ミミック派遣会社 ~ダンジョンからのご依頼、承ります!~   作:月ノ輪

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人間側 とある冒険者クランの全滅

 

 

「確認するぞ!第一から第三パーティーはドワーフの鍛冶場へ向かえ! 第四から第六パーティ―は魔法鉱物の鉱脈だ! 第七から第十パーティーは俺と共にドワーフの牽制だ。今日は稼ぐぞ!」

 

「「「おーっ!!!!」」」

 

ドワーフの『巨大鉱山ダンジョン』前で、俺は指揮を執る。全員のやる気は充分、これは期待できそうだ。

 

 

自己紹介が遅れた。俺達は冒険者ギルドに籍を置く、そこそこ名の通ったクランの一団だ。そして俺はその団長を務めている身である。

 

今日は兼ねてから計画していた、全員でダンジョン探索の日。40人ほどの面子を勢ぞろいさせ、準備万端。いざ突撃!

 

 

 

「いいか! 行きにトロッコは使うな! 到着地点は当然ドワーフがいる、わざわざ配達されるだけだ。帰りの逃走用にだけ使え!」

 

腰に付けたカンテラを揺らしながら、武器を指揮棒代わりに振り各員を動かしていく。かなり広いこのダンジョン、歩いていくのは手間だがリスクを考えるとそっちのほうがいい。

 

 

なにせ相手はドワーフ。持ち前の剛力で大きなハンマーや戦斧を振るい、魔法すらも扱える彼らは強敵。かの弓と魔法の名手な亜人『エルフ』とどっちが強いか論争が起きるほどである。

 

そんな彼らが最も真価を発揮する場所。それは洞窟の中。小さい身体が利となるのだ。

 

つまり俺達は不利な場で戦わなければならない。…そもそも相手の棲み処に侵入しているんだから当然ではあるんだが…。警戒するに越したことは無い。

 

 

そして、だからこそのクランでのダンジョン挑戦。連携をとり、上手く攪乱して対抗すればぎりぎりなんとかなるのである。

 

特にドワーフのダンジョンは実入りが大きい。彼らの作る武器防具は冒険者にとって垂涎もの。たまに市場に並ぶが、お値段は目玉が飛び出るほど高い。

 

逆に言えば、幾つか盗み出すことが出来れば一気に大金持ち。クランを動かす価値は充分にある。

 

 

と、そうこうしているうちに―。

 

「団長、全員が配置についたらしいです」

「少し先の角にドワーフを数名確認。仕掛けられます」

 

団員の報告に俺は頷き、俺は武器をチャキリと構えた。

 

「かかれ!」

 

「「「うおおおおっー!」」」

 

 

 

 

 

「くそぉ…やっぱ強え‥」

 

「洞窟の外ならばまだ有利に戦えるのに…!」

 

奥からわらわらと現れるドワーフ達に、俺達は苦戦を強いられていた。既に幾人か敗れ、士気も下がりかけ。俺は改めて皆を鼓舞した。

 

「考え方を変えろ!俺達がドワーフ達を惹きつければ惹きつけるほど、別動隊はアイテムをゲットできるんだ。拠点に戻ってから楽しく遊びたいならもう暫く踏ん張れ!」

 

「「「くっ…! おおおおっ!」」」

 

良かった、皆やる気を取り戻した。そうほっとする俺の元へ、思いもよらぬ悲報が飛び込んできた。

 

 

 

「だ、団長…! よかった見つけられた…! 大変なんです…!」

 

突然飛び込んできたのは、ドワーフ鍛冶場へ向かったパーティーのリーダーが1人。傷まみれである。俺が落ち着かせるよりも先に、血相を変えて叫んだ。

 

「鍛冶場に向かった第一から第三パーティー…私以外全滅しました…!」

 

「なに…!? 一体どういうことだ!?」

 

「それが…」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

「侵入者だ! 大量らしい! 俺達もいくぞ!」

「おう!」

 

武器を手に取り駆けていくドワーフ達。それがいなくなったのを確認し、私達はひょっこり顔を出す。

 

「団長たち、おっぱじめたみたいで」

「じゃ、始めましょうか!各パーティー、それぞれ別の鍛冶場へ向かって」

 

私は号令を出し、自身のパーティーメンバー3人を連れて静かに鍛冶場へと侵入する。炉の火がメラメラと音を立てているが、それ以外に物音はしなかった。

 

