ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~ 作:月ノ輪
「なはは~♪ ついて来てくれるなんて、二人共ちむじゅらさんや~♪」
「お、置いていける訳ないじゃん! こんなとこ……ちょっ速いって!?」
「……宝は置いてきて正解だな。しかし…どこまで続いているんだ」
狭い、けれども重装戦士でもなんとか潜れるダクトの中を、皆で四つん這いで進む。勝手にダクトへ入っていった召喚士を止めはしたけど、のほほんなははんなこの子を私も重装戦士も説得しきれず、流れでこんな目に。
はあぁ……そりゃあのヤバい尾長蟹エイリアンは怖いけど、この子を見捨てられないよ。それにさっき話したエイリアンの謎も、急に開いて誘うように光ったこのダクトも気になるっちゃ気になるし。あと。
「もっかい聞くけどさ、本当なの? その…石獅子召喚獣が、エイリアンは怖い存在じゃないって言ってるのって」
「やんど~。し~さ~、神獣だからわかるみたいでな~。間違えたわけね~んしがや~」
「……事実、それに従って来ていた今まではただ戦うだけだった。エイリアンの様子がおかしいのは今回だけだ」
俄かには信じ難いけど……召喚士は嘘つく性格には見えないし、重装戦士もそう保証してくれている。信じてもいいよね。もう今更後には引けないだけだけどさ。てかあの石獅子、神獣だったんだ。もしかしてこの子、結構凄腕?
それはともかく。本当にUFOの中に戻っちゃって、しかも変なルートから侵入しちゃって大丈夫かな…。皆の話的にエイリアンの卵はまだどっかに絶対あるだろうし、UFOに至っては一台たりとも倒せてない。もし見つかっちゃったら……!
「お~! どっかに繋がったみたいさ~! ぬ~? ほほ~!?」
へ? 召喚士がダクトから出て、変な声上げてる? いったい何が、よいしょ……え。
「え、えぇえぇえええッ!? ど、どこ、ここ!?」
「……本当にUFOダンジョンか…?」
続けて出てきた重装戦士も、私達と同じく目を丸く…! いやそうなるよ!? 何ここ……なんで、なんでこんなに、
さっきまでいたUFOダンジョン内部は、薄暗くて、赤とか紫とかの不気味な光ばっかりで、ねとねとの粘液が滴ってて、ぐちょぐちょの肉が膜みたいに張ってて、重苦しい隔壁が閉まってて……! でも、ここは違う!
昼間みたいに明るくて、白くつるっとした道で、塵一つなく清潔で! も、もしかして変な場所に転移して……う、ううん。大きな窓から見えるのは宇宙だし、星の位置的に場所もほぼ変わってない。間違いなくUFOダンジョンの内部だ。
「こんな場所もあるんど~」
「……どういうことだ? 何故ここまで違う…?」
きょろきょろと楽し気に見回す召喚士と、混乱したように唸る重装戦士。私は、なんだかドクドク動悸が……。なんか、触れちゃいけない裏側に踏み出してしまった感がひしひしと……うひゃあっ!?
「な、なんかあっち開いて!?」
「……ここは通路だったのか」
急に道の端が、音もなく開いて!? な、なにかの扉だったみたい…! そしてその開いた扉は、ダクトと同じように招くようにチカチカ光って……。
「二人共、りかっ~!」
あっ、召喚士がまたずんずん先に! だ、大丈夫かなぁ……。
「――……どうやらここが道の先のようだな」
「どれどれ~、お~奥からなんか色んな音聞かり~ん」
「えっと、一応魔力ポーションを…あっ、置いてきちゃったんだった……」
清潔なつるつるエイリアン通路を進んでみたら、たどり着いたのはこの大きな扉。一応魔導書を構えて、よし、準備万端……! いつでも!
「……開けるぞ。フンッ…っと、軽いな」
重装戦士がそう力を入れる必要もなく、扉は開いた。この奥には、一体……え。
「え……あ……え……?」
「……な、なんだこれは…!?」
「ほっほ~! ちむどんどんっ~!」
なに…ここ…………本当なに!? 何なの、ここ!?!?!? 広くて、明るくて、綺麗で……縦横無尽!!?!!?
なんかの街じゃないかってぐらい開けてて、なのに空中に光の道が何本も何本も重力無視で通ってて、見たこともない灯りとか機械とか浮いてて! なんか映ってて、なんか賑やかで!!!
しかも…その光の道をぶら下がったり横になって歩いているのは、その賑やかな声だか音だかを出しているのは!
「「大量の……!」」
「えいりあん~!」
だよね! 間違いないよね!!? だって、だって、見たことあるエイリアンがいるんだもん! 前に遭ったタコみたいなのも、さっき戦った蟹みたいなのも!!
でもそいつら、UFOの環境が違うのに平然と過ごしてて! しかも、戦った時よりも全然落ち着いていて、仲間や他エイリアンと楽し気に語らってる感じで!! え、え!?!?
「……このダンジョン、どうなっているんだ…!?」
本当そう! どういうこと!? 絶対これ見ちゃいけないものだってビンビン感じるんだけど! ね、ねえ、見なかったことにして引き返さな……きゃっ!?
「あっ!? 私の魔導書!?」
「…なっ!? 俺のヘルムが?!」
手にもってた魔導書が、重装戦士のヘルムが急に何かに盗られて……って、あれって!
「さっきのおっきめゆ~ふぉ~!」
だ、だよね!!? ついさっき戦った、エイリアンの支援や乗り物役をしていた
「なはは~! 追いかけよ~♪」
う、うん! ま、待って! 返してよぉっっ!!
「こ、この道、高いんだか逆さなんだか…! ひっ…でかエイリアン…!」
「よしよ~し、怖くないさ~♪ えいりあんさん、足元ぐぶり~さびら~」
「……見られてるな。しかしあいつ、俺達を案内しているのか?」
UFOを追いかけてたら、いつの間にか空中の光の道を歩く羽目に……。さっきの扉の位置からして絶対これ変な向きになってるし、頭上の離れたところを逆さのエイリアンが歩いてるし、でも普通に立てててすっごい違和感が…!
そんで私達の傍にも色んなエイリアンが当然のごとく歩いてて。人っぽいのもいるけど魔物みたいな身体のも多くて、今なんか私達の何倍もあるエイリアンの股下潜ったし…! 皆目っぽいとこをぎょろぎょろさせて見てくるし……!
