ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~   作:月ノ輪

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人間側 とある魔法使いと未知①

 

 

「「「「ベントラー。ベントラー。スペースピープル」」」」

 

 

 はぁぁ……。冒険者ギルドや街から離れた、ちょっと鬱蒼とした草原。そのど真ん中に不可思議に存在し続ける開けた空間の上。そこで私達は円になり、両手を空へ伸ばして呪文を詠唱……詠唱かなぁ、これ。

 

 

 だって魔法の術式じゃないし魔力を籠められもしないし、ただ空に向けて叫んでいるだけだもん。何も効果がないに決まってる。けど、これで本当にUFOが来るんだから、やっぱりエイリアンにとっては何かの詠唱なのかな。

 

 

 そう、この謎空間は有名な『ミステリーサークル』ってやつ。本当エイリアンが持ってる技術は謎で変。魔法も翼も噴き出す炎もない飛行物体を操ってるし、ここみたいな草が謎の紋様状に薙ぎ倒されて絶対直らない場所を魔法なしで作るし。

 

 

 それに、見えないけれど空の高い高いとこには……うぅ、思い出したら背中がぞわって……! はあぁ、やっぱり断れば良かった。UFOダンジョン再挑戦なんて。

 

 

 せめて地上のダンジョンが良いな。あのUFOダンジョン気味が悪いし、襲ってくるエイリアンも変なのばかりだし。まだ魔物と戦う方が楽だよ。というより冒険者業自体あんまり……。

 

 

 でも私、魔法ぐらいしか取り柄ないし。しかも戦闘魔法ばっかだから冒険者仲間からハブにされたら行く当てないし、酒場でパーティー探すの苦手だし傭兵とか兵士になるのも柄じゃないし。はぁああ……気重。

 

 

 ……UFO、来ないで欲しいな。ううん、きっと来ないよね。だってこの詠唱をしても来ないことはザラなんだもの。しかも何度も呼んでる人ほど応えてくれなくなるみたいだし。

 

 

 駄目だったら別のダンジョンに行く予定だから、私、そっちの方が……って、あぁ……うわぁ……。

 

 

「来たぞ!」

「っしゃあ! 今日は成功だ!」

「アタシらを攫って!」

 

 

 来ちゃったよ……。透明化を解除しながら、空高くからUFOが……。私達の上にピタリと止まったそれはピカピカ光りつつ謎の波動を下から放って、皆はそれに怖がることなく足を踏み入れふよよよってアブダクションされだして……っ……。

 

 

「そのぉ……私、お腹痛くなってきたからさ……」

「チッ、だからヒヨってんじゃねぇよ。おら、行くぞ!」

 

 

 ちょっ、腕引っ張らないで! わかったから、ついてくから…ひわっ! あ、足が地面から離れてふよよよって、手足をばたつかせても身体ごと浮いて! こ、この感覚も慣れなくて嫌なのにぃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと! ようタコヤロウ、返って来たぜェ!」

「いや今回もあの蛸エイリアンとは限らんだろ」

「相変わらずキモし臭い場所。景色は綺麗なのに」

 

 

 UFOから出ながら、皆は口々に。ここは宇宙に浮かぶ巨大円盤の中……綺麗な星の海に昏く鎮座し、微かに蠢き光る超巨大UFOの内部。

 

 

 うぅ……ここに入る前の、城より大きな異質UFO壁が迫ってくる感じ、その一部が開いて振動するような光と共に私達を飲み込む感じ、やっぱり得体が知れなくて怖いよ。

 

 

 しかも今の皆の台詞で、そしてこの紫とか赤とかの毒々しい生き物の内臓みたいな内部の造りを見て、この間ここに来たことも思い出しちゃった…。立った蛸みたいなエイリアンが相手だったときの……。

 

 

 壁の管からにゅるんべちゃんって出てきたり、触手をぐにゅぐにょうねつかせながら天井に張り付いて迫ってきたり、沢山武器持って大量の光線放ってきたりして、化物じみてて……!

 

 

 でも噂によると、あのエイリアンはまだ可愛いほうで、もっと恐ろしくて凶暴なエイリアンも沢山いるって……! はぁ…やっぱり魔物の方がマシだよ。だってエイリアンって何考えてるかわかんないんだもん。

 

 

「ちょっと、まーたエイリアン怖がってんの? 情けな、いい加減慣れなさいよ。こんな楽に稼げるダンジョン、滅多にないんだから」

 

「だな。出てくるのはよくわからねえクソエイリアン共だけどよ、どうせたったの数体しか出ねえんだしな!」

 

「それさえ倒しちまえば地上じゃ手に入らないレアなお宝がウハウハだ! まさに噂通りってな!」

 

 

 それは……そうかもだけどさ。このダンジョンには噂が幾つもあって、それはだいたい真実。空高くに超巨大UFOが毎日のように現れて、私達冒険者の呼びかけに応じて攫いにくるってのは今しがた体験した通り。

 

 

 そして敵が数体だけでお宝が大量だって噂も、この前で確認済み。なんでエイリアンがそんなことをするかっていうと、ここに棲んでるのは戦闘狂エイリアンばかりだから。きっとこれも本当のこと。そうじゃなきゃ説明つかないよ。

 

 

……ただ、真偽不明の噂もあって。エイリアンを倒せれば溜め込んでるお宝を貰えるけど、もし生きたまま捕まったら……よく言われるように解剖されたり改造されちゃうって……ぶるるっ…!