「随分あっさりいなくなったな」

「警戒心無いわねー、ドワーフ達。てかやっぱここ暑い…。 お、これかしら」

 

きょろきょろと鍛冶場内を見回すメンバーに先んじて、私は宝箱を開ける。中には武器防具、道具類がたっぷり。

 

「大漁大漁♪ 皆、バッグ出して」

 

手近なものからひょいひょいと詰め込んでいく。と、妙なものを見つけた。

 

「これなに?」

 

変な手持ち棒の先に、小さな風車みたいなのがついているそれをしげしげ眺めていると、メンバーの1人が使い方を教えてくれた。

 

「それ小型の扇風機っすよ。その横のボタンを押せば…」

 

「こう?」

カチリ ブオオオオッ!

 

「わっ風強っ…! あ、でも冷たくて気持ちいい!」

「本当っすね。やけに冷えた風が…」

 

きゃっきゃっと遊ぶ私達を余所に、パーティーメンバーの1人は物色を続ける。

 

「お、ここにも宝箱が…!」

 

新しく見つけたらしく、嬉々として蓋をパカリ。が、次の瞬間―!

 

バクンッ!

「ぎゃっ…!」

 

「えっ何!?」

 

驚いた私達が見ると、メンバーが宝箱に上半身を突っ込んでいた。いや違う!食べられている…!

 

「ミミック…!」

 

武器を引き抜き構える他メンバー。私も…!

 

カチリ フオオオォ…

 

「えっ…?」

 

使っていた扇風機が突然消えた? 勝手に消える機能とかついているの? でも、今スイッチが押された音がしたような…。私がゆっくりと顔を扇風機へとむけると…。

 

「触手…!?」

 

扇風機のスイッチに、というか手持ち棒の一部をぐるりと掴んでいたのは長い触手。どこから伸びているのかと目だけで追ってみると、宝箱の中から。つまり…。

 

「これもミミック…!!」

 

私が叫んだ瞬間、触手型ミミックは箱に入っていた剣を掴み、勢いよく振る。慌てて回避するが、私の後ろにいた、箱型ミミックの方を警戒していたメンバーがズバンと切られてしまった。

 

「リーダー、逃げ…! ぎゃうっ!」

 

残っていた一人も、挟み撃ちされ仕留められてしまった。私はバッグを掴み鍛冶場の外に。

 

「他の皆は…!」

 

急ぎ別の鍛冶場を覗き込んでみるが、唖然。死屍累々なのだ。しかもミミック達、じろりと私の方を見てきた。

 

これはマズい…!私はダッシュで逃げ出した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「と、いうことなんです…」

 

証言を聞き、俺は言葉を失う。まさかミミックが潜んでいたなんて…。

 

「はっ! もしや魔法鉱物の鉱脈にも…!」

 

嫌な予感を感じ取った俺は思わずそう呟く。そしてそれは残念ながら現実のものになってしまった。

 

「団長…! ごめんなさいぃぃ…!」

 

息せき切って現れたのは、魔法鉱物の鉱脈へ向かったパーティーリーダーの1人。予測はつくが、一応聞いてみることに。

 

「…ミミックか?」

 

「そうなんです! 僕以外、全員倒されちゃいましたぁ!」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

「よし、ドワーフは一人もいなくなったみたいですね。とりかかりましょう」

 

僕達は採掘場の各地に走る鉱脈へとパーティー毎に近づく。見つからないために消したカンテラをつけ直す必要はない。なにせ鉱脈が光っているのだから。

 

「やった。丁度採掘中だったようで。これを貰っていきましょう」

 

近くの箱に大量に盛られた鉱物をバッグの中に詰めていく。楽な仕事で良かったと、安堵した瞬間だった。

 

ズズ…

「うん?」

 

妙な音を耳にし、後ろを振り返る。しかし何もおらず、ただ岩が転がっているだけ。気のせいか。

 

ズズズ…

「んんん? あの、何か引きずってたりしません?」

 

「いえ? してないですよ?」

 

メンバーに問いかけるも、帰ってきたのはその答え。改めて周りを見回してみるけど、特に変化は無いような…。

 

と、そんな時。どこからともなく、仲間の悲鳴が響き渡った。

 

「あばばばっ…!」

 

まるで麻痺したかのような声である。僕はパーティーメンバーのヒーラーに護衛をつけ、様子を見に行かせた。

 

「リーダー。そういえば商人から『氷結石』の大きめなのが欲しいと」

 