なのにそんな苦労してるのに、UFOには絶妙に追いつけないんだけど! 足速くしたら速く逃げるし、足遅くしたらUFOの動きも遅くなるし、なんなら戻ってきさえするし。これ絶対重装戦士の言う通りだよ。どう見てもあいつ、私達をどっかに連れてこうとしてるよ。
はぁ……撃墜したいけどこの状況で魔法撃つわけにいかないし、魔導書盗られてるから威力半減だし、そもそも当たる気がしないよ。魔導書とヘルムをふわふわ掴みながら道を作るように飛んでるあの感じ、さっきの戦闘より更に動きがいいもん。やっぱり中に誰か入ってんじゃないのってぐらい。
「お~! あれ、酒場だ~! あっちには教会~! 街みたいさ~!」
それで私達が警戒してる中、召喚士は楽し気にきょろきょろはしゃいでるし。こうやって私に腕を借してくれてなかったらどっかふらっといなくなってそうなぐらい。……でも、確かにここ、完全に街だよね。
光の道が分かれた先にあるのは、地上で見覚えのある建物ばかり。中には森や洞窟みたいなとこまで。けど、そこにいるのは当然のごとくエイリアン。変な手や念力やらでジョッキを掴んで乾杯したりしてる。
ここ、本当にUFOダンジョン?巨大UFOの中? どっかが街ごとUFOにアブダクションされたって言われても信じられるよ。……そんな訳、ないよね? もしそうだったら人ごと……
「……おい、正面のあいつは…!」
「え。あ!? ひ、人!?」
嘘…!? 丁度道をこっちに歩いて来てるのって、間違いなく私達と同じ人! 見た目も服装も、街中歩いてる感じの一般人! えっ、も、もしかして、本当に街ごと!?
「はいた~い! うんじゅん、どこの人~?」
召喚士相変わらず臆することなく話しかけに行った!! で、でも今はそれが有難いかも……へ?
「:&!○■▲×*☆%!!?」
な、なんて……??? 今、この人の口から人らしからぬ異音が出た気が……? え、召喚士と同じく訛ってたり? えっと、翻訳魔法。
「「×○&♭星▲☆!来□た%」」
だ、駄目っぽいんだけど…! ほぼ何言ってるかわからないよ…! 召喚士も不思議そうに首をひねってるし。なんか、まるでさっき間違えて翻訳をかけたエイリアンみたいな……え。
……いやいや、そんな、そんなまさか。まさか……え、あ。UFOがこっちに来て、私達の目の前の人と交信をするみたいにして。その人は何か了解したようにこっちを向き直って、腕輪を捻ってから。
「ハイサイ ボウケンシャ」
えっ?! 急に言葉が聞き取れ、へっ!? プシュウッて音が、ひっ!? か、身体が…この人の顔が、パカッて開いぃっ!? な、中身が見えちゃ……えっ。
「ワレワレハ エイリアン ダ」
な、中身……ちっちゃい、エイリアン…? それが機械の中に、機械に満ちた顔の中に座ってる感じで……あっ、顔閉じてく。普通の顔に、表情に戻った……。え、握手? こ、こう?
「ウレシイ! カンシャ! ジャアネ!」
私達と握手を交わしたその人、とっても嬉しそうな表情を浮かべて離れていっちゃった……えっと……ええぇぇぇ……?
「……どういうことだ?」
「なはは~♪えいりあんだったんだ~!」
変わらずなははんな召喚士は置いといて、私と重装戦士は顔を見合わせる。あの人、弓兵と武闘家みたいにエイリアンに寄生されて……る訳じゃないよね……?
少なくとも間違いなく、身体は人のものじゃなかった。なんならゴーレムみたいな、ううんそれよりももっとずっと複雑な機械だった。それ操っているのがエイリアンで……うぅ、頭が混乱してきた……。
「ゆ~ふぉ~さん、待ちょ~。二人共、りか~!」
あぁまたUFOが逃げて、召喚士が呼んでくれて……どうなってんの、ここ。
「……で。あのUFOは俺達を何処まで連れていく気なんだ」
「わかんないよ……どこだろうね……」
「なはは~♪ よんな~よんな~」
まだまだ進むUFOについていきながら、溜息。もう追いかけて走る気力もないし、驚き続けて逆に冷静だよ。というか、拍子抜け。
だって色んな姿のエイリアンとすれ違ってるけど、誰一人として戦闘態勢とらないんだもん。寧ろ荒くれ者とかいない分、街中よりもずっと治安が良い。……じろじろ見られ続けてはいるんだけどさ。
てっきり凶暴なエイリアンや無情なUFOが襲ってくるもんだと思ってたのに、なにこれ。あの恐ろしいUFOダンジョン、どこ行ったの。さっきまでの戦い、なんだったの。なんだか騙されてた気分で――……ん?
「この音……!?」
「……剣戟の音だ」
不意に耳に入ってきたのは、剣と剣がぶつかり合っている音。つまり誰かが戦っているということで、ここで戦っているという、ことは!?
「……丁度UFOが向かっている先だ」
「行こう!」
「はっさ~!? 二人とも~!?」
重装戦士と一緒に、召喚士とUFOを追い越して音の元へと走る! 魔導書のことは一旦無視。だって少しでも遅れたら、あの時の人みたいな囚われの冒険者を増やしちゃうかもだもん!
「……あれだ! やはり戦っている!」
「エイリアン、普通の剣持ってない!?」
見えたのは、どこかの冒険者がエイリアンと剣を交えている姿! 他にも、大槌や弓を持ってるエイリアンへ盾を構えて防戦一方な冒険者が数人! でもなんで光刃剣とかじゃ…ううん、まずは助けなきゃ!
「……先に行く! 援護は頼む!」
「任せて! 支援魔法――!」
更に足に力を籠め、武器を構え突撃する重装戦士。私もそれに続くように、魔法詠唱を――むぐっ!?
「ちょっ、待ちょ待ちょ~!? なんか違うよあれ~!」
しょ、召喚士!? なんで私の口抑えて、詠唱の邪魔して!? そんなことしたら、重装戦士が……!