 

 

 だ、大丈夫。この噂だけはきっと嘘だよ。だって実際にそんな目に遭ったって人はいないんだから。……話せないだけかもしれないけど……い、いやそれでもここはダンジョンだから最悪の場合、地上の復活魔法陣で――あれ、そういえば。

 

 

 なんでこの巨大UFO、ダンジョンなんだろう。ダンジョンって魔法とか魔力とかで出来るものだよね。 実際この感じそうだし。けど、UFOもミステリーサークルも魔法や魔力は一切使われてなくて……――。

 

 

「おーい! ボーっと突っ立ってんじゃねえよ!」

「早く来ねえと置いてくぞー」

「ったく、魔法使いってなんであんなどんくさいのかしら」

 

 

 あっ!? み、皆待って! 置いてかないでよぉ……っ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「――どっからでもかかってきやがれエイリアン! 剣の錆にしてやる!」

「うーん、こっちの道は行き止まりだな。隔壁が閉じてる」

「うわっ、靴にねちょねちょついた! ちょっと!洗い流して!」

「は、はいはい…!」

 

 

 ところどころ粘液みたいなのでぐちょぐちょだったり、変な泡みたいなのでぼこぼこだったり、謎の肉でできた膜が網みたいに張ってる気持ち悪くて重苦しくて薄暗いUFO通路を、皆は臆することなく進んでく。

 

 

 なんで皆こんなにズンズン進めるんだろう。何処から襲ってくるか、どんなエイリアンが相手なのかわからないのに。こんだけ自信があるなら、今回こそ私は後方で魔法支援をするだけで良い……よね?

 

 

「そうだ。一応聞いとくが、戦術は前と同じで良いんだろ?」

「たり前だろ。剣士の俺と武闘家のお前が前衛、弓兵のあいつが後衛。んで」

「魔法使いのアンタは、臨機応変に囮もやんなさいよ!」

 

 

 はあぁ……。やっぱりこうなるんだ……。これがこのダンジョンに来たくない一番の理由だよ。なんでかわからないけど、エイリアンって魔法を使える人をよく狙う性質があって。つまり一番使える私が標的にされやすくて。

 

 

 だから普段のダンジョン攻略とは違って、本来後衛職の私が前衛どころか囮として扱われることもあって……。実際この間なんてそれで私だけが復活魔法陣送りになって、三人はホクホク顔でUFO乗って帰って来たし。

 

 

 ……やっぱ帰りたい…。でもここまで来ちゃった以上、エイリアンを倒すか逆に倒されるかでしか帰還方法ないんだよね……。はぁぁ…嫌だなぁ……。

 

 

 せめてもの希望…希望になるかどうかすらわからないけど……救いは、近頃立っている噂だよ。実はこのダンジョンについての噂、最近になって大きく更新されててさ。それは――。

 

 

「なぁ、本当に居んのかな、他のパーティー」

「んな噂あったな。上手く出会えりゃ共闘できるかもな」

「ただでさえ楽なダンジョンなのに、もう勝ち確ね!」

 

 

 丁度皆が話題に上げた通り。元々ここのダンジョン、世界各所から冒険者達を攫ってるみたいで。実際さっきUFOでここに来てる時も、違う形のUFOが同じように並走してきて、中に冒険者パーティーがいるのが見えたし。

 

 

 それでも、今まで別パーティーがダンジョン内で出会うことはなかった。このUFOダンジョン巨大な割には道細かいし色んな見た目のエリアもあるみたいだし、パーティーごとに分けられてたんだと思う。

 

 

 けど、最近になってちらほら他のパーティーと合流する人達が増えてきたみたいで。その分立ちはだかるエイリアンの数や種類も増えたりするらしいけど…結局大した数じゃないのは変わりないし、味方が増える分気楽に戦える感じかな。

 

 

 もしどこかのパーティーと協力できたら、私が囮になる必要はかなり減るはず。そうじゃなくても、他の魔法使いと愚痴でも言い合えたら嬉しいなって…。そう思ってるんだけど……さ……。

 

 

 実はこの噂にはちょっと怪しい続きもあって。私達が協力するようになったからか、ダンジョンの雰囲気や諸々が色々と変わってきているらしい。その、なんというか……グロ方面に?

 

 

 怖くて詳しい話は聞いてないけれど、ここが恐ろしいのは変わっていないってことみたい。はぁ、せめて今日の相手は可愛いエイリアンとかだったりしないかな――……。

 

 

「――しッ…!」

 

 

 っ…!? 先頭を行く剣士の声に、皆は足を止め身を潜める。すると遠くから仄かに聞こえてきたのは…これ、足音だ……!

 

 

 なにかが、こっちへ来ている。そこの曲がり角の奥から、複数で。もしかしてエイリアン? うわぁ…もう戦闘開始かぁ……。魔法詠唱の準備しておかなきゃ。皆も音を立てないように武器を出し、戦闘準備万端。

 

 

 と、様子を窺っていた剣士が手振りで合図を。どうやら不意打ちをしかけるみたい。それで決まれば一番楽。どんなエイリアンだって倒しちゃえば魔物と同じだし。

 

 

 私達もその支援のため、魔導書を手に狙いを定める。鮮明になってきた足音は警戒するような感じだけど、私達には気づいていなさそう。これなら……来る! 3、2、1、見えたっ!!

 

 

「食らいやがれエイリアン!」

「おおおっとぉ!?」

 

――ガキィンッ!

 

 

 えっ。これ…武器同士がぶつかり合う音? エイリアン、鉄の剣とかを使って……違うよね!? しかも今の声、明らかに!

 

 

「待て待て! オレらはエイリアンじゃないぞ!?」

「ん!? おいなんだよ、同業者じゃねえかよ!」

 

 

 やっぱり。現れたのは槍使いの冒険者。その後に続いて、三人ほども。皆私達と同じような恰好をしているし、間違いない。他パーティーだよ。

 

 

「なんだよご挨拶だな。急に仕掛けてきた癖に」

「悪かったって。ここで他パーティーと遭うのは初めてでよ」

 

 

 互いに武器を収めながら、剣士と槍使いは会話を交わす。私達も向こうの面々と会釈とかをしあって。びっくりしたぁ……。噂は本当だったんだ。

 

 

「ま、その気持ちはわかるけどな。ならどうだ? 折角だし」

「お。俺達からも誘おうと思ってたぜ。どうせ宝は大量だ!」

 

 

 しかも向こうも噂を知っているみたいで、あっという間に共闘成立! 向こうにも魔法使いはいるみたいだし、私の負担減るかも!

