ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~   作:月ノ輪

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人間側 とある陰キャっ娘と偶像⑩終

 

 

嘘ぉ…! ビビットピンクの光に染め上げた会場をバックに、私達のいるステージへ顕現なされたのは――その煌めきでメイクやアクセサリーをキラキラと輝かせ、悪魔羽やシュシュで可愛いらしく纏めた髪をパサリ★と揺らし現れたのは――!

 

 

このコンサートダンジョンの主にして、グリモワルス(魔界大公爵)の御令嬢、アイドルを率いるスター的存在にして、私をスカウトしてくださったあの御方!! 

 

 

「にひひ★じゃじゃーんッ! あーし、乱入~ッ!!!」

 

 

ネルサ・グリモワルス・レオナール様ですぅ!!?

 

 

 

な、なんでこちらに!? 世界中を飛び回られるお忙しい身ですのに…! い、いえ夕方の実践レッスンにまさかの参加をしてくださいましたから、コンサートダンジョンに居られてもおかしくは……って、それ以前に今深夜ですよ!?!? 

 

 

も、もしかして、ステージの無断使用にお気づきになって!? ですけどリダさんオネカさん曰く、周囲にスタッフさんも警備員さんもいなくて誰にも気づかれないはずだと……!?

 

 

あっ…! もしかしてもしかして、夕方の時と同じような形でしょうか!? 既にこっそり居られて見学なさっていて、リダさんオネカさんはそれを知ってて敢えて黙っていて――わわ…!?

 

 

「……まさか、いらしていたとは…!」

「びっくり~…! 全くわからなかった~…!」

 

 

お二方は私を背に隠し、守るように手を添えてくださって!? えっ、えぇっ!? こ、これリダさんオネカさんにとっても不測の事態なんですか!?

 

 

「お、マジ? ヤバ~!オルエさんの幻惑潜伏魔法ガチじゃん★ さす(流石)魔王様としゃちょ~のズッ友★ えっちな目に遭いかけながらも習った甲斐あったわ~★」

 

 

ネルサ様は嬉しそうにうんうんと…! よ、よくわかりませんが……どうやら夕方よりも強い、リダさんオネカさんにすら感知されなくなる魔法をお使いになられてお隠れになっていたみたいです…! 

 

 

「成程、気づけない訳で…! ボク達すっかり、先程お帰りになられたとばかり」

「ね~…! 夜になってから突然いらしてたことにもびっくりしてたのに~…!」

 

「それな★ そんがさ~なんでかスタッフのみんな、えっらい残業するんよ! アツいのはバリ(うれ)なんだけど、身体壊して欲しくないもん★だからたま~に『抜き打ち帰れ~それか眠れ~!』してるんだ★」

 

 

そんなことをしてらっしゃったんですね…! ……あっ! そういえばリダさんオネカさんに見つかる直前のスタッフさん達、誰か偉い方がいらっしゃったみたいなことをお話してました! あれ、ネルサ様のことだったんですね……!

 

 

「そんで一段落してあーしも帰ろ★って思ったら、な~~んかミミックちゃん達のライブ準備感ある動き見つけちって★ こんな時間からオモシロそって~★こっそり追っかけしてみちった♪」

 

 

てへっ★と可愛らしいウインクと、こっそり&許してを合わせるように指を一本唇の傍に立てるネルサ様……! 会場設営をしてくださっていたミミックさんを逆に察知なされていたみたいで――え。じゃ、じゃあまさか――!

 

 

「もしかしてネルっさん……」

「最初から見ていて~…!?」 

 

「にっひっひ~★ 不意打ち、大成功ぉ~!!! いぇいっ★」

 

 

ネルサ様、ブイッと両手ピースで決めポーズをなさって……! 最初から…見られていたんですか…!? このステージを…私達の勝手な行動を……あっ! リダさんオネカさん、頭を深々と下げて!! わ、私も!

 

 

「ネルサ様、ステージの無断使用の件、弁解の余地もありません」

「全部うちとリダが勝手にやったこと~。皆やベルちゃんは――」

 

「ちょちょちょ!? 待って待って待って! あーし怒ってないし!?」

 

 

え…? 私も続いて謝ろうとしましたら、ネルサ様は慌てたように止めてくださって? そして合点がいったというように頷かれて。

 

 

「は~どーりでなんかギクシャクしてっと思った★それ気にしてたんか~★ ん~…あ。ちょっちだけ待ってね~★えっと~あっすん(アスト)式にやったら~♪ちょいちょいっと~完成♪」

 

 

空中に魔法陣を出し、数秒操作するネルサ様。そして完成の一言と共にその魔法陣はスウッと私達の前に……えっ、乗っかってるのって…!

 

 

「「「会場使用申請書…!」」」

 

 

そう書いてある紙が、魔法の羽ペンと共に! しかも、既に申請許可のサインが…ネルサ様のサインが書かれてます!?

 

 

「これでオールオッケーっしょ★ サインおね~★」

 

 

ネルサ様ぁ…!! お気遣いもフットワークも神がかってます! 許してくださって有難うございます! リダさんオネカさんも私と一緒にお礼を言って、早速連名でサインを……――っ!

 

 

「あ、あの! ネルサ様! わ、私も署名しても宜しいでしょうか!」

 

「もちもち! 書いたれ書いたれ~★」

 

「ベル? ボク達だけで――ううん、フフ…!有難う!」

「やっぱりベルちゃんは~優しくて強い素敵な子ね~♪」

 

 

ぁぅ…! お二方にはお見通しみたいです…! 私を招き入れるように隙間を作って、ペンを持たせてくださって、そっと肩を抱いてくださって……!

 

 

その……これは、せめてもの責任を果たすためと言いますか…! お二方だけに重しを押し付けないための、私も一緒に並び立つための意思表示なんです…!

 

 

元々このライブは私の弱さに端を発するもの、本来は私が全ての責任を被るべきなんです。それが当然ですし幸せをくださったお二方への恩返しですし……もしリダさんオネカさんが叱られるなら、私が前に跳び出す覚悟がありました。

 

 

本当有難いことに、ネルサ様の温情でその結末にはなりませんでしたが……せめて、その証明代わりに。私のサインを、ここに残させてください――!

 

 

「書き終わりました!」

 

「オッケー★ ん~♡仲良しサイン激カワ★ ほんであーしの名の元に、受理★」

 

 

また魔法陣がスウッと、魔法の羽ペンはパタパタと、ネルサ様の元へと戻ってゆき光って消えました。多分これでもう安心です。するとネルサ様は待ちに待った駄弁りタイムと言うように、にっひっひ★と楽しそうに微笑まれて。

 

 

「や~!あーしも超ビックリ★ ゲリラミミックライブかなって来たら、まさかべるるんまでいるなんて! てかべるるんがメインだし★」

 

 

あ、お忍び冒険バレ用に深夜外出許可っとこ★ と、ネルサ様はまた書類を即座に作って、今度は私の鞄の方へとパスを!? それを護衛ミミックさん方はキャッチして鞄に仕舞ってくださって……! は、早業です…!! 

 

 

そんな護衛ミミックさんへナイスキャッチ★と空ハイタッチをして。改めてネルサ様はこちらへ……ふぇっ!? 目をキラッキラに思い出し興奮をなされてます!?

 

 

「そんでさ★そんでさ! りーだんおねかん二人の時でも激ヤバに凄かったのに、三人の時とかマジ最高だったんだけど!!!!!」

 

 

そしてすっごい唸られてます!?!? あ、あの!? ネルサ様にそこまで褒めて頂けるなんて――。

 

 

「一曲一曲ブチ上がって、もう三人の息の合い方とか目だけのやりとりとか信頼超絶MAXなのが超★超★超★メロくてっ! キュンキュンゾクゾクしちゃって隠れてるの忘れるぐらいヤバくてさ~!! はーっ…♡マジでスゴ魔法なかったら即バレ確定だったし~♡♡♡」

 

 

ど、どんどん感想が積み上がっていきます!?!? あ、あの、あの!!!? そ、そんなに悶えるぐらいに感動なされるなんて――!?

 

 

「っとっと★危な危な、無限に話したいの我慢せんと★また今度と★ こんまま駄弁ってたら朝早スタッフ来ちゃうし、そしたらお忍びバレちゃうし★」

 

 

急にブレーキをかけ落ち着いた…でもハイテンションなのは変わりないネルサ様は、そのまま軽く踊るようにステップを踏んで――。

 

 

「ちゅーことで~? あーしがいっちゃん話したいこと、いっちゃお~★」

 

 

 

最後に観客全員に、ダンサーやスタッフ全員に、私達に宣言するようにクルッと一回転なされて決めポーズを! 一番話したいこと、ですか?

 

 

「でもまずは、さいしゅうかくに~ん★」

 

 

わっ…! ポーズを決めたまま、両手指でフレームを作って私達を見て…っ!?片目が…光って……! 比喩じゃなく、光って! それは何らかの能力をお使いになられているようで――まさか…!?

 

 

「にひひ★うんうん、あーしの見立て通り! って、あんな最強ライブ見たら確認する必要ないっつ~の★」

 

 

指フレームから指ハートへと切り替えながらそう呟かれるネルサ様。眼の光もすぐに戻り、満面の笑みでこちらへ歩を進め――リダさんオネカさんの手を取って!