「グッ…!?」
あぁっ!? 重装戦士がくぐもった唸り声を! い、今助けに……え。
「っと、危ない危ない…!」
「凄い膂力ね。えっと、ワーウルフさん?」
「新入りさんかい? とりあえず落ち着いてくれ」
重装戦士とぶつかり合ったのは、……エイリアンじゃない!? ぼ、冒険者が…エイリアンの相手をしていたはずの冒険者が、重装戦士を止めている!!?
なんで!!? なんで冒険者が、エイリアンを守るような行動を!? あっもしかして既にエイリアンに寄生されているとか!? じゃ、じゃあ倒さなきゃ…! 巨大な火球とかで焼き払ってでも……!
「きじむな~! じゃれつけ~!」
「ひゃっ!? ちょっ、ひゃははっ!?」
「……むっ…!? ま、待て、何をする…!」
急に召喚士の赤毛玉召喚獣が、私と重装戦士をくすぐってきて…! な、なんでぇ…!?
「落ち着いて~。多分えいりあんの皆、敵じゃないさ~」
赤毛玉召喚獣を引っ込めながら召喚士はそう私達を宥めてくれるけど……どこが!? だって武器持ってるんだよ!?
「やしが~、戦うえいりあんなら光な武器使うでしょ~? それに~武器振るのに慣れてない感じやし~敵意もね~んど」
そ、それは…そうかもだけど……。今まで戦ったエイリアンは光線武器とか光刃剣しか使ってこなかったけど……。えと、じゃあなんで今、ぶつかり合ってたの!? それも普通の武器同士で! その説明がつかないと……!
「そうね~。きっと武器体験してたんやさ~。ど~お?」
「えぇ……そんな訳……」
「おお、正解だ」
「よくわかったわね!」
「ははぁ、こりゃ逸材だ」
は??? え、えええええええええ!? 冒険者の人達、揃って頷いたんだけど!!? え、え、えええええ!!?
理解不能なんだけど!!? ほら、重装戦士もぽかんとしてるし! そ、そんな訳ないじゃん、エイリアンの武器体験なんて!!
もしかして皆嘘ついてる!? それかやっぱり寄生されてるとか!? それとも、気が狂って……――。
「いいえ。私達の間に狂人はいませんよ。いるのは冒険者陣営とエイリアン陣営、そして詐欺師な私達だけ」
ッ!!!!??? な、なにこの声…! すごく近くから、空中から、UFOから聞こえてくる、この声は……!?
「ふふっ、
「「なっ……!? じょ、上位……!?」
「みみっく~っ!?」
ど、どういうこと!? あのUFOが、UFOの上がウィンて開いて、上位ミミックが上半身をひょっこり出してる!? ふよよよ浮いたまま、私達の魔導書とヘルムをUFOの力で浮かせ掴んだまま!
なんでミミックがここに!? ここは確かにダンジョンだけど、出現報告は無かったはず。ここに出るのは必ずエイリアン数体だけで、魔物の棲息なんて……そもそもここ宇宙だよね!? 宇宙まで来るのミミックって!?
そしてなんで、UFOに乗ってるの!? いやそりゃUFOって乗り物だし、私達もUFOに乗ってここに来たんだけどさ。まさか本当に誰かが乗ってるなんて……!
えってかこのUFO、さっきのダンジョン攻略でエイリアンを乗せたり助けてたやつだよね。じゃ、じゃあもしかしてミミック、ずっと乗ってて!!?
「あなた、やはりエージェントの素質ありますね。黒いスーツと黒いサングラス身に着けてみませんか? なんちゃって☆」
「なはは~よくわかんないけど褒めらったん~! にふぇ~で~びる♪ し~さ~たちのおかげさ~」
え、混乱してるの私と重装戦士だけ……? 召喚士はもう受け入れてるし、他の冒険者達もUFOに、もといUFOミミックに場を任せて平然とエイリアンとの戦い、じゃない、武器体験に戻ってったし……えと……。
「まずはこちらをお返ししますね。誘導のためとはいえ奪ってしまって申し訳ありませんでした。そして色々と疑問がお浮かびでしょう、私が代表して全てお答えします」
あっ、これはご丁寧に……。魔導書もヘルムも返して貰って……えっと……えぇと……。
「はいは~い! 他のUFOもミミックだったりするば~?」
何を口に出そうか迷ってたら、召喚士が手を挙げてくれた。するとUFOミミックはニコリ微笑んで。
「えぇ。此度に於いては、皆様が道中出会った活動するUFOの全てが。ご覧にいれましょう」
言うが早いかUFOミミックはUFOの下部分を解放。するとそこから…これも見覚えのある小さいUFOがふよよよって何台も出てきたんだけど!? えっ、更にエイリアンが使っていた光刃剣の柄まで浮いて!?
それぞれのUFOと光刃剣柄は回転したりカクカク飛んだりして、私達の目の前へピタリ。けれど攻撃することはなく、その代わりに全部が一斉にパカッて開いて!?
「「「「「シャアウッ!」」」」」
うわわっ!? その小さいUFOから、更に下位ミミック達が姿を覗かせて!? 群体型が一斉にひょこひょこ、触手型がうねうね、まるでそういったエイリアンみたいに。宝箱型がポンッと飛び出して、宙にふわっと浮き出しちゃって慌ててUFOの中に!
そして、あの光刃剣の柄頭……UFOがくっついているみたいなデザインのそこからもミミックが! UFOみたいなじゃなくて、本当にUFOだったの!? だから吹き飛ばしても戻ってくるし、剣自体が意志もってるような動きしてたの!?
「この通り。正体を隠しながらお客様の補助をしていました。ふふっ、騙されましたね」
自分のUFOもふよよよ動かしてみせながら、そのミミックはくすくす笑う。ミミックにとって、UFOは乗り物で箱ってこと!? そ、そんなの……ん?
「お、お客様?」
なんか変な単語が聞こえた気が。するとUFOミミックは、そこで武器体験してるエイリアンを始めとした周りの光景を見るように促しつつ、受け売りとなってしまいますがと前置きをしてから。
「このダンジョンは、私達の星へ観光しに来るエイリアンの窓口、及び文化体験施設になっているんです。さながら港のよう、といえばわかりやすいでしょうか」
「……エイリアンのための体験施設だと? ならば、まさか」
「お察しの通りです。あなた方が挑んだダンジョンもまたその一部なのです。『ダンジョン攻略をする冒険者』を身をもって体験するための」
…………は? いやいやいや、いやいやいやいやいや……ははっ。はんっ!