 

 

 

 

 

「はー。んな遠いとこからも来てやがんのか」

「こっちの台詞でもあるけどな、それ」

「ま、俺達冒険者は儲けられんなら何処へでもってな」

「違いないな! エイリアン様様だよ!」

 

 

 まるでここがUFOの中だとは思えないような、普通のダンジョン前で出会ったようなテンションで剣士と槍使いは打ち解けてる。更に、他のメンバーも。

 

 

「その全身重鎧、重くないのか?」

「……重いが、性に合ってる。それにここは」

「あぁ、身体軽いもんな! 動きやすくて助かるぜ!」

「……だな」

 

「え、そっちもそういう人多いの? 皆ビビりだよね~!」

「ね~! エイリアンなんて魔物と一緒じゃんね」

「ほんとそれ。いつも通り後方支援で弓撃つだけだし」

「わかる。回復ばら撒いとけば皆が何とかしてくれるわ」

 

 

 武闘家は重装戦士の人と、弓兵は回復士の人と。同じ戦闘ポジションの相手と並んで歩いている。とくれば私の相手は向こうの魔法使いであるこの人。なんだけど……。

 

 

「なはは~♪ いっぺ~うっさんや~! まほうつかいどぅし、ゆいま~るでちばりよ~!」

「え、えっと…?」

「ま~、わ~しょうかんしなんやしが~♪ うんじゅん、なんぎそ~いび~んや~。わ~にん~」

「……しょ、召喚士って言った?? え、えっと????」

 

 

 なんか言葉がわかんない…会話が成り立たないよ……! 失礼なのはわかってるけど、その、エイリアンと話してるみたいで……! 

 

 

「……翻訳魔法、切れているぞ」

「またぁ? 最後まで…あんたねぇ、翻訳なきゃエイリアン同然なのよ!?」

 

「あり? あぁ、わっさいび~ん! ん~と、これで言葉、わかりび~が?」

「えと…ちょっとは。あ、待って。私も少しだけ使えるから…えい!」

「本当? あ~あ~、われわれは冒険ちゅ~。どう?」

「うん、大分よくなった!」

「そら~よかった! にふぇ~で~びる~!」

 

 

 よかったぁ…! 向こうの二人が助けてくれたおかげで、なんとか会話できるようにはなれた。私の翻訳魔法も大したものじゃないから、ところどころアレだけどさ。

 

 

「そんじゃ改めて。ゆたしくお願いね~。なはは~愚痴でも言い合いら~♪」

 

 

 ともあれ、お喋りできるようになったのはとっても嬉しい! 愚痴も色々言いたい! こっちこそ宜しくって、その握手に応えて…………え?

 

 

 なに、この光……? 私達が手を握り合ったところに、重なるように謎の赤い光が。小さくて、三点で『∴』って形で、まるでなんかの照準を合わせるような感じの――――ッ!

 

 

「危ないっ!?」

「うかーさんっ!?」

 

――チュンッ!

 

 

 か、か、間一髪なんだけどっ!!? 私達が同時に気づき握手を離したら、やっぱりその赤い光をなぞる様に光線が降ってきて! も、もし少しでも遅れてたら…!

 

 

「なんだ!?」

「敵か!!?」

 

 

 その音を聞きつけて、先頭にいた剣士達も駆け付ける。そ、そう多分敵! 光線だったしエイリアン!! 戦闘態勢とらないと。腰につけた魔導書……を……ひっ…!?

 

 

「「「なっ……!?」」」

「「「「お、多…!!」」」」

 

 

 わ、私の身体に…ここの皆の身体に、まるで大量の虫が這うかのように、沢山の赤い照準が!? い、いつの間にこんなに囲まれて、というよりここ狭めの通路なのに何処から狙われ……あッ!

 

 

 今、居た! 暗くてよく見えなかったけど、私の顔よりも大きい虫が天井に、それと手乗りぐらいの小さいUFOが沢山付き添ってるのが! あれが今回のエイリアン…!? って、そんなこと考えてる場合じゃ――!

 

 

「「避けろぉっ!」」

 

「「「「うわああああっ!!!?」」」」

 

 

 剣士達の合図に、私達は慌てて動く! 直後、光線の雨が降り注いで!! あ、危ないっ、危ないいっ! ひ、必死に避けるしか、バリア張って凌ぐしかぁっ!

 

 

「ね、狙いきれる訳ないでしょこんなの!」

「……ぐっ…量が多すぎる。防ぎきれん…!」

 

 

 こっちパーティーは私のバリアに、向こうパーティーは重装戦士の大盾に避難するけど、光線は流星群みたいに勢いを増して! だから矢も魔法も狙いすら定められなくて、それどころか分断されちゃって…!

 

 

「クソがぁ…! 先に進むぞ!」

「一旦退こう! こっちだ!」

 

 

 あっ、向こうのパーティーが道を戻って、でもこっちのパーティーは前に進んで…! こ、これじゃあ離れ離れに、でも今はそれしか方法が……うぅ…折角楽に戦えると思ったのにぃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見た、見たのよ…! 尾が長くてでっかい蟹みたいな虫が、ちっさいUFOを大量に従えてるの!」

 

 

 なんとか逃げ切り、とりあえず状況整理を。弓兵の子もエイリアンのことがよく見えたみたいで、剣士と武闘家へ手振りを交えて説明してる。二人は信じてくれたっぽい。

 

 

「でけえと言っても顔ぐらいなんだろ。なら余裕……と言いてえけど……」

「まさかあんな攻撃をしかけてくるとはなぁ。初めて見たぞあれ」

 

 

 はぁ……そっちの噂も本当だったなんて。パーティー同士で共闘できる分、エイリアンの動きも変わってきている――それをまざまざと見せつけられちゃった形だよ。これからどうしよう……。

 

 

「あの野郎だけだとは思いてえが、何体か潜んでやがってもおかしくねぇ。警戒しながらいくぞ。ったく、簡単なダンジョンなハズがよ……」

 

 

 さっきまでの余裕さを吐き捨てるように、剣士は剣を手にして道を進みだす。とりあえずそうするしかないか……。はぁぁ…これで私が囮にされる確率、一気に上がっちゃったよ……。

 

 

 向こうのパーティー、大丈夫かな。あの召喚士の子、無事だと良いな。上手く逃げられてたらいいけれど、もし捕まっちゃってたら……うっ……。

 

 

 い、いやいや、無いって。さっきも自分に言い聞かせたけど、そんな噂は今まで聞いたことすら無いんだからさ。そんな、ね? 解剖とか実験とか、いくらエイリアンでもやらないよ。

 

 

 そうそう、誰かが実際に改造されたって話はない上に、解剖光景とかを見たってのも聞かないもん。私達で実験するよりも他の動物でやった方が遥かに簡単なはずなのに。ほら、それこそよくネタにされるのは牛とかがキャトルミューティレーショ――ひゃああっ!?