 

 

 

 

「ね、りーだん、おねかん★  ――アイドルに興味ない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ッ!!!!!」」」

 

 

そ、それって……それって――!! 私達は揃って息を呑むしかなくて……でも軽やかに流れるBGMが思考停止を許してくれなくて! 

 

 

だってネルサ様はそういう嘘をつく方じゃありませんし、この雰囲気……あの時と一緒なんです…!! 私をスカウトした時と、一緒なんです!!

 

 

「ネルっさん、本気で言っているのかい…?」

「うち達、ミミックよ~? 模倣魔物よ~?」

 

 

衝撃から一足早く抜け出したリダさんオネカさんは、自分の呼吸を整えるように問い返します。するとネルサ様は『あーしの本気度、見抜いてる癖に~★』と言うようにケラケラとテンション高く。

 

 

しゃちょ~(ミミックアイドル)は大ウケだったっしょ? いけるいける! あーしの太鼓判★」

 

 

その言葉には、ポーズを決めるネルサ様の御姿には、絶対の自信が満ち溢れていて…! それは自分自身へのだけではなく、私達への信頼や確信によって象られて――へ、『私』達…?

 

 

「ぶっちゃけ前から二人には目ぇつけてたんよね~★でもどんなデビューが良いかはぼんやりだったし、そも今充実してたりとかでスカウト不発りそうだったし~」

 

 

そう胸の内を明かしてくださるネルサ様。と、そこで言葉を一旦切り――今度は確実に、私へ熱い視線を向けてきて!?

 

 

「けれどさ★けれどさっ♪今べるるんとアイドルしてんの見て、もうピッッッキーン来て★これもうワックワク収まんなくて、不発っても突撃せんと★って!! にひひ★だからさ――」

 

 

興奮したように改めてリダさんオネカさんの手を取って。それを一つにして…そこに私の手も乗せて加えて!? 三人重なった手をサンドするようにぎゅっとしながら、ネルサ様はもう一度、あの雰囲気でっ!

 

 

「べるるんと一緒にアイドルやらない? 相性バツグンなのはあーしと、あーしの魔眼がガチのマジで保証したるから――★」

 

 

 

「――わ、私からもお願いします!」

 

 

 

 

 

 

あっ……!!! わ、私、つい叫んで……! ほぼ無意識で、ネルサ様のお話に割り込むような真似をしてしまって……ど、どうかお許しを……! 

 

 

「おぉっ! 言お言おべるるん★」

 

 

ね、ネルサ様…? 怒るどころかとっても嬉しそうにウインクをしてくださって、サンドしてくださっていた手を離しちょいちょいと手招きを――……っ! はい! 失礼します!

 

 

「わっ、ベル!?」

「ベルちゃん~!?」

 

 

リダさんオネカさんの間から転がり出るように抜け、お二方の正面へ、ネルサ様を背光とするように。けれど重ねた手は極力離さず動かさずに、更にもう片手でお二方の手を私がサンドして!!

 

 

「リダさん、オネカさん! 私からも、どうか……! 私、お二方と一緒にアイドルをしたいんです!」

 

 

そうです…今こそ伝える時なんです! さっきまではこのことを直接伝えられませんでした。お二方の事情やお誘いの不確実さを鑑みて、あと一歩が踏み出せなかったんです。

 

 

けれど今! 今はもう、違うんです!! あのネルサ様の後ろ盾を頂いた今、逃げる理由なんて…踏み出さない理由なんて、もう一つもないんですからっ!!! 

 

 

今こそ、進むだけなんです! 祈るのも後悔するのも自分を嫌になるのも、この先どうなるかも今は忘れて! 今やりたいことを、やらなきゃいけないことを、成し遂げるんですっ!!!

 

 

大丈夫です、あのネルサ様ですら不発を、失敗を恐れずにやりたいことをしているんです。だから先走って叫んでしまっても、お招きに増長してネルサ様の前に出てしまっても……あっ……!

 

 

「ご、ごめんなさい今どきま……えっ」

 

 

自分のやらかしに、ネルサ様の壁になっていることに今更気づきズレようとしたのですけど……ネルサ様は私の両肩へ腕を掛けて…!? ハッと振り向くと、輝く微笑みで『あーしがいるから全部話しちゃえ★』と包んで……っ有難うございます!

 

 

深呼吸をし、リダさんオネカさんへと向き直ります。ふと視界の端に入るのは、大画面に映し出される私の姿。撮影ミミックさんが回り込んでくださったのでしょう。それは沢山の観客が、ネルサ様が、背を押してくださるようで――。

 

 

 

「――このライブ、本当に宝箱だったんです。お二方に連れられてきた時は未知の中身にドキドキして、ちょっと怖くて。私じゃ蓋を開けることも怯えてできなくて、皆さんに助けられてようやく恐々手を伸ばして」

 

 

 

まだドクドク鳴っている、けれどどこか落ち着いた心のままに、さっき言い出せなかった感想をもう一度紡いで。あの時の一秒一秒を手繰り、感じた不安を全て籠めて……感じた幸せを全て籠めて!

 

 

「そうして開いたら、中身は宝物がいっぱいで、キラキラが山盛りで! ピカピカに目を奪われて、今度は自分から手を伸ばして触れて。そうしたら、ふふっ……!お二方にパクッてされてしまって……♪」

 

 

本当、食べられてしまったんです…♪ミミックさんに、お二方に、私の殻は剥かれて、煤は拭いとられて、裸にされて、そのままするするしゅるしゅると絡めとられちゃったんです……♪ そうしたら……!

 

 

「私、またお二方の虜になってしまったんです。眩しくてアイドルなお二方と歌った歌は、独りで歌うどんな歌よりも何倍も何倍も楽しくて、私も光を放つことができた気がして。なのに重圧はなくて、同族と歌えた安心感に満たされていて!」

 

「それはボク達もだよ、ベル! キミは眩しくて、アイドルで!」

「どんな歌よりも一緒が楽しくて、輝けて、心地よかったのよ~!」

 

 

わっ…! お二方が耐え切れなくなったようにたまらなくなったように返してくださって…! けれど……ごめんなさい♪ その言葉が聞きたかったんです!

 

 

「ふふふっ、相思相愛ですね♪」

 

「「!」」

 

 

お二方の手を挟んだまま、更にぎゅうっと撫で擦ります。さっき私を挟んでくださったように、宝箱の中へ大切に仕舞ってくださったように。――うん、今なら、言えます。

 

 

「甘えることを、頼ることを許してください。そんな私だから、一緒ならお二方の魅力を存分に煌めかせられるんです。そんなお二方だから、一緒なら私も輝けるんです!」

 

 

自意識過剰なのも、他人任せ過ぎるのも百も承知です。けれど、けれど! 愛を籠めたお二方の手を、今度は私の手それぞれと絡ませ、深く繋いで。

 

 

「ですから、改めてお願いしたいんです。リダさん、オネカさん!」

 

 

もう一度、深く息を吸って。肩のネルサ様から、皆さんの金言から、手を繋いだお二方から、勇気を貰って――!

 

 

 

 

「私と一緒に、飛び出しませんかっ!!!!!」

 

 

 

 

い、い、言ってしまいました……とうとう、言ってしまいましたぁっ……!! 観客の、ミミックさん方の万雷の歓声にハッとなって、リダさんオネカさんの惚けるようなお顔に気づいて……!

 

 

「え、えとあの、その……。お、お仕事が天職なのは勿論知ってますから……ご、ご一考だけでも……」

 

「――そうだね。確かにボク達には警備の仕事がある」

「社長みたいにアイドルと仕事の両立は流石に無理ね~」

 

 

ぁぅ……! 深い一呼吸を置き、お二方はそう呟かれます……。で、ですよね…あのミミン様アスト様さえもお仕事優先でアイドルをやられる頻度は少ないんです。

 

 

つまりは私今、お二方に警備のお仕事かアイドルかどちらかを選ぶよう迫っている訳で…! でも、ミミックさんの生き方に完璧に沿ったお仕事を蹴るなんて――。

 

 

「けれどね、ベル。社長はこうも言ってたんだ。ボク達の最大の目的は仕事じゃなく、『終の棲み処を見つけること』だってね」

 

 

へ…? 棲み処を…見つけること……? それってつまり、ダンジョンってこと…ですよね……? で、でも終って…!?

 

 

「いつまでも心地よく過ごせるダンジョンってことよ~。だからね~そのためならお仕事、辞めちゃっても良いのよ~♪」

 

 

い、良いんですか!? 目を丸くする私に、お二方は微笑んで……!

 

 

「自由にしていいんだ。ここを終の棲み処と定めたのなら、会社を辞して所属を改めても良い。万が一ここが合わなかったり無くなることがあったら――」

 

「社長のとこに戻って良いって言われてるし~なんなら自分で探せばいいのよ~。うち達、それが出来るぐらいに腕も性格も鍛えて貰ったんだから~!」

 

 

おおお~!そうなんですね! 確かにお二方なら、どこに行かれても何をされるにしても――へ…? え…!?

