そんなの……そんなのアリか!?

 

 

「速っっや!?」

「無理無理無理無理!」

「捌ききれな……っきゃあああっ!」

 

 

その高機動を活かし、逃げる連中へ容易く追いつき――エンジェルのへなちょこエイムをカバーして攻撃を! って、おいまさかミミック自身も…!?

 

 

「ほぅれほれ☆ 当たったら小さくなってしまうかもなぁ☆」

 

 

「うおおおっ!? なんだそ――ジュッ!?」

「ゲッ!!?」

「ムゥッ…!?」

 

 

いやなんだあれは!? 棘付きの亀!?みたいなのを投げて来ているぞ!? 時折バットで打ち出してもいるが……その攻撃方法はともかくとして――!

 

 

「魔法、使えたのか……!」

 

 

その生成方法は、間違いなく魔法のそれだ! 形はアレだが、魔法弾で間違いない! 魔法への対処ができる時点で怪しかったが……!

 

 

「誰も使えんとは言っておらんぞ? ただお前さん達風情に使う必要なしだっただけのことよ♪ だからほれ、あんなこともな☆」

 

 

こちらに飛んできながら、私達の攻撃を全て弾きながら、上を指さす上位ミミック。上……なっ!?

 

 

「雷ッ!!?」

 

 

「「「「「ぎゃああああっっ!!?」」」」」

 

 

「光る宝箱の雨とは……!」

 

 

「「「「ぐへああっっ!!!?」」」」

 

 

 

いつの間に……いや、私達が戦っている間に、翻弄されている間に着実に準備がなされてきたのだろう。この場の更に上空に、黒く巨大な雲が…! それより降り注いできたのは、明らかに私達へと誘導している雷と、同じく誘導する宝箱の型とサイズの光弾爆撃!?

 

 

待ってくれ、後者は何なん……気にしている場合じゃない! って嘘だろう!? ミミック本体まで振って来たぞ!?!?

 

 

そして更には、各所であの上位ミミックと同じ、エンジェル搭載の雲がビュンビュンと空を翔け巡り始め……さっきまでのミミック入り雲や、飛来する矢ミミック、雲走りミミックが大暴れを!!!

 

 

なんだこのカオスは……なんだこの聖なる雰囲気と真逆レベルの混沌は!? こ、この状況で打てる策なんて……!!

 

 

「一時撤退、撤退だ! 各自、この場から逃げるんだ! 逃げろっっ!!」

 

 

「くっふっふ~☆ ようやく一番良い策に辿り着いたの~う♪」

 

 

散った雲のように逃げ出す私達を、上位ミミックは嘲笑ってくる……くそっ!

 

 

 

まだだ、まだ負けていない…! まだ諦めてたまるか!!

 

 

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