 

 

 な、なに!? 今のドシャって大きな音!? 何か大きなものが倒れたかのような……! ど、どこから……って皆、何を見てるの? なんで揃って道の先を、慄いたような目で……は……。

 

 

「モ…モォゥ……」

 

 

 ……え? う、牛……? えっと…ここ、変わらずUFOの中…だよね? うん、だって灯りは紫だし、壁とか気味悪い丸みや膨らみまみれのエイリアンデザインだし、変な発光液体が血管みたいに通ってるし、あっちの窓の外には沢山の星が見えてるし。

 

 

 でも今少し先の横道から現れたのは、普通に地上で草とか食べてそうな牛。なんでこんな宇宙に? しかも調子が悪いのか、倒れてる。さっきのはきっとその音で――ひっ!?

 

 

「あ、足が、身体が……!? っ…!」

 

 

 ひきつった口を慌てて抑えたけど…あ、あれ何!? 牛の足が、後ろ半身が、()()()()()()()になってる!? 青色緑色で、うごうごしてて、うにょうにょしてて、え、エイリアンみたいな……ひいっ!?

 

 

「い、今の…光の刃か…!?」

「しかも牛の中からじゃなかった…!?」

「な、なにか出てくるぞ…!」

 

 

 今度は皆も声を漏らす…! 更に牛の背中がスパッと切れて大きな穴が開いて、何かが這い出てきて……あぁっ!? 

 

 

「さ、さ、さっきのエイリアン!」

 

 

 お、同じヤツかはわからないけど、それが牛を中から食い破って、いや切り破って……!? 身じろぎも出来ずにただ私達が見ていたら、更に牛の中から小さいUFOがふよふよと…!

 

 

 エイリアンはそれに牛の全体や自分自身を照らさせ、カサカサ行ったり来たり。何か調べてるみたいに動いた後、そのまま横道へと歩いて姿を消して……ぁっ…!?

 

 

 う、牛が動いた……いや違う、あの感じ、引きずられてる! もしかしなくてもあのエイリアンが引っ張ってるよね!? 後ろが触手の謎牛はUFOに照らされたまま、やっぱり横道へと消えていって、その引きずる音もすぐに聞こえなくなって……。

 

 

「……なんだよあれ…!」

 

 

 そ、それしか言えないよあんなの…! ど、どういうこと…!? あの牛、キャトルミューティレーションされてたってこと…!? よくあるエイリアンの噂みたいに…!

 

 

 う、ううんそれだけじゃない…! あの牛の、明らかに異常だった身体……。ま、間違いないよね…あれって、どう見ても改造されて……っ! う、噂と違……!

 

 

「…あのクソエイリアン、追いかけるぞ!」

 

 

 何でぇ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出てこいクソッタレェ…俺の剣が待ってるぞ…!」

 

「ちょっと! なんで追いかけんのよ!?」

「絶対ヤバいぜあいつ…!」

 

 

 先頭を一人行く剣士を追いかけながら、他二人は声ひそめつつ抗議を。私も口には出していないけど、ぶっちゃけ責めたいよ。なんでわざわざエイリアンが向かった方向へ行かなきゃなの…!?

 

 

「んなもん決まってんだろ! あいつに近いほうが宝物庫も近いはずだし、今の内あの一匹をぶちのめしちまえばこの後も楽になる。よく見ればやっぱチビだし、UFOの数も少ねぇ。ビビってんじゃねえよ」

 

 

 そんな私達へ、苛立ったように剣士は吐き捨ててくる。いやいや……宝物庫が近いかはわからないし、寧ろ敵の巣窟に近づくだけだから他に居てもおかしくないし、UFOなんて何処から補充されるかわからないし。正直、説得になってないよ。

 

 

 それに、あの牛に容易く穴を開けて出てきた感じからしても、絶対強いよあいつ。ちっちゃい分攻撃も当てにくいし、支援のUFOで数の利も打ち消されちゃうし。

 

 

 はぁ…せめて戦うなら、ここみたいな通路じゃなくて開けた場所がいいよ。魔法の通りが悪いし、さっきのように奇襲されるだけだもん。というより、あのパーティーと合流してからのほうが――ん? あ!

 

 

「あっちのほう、開けてるみたい!」

 

 

 丁度よく良さげな道を見つけ、皆に声をかける。こんなとこでうろうろしているよりはマシだもん。すると他二人も同じ気持ちだったらしくそれに乗ってくれて、剣士も後から渋々ついてきてくれた。

 

 

 ふぅ。これでちょっとは一息入れられるかも。それに広いんだったらもしかしたら向こうのパーティーもそこにいたりするかもしれない。そしたら――え。あ……あ、あぁぁ!?

 

 

「「きゃああああああっっっっ!!?」」

 

「どうした!? ッ……こりゃあ……!」

 

「培養……されてんのか……!?」

 

 

 悲鳴をあげた私と弓兵の子に続いて、残る二人も慄いて! そ、そりゃそうでしょ!? こ、これなに、この大量に宙づりにされた、()()()()()は!!?

 

 

 み、見間違いじゃない! どう見てもあれ、よく噂とか本とかに出てくる培養ポッドだよね!? それが天井に大量にみっちり吊るされていて、全部中身入りで、こぽこぽと音を立てていて! 

 

 

「おわっ!? なんだこの床、透明じゃねえか!?」

「ポッド、下にも大量にありやがるぞ……!!」

 

 

 へっ!? ひっ!? ほ、本当だ…! 床が青く透けてる!! なにこの材質、エイリアンが使うバリアの力場みたいなやつ……!? よく見ると手摺もそんな感じだし……!

 

 

 ここ、吹き抜け二階のせり出した通路みたいな場所なんだ……! 床の透明や手摺から下を覗くと、確かにそこにも大量の培養ポッドが。なんか粘液みたいなのも張ってて、なんかの茸か卵みたいにも見えて…うぇえ……!