 

 

それってつまり……警備のお仕事は辞めても支障がない、ということでは…!? それに気づいた私へ、お二方は照れたように、暴走しかける高鳴りをようやく御したように、その胸を明かして…!

 

 

「ボク達、アイドルになるなんて考えたことは無かったんだ。想像すらしてなかったんだよ。でもね……今日皆に、ベルに勧められて心が躍ってしまったんだ。良いかも、ってね」

 

「けど~それは夢のある話ってだけで、本気にはしてなかったのよ~。ううん~…今のお仕事と天秤にかけるリスクが怖くて、皆みたいに輝けるか不安で、一歩踏み出せなくて~」

 

 

っ! それって……私と……!? 少し熱の籠った繋いだままの手は『そう、そこまで同じだったんだ』と告白していて、私から勇気を貰うようで……!

 

 

「そうしたら…フフッ…!ベルとの逢瀬を経て、本気で思ってしまったんだ」

「うち達もベルちゃんと一緒なら、絶対楽しくアイドルやれるかもって~!」

 

 

リダさん、オネカさん……っ! いつものような格好良くて暖かくて美しいお顔は、いつも以上に輝いていて! それはまるで全ての宝を差し出す宝箱みたいで!

 

 

「なのにベルから言わせてしまうなんて、一生の不覚だね」

「断る選択肢なんて、無いに決まってるじゃない~♡」

 

 

はわぁ……! 今度はお二方が、両手で私のそれぞれの手を包んできて…! 宝物のように扱ってくださるそれは、誓いの儀式にも見えて――!

 

 

「ボク達は今ここに宣言しよう。警備の仕事を辞し――」

「ベルちゃんとアイドルをやるために、邁進しちゃう~!」

 

 

叙勲を受けるように、神託を下すように、リダさんオネカさんは! ほ、本当ですか…!? 本気にしてしまっていんですか!?

 

 

「寧ろ、本気かい? ボク達はダンジョンからそう長くは離れられない魔物だよ」

「うち達と組むと、色々と迷惑かかるかも~。それでも、本当にいいの~……?」

 

「はい! お二方と一緒なら、どこでも、いつまでも!!!」

 

 

互いに決意を自分を露わにして、手を瞳を繋ぎ合って。思わず笑い合ってしまって、せーので♪

 

 

 

 

「「「一緒に、飛び出そう☆♡♪」」」

 

 

 

 

 

 

 

ふふっ……ふふふふっ! 言ってしまいました、とうとう言ってしまいました♪ 究極な緊張の一瞬だったはずなのに、なんだか軽やかに、楽しく、アイドル宣言を――ふにゃぅあっ!?

 

 

「ね、ネルサ様ぁ!? ちょ、ちょっと苦し……!」

 

 

ずっと後ろにいてくださったネルサ様が、私を羽交い締めする勢いでのハグを!? ひゃわわっ!? すりすりぐりぐりうりうりまで!?!?

 

 

「べるるん~っ! よく言ったぁ~っ★★★ あーし感動でぇ…ぐずぅっ……!」

 

 

ちょっ!? えっ!? ね、ネルサ様、泣いて!!?? え、えと!?!? 私なすすべもなくぎゅううっとされるしかなくて……!!!

 

 

「ふは~っ!ヤバヤバ、ハグのメインはあーしじゃないっつの★べるるん最高★」

 

 

わっ…! 一旦終わりとポンポン優しいハグをされて、そっとリダさんオネカさんの方へと促されて…! そうしたらお二方は私の居場所はここと真ん中を開けてくださって…はひゃわわっ!? こちらもハグを!!

 

 

「ん~~~ッ★★★完ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ璧★ ヤッッバぁ…ちょっと動悸がハンパないんすけど……! ムリムリこんなん尊過ぎてメロ過ぎて頭クラっちゃう…! ちょい最強エモすぎしょこのシチュ、鬼お気に確定★ え、あーしここ居ていいん? マジ役得★ハピ獲得★」

 

 

わわわわ…!? 三人並んだ私達を全方向から見て撮るようにネルサ様は動き回られて……! この全力ハイテンション、シレラさん達のユニット結成を発表した時に勝るとも劣らなくて!

 

 

それを見ていたら私達も心が弾んで…! ネルサ様や撮影ミミックさん、ダンサーミミックさんや護衛ミミックさんのコールに合わせて三人でポーズを決めて♪ 

 

 

「ネルっさん。改めて、アイドルスカウトを受けさせてもらうよ☆」

「これからよろしくお願いね~エグゼクティブプロデューサー~♡」

 

「こちらこそヨロ&サンキュ★ にひひ~また楽しくなるわ~♪ 寮入るっしょ? べるるんも一緒が良いっしょ~?」

 

「はい! 是非! ふふふっ♪ とっても楽しみです!!」

 

 

撮影会が落ち着き、皆でこれからの話を。お二方と一緒に寮に住んで、一緒にレッスンをして、一緒に――ふふ…ふふふふっ…! 考えただけで夢のようです♪

 

 

「でも、まずは準備しないとね。警備の仕事に穴を開ける訳にはいかないさ」

「まずは社長に伝えて~うち達の代わりの子を追加派遣して貰わなきゃね~」

 

 

あっ、そうですよね。それが一番初めにやるべきことで――。

 

 

「にひ★しゃちょ~にはもう話通しちった! 明日には派遣してくれるって★」

 

 

「「「えっ!!!?」」」

 

 

なんかサラッと仰いましたネルサ様!?!? えっ、あ、あの!?!?

 

 

「会議後にしゃちょ~とあっすんのとこに飛び込んじった★ そんでりーだんおねかんをアイドルにしたい~ってお願いしたら、なんと★即おけ貰っちゃった♪」

 

 

え、え、え!?!? な、なんで、なんでですか!? なんでそんな予知のようなことを!? もしかしてそれもグリモワルスのお力とか、魔眼のお力とかで…!?

 

 

「にっひっひ★実はね~今日の会議で、べるるんの話になってさ★ 更に実はね、あーし前から三人のユニット良いなって思ってたんよ★ だから~――」

 

「皆さんに私のメンタルケアをお願いして、段取りをつけに…!?」

 

「のわっ!? なんでそれ知ってるん!? あ★誰かPちゃんから聞いた?」

 

 

派手に驚くネルサ様…! ご、ゴミ箱の中から盗み聞きしていたとはいえないんですけど……。で、でもあの時のお話、そういうことだったんですね…! あの鶴の一声って、私のチームメイトにバッチリな方々って、リダさんオネカさんのことだったんですね!

 

 

って、あ…あぁ…あああっ! い、今更ですが……あの変わったプロデューサーさんが欲全開に挙げていた条件に、妄想とまで仰っていたメンバーの条件に、リダさんオネカさんは全部当てはまっています!!

 

 

リーダーのように引っ張り、お姉さんやお母さんのように支え、私と顔見知り且つ、今アイドル志望とかじゃ全然ない完全新規の子――。それはまさにお二方のことで……それを聞いたあの瞬間、私の頭に微かによぎった方々で、そんな方々はそれこそ私なんかを気にせずアイドルデビューなさるべきで……。

 

 

「ベル☆」

「ベ~ルちゃん♡」

 

 

私…なんかを……いいえ。もうそんなことは言いません。私はあのプロデューサーさんがおっしゃったように、メインになります。引き受けさせていただきます。

 

 

そうして、リダさんオネカさんを引き立て役やおまけになんてすることなく、全員でユニットの顔になって……輝くアイドルになってみせますッ!!!

 

 

「おおー!べるるんったらやる気MAXで良き良き★や~あーし感動止まんな~! だって、さあいざっ!て思ったら、既にこんな立派にアイドルってんだもん♪ もうこれ運命っしょ★」

 

 

私の盗み聞きの件を詳しく聞くことなく、ネルサ様はまた身をビリビリゾクゾクと…! その興奮のまま、エグゼクティブプロデューサーとして。

 

 

「言うて引き継ぎあるし、二人はとりまそっちに集中してもろて★んで終わったら、べるるんからたっぷりアイドルを教わってさ★ にひひ★ピッタリバッチリのPちゃんにもアテがあるかんね~★」

 

 

ピッタリなプロデューサーさん…! もしかしてあの方だったり……そうだったらヘンテコ同士気が合うかも……んっ!?

 

 

「わ、私がお二方に、アイドルを教え…!?」

 

「宜しく頼むよ、先輩☆」

「ベルちゃんせんぱ~い♡」

 

 

ひゃっ!? こ、ここぞとばかりにまたリダさんオネカさんは…! そ、それは私が教えるよりもトレーナーさんとか他の方々の方が……――。

 

 

「ボク達はキミから教わりたいんだ。駄目かな、愛しのベル先輩?」

「アイドルが大好きでうち達が大好きなベルちゃんから、ね~♪」

 

「が、頑張りましゅっ!!」

 

 

ぁぁぅ…! 勢いあまって噛んでしまいましたぁ…! だって、また耳元で囁くんですものお二方共ぉ……! と、そんな私達をニコニコ見ていたネルサ様が、絶妙なタイミングでお話の最後の要と言うように。

 

 

「そんでさ★ 三人のデビューの方向性も、あーし考えてみてるんだ~★」

 

 

デビューの…! つまり、売り出し方の…! わちゃわちゃしていた私達は一斉にネルサエグゼクティブプロデューサーのお考えに傾聴して――!