「信じるわけないじゃん! 私達見てきたんだよ!? 冒険者が捕まってたり、実験されてたり、餌にされてたり、仲間が寄生されたり!」
そんな、どんな噂よりも嘘くさい出まかせで騙そうたってそうはいかないよ! それだとあのおぞましい出来事の説明、つかないんだから――。
「パーティーの皆様なら全員無事ですよ。まあ復活魔法陣送りではあるのですが」
……は? 思わず眉をひそめてしまう私達の前で上位ミミックは自分のUFOを弄って、わ、UFOから魔導画面みたいな空中投影画面がブンッて。そこに映し出されたのは……!
「皆!?」
「わった~ぱ~てぃ~も~!」
「……地上の、復活魔法陣前だな」
私のパーティーの三人、そして召喚士達のパーティーの二人が、装備を全て失った復活直後の姿のまま、見覚えのある復活魔法陣の傍にいる!? う、うん。声も間違いなく皆のだ。けど混乱してるみたい。
「――はあ!? じゃあお前等、あの広間に来てねえのか!?」
「あぁ。俺はエイリアンと戦って普通に負けたぜ」
「俺もだよ。『偽物に気をつけろ』っての、聞きはしたけどな」
「あ、アタシも…! 脳とかキモいのは色々見たけど……! うぇ……」
「ど、どういうこと!? じゃあうちらが見た三人、なんなの!?」
え。え、えぇ……? 今度は私達三人で顔を見合わせちゃったよ……?! ど、どういうこと? ほんとなんだったの、あの寄生された二人…いや槍使いもそうだったぽいから三人……え、え……!?
「混乱は当然でしょう。私達の行動はそのためにあったのですから。ですが、どうか落ち着いてください。つい先ほどその答えに近しいものを目にしたはずですよ」
意味が分からず目を白黒させちゃってると、UFOミミックがそんなことを。いや落ち着けって言われても、さっき見たって言っても……。
「あ~は~! あの、機械の人に入ったえいりあん~?」
え、あ! そっか、さっきすれ違ったエイリアン入りの人間もどき! じゃあ培養じゃなかったってこと? でも、あの三人の身体に機械みたいなのは見えなかったけど……。
「ご明察です。ただし諸般の事情、特に皆様を恐怖させる手法のために、正確にはこちらを用いています」
そう言いながら、UFOエイリアンはごそごそUFO内を漁って、今度は下からじゃなく上から何かを取り出し……ひッ!?
「そ、それ!? それぇっ!!?」
「うひゃ~……! ちょっとぐろ~…」
「……弓兵の、いや、弓兵もどきの身体か」
ずるんっと出てきたのは、胸に穴が開いた弓兵の死体! 無くなってたと思ったらUFOが回収してたんだ。って、UFOミミックはその腕を掴んで?
「えいっ☆ はむっ」
ひいいっ!? も、捥いだぁ!? 腕を肩辺りから、まるでパンを千切るみたいにぃ!? そしてその腕を、食べたぁああ!!?
い、いや! ミミックは冒険者を食べるって聞くし、魔物にとっては普通の行為かもだけど! ちょっ、それを目の前でやられると……うぷっ……。
「あなた方もいかがですか? 甘くて美味しいですよ☆」
いやいやいやいや嫌嫌嫌嫌!!!! 無理無理無理無理!!! いくらそれが本物じゃない偽物とはいえ……あ。
「そ、それ……偽物なんだよね……? 作り物……なんだよね……?」
話の流れ的に、そういうことなはず…だよね……? も、もしかしてやっぱり培養されて……!
「ご安心を。これは正真正銘の食べ物。栄養糧食を人型に加工したものになります。なので簡単に千切れるんですよ」
た、確かに軽い力で千切れてたみたいだけど。その、えっと……そんな柔らかいのがああやって動いていたのはやっぱり信じられないというか……。
「ならば合わせてこちらも披露しましょう。よいしょっと」
ちょっ、え!? ミミックがUFOから、弓兵の胸の穴へするんっと入って行って!? そしたら動かないはずの弓兵の身体がピクピク動き出して……大きくビクンッて跳ねて!?
「あーあー。アタシ達はミミックだー。ふうっ! ったく、いい加減信じなさいよ魔法使い。ほんとどんくさいんだから!」
い、生き返っ!? あんな力尽きてた弓兵の身体が、腕が一本もがれた身体が、普通に動き出し立ち上がったんだけど!? 声も喋り方も一緒で!
で、でも残って浮いてるUFOはまだ地上の様子を、弓兵の子もいる皆の様子を映し出してるし……と、ということはやっぱり…!
「エイリアンの技術とアタシ達ミミックの力が合わさればこんなことも出来んのよ。証拠にほら、断面変でしょ?」
UFOの上にひょいっと腰掛けて肩の断面を、残った腕で千切った腕を持ってその断面を見せてくる弓兵……弓兵ミミック。うわ本当だ…どっちも血も骨も肉もない、ほぼ空洞。本物はよくわからないけど、絶対本物じゃないってわかる。
「わかったんなら食べてみなさいよ! アタシの腕が食えないっての!?」
わかる、けども! 流石に食べるのはちょっと…UFOごと動いて押し付けてこないで!? その、ミミックが嘘ついてて本当は培養された身体かもしれないし……ほら、重装戦士も召喚士もドン引きな表情に…って、弓兵ミミックの顔、悪戯っ子みたいな感じなんだけど!?
「ふふっ、なんちゃって☆ ではこちらを。装備こそ本物から回収したものですが、演出を確かなものにするために衣服は同じ加工品なのです」
口調も声質もさっきの様子に戻った弓兵UFOミミックは、手にしていたもぎ腕を他のUFOに渡し、今度は着ている服の端を千切って私達に。食べてみろってこと…? ま、まあ服なら……最悪吐き出せば……。
「くゎっち~さびら~。 ん! 甘~!」
やっぱり召喚士が先に動いてくれるんだね。って、甘いの? じゃ、じゃあ私達も意を決して……! んっ!?