 

 

「色々捕らえてやがんな……!」

 

 

 うわうわぁ…! 改めて培養ポッドの中身を見てみると、色々いるぅ…! さっきみたいな牛とかの動物、竜とかの魔物、エイリアンっぽいものまで…! 人に似てるエイリアンみたいなやつもいるけど、もしかして改造済みとか…? あ、あぁ!?

 

 

「ねえちょっと!? あれ冒険者じゃない!?」

 

 

 弓兵の子も同時に気づいた。そのポッドの中に、よく見る装備を身につけた冒険者もいる! 誰か捕まっちゃったのかな……な、なんか体の端っこあたり溶けだしてない!?

 

 

 っ、もしかして………………よかった、いない。さっきのパーティーの顔触れはポッドの中にはない。というより冒険者以外の人の姿はない。ならきっと、ダンジョンのどこかで生きてるはず。多分…!

 

 

 でもまさかあの噂まで、エイリアンが色々攫って実験やら保存やらをしてるって嘘話まで真実だったなんて。って、これ本格的にヤバいんじゃ……。もし捕まったら、私達もあんな目に……!?

 

 

 そ、そんなの、絶対嫌! なんとかして無事に帰らないと、死に物狂いで戦わないと! 私の魔法のありったけを叩きつける気持ちで――。

 

 

 

「おっ、おい!! 後ろだッ!」

 

 

 

 えっ? 後ろ……? っ!? な、なにかが飛び掛かってくる影、大きな蟹、って、ひっ!? え、エイリアン!? 

 

 

 まさか隠れ、ま、マズい、逃げ、躱し、あ、あれでもこの角度、私じゃ――!?

 

 

「は? ちょっ!? むぐゥッ!?」

 

 

 あ、ああああっ!? 弓兵の子の顔に、エイリアンが貼りついちゃった!!? 足をがっちり頭にかけて、尾を首にぎっちり巻きつけて、顔を完全に覆うように完全にハガーしてる!!

 

 

「むー!? むぐぅっー!?」

 

 

 そのせいで喋れないのか、弓兵の子は声にならない声で必死にエイリアンを引きはがそうとしてる……! でもバリア力場があって、エイリアンの足に触れられてない!

 

 

「チッ、いつものバリアか! 叩き割ってやる!」

「待て待て待て! 下手したら顔まで切り裂くぞ!?」

 

 

 構える剣士を武闘家は慌てて止める…! た、確かにあのバリアの強さがどれほどかはわからないし、もし振り下ろす最中にエイリアンが逃げたら……っ!

 

 

「わ、私に任せて!」

 

 

 こういう時こそ私の魔法の出番だよね!? あの子の顔には当たらないように、エイリアンだけ当たるように! 

 

 

「『ファイアベンド・ジャベリン』!!」

 

 

 

 しなる炎の槍を、弓兵の子を囲むように大量展開! そのまま全方位から、エイリアンだけを削ぎ刺すように、いけぇっ! 蟹なのか虫なのかわからないけど、串刺しにしちゃえば倒せるはず! 

 

 

「――!!」

 

 

 くぅっ…! エイリアン、ちょっとビビったのかピクッと動いたけど…まだ顔に張り付いたまま、バリアも破れないまま。弓兵の子は呼吸もできなくなってきたのか苦しそうにもがいてる…! じゃ、じゃあえぇとえぇと、これなら!

 

 

「『プリズムミーティア』!」

 

 

 炎槍攻撃を続けつつ、頭上へ詠唱。空中に現れた魔法陣から飛び出したのは、虹の光波を撒き散らす結晶小隕石達! エイリアンなら宇宙に住んでるはずだし、隕石もきっと恐ろしいはず。それを弓兵の子にぶつけないコースで、バリアを貫かせるために!

 

 

「――!?」

 

 

 ってわっ、ほんとに効いた!? エイリアン、急に飛び逃げて壁をカサカサと登っていく! 炎槍と結晶隕石は弓兵の子の顔回りを掠るように外れて…!

 

 

「ゲホッあっつ!? ちょっと、髪先焦げたし千切れたんだけど!?」

「ご、ごめん…!」

「おい! ボーっとしてんじゃねえ! あいつ逃げるぞ!」

「くっ…! 届かねぇ…!」

 

 

 そ、そうだ折角のチャンス! 器用に壁を這って逃げていくエイリアンを、剣士と武闘家が追ってる! けど高く逃げてるから近接職じゃ当たらなくて…! こ、今度こそ私が!

 

 

「ちんたらしてんじゃないわよ! 『ウォールアロー』!」

「う、うん! 『プリズムミーティア』!」

 

 

 先に動いた弓兵の子が、着弾点に壁が聳え立つ魔法矢でエイリアンの動き阻害を。それに急いで続いて私も、効いてるっぽい魔法を!

 

 

「――!!!」

 

 

 エイリアン、逃げ場を無くしたみたいでその場で身を固めて防御態勢をとりだした! バリアで凌ぐ気みたい。でももう人質はいないんだもの、それは悪手だよ!

 

 

「『プリズムミーティア・レインボーシャワー』!」

「――!?!?!?」

 

 

 私の数少ない取柄、派手な魔法をくらえ! 結晶隕石は細かく破砕し、虹の爆発を伴って降り注ぐ! エイリアンは一瞬にして爆炎ならぬ爆虹に包まれ眩しく染まって!

 

 

「おいおいおい…! ダンジョンの壁まで削ってやがる…!」

「ってこれ、なんかおかしくねえか?」

「ちょっとなにしてんのよ!? 違うわよ、あれ私の壁!!!」

 

 

 え。あっ…や、やりすぎちゃった…!? せっかくの囲いまで壊しちゃった! エイリアンがカサカサ逃げてってる! は、派手すぎた…!