 

 

「『M(ミミン)A(アスト)』の姉妹ユニットとか、どおどお~? ピッタリっしょ★」

 

 

え……えっ……えええええええっっっ!?!?!?!?

 

 

「い、良いんですか!? そ、それ、良いんですか!?!?」

 

「良過ぎてそれしか勝たん的な★ 三人さえ良ければ、それで行ってみよ~★」

 

 

私がこの道に進むきっかけとなったあのM&Aと姉妹だなんて……夢でも、こんなことは……!! お、お二方は……!?

 

 

「ボク達が……社長達の姉妹ユニット……! あの二人と…!」

「社長とアストちゃんみたいなこと、して良いの~…!?」

 

 

私と…同じです! ううん、もしかしたら私よりも歓喜に震えているかもしれません…! だってお二方にとってミミン様はカリスマで、アスト様はそのカリスマを常に補佐する懐刀で、私もその関係が大好きで――!

 

 

「こりゃ~もうブッ刺さりぢゃん★ 仮飛ばして本決定でも良きな感じ★」

 

 

カラカラ笑うネルサ様…! そして親指を立てた両人差し指を、ピシッと私達へ向けて!

 

 

「つ~ことで三人共! ユニット名、おね~★」

 

「「「はいっ!」」」

 

 

な、なににしましょう!? ここはシレラさん達にも相談すべきでしょうか…!? そ、その前にまずはどういう系が良いかを吟味しませんと…!

 

 

えっと…! M&Aの、ミミン&アストの姉妹ユニットなんですから、それに準ずる名前が絶対条件で…! それでいて私達らしい想いを籠めた名称を――。

 

 

「あ☆ねえ、ベル、オネカ。ボク、一つ思いついたのだけど…!」

「どんなのですか? ふんふん…おおお~ッ!! すっごく良いです!!」

「この並び順なのも素敵だし~姉妹っぽいし~暗な意味も良い感じね~♪」

 

 

こっそり話し合い、三人で頷き合って、満場一致で!

 

 

「ネルサ様! 決めました!!」

 

「わおっ!? はんや~★速攻すぎっしょ★ とりま聞かせて聞かせて~い★」

 

 

ビックリなされてワクワクなされて耳を向けてくださるネルサ様! 私達はここでも一緒に、せーので♪

 

 

「ボク達は――――!」

「私達は――――!」

「うち達は~―――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――これがあの日の…私達がアイドルになれた日の出来事なんです……! な、長々と失礼しました……!」

 

 

全部、話してしまいました…! 座りながらペコリと頭を下げ締めとしますと、皆さんの拍手が…!

 

 

「ハハッ、懐かしいね☆」

「運命の一日よね~♪」

 

 

私と椅子を並べてくださっているのは、宝箱ごと座るリダさんとオネカさん! そんな私達の向いには。

 

 

「にひひ★ ほんとに大冒険してたなんて、べるるん激ツヨじゃ~ん★」

 

 

()()()()()! あはは…実はこのお話、ネルっさんにすら話していなかったんです。隠そうとしていた訳じゃなかったんですが話す機会がなくて、今こうしてようやく。ですから……!

 

 

「はー! あの日にそんなことがあったなんてねぇ。どーりで!」

「次の日からのベルちゃん、なんだか雰囲気変わったものね♡」

 

 

ネルっさんの横に座る『waRos(ウォーソ)』のお二方、リア()()とサラ()()は、腕を組み感心したように頬に手を当て納得するように。

 

 

「だからあの朝、お菓子持って待っていてくれていたのね!」

「へへ~! 起きたら部屋の前にいてビックリしちゃった!」

「朝ごはんデザートに分けあったん、美味しかったな~♪」

 

 

そしてそんなお二方と私に挟まれる形で座る『TRYstar(トライスター)-Cinderella(シンデレラ)s』――そう、シレラ()()()、ニュカ()()()、ルキ()()()も、あの時を馳せてくださって!

 

 

あははは……あのライブの後、リダさんオネカさんと護衛ミミックさんに寮へ帰していただいたんですが、寝付けなくて。なのに夢を見ているような気分で、色々な思いが…弾む思いが溢れて来て、居ても立ってもいられなくて。

 

 

ですから、ついシレラちゃん達を出待ちするような真似をして、分けていただいた差し入れお菓子をお返ししたんです。今思えばその時に事情を話すべきでしたが……許可を頂いたとはいえ悪い事でしたし、それこそ夢を見ていたかもって思いもありましたし……!

 

 

「けれど夢じゃなかった。いいえ、あなたは夢を掴んだ。この子達と一緒にね」

「ふふ、改めておめでとうございます、ベルちゃん、リダさん、オネカさん!」

 

 

っ! そう心を読んでくださるのはリダさんオネカさんに並ぶ宝箱の三つ目の、ミミン()()! そしてミミンさんとネルっさんを繋ぎ祝福をくださったのは、アスト()()! はい、『M(ミミン)A(アスト)』です!

 

 

皆さんはそれぞれ華やかな衣装に身を包み、私達と膝を突き合わせるほどに輪を作ってくださって! あ、いえ……華やかな衣装に身を包んでいるのは……信じられないことに、私達もなんですが……! 

 

 

すぅ……ふはあぁ……はひゅぅ……。ミミンさんの仰った通り、私は…私達は夢を掴んだのかもしれません。このふわふわな夢心地が、今は逆にその証明になっている気がします。私達、今から――。

 

 

 

「デビューライブ……なんですよね……!」

 

 

 

 

 

 

そうなんです…! ここはコンサートエリア、控室の一つ。もう少ししたらすぐ横の会場で、私達のデビューライブが始まってしまうんですっ!

 

 

その待ち時間が、なんだか永遠のように感じて……いえ普通に入りを早くしすぎた気もするんですけど……! ドキドキで落ち着けなかった私達の部屋に皆さんが集まってくださって、時間潰しと緊張解しのためにお喋りがはじまって、流れであの日のお話をすることに……!

 

 

あの日から、あっという間にこの日が。本当、未だに信じられません。デビューライブが決まった時、ほっぺた、いくら抓ったことでしょう。どれだけ叩いたことでしょう。それこそあの日以来の頬叩きでした。またオネカさんに止められてお薬を塗っていただきましたし。

 

 

けどそれでもずっと妄想を疑っていて、ずっと身体がこの調子で、レッスンもリハーサルもやり通した今でも……! ……もう一度、頬を…!

 

 

「あ、またやってる」

「ムニムニ~!」

「ほどほどにね~」

 

 

メイクも済んでますし、もうリダさんオネカさんや皆さんに心配かけたくないですから、頬を叩く代わりにむにむにと触ってみて。やっぱり感覚はあります。現実なんですよね、これ……。

 

 

「現実に決まってるじゃない! ほら、アタシ達を見回してみなさいな!」

「ベルちゃんのデビューを手助けするキラッキラなアイドル、勢揃いでしょう♡」

 

 

と、リアさんサラさんが促してくださって……皆さんが軽くポーズをとって! はわぁ…!まるであの時みたいです! 現実……で良いんでしょうかこの光景!?

 

 

「けど、運命感じますね♪ あの日と同じく、私達とwaRosがなんて」

「ほんとそれな~! OA(前座)選びのくじ倍率えぐかったのに」

「皆やりたがってたもんね! 全員でやれたら良かったのにな~!」

 

「にっひっひ★わっかるぅ★ でもそれはマジなフェスのとっておき~★」

 

 

そう惚けていますと、シレラちゃんルキちゃんニュカちゃんとネルっさんが。あはは…あれは驚きでした。デビューの際は必ずネルっさんとどなたか現役アイドルがライブの付き添い&盛り立てをしてくださるのがここの習わしなんですが……。

 

 

まさか、その付き添い役に寮の皆さんが一人残らず立候補してくださるなんて! 多すぎればもはやフェスになってしまいますし、ユニットの姉としてM&Aが出演確定していましたので、精々が残り二枠。くじで決めることとなって、その結果がこの皆さんなんです。

 

 

ネルっさん&今をときめくアイドル三組がご一緒してくださるなんて、正直私なんかには畏れ多いです……! だって私達、シレラちゃん達の次に結成が決まりましたのに、デビューは一番最後で。私が足を引っ張ってしまったからお二人には――。

 

 

「いいや。ボク達がアイドルの習得に手間取ったからだよ」

「社長のスパルタ訓練とは違う難しさがあったものね~」

 

「っそんな!! お二人はあの日からもうアイドルで――あ……。有難うございます…!」

 

 

つい今までみたいなマイナス思考に陥るところでした…。リダさんオネカさんはそんな私の心を察し、自分へ向けることで気づかせてくださったんです。この御配慮に今日まで何度救われたことか……!

 

 

変わらなきゃいけないとは常々思っているんです。けれど、どう頑張ってもこの悪い癖は残ってしまって……。もっとお二人みたいな、完璧な陽への変貌を……あっ、そうです!