「これ、苺の味!?」
「……食感もそれだな。布にしか見えないが」
本当に食べ物だったんだ……。食べ物を人型の箱?にして、中に入って操るなんてアリなの…? いやでも、エイリアンとミミックだし……両方とも何するかわかんない存在だし……。
「これなら胸に穴を開けるのも、上半身を爆散させるのも容易いんですよ。良かったら他のも味見してみますか?」
いつの間にかミミックがUFOの中に戻ってるし。食べ物な弓兵は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちて、UFOの下からふよよよ回収されて。やっぱりそれそのUFOに入るサイズじゃ……あぁ、そっか。さっきもそんなシーンあった。あの時気づくべきだったかな……って?
「他のって、武闘家のとか、槍使いのとか?」
「お望みであれば。ですがあれらは皆様にとって少々刺激的な見た目となってしまっていますので、これらは如何でしょう」
またミミックはごそごそUFO内を漁って。今度は何を……なっ!?
「そ、それって……途中で見た牛!?」
やっぱりサイズ無視で出てきたのは、私達のパーティーが途中で遭遇した後ろ側と脚が触手に改造されたあの牛! って、まだ出てきて……今度のは!?
「餌にされかけてた冒険者!?」
「改造されてた冒険者だ~!」
えっ…!? あれ私が見た肉膜に逆さ吊りされてた冒険者なんだけど、召喚士が見たのもこの人なの!? でも状況は違うし、同じ顔で同じ装備の人が複数いる訳ないし……。
「少々見た目はグロテスクですが、こちらもありますよ」
「……こっちのは俺が見た卵だ」
うわエイリアンの卵まで、しかも複数種類出してきた!? そしてUFOミミックは牛の角と冒険者の服と卵の端っこをさっきと同じように千切って私達にくれて……えっと……。
「お~! 牛の角、焼肉の味がするさ~!」
「……この服はまるでチョコクッキーだな」
二人共もう食べてる…! ほ、本当だ…そんな味と食感だ……。じゃあこの卵も見た目だけエイリアンの卵なだけで、味は……んぐっ?!
「なにこの味…!? 美味しいけど…甘いのかしょっぱいのか酸っぱいのかわかんなくて、爽やかで鼻に抜ける感じで、食感がなんか、こう、パリニャチュミャッてしてて……」
「ウクミィミ味ですね。先ほど皆さんが戦ったエイリアンの母星に伝わる卵料理の味らしいです」
……卵じゃん、卵じゃんっっっ!!! うぇえぇぇ…見た目大事だよぉ……。
「因みに。攻略中にご覧になった培養ポッドの中身はほぼ作り物ですが、中には同じような加工糧食がありまして。溶けかけていたのがそれですね。実質フルーツごろごろジュースですが、良かったらお持ちしましょうか?」
「絶っっっ対要らないッッッッッ!!!!!!!」
「――はい、その通りです。全てはエイリアンを軽視する冒険者用の限定演出でした。私達ミミックは冒険者を驚かせるノウハウを活かし、お客様の支援を行っていたんです」
「じゃ~途中で見た、影でやられた冒険者も~?」
「事前撮影の映像と音声を投影しただけですね。このように」
「……あのUFO生産工場は」
「もっともらしく動いているだけのハリボテです。何も作ってません」
「途中、無事な皆の映像見たけど……もしかしてその時にはもう?」
「皆様が無事な時の記録映像を流していました。あぁ、こちらの地上の映像はリアルタイムであることを保証します。ミステリーサークル近辺を含むダンジョン攻略の全ては逐一モニタリングされていますので」
そ、そんなこと言われても信じないし! ……とか言いたいとこだけどさ…。実際に舞台裏の映像を、私達の行動記録映像を見せられながらそうすらすら説明されたらそんな気も失せるよ。うわ、私こんな顔して逃げてたんだ。恥ず。
「どうやら信じてくださったようですね。流石はこの裏側にまで辿り着いた皆様です。ご活躍の報酬にもなりませんが、どうか遠慮なく追加注文を。こちらの店主役は皆様と同じ人間種ですから、大抵の注文には答えてくれますよ」
映像を幾つも表示したまま、机向かいのUFOミミックは木のジョッキを手にニコリと優しい微笑みを。いや信じるというかさ……もう何が真実かもわからなくなっててさぁ……あ、でも。
「さっきのウクミィミ…だっけ?がこれってのは絶対嘘でしょ。見た目どう見てもイクラのお寿司じゃん」
「いえ。本物同然とお墨付きをいただいています。私も実物を食べたことはありませんが」
「なはは~ま~さいび~ん~! あ、わ~のさ~た~あんだぎ~! ほふふ…味も匂いも食感も本物と同じで、あちこ~こ~でま~さん~♪ はいど~ぞ。かめ~かめ~♪」
あ。有難う召喚士、もぐ。このドーナツ美味しいね。でもこれも本物じゃなくて……うぅ、やっぱり信じられないかも。これがさっき弓兵や武闘家や牛や冒険者やらに化けたなんて。
「……成程。栄養糧食とやらを自在に加工し、雰囲気を味わう寸法か。道理でこの酒場もそこまで違和感がない訳だ」
重装戦士も自分が注文したヴルストを口に運びながら、俄かに信じられないような、でも感心したような表情を。うん、ここは酒場。さっき見かけた酒場の一つ。
だから勿論窓の外は一面の星の海で、席にはエイリアンが沢山だけど。…でも、魔界の酒場なら案外こんな感じなのかもね。ははっ。……はぁ。
「で? そんな雰囲気作って何が目的なの? なんでこんなことしてるの?」
なんかすっごく馬鹿らしくなってきた。だってそうじゃん。私達、あんな不気味で恐ろしい場所で必死に戦ってたんだよ? けどその裏にはエイリアン技術でこんな綺麗で清潔な街だか港だかが作られててさ。エイリアンのイメージボロボロ。
しかも何? 私達の攻略は体験施設の一環なんだっけ? どっち行ったら安全かどこからエイリアンが来るかを警戒しながら慎重に行動してたのに、それ全部エイリアンに見られてて掌の上だったんでしょ?