 

 

「こんの無能! アンタは阻害役でもやってなさい!」

「うぅう…! 『ファイアフェンス・ジャベリン』…!」

 

 

 怒られて慌てて、残っていた炎槍をエイリアンを捕らえる囲いに…! 幸いエイリアンはまた捕まってくれて、そこに向けて。

 

 

「アタシの顔に張り付いた罰! 『ブラッドレインシュート』!」

 

 

 弓兵の子は、血と怒りに染まったような一矢を! それは大量に分かたれ雨のように、だけどエイリアンの身に集中するように――あぁっ!?

 

 

「「「「飛んだ!?」」」」

 

 

 壁で固まっていたエイリアンが、突然空中に! でもあれ、飛んだんじゃなくて闇雲に逃げてるって感じ。足のカサカサ動き、さっき以上に酷い動きだもん。

 

 

 けど、それこそ悪手。だってその落下予測地点には、剣士と武闘家が渾身の一撃を溜めて待ってるんだから! これで多分勝てる。怖かったエイリアン相手も、なんとか倒せ――へ?

 

 

 今なんか、吊るされてるポッド群の隙間がチカリ光った気が……えっ!? なんか来てる! なんか飛んできてる!!? あ、あれって!

 

 

「UFOぉ!?」

 

 

 突然現れたのは、カクカク軌道を描く高速UFO! しかもなんだか大きくない!? さっきまでのとは違って、それこそあのエイリアンが上に乗れるぐらいのサイズで……ああっ!?

 

 

「「「なっ!?」」」

 

 

 落下してるエイリアンを、UFOが助けるように掬っていっちゃった!? それで態勢を整えたエイリアンは足でしっかりUFOを掴み、空中浮遊形態に……!

 

 

 しまったぁ……さっきあれだけUFOいたんだから、いてもおかしくないじゃん。あれでも、じゃあなんでエイリアン、今UFOなしで攻撃してきたんだろう……?

 

 

 わざわざ顔に張り付く攻撃なんて危ないし、しかも弓兵の子を見た感じダメージまったくなさそうだったし。何か目的があったとか…? 例えばよくある話だと……卵を……とか……いやいや……。

 

 

「クソッタレが! 降りてきやが……うおわなんだ!?」

「牛切った光刃剣か! ブォンブォン音立ててんな……!」

「このどんくさ魔法使い! いつまでボーっとしてんのよ!」

 

 

 あっ、皆戦ってた……! UFOの上に乗ったエイリアンも、いつのまにか尾で光剣を、足の数本で光線武器を構えて攻撃をし返してきてる。と、とりあえず支援しないと!

 

 

「テメこのッ! その光剣熱いのかよ!? おい魔法使い!」

「『エンチャント・アクア』! こ、これで…!」

「おーい! この辺に足場くれ足場!」

「う、うん! 『ヴァインブリッジ』! その蔦使って…!」

「うわUFO増えたんだけど!? アンタ殲滅しときなさい!」

「え、えっとえっと…! さ、『サンダーフォール』!」

 

 

 剣士の剣を冷たく青く光らせて強化したり、武闘家の足場になる蔦橋を縦横無尽に生やしたり、どこからともなく増えてきたUFOを倒すために雷を沢山降らせてみてるけど、エイリアンは中々倒せない…! というより、誰の攻撃もほぼ当たってない!

 

 

 あのエイリアンのしっぽ剣攻撃も光線武器乱射もバリア力場も面倒だけど、なによりあの乗ってるUFOの動きがおかしい! 私でもわかるもん、なにあのエイリアンとは違う気持ち悪い動き!?

 

 

 慣性とか無視して急に動き変えるし、私達の攻撃の兆候を読んだみたいに躱すし、それでいてこっちの隙を逃さず詰めてくるし。まるであのUFO自体が生きてるみたいで、すっごく面倒な魔物と戦ってるような気分になって……! 

 

 

 しかもそれ、周りの小型UFOも同じ感じで。さっきみたいな飽和攻撃こそ仕掛けてこないけど、あとちょっとで決められそうなところで必ず邪魔を挟んでくる。そしてやっぱり攻撃をひょいひょい避けるから全く数減らないし……!

 

 

「お、おい! このエンチャント弱めろ! 出力良すぎて振りにくいわ!」

「くっ…! 蔦の隙間をくぐって回避しやがる……! ちょこまかと……!」

「ちょっ、雷危なっ!? 加減しなさいよ!! またアタシの髪焦がす気!?」

「ご、ごめんなさい…!」

 

 

 なんなら私の魔法が邪魔になってる感あるよこれ……! えっと、えっと、えっと、ど、どうすれば……!

 

 

「KaKaKaKaKa――!!!」

 

 

 ひっ!? え、エイリアンが鳴いた!? そしてUFOごと急に離れて空中高くに。な、なにを……わわっ、UFOから光線撃ってきたぁ!? 

 

 

 あ、あれでもそれ私達に向けられた攻撃じゃなくて、少し離れた通路の床にピーッて? 何して……え、そのビーム当てられた場所から何かが伝わるように、青透け不思議床を這うように光が通ってきて……。

 

 

――シュイン。

「「「「えっ」」」」

 

 

 へ……これって……床が、通路が……消えたぁ!? そ、そっかエイリアンのバリア力場みたいなやつだから、自在に消すことも出来ひゃああああっ!!!

 

 

 お、落ちるぅ!! このままじゃあの培養ポッド群の中に、ねちゃねちゃの粘液の中にっ、待っ、落下耐性の魔法を、間に合わな――へ?

 

 

 と、止まった……? 体がふわふわして……いや、この慣れないふよふよ感覚って! まさか……やっぱり!

 

 

「またUFO…!!」

 

 

 私を落下から守るように、幾つかのUFOが私の周りに…! それでアブダクションするみたいに、あの天井の培養ポッドみたいに私を吊り下げてきて……!?

 

 

 あっ、そうだ皆は!? 皆もだ!!? 一緒に落ちた弓兵の子も、なんとか蔦橋にしがみついてた剣士と武闘家も、同じくUFOにアブダクションされてる! 

 

 

 これ身動きを封じられたも同然だから何をされても……わわっ!? う、動き出した!? UFOが動き出して、私も皆もどこかにバラバラに運ばれてく!?

 

 

 っ、ま、まさか……このまま実験されたりポッドに詰められちゃったり!? そ、それは嫌! それだけは――きゃんっ!?