 

 

「あ、あの! ミミンさん!」

 

「は~い! どうしたのベルちゃん?」

 

「ミミンさんの訓練って……性格変える訓練って、私も参加できますか…!?」

 

「「「ッ!?」」」

 

 

リダさんオネカさんはミミンさんの元で性格を明るくしたと仰っていました。なら、私もそれに倣えば、きっと! ライブ前にお尋ねする内容ではないですが……あの日のことをお話した今が絶好の機会で!

 

 

「あら! 興味があるのね? フフフ……厳しいわよぉ?」

 

「が、頑張りますっ!!!」

 

 

キランと輝いたようなミミン様の瞳にゾクッとさせられちゃいましたけど……どれほど辛くても、リダさんオネカさんみたいになれるなら…! 私、逃げずに――!

 

 

「待ってベル!! っっっぇっと、ちょっとやめておいた方が良いかな!!」

「効果はあるんだけど~…その~言葉にしたくないぐらいスパルタなのよ~…!」

 

 

ふぇっ!? リダさん、私を引き留めるように触手で手をぐるぐる巻きにしてきて!? オネカさん、私の盾になるようにミミンさんを触手で隠して!? 

 

 

更には箱を出来るだけ椅子からせりださせて、ディフェンスするように!? っわ、お二人共総毛立ってませんか!? え、え、え!?そ、そんなにとんでもない訓練なんですか…!?

 

 

「ベルちゃん、私もあまりお勧めは…。社長の訓練は総じて、えぇと……外部の子向けではなくて……。覚悟は素敵なのだけれど……」

 

 

あ、アストさんまで言葉を濁しに濁して!!? あのミミンさんの最高の相棒であるアストさんですらこうなんですか!? っぅ……ちょ、ちょっと鳥肌が……け、けれど私を変えるチャンスで――!

 

 

「ま、あなたにはもう必要ないと思うわよ」

 

 

……へ? ミミンさん、オネカさんの触手を軽く押し戻しつつ、ゆったりと微笑まれて……。で、でも……!

 

 

「私、まだ卑屈で――」

 

「別にそれぐらいなら良いんじゃないかしら。それもあなたの魅力よ」

 

 

食い下がる私をミミンさんは軽く受け流して……って、魅力、ですか? 首を傾げてしまうと、ミミンさんはその幼い容姿からまさしく社長な貫禄を醸し出されて…!

 

 

「私達ミミックって臆病だからこそ、感覚が鋭敏で相手の隙を見抜けるのよ。だから私は、臆病の中の引っ込み思案だけなくなるような『レッスン』をしているの」

 

 

私を一員にしてくださりつつ、そう解説してくださる社長…! そして貫禄そのまま、今度は見た目通りの可愛いウインクを!

 

 

「私が見るに、あなたの臆病も卑屈ももうアピールポイントへと昇華しているわ。他人想いだったり怖がりだったり考えてることが読みやすかったりびっくりしがちとか、可愛いものにね。しかも、こんな短期間で!」

 

 

リダとオネカだってびっくりさせたら可愛い反応するでしょう?と、悪戯っぽく。それは、ふふ…はい…! ――ん? へっ……!? 

 

 

「わ、私……考えてること、読みやすいんですか…!?」

 

「あれ、言われて初めて気づいたの? 黙ってた方が良かった~?」

 

 

クスクス笑うミミンさん…! ハッと気づき皆さんを見回してみますと……揃って同じような笑顔をお浮かべになっていて!? そ、そんな可愛いものを眺めるような目で見ないでくださいぃ…!!

 

 

だ、だからなんですね…。思い返してみればあの日もあれ以降も今も、リア様やシレラちゃん達を始めとした皆さんがミミックさんじゃないのに心を読んできてて…! てっきりアイドルの能力だと…いえ実際それもあるんでしょうけど……あぅぅぅう……!

 

 

「フフッ。良いのよ、ベルちゃんはそのままで。いいえ、くれぐれもそのままでいてちょうだいな。おべっか使うようになっちゃ嫌だし、その純粋無垢さに癒されてるのよ?」

 

 

っ! ミミンさんそれ…あの日の、リアさんの…! 私の性格を褒めてくださった、あの時の…! じゃ、じゃあ……私の臆病も、卑屈も――……!

 

 

「そうよ! 今やあなた自身はおろか、脱いだ殻も煤も、強く美しい輝きを放っているわ! まるで宝の山の中から飛び出して無双するミミックのようね!」

 

 

そ、そんな…! ミミンさんから、数多のミミックを鍛えてきた社長から、そんな高評価を頂いて良いんですか!? 驚きと喜びで目を輝かせる私へ、ミミンさんはリダさんオネカさんと共に強く肯いて、認めてくださって!

 

 

更にそれに続くように、リアさんサラさんが勇気を掲げなさいと、シレラちゃんニュカちゃんルキちゃんがその輝きで一緒に頑張ろうと、ネルっさんアストさんが私ならできると、期待と確信に満ちた首肯を次から次へとくださって!

 

 

……少し前の私なら、その想いに応えられないと逃げてしまっていたのかもしれません。ううん、間違いなく逃げてしまっていました。けれど、今はもう違います。逃げも隠れもしません。ミミックとしても、アイドルとしても。

 

 

そのご期待に応えるために、立派で私がなりたいアイドルを目指して。皆さんと…親友で戦友でライバルで、同じ立場で、尊敬するアイドルで、ファンな皆さんと一緒に。悩んで救われて楽しんで、邁進させていただきますっ♪

 

 

 

そう改めて決意した私の心の内から、訓練嘆願の考えが消えたのを見透かしたように。ミミンさんは最後にもう一言を。リダさんオネカさんを軽く指し示しつつ。

 

 

「それでも、というのならいつでも鍛えてあげるけど……既に大切なことは全部、二人から――私が手塩にかけて育てあげた『妹』から教わっているはずよ。一緒に過ごした日々の中でね」

 

 

!!! はい、沢山学ばせて貰っています! あの日にも、今日までもずっと! ミミンさんの……ふふふっ♪

 

 

「社長…!?」

「今~…!!」

 

 

唐突に飛んできた一撃に、目をぱちくりさせるリダさんオネカさん! ミミンさんはクスリと笑い、アストさん、そしてwaRosのお二方を見やってから。

 

 

「良い機会だし私もこの場を借りましょう。有難う皆、ベルちゃん、この子達を輝く存在にしてくれて。()()()()()アイドルになるだなんて思ってなかったわ!」

 

「なっ、えッ!?」

「それって~!?」

 

 

お礼を述べるミミンさんの横で、リダさんオネカさんは驚きの連撃にやられていて…! でもその言葉で驚かされたのは私もで…! その口ぶり、まさか――!

 

 

「私すらアイドルにしちゃうネルサちゃんだもの、こうなること(スカウト)は予測済み。だからリダとオネカを派遣したのよ。ミミックの秘密は極力ミステリアスに、私よりも輝けるアイドルになれるあなた達をね☆」

 

 

や、やっぱりですか!!? そのカミングアウトには私達だけじゃなくシレラちゃん達もリアさん達も、ネルっさんですら驚かれていて! けれどアストさんの落ち着いた頷きが、真実だと保証していて!

 

 

それはつまりリダさんオネカさんが、お二方にとって『アイドル』であるミミンさんから、同じ存在だと…同じアイドルだと認められたということで――いいえ、以前から認められていたということで! わっ!

 

 

ミミンさん、箱をポンッと素早く跳ねさせて! リダさんとオネカさんの間の隙間にスポッと着地し、お二人の頭が振り向く前に、むぎゅっと抱き留めて!

 

 

「ここまでよく頑張ったわね、リダ、オネカ。あなた達妹は私の誇り。これからも宜しく頼むわよ!」

 

「っ…! うん、勿論さ社長…!」

「うち達、頑張るからね~…!」

 

 

ミミンさんの小さな手に撫でられてうっとりするリダさんオネカさんは、まるで私に甘えている時みたいで。全てが華開いた幸せを反芻しているようで。――そうです、私も!

 

 

「私も皆さんへ、ありがとうございますとこれからも宜しくお願いしますを伝えさせてください!」

 

 

 

 

 

ミミンさんの模倣になってしまいますが……今のお三方の幸せな様子を見ていたら、私も想いを伝えたくなってしまったんです! まさに良い機会ですし、椅子から立ち上がって、横から順番に!

 

 

「有難うございますシレラちゃんニュカちゃんルキちゃん! 待っていてくださって、幸せを分けあってくださって! もっとお返し、させてください!」

 

「ふふっ! 十倍返しは駄目よ? これからも沢山分け合うんだから♪」

「あーんはお返しして貰ったしね! あのケーキ、美味しかった~!」

「あ、でも~私らと一緒に寝るお返しはもっと欲しいかも~なんちて♪」

 

 

ヤバヤバ☆とわざとらしく口を塞いでみせるルキちゃんと、大賛成と弾むニュカちゃんと、そんな二人に少し呆れながらも止めず寧ろ同じように顔を綻ばせるシレラちゃん! はい、またお邪魔します♪だってお友達ですもの!