じゃあ道が開いてたのもエイリアンが必ず私達を見つけてくるのも当然じゃん。私達本気だったのに、本気で魔法使って本気で逃げて本気で怖がったのに。はあぁ……今までやってたのはただの遊びでした~って突きつけられた気分だよ。
「改めて謝罪を。ですがこれが本船の方針でして。私も雇われの身ではありますが、エイリアンの方々が魔法やダンジョン攻略といった私達の星の文化を体験する面白い試みだと……」
「それもさっき聞いたからいいよ……。そうじゃなくて、なんでこんなことを私達に話したの?」
くさくさしてる気分のまま頬杖をついて、聞き直す。もう憑き物が落ちた気分だし全部信じるけどさ、別にわざわざ私達に真相を教えなくてもよかったじゃん?
「……お前達の試みは効果があったと認めよう。だが、生き残った俺達をそのまま返せば事は済んだはずだ。多少疑問を覚えたとしても、奇っ怪なエイリアン共という認識で終わっただろう」
まだ表示され続けてる、地上の皆がエイリアンへの評価を改めるように空を見上げ息を吐いている様子を見つつ、重装戦士も続いてくれる。うん、まさにそう。
弓兵と武闘家と槍使いが復活して証言してるんだもん、あれが偽物の身体ってのは当然伝わってる。なら私達がそのまま帰れば、なんかヤバいエイリアンってのが補強されて皆怖がって目的達成なはず。
でも何故か私達をここに、しかもどうするかを選ばせるようなやり方でここに呼んで、全てを話したのが本当意味わかんない。これ、どう考えても皆に話していい内容じゃないよね。まあ信じてくれるかはわかんないけどさ。
「ふふっ、勿論ご帰還の際には安全な記憶処理を施させていただきます。ですがその前に、一つお願い事を聞いていただきたく」
丁寧にちょっと怖いことを言いつつ、頭を下げるUFOミミック。お願い事?
「それはですね……いえ、これより先は私からではなく」
「プルフフ! ワテから話しまひょ! いやぁ遅れてえろうすんもはん!」
へ? わっ!? タコみたいなエイリアンが!? って、この見た目!
「前戦った……!?」
「プフフ! あんさんが前戦ったのとは違う人だべ。種族は同じっちゃけど」
そう長い口を笑うように震わせ、UFOミミックにお礼を述べてからそのタコエイリアンは着席を。あ、あれそういえば言葉が通じて……?
「あ~あ~。翻訳はうまく行っとりますかな? そら良かった、ほな自己紹介を! お初にお目にかかんます、ワテはンマァシアと申す者。このUFOダンジョンの管理人と船長を務めておりますさかい」
あっ、翻訳の道具あるんだ。これまたどうもご丁寧に……。なんか召喚士よりも言葉変だけど、こっちは本物のエイリアンだし、口とかの形も違うし、仕方ないか。というかさ。
なんというか、ここまで言葉通じちゃったらもうエイリアンがエイリアンじゃないというか、もうそういう種族というか……私、おかしくなったのかな。
「ワテからも深く謝罪させてくださいな。騙してしもうてて大変申し訳なく思うとりますえ。んだどもこうでもせんと冒険者さんはエイリアンと本気で戦うてくれなかろ? ワテら、その本気が欲しかったねん」
それは……うん、そうかも。真相を知らなかったからこそ、エイリアンを本気で倒そうとしたし。今日みたいなことが無かったら、皆エイリアンを舐めまくったままだったと思う。ただ、えと……。
「さっきのは実にえ~え戦いやっけさ。おかげさんでお客さん、がばい満足してくださってのぅ。ほんに感謝しっぱなしでっさ!」
それ、そんな喜んで良いの? だって、そのお客さんなエイリアン倒しちゃったんだけど。そう切り出せずにいるとンマァシアってエイリアンはまた笑って。
「プルフフ! 実はのぅ、さっき皆さんがお相手してくれはったエイリアン、お礼言わせてけろって来てまんねん。良かったら会うてくれまへんか?」
「おお~! わ~、会いた~い! ゆんたくした~い!」
ちょっだから召喚士!? 私達が悩む前に、ほんと自由なんだから! でも……ちょっと気になったり。私達三人が肯くと、タコエイリアンは触手の一本に何か話しかけて。
「は~い船長! お連れしました~!」
少ししたらもう一台、上位ミミックの入ったUFOが飛んできた。そしてその中からぴょんっと飛び出したのは。
「本当にさっきのおねえさん達だ~!」
「ぼくたちと戦ってくれてありがとう!」
うわぁ…。あの蟹型尾長エイリアンが二匹、いや二人? どっちでもいいけど、明確に言葉を喋りながら出てきた。そんな感じだったんだ。
「どの人もすっごく強かったね! 復活初めてしたけど、不思議な感覚だった~」
「あ、ウクミィミ食べてる! お口にあった? ぼくたちの星の郷土料理だよ!」
ぴょいと跳ねて机の端にちょこんと乗り、カサカサときゃっきゃと。なんか……こうみると割と愛嬌あるかも。少なくとも怖くない。
「ありがと~! もう一度会いたかったんだ~。この子達名前なんていうの?」
「し~さ~、きじむな~、がじゅまるやどかり~さ~! なはは~いぃ~どぅしさんやん~♪」
「良いの? 本当に良いの!? この毛、ぼくたちが貰っちゃっていいの!?」
「……俺にとってはただの抜け毛だ。好きにしろ。お前達の殻、貰ったしな」
しかも召喚士の召喚獣と跳ねて遊ぶ姿、ワーウルフの毛を貰って大喜びする姿まで見たら、可愛くすら思えてきちゃった。なんだろ、言葉通じて会話成立して交流できるだけでこんな感じになれるんだ。
「プフルフ! 仲良うしてくださってほんに嬉しおす。やっぱ恐怖ん種はエイリアンとの遭遇やなく、未知との遭遇ってことやんなぁ」
タコエイリアン…ンマァシアさんは触手腕を組みうんうんと。UFOミミックもクスクスと微笑んでる。はぁ…未知の代表格みたいな二種族がなにを……わ!?