 

 

 痛ぁ…急に放り出してきたんだけどあのUFO…! そんな距離も移動してないのに。って、ここ、さっきのポッド置き場から伸びてる通路? なんで?

 

 

 いやそんなこと考えてる場合じゃない。とにかく皆と合流しないと! バラバラなところを狙われちゃったら……ひわあっ!?

 

 

「か、隔壁が!?」

 

 

 急にガシュンッて隔壁が閉じて、さっきの場所への道を封じて!? ちょ、え、え、えぇええええ!?!?

 

 

「私達まで分断してくるの……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆ぁ……どこにいるのぉ……」

 

 

 この道、さっきよりも暗いし、変に幅広めだし、側面には変な形と模様の管とかがみっちり通りまくってるし、絶対正規の通路じゃないよ……。でも今更引き返せないし、引き返したところで……

 

 

 さっきの隔壁、とてつもなく硬くてどんな魔法でも壊れなくて。しかもその音を聞きつけたのか、小型UFOが現れて索敵みたいなことをしてきて、慌てて逃げるしかなくて……。

 

 

 だからこうして、声を潜めながら皆を探すしかなくて。って、向こうの曲がり角からUFOが…! じゃ、じゃあこっちの道に……ふぅ。はあぁ……なんでこんな目に……。

 

 

 ……本当になんなんだろ。あのエイリアン、一体何がしたかったんだろ。急に私達を分断してくるなんて。さっきの戦い、別に手をこまねいていたわけじゃなさそうだったのに。私のことも大して狙わなかったし。

 

 

 寧ろ私達で遊んでいたというか、私達の動きを楽しみながら戦ってた感じというか……う~…よく表現できないけど、あんな簡単に私達を分断できるならもっと早くやっててもおかしくないよね。

 

 

 それこそ、さっきのパーティーと分断された時みたいに飽和攻撃でもすれば。でもそんなことはしてこなかったし、各個撃破狙いだとしてもおかしい。わざわざ逃げる道があるところに放り込んできたんだから。

 

 

 あ、それとも疲弊させて簡単に捕まえられるようにして、実験材料にする気とか……も、変かも? だとしたらなんで私を見失ってるんだろって感じだし。もうこれ、わざと私達を逃がして狩り的なことを楽しんでるとしか……うぅうぅんん…????

 

 

 はあぁぁ……わかんない。エイリアンの考えなんてわかんないよ。やっぱりエイリアンはエイリアン、魔物よりも意味わかんない宇宙生物。もうそれでいいや。

 

 

 こんなこと考えてないで、誰かと合流しなきゃ。皆、怒ってるだろうなぁ。また顔合わせたらグチグチ言われるんだろうなぁ……ちょっとやだなあ。

 

 

 そうだ、あっちのパーティーと合流できないかな。あの召喚士の人とまたお喋りしたいな。言葉はよくわからないけど、エイリアンよりかはわかるし。生きてればの話だけどさ。

 

 

 …………そういえば、エイリアンにも翻訳魔法効いたりするのかな? まあ私の魔法じゃ大した効果にもならないだろうけど。そしたら……いや、まともに喋ってるわけないか。だってエイリアンだもん。

 

 

 って、だからこんなどうでもいいこと考えてないで、見つからないうちに誰かしらと……ん?

 

 

「なに? この変な音……と……声!?」

 

 

 どこからかザザザという途切れ途切れみたいな音と、微かな呻き声みたいな声が聞こえる。UFOが立てる音でも、あのエイリアンの鳴き声でもない。じゃ、じゃあもしかして!?

 

 

 警戒しながらその音の元へ慎重に……わ、ちょっと明るい部屋がある。多分あそこだ。周りにUFOは……いない。一応慎重に、部屋を覗き込んで……あれって?

 

 

「魔導画面? いや、違う?」

 

 

 魔法の感じはない。けれどまるで魔導画面みたいな、空中投影の映像がいくつか浮かんでる。近づいてよく見てみると、そこに映ってるのは……あっ!?

 

 

「皆!? 向こうのパーティーも!!」

 

 

 はぐれた三人が、そして私達と同じように各個分断されたっぽい向こうのパーティー四人が! 見た感じ皆まだUFOの中にいて、それぞれ合流するために彷徨っているみたいだけど……うっ、画面がザザザってノイズが走って、よく見えな――。

 

 

「う……うぅ……」

 

「へ? きゃああああっ!!!?」

 

 

 変な声を聞いて、振り向いたら……ひ、悲鳴でちゃって! だ、だってあれ!?

 

 

「つ、捕まって……!? だ、大丈夫ですか!?」

 

 

 この部屋の奥に更に部屋が、それも巨大な窓みたいな力場がはめ込まれた部屋があって! その中に、どこかの冒険者が変な肉の膜に絡めとられて逆さに吊り下げられてる! た、助けなきゃ…ひっ!?

 

 

「な、なにこれ…!? た、卵っ!?」

 

 

 その冒険者の足元、じゃない頭の下には、何個もの卵みたいなのが…! 私の腰に届くぐらいの大きさがあって、殻が肉みたいに気持ち悪くて、上に十字の切れ込みみたいなの入ってて、粘液とか変な肉のドロドロに包まれてて……うえぇええぇ……!

 

 

 

 あっ、そうだ、これを壊しちゃえばエイリアンは増えないかも! って、その前にあの人を助けないと……って、どっちをやるにもこの窓の力場を壊さないと! 魔法を詠唱して――えっ…!

 

 

「ゆ、UFOが…!?」

 

 

 急に部屋の中の天井が開いて、UFOが出てきて!? 冒険者を肉膜から千切り取るように引っ張りあげて……ちょっ、どこに連れてく気!?

 

 

「に…」

 

 え。あの人、何か喋って…! 何を……――。

 

 

 

「にせもの…に……気を……つけろ……」

 

 

 

 へ……にせもの……偽物? な、なんの……あぁっ! あの人、そのまま天井の奥に連れ去られて……ど、どうしよ――ひッ!?

 

 

 い、今響いたパキッて音って……。まるで卵の殻が割れるかのような音って……まさかぁっ!?