 

 

 

「有難うございますリアさんサラさん! 激励してくださって、引っ張ってくださって! これからも反芻してアゲて、ついていきます!」

 

「うーし!しっかりついてきなさいよっ! ホント、響いたようで何よりだわ!」

「殻は壊れて煤はとれて。良いお相手が見つかって喜ばしいわね、リアパパ♪」

 

 

っだっれっがっパパよっっっ!!とあの時以来の雷を落とすリアさんと、飄々と朗らかに楽しまれるサラさん! いつものお二方らしいのに、私に祝福をくださるようで! ずっとついていきます!

 

 

 

「有難うございますネルっさん! 私をスカウトしてくださって、リダさんオネカさんをスカウトしてくださって! どうか、見ていてください!」

 

「く~ッ★べるるん最っっっ高にキラッキラ★あーしキュンワク止まんな~!!」

 

 

今にもハイタッチに飛んできそうな勢いでぶい★とサインを作ってくださるネルっさんは、今後も末永く見守ってくださる情熱に満ち溢れていて! もう重圧はありませんけど、敢えて言います。スカウトに報いるため頑張ります!

 

 

 

「有難うございますミミンさんアストさん! 歌で背を押してくださって、理想の絆の形を見せてくださって! 私達、姉妹ユニットとして活躍してみせます!」

 

「あなたも妹よ、ベルちゃん! 三人で私達を、姉を越えてみなさいな!」

「元『箱入り』同士、宝箱に魅入られた者同士、宝物のように輝きましょう!」

 

 

っ! ミミンさん、私も妹って…その不敵ながらも信に溢れた笑顔で、私もミミックとして認めてくださって! 越えるだなんて、とっても難しいことを……ふふっ、挑んでみせます!!

 

アストさん! 箱に閉じこもっていた私を、ミミックさんに魅せられた私を、同じ立ち位置として重ねてくださって! あれ、箱入りって……そういえばアストさんの噂――いえ、アストさんも私の姉です♪

 

 

 

「そして、有難うございますリダさんオネカさん! ユニット組んでくださって、ここまで来てくださって! これからも一緒に――」

 

「「飛び出そう☆♡」」

 

 

はいっ♪ ふふふっ、お二人へはもうこれ以上の言葉はいりません♪ お二人と一緒だからアイドルができて、お二人と一緒だから飛び出せるんです!!! 

 

 

 

 

……さて、あっという間に一周してしまいましたが…まだ足りていません。いえ、有難うの量ではなくて。それを言ってしまったら皆さんそれぞれに今の百倍はお伝えしたいんですから。これでも必死に抑えている方なんです。

 

 

ふふっ。足りていないのは、お伝えする相手です。これも欲を言えば関わってくださった全ての方々へ、なんですが……その想いは今からのライブで歌に乗せてお送りします。

 

 

ですが、今このタイミングで、どうしても面と向かって言葉で有難うございますとこれからも宜しくお願いしますをお伝えしたい相手がいるんです。それは――はい、ミミンさんリダさんオネカさんっ!

 

 

お三方の目配せに一礼の頷きを返し、椅子から、皆から一旦離れます! そしてミミックさんが相手に悟られず移動するように素早く控室入口へと。更にミミックさんが回避不可能な攻撃を仕掛けるように、勢いよくドアを開いて!!

 

 

「「「わっ!!!?」」」

 

「有難うございます! プロデューサーさん方♪」

 

 

 

ドアの外にいらっしゃった…もとい、聞き耳を立てていらっしゃったのは、そう、ライブの調整のため席を外されていたプロデューサーさん方です! つまり――。

 

 

「び、ビックリしたぁ…! 嘘でしょ……! なんでバレたの…!?」

「失念しておりました…。ミミックの空間把握能力ですね…?」

 

「はい、そうです! ミミンさん達が教えてくださったんです!」

 

 

シレラちゃん達『TRYstar-Cinderellas』のプロデューサーさんと、リアさん達『waRos』のプロデューサーさん。そして……!

 

 

「ううんこの感じ……ベルちゃんも気づいてたでしょ! も~! いつから?」

 

「ふふふ…! 私のお喋りの、あの日の出来事のほぼ最初から、ですよね?」

 

「てへへ☆うわー完全にバレてた…。流石、私の欲まみれユニットのメイン!」

 

「『宝石いっぱいの不思議な底なし宝箱』なプロデューサーさんのおかげです♪」

 

 

あの日の変わったプロデューサーさんで、今は私達のユニットの大切なプロデューサーさん♪ あはは……実は、はい、ドア越しにずっとお聞きになっていたお三方の存在には気づいていたんです。

 

 

でもそれがプロデューサーさんだっていう確証は無くて、ミミンさんリダさんオネカさんに目で教えていただいて。すぐにお呼びするべきだとも思ったんですが……あの夜のことを話すには、きっとお互い直接じゃないほうがよくて。

 

 

でも、全て伝え終えた今、ようやく言えるんです! お礼を、感想を!! お三方を部屋へと引き入れ、その前に立って!

 

 

「え、えぇと…。ベルちゃん、あのゴミ箱の中にいたのね……」

「私は、ベルさん目掛けてカップを……。なんとお詫びすれば……」

「知らないで嫌な事いっぱい言っちゃった気がぁ……。ごめ――」

 

「悪いのはどう考えても私の方です! 絶対お気になさらないでください!」

 

 

すぐさま始まるお三方の悔やむような謝罪を、急いで止めます! やっぱりこうなると思ってました。もしお三方がこのお話の円の中にいたら、その後が気遣いの煤でくすんでいたかもしれません。それは避けたかったし、私もそうなってしまいそうでしたから。

 

 

ですから、まずは謝罪を謝罪で拭いとります。普通に考えて誰かがゴミ箱の中に潜んでいるとは思いませんし、それが規則を違反して抜け出してきた私だなんて思う訳ありませんもの。そして――。

 

 

「お三方へも、有難うございますとこれからも宜しくお願いしますを」

 

 

姿勢を正し、息を呑むお三方の瞳をまっすぐ見据えて。両手を胸に当て、浮かび上がってくるあの夜のお話合いを、これまでを反芻しながら。

 

 

「鈍くくすんでいた私をあんなに信じてくださって有難うございます。あの時あれ以前あれ以降、私を正面から陰から守ってくださって有難うございます。沢山のプロデュースで私を磨いて輝かせてくださって有難うございます!」

 

 

全部、覚えています。あの夜疲労困憊なのに私のことで熱く議論してくださったこと。レッスン等でお会いする度に足を止め『喉乾いてない?お姉さんが奢ったげる!』と調子を窺ってくださり、『今日の歌は強張りもなく素敵でした』と褒めてくださり、『私はベルちゃん達の保護者だよ!任せてね♪』とどんな些細なトラブルですら厭わずに解決してくださったこと。

 

 

そして、アイドルの皆さんやトレーナさん方に取り次いで様々な経験を積ませてくださったこと。私や私達専用のプロデュースプランを毎日夜遅くまで調整してくださったこと。ふふっ…!いつだって皆をメインとして育ててくださったこと。一つたりとも忘れてなんかいません。感謝してもしつくせません!

 

 

「おかげで私、やりたいことを諦めず、心の底からの期待と高鳴りを持ってここまで来ることができました! 皆さんに育てていただき尽くしていただき、この場に立つことが出来ました!」

 

 

溢れる思い出を奔流に乗せ、まずは深々と頭を下げて。そして……最大級の愛を籠めた、笑顔で!

 

 

 

「私…いいえ、私達、これからキラキラに輝いてみせます! ですからプロデューサーさん――これからも宝物のようなプロデュース、お願いします♪」

 

 

 

あはは……つい気持ちが零れすぎて顔が思った以上に緩んでしまって……! しかも分不相応にも、アイドルを代表するかのような思いもちょっと入れてしまって……へ? お、お三方共……わなわなお震えに……?

 

 

「「ベルちゃぁんんんんっっっ!!!」」

 

「ひゃわあっ!?」

 

 

私達のプロデューサーさんとシレラちゃん達のプロデューサーさんが、急に力いっぱいのハグをしてくださって!!? え、えっと!?

 

 

「あ~ら! アンタまで感極まっちゃって!」

「うふふっ♪ 私達も畳みかけて良いかしら?」

 

「いえ……できればまたの機会にしていただけると……。これ以上は……」

 

 

わわっ!? waRosのプロデューサーさんまで、立ったまま俯いて顔を手で覆い、噛みしめるように……! え、えと、えと……ふふっ…!

 

 

「大好きです、皆さん♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ですから私、少し恥ずかしかったんですよ…! あんな約束したのに…!」

「まさか速攻でユニット決まって、速攻ケーキのお返しくるとはねぇ☆」

「あれはアタシもビックリしたわ! 今裏話聞いて、ようやく納得できたわね」

「その節は…でもあの時のシレラちゃん、とても格好よくて美しくて…ひゃ…!」

 

 

頬を赤く小さく膨らませたシレラちゃんに手を擦られ、止められてしまいました…! け、けど本当に素晴らしくて惚れちゃうぐらいで……ふきゅんっ! も、もう皆さんの前では言いませんからぁ!

 

 

でも確かに皆さんびっくりされてました。あの日から、仮デビューケーキを分け合う約束からそう経たずに、私達の結成報告&リダさんオネカさんアイドル寮入り&ケーキプレゼントが行われましたから。そうそう、そのケーキ…!