「おねえさんおねえさん! おねえさんの魔法、とってもとっても凄かった~!」
「どれも格好よくて綺麗で派手で、特にあの結晶の隕石、うっとりしちゃった!」
蟹エイリアンが私の前でテンション上がったぴょんぴょんを、尻尾で私の手と握手しながら! もしかして…あの時この子達が怯んでたのって、怖がっていたんじゃなくて見とれてただけ? はぁ…なんだぁ、効果なかったんだ……。
でも、それよりなんだか嬉しい感じ。私の魔法って派手で敵を倒すしか能がないんだけど、その派手さで喜んでくれるなんて。そんなこと普通ないからさ。さっきも包囲壊して怒られて……はぁ……エイリアンの方が優しいかも。
「ふふ。ンマァシア船長、頃合いかと」
「プルフフ! もうワテ、ミミックの皆おらんとやってけへんわ~」
ンマァシアさん、プフンと咳払い…多分咳払いをして。私達の向き直って?
「ほなここで、皆さんをお呼びたてした理由をお明かししまひょ。しっかし良かとこ見繕ってくれたばい。冒険者って酒場でメンバー募集とかするんだら?」
UFOミミックを褒めつつ、ンマァシアさんはそう聞いてくる。えっと、うん。結構それがよくあるパターンだけど?
「ならワテもメンバー募集、スカウトや! あんさん方、ここで働きまへんか?」
「「「……えっ???」」」
えっと……? 急展開過ぎてよくわかんないんだけど……さっき見た武器体験の人とか、この酒場の店主の人とかみたいな? ちょっと困惑してると、ンマァシアさんは触手で頭頂部をもにもにとかきながら。
「ま~、ちっとん恥ずかしい事情なんじゃけどな? 現地の人のスタッフが慢性的に不足してんねん。ワテらエイリアンと仲良う交流してくれる人はそがいに多く無くてなぁ」
それはあんなダンジョンやってるからじゃ……いや、どうだろ……。UFOダンジョンは結構昔からあるって聞いてるけど、実際に実験とか培養とか解剖とかが行われてるのを見たって記録はなかったよね。
でも、そういうヤバいことしてるって噂はずっと立ってた。しかも私ですら信じるぐらいに広まってるし、冒険者じゃなくてもそう思ってる人は多い気がする。皆、エイリアンの本当の姿を知らないから。
「このダンジョンの在り方自体がアカンめのは重々承知でっけど、盟約があるべなぁ。その上で良さ人を探すとなるとちょっこし絡め手を使わんばいけんのよ。ま、ワテの手は幾らでも絡めっけどな~ほれほれ!」
ぷっ…! あっ、笑っちゃったじゃん…! ほら、本当のエイリアンはこんな感じにコミカルだったり可愛いのもいるってこと知らないんだもん。ただ見た目が違うだけ。そっか、それだけなんだ。
私と重装戦士の身体の違い、そして私と召喚士の言葉の違いと変わらないんだ。私達とエイリアンの違いって、ただそれだけの差なんだ。
「プルフフ! 話戻してと。そんでな、エイリアンって魔法使えへんから魔法披露は人気あってな。ほれ丁度あっこでやっとるべ? あんな人材募集しとんのよ」
あ、本当だ。少し離れたステージみたいな場所で、魔法使いが魔法披露してるのが見える。光弾乱射とか大火球とか精霊召喚とか色々やってて派手。けど、あれなら私もある程度できるかも。
「一連の攻略、見させて貰いましたで。魔法使いさんは美しゅうて派手な魔法、召喚士さんは滅多に見られない召喚獣ちゃん達、重装戦士さんはもうカッコよかワーウルフってだけでも人気者になれっべ~!」
触手をわきわきさせてンマァシアさんは更に誘ってくる。と、頭頂部を掻くように撫でつつちょっと決まりが悪そうに。
「ワテ、隠しごとが得意やないんで全部吐いちゃります。召喚士さんが冒険者辞めるちゅ~話も、魔法使いさんと重装戦士さんが今のパーティー居心地悪そうなんもモニタリング中に気づいてな。こらチャンスやと思って、ちっくと魔法利用させてもらいましたで」
あはは……。まあ、うん、それはそう。だからこのスカウトに乗ってもいいっちゃいいんだけどさ…ん? 魔法利用? 魔法使えないんじゃ?
「あ~! まさか~翻訳魔法~?」
「その通りだど! あれの解除さばしてもらわんとそんまま喋ってもろたんはわざとですわ。おかげさんで怪しいダクト潜ってくれまってな。プルフフ!」
っ……やられたぁ…! 確かにあの時あんな話しなかったら、あの違和感に気づかなかったらここまでは来なかったよ。舌を巻く私に、ンマァシアさんはもう一度頭を下げて。
「もし地上に戻たんならそれはそれ、充分に協力してもろたから諦めよと思ってましたわ。けど、折角ここまで来てくださったんやもの。どうか答えだけはお聞きしたく。どないでっしゃろ?」
「あの協力技、またみた~い!」
「今度は横からも見たい! あれ凄かったもん!」
蟹エイリアンもぴょんぴょん跳ねて誘ってきて。えっと、でも……。
「わ~、やるやる~! ゆたしくうにげ~さびら~!」
ちょっ、だから召喚士早いって!? 条件とかなにもわからないのに……!
「因みにこちらがお給金と拘束時間の目安だびゃ。送迎は透明UFOで行うし、魔力ポーション等は経費で落とすさかい、幾らでも使ってけれな」
ってうわかなりの好条件なんだけど!? かといって怪しすぎるってレベルじゃないし。これは……その……えっと……。
「……実に惹かれるスカウトだが、俺は辞退する。冒険者業が性に合っているし、何よりここは月が近すぎる。長く滞在すれば身体を崩しかねない」
「ほな気の向いた時に稼ぎに来るってのもアリやで。その方が冒険者らしいわな。記憶処理はざんじ元に戻せるけん、同じスタイルで来てくれてる人達もおるとよ、ほれこんな」
重装戦士の悩みに、他の人の勤務表を見せながら説得するンマァシアさん。私へもエイリアン顔ながらわかるぐらいに微笑みながら。
「シフト調整でもやっぱ気ぃ変わって辞めるちゅ~相談でも、ワテらなんでもはんかくさらずに聞くさかい。どうか一考してくれるとありがたいんわ。ほんま、頼んますわ!」
やっぱなぁ、稼いでくるって言ってどっかに消えるのはちょいと怪しいっけなぁ。それで周りに睨まれて辞めてく人結構多くてなぁ。と世知辛い裏事情を呟きつつまたまた頭を下げてくる。えっと、でも……。
正直、ちょっと不安。エイリアン相手って、その、変なエイリアンとかいるかもしれないし。それこそ演出だったけど、寄生みたいなことされちゃったら……。そのことを伝えると、ンマァシアさんは優しく宥めるように。
「安心してけれ。ここは神様に見てもらってっから、良客しか来うへんよ。ってワテが言うても意味なかんべな。ちょいとお待ちを、常駐してくれとるヴァルキリーやエンジェルの方を……」
「いえ。その必要はありません、ンマァシア様」
「お話、遠くから聞かせていただいておりました」
ん? えっ!? ちょっ、えっっっ!!? な、なんか私達の傍が光って!? なにこの柔らかい光の柱!? しかもそこから誰か現れ……え。ええええええええッッッッ!!?