 

 

「KaKaKaKaKaKaッッ!!!」

 

「ひいいいいっ!?」

 

 

 や、やっぱりぃ!!? 卵の一つが、上の十字切れ込みがパカァッて割れて、中からあのエイリアンが産まれてきたぁ!!! べ、べちょって! 目の前の窓にべちょって貼りついてぇ!

 

 

 た、倒さないと! 他の卵が孵化する前に倒さないと! ば、爆発魔法っ!!

 

 

「KaKaKa!」

 

 

 へっ!? エイリアンが跳ねて、窓の力場も消えて!? 爆発魔法がそのまま卵に直撃して!!? や、やった…!? なんで窓を消してくれたかはわからないけど、これでなんとか……。

 

 

「KaKaKaKaHaKaッ!」

 

 

 ひっ! なんとかなった訳なかったぁ!! あのエイリアンがさっきみたいにUFOに乗って、尾で光刃剣を振りまわしながら部屋から出てきちゃった!!? 

 

 

 そっかそのために窓を消して、えと、えっと! ぷ、『プリズムミーティア』!!

 

 

「――!?」

 

 

 えっ、あ。闇雲に撃ったプリズムミーティアがエイリアンの尾に当たって、上手く光刃剣を吹き飛ばして。剣先が消えて柄だけになった剣は、カランカランと音を立てて床に。

 

 

 今更気づいたけど、あの剣、なんか柄頭に丸みあるんだ。ちっちゃいUFOくっついてるみたいな変な形で、エイリアンらしいデザインで……って、あ!

 

 

 これチャンスだよね!? い、急いで詠唱して、止めを刺さないと! 光線武器を取り出さないうちになんとか倒さない……と……へ。

 

 

「KaKa!」

 

 

 嘘……!? エイリアンがひと鳴きしたら、その呼び声に応えるように、床に転がった剣柄がふわっと浮き上がって!? そのままエイリアンの尻尾に戻ってきたんだけど!!? 

 

 

 ちょっ、待っ、それズル、た、助けてぇ!!

 

 

 

 

 

「――ふ、『フローズンエッジ』! ぽ、『ポイズンバブルマイン』! す、『ストームウェーブ』! あ、あとは、あとはぁ…!!」

 

 

 ひ、ひたすらに逃げながら、撃てる魔法を片っ端から放つしかないよこんなの! でもあのエイリアンは右へ左へ宙返りさせてひょいひょい回避、やっぱりUFOを別の生き物のように浮遊させながら楽しそうに追ってきてるし!

 

 

 氷の刃連射も、毒泡の空中機雷も、波のように押し寄せる小型竜巻も、合間にやたらめったら撃ってる魔法弾も、他諸々もの魔法も何一つ当たらない! も、もう魔力が、ぎゃんっ!?

 

 

 痛いぃい……え、これ、壁!? 隔壁!!? い、い、行き止まり!?!? ちょっ、ここまで一本道だったのに……あっ……。

 

 

「KaKaKa!」

 

 

 終わった……。エイリアン、もう目の前に来ちゃった。もうピッタリ閉じた隔壁に背中を貼りつかせるしかできないよ……。魔力回復ポーション飲む暇なんて当然ないし、今の魔力で撃てそうなの魔法って…これぐらいだよ。えい。

 

 

「〇◎%わ#▼!△&何の+k魔法◆×$=」

 

「翻訳魔法だよ……。って、言葉喋ってたんだ……」

 

 

 こんな状況でもなかったら付与する発想すら忘れてたけどさ……。でもだからなんだって話。そりゃエイリアンも生き物なんだから会話ぐらいするに決まってるか。もうどっちでもいいや。

 

 

 あ、でももし私の言葉が通じるなら、私の体で実験したりポッドの中に閉じ込めたり遠い宇宙に連れ去るのだけは止めてほしいな~……って……はあぁ……なんてね。詳細不明のエイリアン相手にこんなお願いしても無駄に決まってるよ。

 

 

 どうしよう。もう本当にどうしようもないよ。皆には悪いけど先にやられちゃおうかな。きっと破れかぶれに突撃すれば、エイリアンは前みたいに私を復活魔法陣送りにしてくれるはず。

 

 

 実験材料になるのを避けるにはそれしかない。うん、そうと決まれば勢いよく――。

 

 

――ガシュンッ

「うぎゃっ!?」

 

 

 ちょ、えっ!? 正面に突撃しようと思ってたのに、何故か後ろに身体が倒れて!? 今の音、もしかして背にしていた隔壁が急に開いたの!? 寄りかかっていたから私そのまま倒れて、わわっ、わわわっ!

 

 

「おっとっと~」

 

 

わっ? な、なにこの感覚。柔らかくて暖かい何かに身体を受け止められて……! もしかして別のエイリアン…う、ううん! 違う! 今の声、これって!!

 

 

「し~さ~、うさがみそ~れ~ッ!」

「「ガルルルァ!!」」

 

 

 刹那、私の横をすり抜けエイリアンへと飛び掛かったのは、二匹の…石造りの獅子!? あ、あれって召喚獣!? ならやっぱり、この人は!

 

 

「うんじゅん、うさがみそ~れ~」

 

 

 ごぽっ!? な、なにか口に……この感じ、魔力回復ポーション! あ、あ…!

 

 

「ありがとう!」

「なはは~♪ ぐぶり~さびたん♪」

 

 

 私の体を支えてくれてたのは、召喚獣で助けてくれたのは、魔力回復ポーションを飲ませてくれたのは、向こうのパーティーの、あの召喚士の子!!! もっとお礼を言いたいけれど、今は!

 

 

「『プリズムミーティア』!」

「おお~! わ~にん! し~さ~!」

「「ガルルルァ!!」」

 

 

 私の魔法と召喚士の召喚獣で、波状攻撃を! あのエイリアンはやっぱり躱すけど、押されるようにどんどんどんどん離れて、何処かに逃げて……やったぁ!! た、助かったぁ……!

 

 

「有難う!! 助けてくれるなんて!!!」

 

 

 改めて召喚士にお礼を、手を取りながら! すると召喚士も手をふにゅっと握り返してくれながら。

 

 

「ゆいま~る。いちゃりばちょ~で~♪」

 

 

……なんて? 

 

 

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