 

 

「あのケーキも美味しかったなぁ~! ミミンさんアストさんの手作りケーキ!」

「有難うニュカちゃん♪ 手伝ってくださったステーラさん(お菓子の魔女)に感謝しないと」

「プラス、あっすんのお手製お菓子ってマジ頬落ち超えて頬無いなるもんね★」

「はわぁぁ…! お菓子作りまでお得意なアスト様、やっぱり凄すぎです!」

「あらあら♪ ベルちゃんったら、また様付け出ちゃってるわよ♡」

 

 

あっ…つ、つい…! 様付け、大分直したはずですのに興奮してしまうとまだ出てしまうんです…! で、でもあのお祝いのケーキは様をつけたくなるほどとんでもなかったんです!! 

 

大きな宝箱型で、中にお菓子の私とリダさんとオネカさんが可愛く入っていて! あんな最高な贈り物をM&Aから頂けて、それを皆で分け合えるなんて! 自分を食べるのはやっぱり迷ってしまいましたけど…♪

 

 

「――なに、あなた達ほぼベルちゃんの部屋で寝泊まりしてるの?」

「えぇ、ボク達の我儘で☆ 頂いた部屋が広くて落ち着かなくて」

「でも箱状態で落ちてるのも良くないみたいで~。折角ですから~」

「へぇ? 何が折角なんだか! 常に一緒に居たいって魂胆、見え見えよ!」

「「社長に言われたくないです~ッ☆♡」」

 

「ふふっ…! ベルちゃん、お互い大変ね」

「ふふふっ、はい…! ですけど――」

「「『とっても楽しい』! ふふふふふっ♪」」

 

 

アストさんと笑い合いながら、わちゃわちゃされるミミンさんとリダさんオネカさんを眺めて。まさかリダさんオネカさんと本当に同じベッドでお早うを言い合うようになれるなんて…♪ 因みにお二人のお部屋は別の形で有効活用されています。あ、そうです!

 

 

「今晩いかがですか? また皆で集まって、パジャマパーティー!」

「「「やるやる~っ!」」」

「お! アタシ達も良い?」

「あーしもあーしも★」

「勿論です! ミミンさんアストさんは…?」

「今日はフリーよ! お邪魔しちゃおうかしら!」

「はい!!! やった!!」

 

 

実はリダさんオネカさんのお部屋は、今や家具全部を取り払って皆で集まるためのお部屋になっているんです! お布団とか必要なものはその都度ミミックさんの箱に入れて持って来てという形の!

 

 

それでもこの人数でパジャマパーティーをするとなると窮屈になりそうですが……リダさんオネカさんは私と、ミミンさんはアストさんと一緒のお布団で寝ますしね♪ それにもしもの時は魔法で――あれ? ノックの音?

 

 

「アイドルの皆さん、スタンバイお願いしまーす!」

 

 

「「「「「はーいっ!」」」」」

 

 

お喋りの最中響いたスタッフさんの呼びかけに、皆で返事をします! ……あっ。私、今自然に――いえ、それで良いんです。だって私も、これからはアイドルです!

 

 

私達のお喋りをにこにこと見守ってくださっていたプロデューサーさん方に促され、皆さん続々と控室を後にしていきます。それに続いて。

 

 

「では行きましょう、ベルちゃん!」

「はい! アストさん!」

 

「「「宜しくね☆♡♪」」」

 

 

アストさんはミミンさんを、私はリダさんオネカさんを抱えて。とうとう本番。ライブ、頑張ります!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デュフ! いやはや、此度もまた拙者達勢揃い出来てなによりですぞ!」

「ね! けど今回のデビューライブ、随分豪華よね。食われないかしら?」

「新ユニットの1人はなんでも、元々『こちら側』だったらしいですよ」

「ライブ参戦側ってことか? ならもしかしたら見たことあるかもなぁ」

 

 

……そんな、応援隊長’sのお話声が、沢山のさざめきの中から聞こえてきます……! こっそりと舞台袖から観客席を覗きますと……ま、満席です……!

 

 

M&Aの姉妹ユニットということもあり、私達の情報は極力隠されているんですが……記者さん方にもそういう風な記事にしていただいたのですが……なのにこんなに集まってくださるなんて、ネルっさん方のおかげです…!

 

 

けれど……主役を務めるのは皆さんではなく、私達で……! この会場を埋め尽くすアイドルファンの方々の前で最も光輝くべきは、私達じゃなきゃいけなくて……っごく……。

 

 

「緊張、してきたね…!」

「うち達も一緒よ~!」

 

 

思わず挙動不審になってしまっていると、リダさんオネカさんがそう声をかけてくださいます。はい…今更ながら実感が湧いてきたと言いますか……! トクトクがドクドクに、ドクドクがバクバクになってきて……!

 

 

ですけど……何故でしょう。そんなに怖くないんです。あの日失敗した実践レッスンの時より何十倍も緊張していて何百倍も体の中が煩いのに。それどころか、ワクワクドキドキが…!

 

 

ふふっ。その理由はわかっています。皆さんがいらっしゃるから安心なんです。リダさんオネカさんが一緒に居てくださるから落ち着けているんです。お二人の魅力を皆さんへお伝えできることが楽しみなんです!

 

 

それに、今の私にはこのお守りもついていますから。衣装のポケットにいれてある、このチャームアクセサリー。宝箱の中からデフォルメされた私が顔を覗かせている、緻密で可愛いデザインの。

 

 

ふふふっ! はい、実はこれ、あのゲンさんがプレゼントしてくだった品なんです! あの日作ってくださっていたのはこれだったんです! 気に入らなかったら作り直すと仰ってくださいましたが…これが気に入っちゃいました♪

 

 

このミミックな私をポケットに入れておくと、まるでこっそりミミックさんが、過去の箱の私が、今の私を守ってくれるようで安心できちゃうんです。それにライブ中の心の支えとして身につけておくと本当にアイドルになったみたいで……絶対失くしたり忘れたりなんかしません♪

 

 

「おっ★もう時間? よ~し★皆、気合いれよ~★」

 

「「「「「は~いっ!」」」」」

 

 

どうやらとうとうみたいです。最後の準備前に皆で集まって、さっきみたいに円を描き手を重ね合わせて。私の手はリダさんオネカさんに挟んでいただいて!

 

 

「そんじゃ! りーだん、べるるん、おねかん★ アイドル、楽しんでこ~う!」

 

 

「「「はいっ! せーのっ!」」」

 

 

「「「「「えいえいっ おーっ★☆♡♪!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「お…!」」」」」

 

 

会場の灯りが消え、期待の一音を最後に、会場のさざめきは収まります。そして――次の瞬間ッ!

 

 

「「「「「みんなーぁ! 今日はライブに来てくれてありがとーうっ♪」」」」」

 

 

「「「「「おぉおおっっっ!!! ネルっさーーんッ!!!」」」」」

 

「「「「「来たぁあああっ!!!『waRos』ォっ!!!」」」」」

 

「「「「「『TRYstar-Cinderellas』!!! 三人共大好きぃ!!!」」」」」」

 

「「「「「『M&A』!!! 有難うM&Aぇええ!!!」」」」」」

 

 

眩く鮮やかな灯りの中、それに劣らない輝きを放ち現れたるは、アイドルの皆さん!!! 怒涛の歓声をその身に受け、軽やかにリズムに乗って♪

 

 

「とりま、いっとこーう★」

 

「「「「「『サバサバ★Sabbath(サバト)』♪」」」」」

 

 

はわぁああ! ネルっさんの持ち歌を、皆さんで歌われて! 場の盛り上がりはあっという間に最高潮! なんならこのままだったらライブ大成功で……っ…ここへ、私が……――。

 

 

「ベル、大丈夫さ☆」

「うち達なら~♡」

 

 

っ…! リダさん…オネカさん…! 手を繋いでくださって……! ――はい。お二人と一緒なら!

 

 

 

 

 

 

 

「にっひっひ★ レディ~スアンドジェントルメ~ン★ お待たせ~い★ 新人アイドル、ご紹か~い★」

 

 

オープニングアクトを終え場を盛り上げに盛り上げ、ネルっさんが口火を切ります! それに続いて、皆さんも!

 

 

「今回の新人達も凄いんだから! 気をつけなさい? 隙見せたらパクリよ!」

「あらあらリアったら♪ でも、その通りね。私達も虜にされちゃったもの♪」

 

「ふっふ~ん! 三人共超優秀よ! 優良表彰授けちゃうぐらいにはね!」

「何目線ですか社長…いえ社長目線でしょうけど。私も異議なしですが♪」

 

「ふふっ♪ 実は、私達の同期なんです。いつも可愛くていつも助けられて!」

「だから今日もね! 皆近くでデビュー見守りたいって争奪戦だったんだよ~!」

「同期のオオトリに相応しいだけあるわ~。ふ~また甘えたくなってきちった☆」

 

 

ちょっとプレッシャーがかかってきました……! でも、もう心配いりません! というより、もはや気にしている場合じゃありません! だって――!