「お初にお目にかかります。私はヴァルキリーのシグルリーヴァと申します。そしてこちらは、ご存じのようですね」
「「「が、ガブリエラ様!!」」」
「あらあらうふふ。はい、ガブリエラですよ♪ そう固くならないでくださいな。うふふ、シーサー様こんにちは。良き
や、やっぱり大天使ガブリエラ様だぁ!? その優しき微笑み、石獅子召喚獣と戯れる美しさは絵画に描かれるままで……石獅子が神獣なの本当だったんだ…。
「ガブリエラ様、長居は場を狂わせましょう」
「えぇ、シグルリーヴァちゃん。ではコホン。こちらのUFOの安全は私共が保証いたしますよ♪ それでは御機嫌よう」
あっ消えた!? 柔らかい光と共にシュワァって!? 後には何も残らなくて、元通りになって………………え、えっと……。
「今の……投影映像とか、偽物の身体とかだったり……?」
「いえ……仮にそうだとしてもあのように消えることは不可能です……」
「プルッフゥ! 直々に来てくださるのはいつ以来だべか。そのしーさーちゃんに会いに来てくれたんかな?」
茫然とするUFOミミックと、驚きつつも懐かしむようなンマァシアさん。えぇと……うん。
「スカウト、引き受けます」
「……俺もだ」
「ホンマけ!? いやぁ有難いわぁ! 損はさせまへんで!」
いや、ヴァルキリーとガブリエラ様にまで出張られちゃったらもう疑うとこないよ……。頷くしかないよ……。まあ、でも。
「わーいっ! おねえさんここで魔法見せてくれるんだ!」
「絶対見にくるからね~! 約束約束~!」
「なはは~♪ これからもゆたしくお願いね~♪」
後悔は微塵もないかな。ンマァシアさんは見た目通り柔軟そうだし、向こうからしたらエイリアンな私達をこうも丁重に扱ってくれるし。ミミックもこんな立派な箱?貰ってるし。
そりゃさっきまでは色々怖かったけど、もう慣れたよ。エイリアンも、宇宙の感覚も、UFOなミミックも慣れた。慣れって怖いよ。いやおかげで怖くないよ。
その上で会話が成立して仲良くしてくれるなら更に怖いものなんてない。しかも、協力して戦ってくれた二人も一緒なら猶更で――。
「あ。な~な~ンマァシアさん~。わ~、お願いが~。翻訳の道具、わ~にも貸らちくぃみそ~れ~」
「プルフフ、勿論貸与いたしますわ。ほい、とりあえずはこちらをどうぞ」
ん? 召喚士がンマァシアさんから腕輪を借りて? UFOミミックに操作を教わりながら腕につけると、カシャンとサイズピッタリになって。
「あ~あ~。聞こえる~? 完璧に通じてる~? なはは~…私の言葉、へんてこだったでしょ~?」
えっ…! 召喚士の言葉が全部聞き取れるように! エイリアンの技術、凄い。……凄い、けど。
「これがあればもう皆を困らせずに済むよ~。だからこれからも私と仲良くしてくれると、また助け合ってくれると嬉しいな~。なはは~」
「う~ん……」
「あ、あれ~…? もしかして言葉、通じてない~? それとも~……」
「あ、ううん?! 通じてるよ! えと、そうじゃなくてね」
慌てて首を振って、言葉を考える。うん、えっとね。
「その翻訳は無くていいかなって。確かにまだ色々通じないけど、エイリアンにもミミックにもこうして慣れたんだもの。あなたの言葉も、きっとすぐ慣れるよ」
一応ある程度は聞き取れるし、口や顔が違うエイリアン語ほど意味不明じゃないもの。わざわざ装置まで使う必要はないと思う。それに。
「あなたの言葉のなははんな感じ結構癒されるし、これからもそのまま聞かせてほしいなって。だからさ、えっと……」
一つ呼吸を深くして、調子を整えて。じゃあ、合ってるかもわからないけど……!
「これからも、ゆたしくね?」
「~っ!」
わっ召喚士、息を吸って、ちょっと震えだして…!? 私に続いた重装戦士の優しく力強く頷きを見て、更にプルプル震えて……寄生されてる訳じゃないよね?
「ンマァシアさん~これお返しします~」
大丈夫っぽい。急に翻訳腕輪を外して、ンマァシアさんへと返却した。そして今日何度も見た、ううん、それよりも何倍も柔らかく暖かいなははんな笑みを浮かべて。
「なはは~♪ で~じしちゅっさ~♡」
なんて? ……ふふっ、でもなんだかそれの意味は分かる気がするよ。私も、で~じしちゅっさ~♪
「……因みにさ、君達の種族は、その、どうやって増えるの? やっぱ、さっきみたいな卵?」
「え~!? おねえさん、それ聞くの~!?」
「おねえさん、変態だったの…!?」
「いやそうじゃなくて!? その、さっきの卵食べちゃったし……演出だけど弓兵の子から生まれてくるの見ちゃったから、気になっちゃって……」
「あ~! え~と~…でも説明するの恥ずかしいな~……!」
「そうだ、おねえさん達の増え方教えてくれたら教えるよ!」
「えっちょっえっ!? い、いや、そ、そのぉ……」
「わんじゅん、男と女が~」
「……待て。良いだろう、知らなくて」
「プルフフ! あの演出は全部フィクションだとは明言しときまっせ」
「ふふっ。未知のままにしとくのも一興ですよ」
「うっ……。あ、そういえば……ミミックってどう増えるの…?」
「おや、知りたいのですか? ふふふ…覚悟は、おありですね?」
「えっと……ヤメトキマス……。未知のままでいいです……」