 

 

「にひひ★そんじゃ発表! ヒントはね~★ここの誰かの姉妹ユニットなんだ♪ さ~誰のだ~★」

 

 

始まる、始まりますっ!!!!! ざわつく観客の皆さんの前で、アイドルの皆さんもまた『誰のだろう?』と演技をなされて! それを照らしてたスポットライトが、ドラムロールと共に徐々に消えていって!

 

 

まずはネルっさんを照らしていたライトが。次に、シレラちゃん達のライトが。そして、リアさん達のライトが消えて――対照的に大きく広がっていく高鳴りの声の中、残されたのは!

 

 

「一体、誰の妹ユニットなんでしょうか社長……あれ、社長?」

 

 

かなりわざとらしさの残るアストさんの腕の中で、いつの間にか宝箱形態となったミミンさんがカタカタ、コトコト震えだして! 消えていたライトは集まり、湧き立つミュージックと共に箱を輝かせて!

 

 

「――ふふふっ! どうか皆さん、飛び出す彼女達にご注目を!」

 

 

その揺れる宝箱を掲げ、アストさんは悪魔羽をバサリと広げ空中へ! ついてくるライトと歓声の中、抱え直した箱ごと華麗に回転なされて――!

 

 

「せーのっ! えいっ♪」

 

「「「「「おおっ!!?」」」」」

 

 

なんと、投げましたっ! アストさんが、ミミンさん入りの宝箱を、ステージの上空高くに放ったんです! アストさんを照らしていたライトと歓声はそれを追いかけ、放物線を描く箱は――刹那!

 

 

「「「「「わあっ!!!?」」」」」

 

 

空中で割れ、中から違う宝箱が弾きだされて!! その反動でミミンさんの宝箱は闇へと消え、全ての光と驚愕の瞳はこの新たなる箱へと集約されて!

 

 

胸高鳴るティザーBGVに乗りながら、まるで直角にやってくる流星のように、一筋の光線のように、宝の山へと降り加わる宝箱のように、ステージ中央へと、今!!

 

 

 

 ――カカンッ!

 

 

「ハハッ☆ さあ、開演だ!」

 

 

「「「「「きゃーっっ!!!」」」」」

 

 

 

着地のステップと共に姿を現し、ハートを射抜く甘いウインクを放ったのは、マニッシュで騎士のように凛々しい衣装を纏ったリダさん!!! 

 

 

流石です、早速皆さんを虜にしています! ですが、まだ控えています! 喝采を受けながらリダさんはエレガントな一礼をし、少し横へ後ろへとズレて。

 

 

そして目立つように、自らの箱をコンコンと叩いてみせると――ポンッと別の宝箱が! 勢いよく、されどふんわりと飛び出してきたその箱が、今度は中央に!

 

 

 

 ――カカンッ!

 

 

「んふふ~♡ 皆~初めましてよ~♡」

 

 

「「「「「ヒューッッ!!!」」」」」

 

 

 

あのステップを刻み、とろけるように優しく暖かい微笑みを贈ったのは、コケティッシュで女神のように美しい衣装を纏ったオネカさん!!!

 

 

こちらもまた、見事です! 既に会場全体がお二人の美貌に包まれて! ここに私が……ッ頑張ります、頑張ってみせます! お二人のため、夢のため!!!

 

 

オネカさんの柔らかい一礼の後、お二人は手を取り合い、宝箱を滑らせてスケートのようにくるくると。そうして左右に分かれ、皆さんの注目を集めて、今度はオネカさんが箱をコンコン叩き――!

 

 

((さあ、行くよ~!))

 

 

そんなお二人の応援の囁きが聞こえてきます…! はいっ行きます♪ せーのっ!

 

 

 

――カカンッ!!

 

 

「ふふっ♪ 宜しくお願いしますっ!」

 

 

 

オネカさんの箱から飛び出し、くるっと回転しながら大好きなステップを刻み着地! アストさんリスペクトのカーテシーな一礼をしたのは、ガーリッシュでお姫様のような可愛らしい衣装を着せていただいた、私です!

 

 

私にはリダさんのような格好良さも、オネカさんのような包容力もありません。ですけど、それでも! 私なりの、理想の私を! 弾けるような煌めくような笑顔を皆さんへ!

 

 

「「「「「可愛いいっっっ!!!」」」」」

 

 

か、可愛っ!? あ、あはは…い、いえ恥ずかしがってちゃいけません! ここからはパフォーマンスの時間ですから! さあ輝きましょう、リダさんオネカさん♪

 

 

ハイボルテージなミュージックに合わせ披露するのは、とうとうお披露目のミミックダンス♪ ミミンさんアストさんにも監修してもらった、あの日から皆で考えて作り上げた大切なダンスです!

 

 

始まりは大人しく、腕の箱に閉じこもるように。されど狙い澄ました視線は鋭く、指先は触手のように蠢いて。獲物が近づくのを今か今かと待つように腰を揺らし脚を刻み、けれど爪先は箱は息を潜めたまま――迫るリズムの足音捕らえて1、2♪

 

 

さあ飛び出して♪ 噛みついて♪ 逃がさない!と縛り上げちゃって♪ 三箱連携攻撃で♪箱のタップを打ち鳴らし♪隠れた足もチラリと見せて♪

 

 

ふふっ! これこそまさにミミックさんによるミミックさんを描いたダンス♪ 箱だった手を、牙に舌に触手に毒に。華麗に暴れる宝箱のように舞わせて! 箱を跳ねさせジャンピング♪

 

 

お気づきですか? 私達の靴とハイソックス、宝箱モチーフなんです♪ ですから箱を生き物のように操ってみせるリダさんオネカさんの見えない部分を補完するように、私の足で1、2、1、2♪ 

 

 

時には箱を蹴り上げて♪時には箱を撫でるように♪互い違いに入れ替わり♪ 決めは――勿論、カカンッのステップで♪

 

 

さあ、最後です! 最後のポーズはダンスではなく、私達の完全オリジナル! 私のそれぞれの手をお二人が取り、そのまま滑るようにメリーゴーランド♪ 私もクルクル回り、三人でくるくる回り――!

 

 

「「「そーれっ☆♡♪」」」

 

 

タイミングを合わせて、お二方はステージを力強く蹴って空中へ! 私は最後にクルっと半回転し、皆さんの方を笑顔で向いて、手を広げて――落ちてくる宝箱を――ふふっ♪キャッチです!

 

 

 

「「「「「おおおおおぉおっっっ~!!!!!」」」」」

 

 

軽く身体を出しポーズをとるリダさんオネカさんを花束のように抱え、私も決めポーズを! 良かった、あの時みたいに足をもつれさせることなく大成功です! ではお二人を降ろしてまして、身を寄せ合うように並んで!

 

 

「「「改めまして、自己紹介を!」」」

 

 

「ボクはリダ、さ☆」

 

「私はベル、です♪」

 

「うちはオネカ、よ~♡」

 

 

「「「三人合わせて~!」」」

 

 

更に三人でぎゅっと、頬がくっつくほどにくっついて! お姉さん達のように指でイニシャルを描いて、せーの!

 

 

 

「「「(リダ)(ベル)(オネカ)ですっ☆♡♪」」」

 

 

 

「「「「「ウオオオオオッッ!!! LBOっっっ!!!」」」」」

 

 

わわっ!轟く大歓声! 皆さんの眩いお顔がサイリウムと共に、満天の星空のように宝物庫満載の宝物のようにキラキラと!! そんな皆さんをカボチャやジャガイモや宝箱に見る必要はありません。もう、まっすぐにファンの皆さんを見ることができます!

 

 

それに…ふふっ♪宝箱なら本当に沢山見に来てくださっているんですよ♪ ほら、関係者席に♪アイドルの皆さんに、トレーナーさんやプロデューサーさん方に、ゲンさんを始めとしたスタッフさん方に抱えられて、幾つもの宝箱が、ミミックさん達が! 『ボックス席』の再来です♪

 

 

皆さん、ここまで有難うございます!私達を見守ってくださって有難うございます!これからも宜しくお願いします! その想いを籠め、早速一曲目を。ですがまずは――すぅ…ふぅ!

 

 

「皆さん! その、初めましての身で恐縮ですが…お、お願いがあひゅんっ!? り、リダさん!?オネカさん!!?」

 

「フフッ☆ ごめんよベル。隙だらけだったから、ついパクっとね☆」

 

「そんなに硬くならなくていいのよ~♪皆聞いてくれるはずだから~♡」

 

 

だ、だからって箱形態になって、お腹の横をパクって甘噛みしなくても!! しかも中では指で更にカプッて…! も、もう!!!

 

 

あ……! 皆さんの笑い声と『お願い、聞くぞ!』というコールが…! ふふ…!有難うございます! 緊張も完全に解れました!

 

 

「――私達も、デビューのために幾つも曲を作っていただきました。ですけど、まずはこの曲を歌わせていただきたいんです!」

 

 

私をセンターに、リダさんオネカさんもマイクを手に! 皆さん、かかりだすイントロに揃って歓喜の声をあげてくださって! リズムを刻んでくださって!

 

 

それでは、アレンジは無しでこの思い出深い曲を――私達の幸せを、輝きを!

 

 

 

「聞いてください♪ せーのっ♪」

 

 

 

 

 

 

「「「『箱から飛び出た宝物』っ☆♡♪」」」

 

 

 

 

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