「丁度あそこにあるし、掘っていきましょうか」

 

その場に残ったメンバーからそう言われ、携帯式のノミとハンマーを取り出す。こういう時、鉱脈が光っていると解りやすい。素人でもどこを掘ればいいかわかるから。

 

カチリとノミを鉱石に当て、大きさを量る。

 

「これぐらいでいいかな? せーのっ!」

 

そして勢いよくハンマーを振りかぶった時だった。

 

 

「り、リーダー! 大変です! 『宝箱ヘビ』です! ミミックの一種の! 皆もう噛まれてて…麻痺解除できません…!」

 

岩棚の上から叫ぶ声。さっき差し向けたヒーラーのものである。と、その直後、彼女は更に大きく叫んだ。

 

「リーダー達後ろ!」

 

僕は反射的に剣を引き抜き、後ろに切り付ける。が、しかし―。

 

ギィンッ!

 

勢いよく弾かれ、剣は吹っ飛んでしまった。一体何が…!? 顔を動かし見てみると…。

 

「岩…?」

 

背後にいた、もといあったのは大きな岩。でもこの形見覚えがある。確かさっき、あそこの離れた場所に転がってたもののはず…。

 

「―! もしかして!」

 

バッと身体をのけぞらし、僕は横へ逃げる。それとほぼ同時だった。

 

パカッ

 

岩に突然亀裂が入り、上部分が蓋のように開く。そして…中から幾本もの触手が飛び出てきた。

 

「ぐえっ…!?」

 

回避が遅れたメンバーは瞬く間にグルグル巻きに。僕は慌てて吹っ飛んだ剣を拾いに行くが―。

 

「シャアアアッ!」

 

「危なっ!」

 

それよりも先に、赤と青の極彩色な蛇、『宝箱ヘビ』が飛び掛かってきた。間一髪躱すが、武器が取り返せない。しかも近くの岩の中からうじゃうじゃと湧き出してきた。

 

「り、リーダー…あああば…」

 

ハッと見ると、上にいたヒーラーと護衛メンバーも倒れていく。噛まれてしまったようだ。もう逃げるしかない…!

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「ということなんです…。 あ、団長! お気を確かに!」

 

…思わず俺はふらついてしまった。麻痺毒は丸一日は効果が残る。その間にドワーフに見つからないわけはない。死んだも同然だろう。

 

復活魔法の代金、幾らになるのだろうか。それだけではない。失った装備類も結構な量になる。クラン運営資金で足りるか…!?頭を悩ます俺の元に、今度はドワーフと戦っていたメンバーの1人が報告してきた。

 

「団長…! ドワーフが一気に勢いを強めてきました…! もはや牽制役のパーティーは壊滅状態です…!」

 

「ぐぅっ…。お前達、何か盗ってこれたか?」

 

「「少しだけですが…」」

 

逃げ帰ってきたクランメンバーは自身のバッグを見せる。完全なる赤字だが、復活代金の足しにはなるだろう。

 

非常に悔しいが、残った僅かな面子で戦い続けるのは愚行。俺は全員に号令をかけた。

 

「これより帰還する! 全員自走式トロッコまで走れ!」

 

 

 

 

「待てゴラァ!」

「ドワーフ舐めるんじゃねえ!」

 

斧やハンマーを構え怒涛の勢いで追いかけてくるドワーフ達から必死に逃げる。何人かは途中でやられてしまったが、なんとかトロッコに飛び乗れた。

 

「出せ!」

「はい! えいっ!」

ガコンッ ガララララ…!

 

レバーが引かれ、トロッコは走り出す。ドワーフ達の怒声は次第に遠ざかっていった。一安心である。

 

「ふぅ…。酷い目に遭ったな…」

「まさかあんなにミミックがいたなんて…」

「でも、トロッコに乗れたからあとは入口まで一直線ですね…!」

 

戦果は芳しくないが、とりあえず助かったことに俺達は喜ぶ。が…。

 

「いいえ、お喜びのとこ悪いけど」

「行き先はダンジョン入口じゃないわよ」

 

 

謎の女声に身を震わす俺達。が、既に遅かった。トロッコに乗った全員の身体があっという間に触手絡めにされてしまったのだ。

 

「はぁい。冒険者の皆さん」

「ようやくトロッコに乗ってくれたわね。待ってたわよ」

 

嘲笑うように俺達に顔を見せたのは、上位ミミック達。トロッコ内部に既に潜んでいたらしい。だがしかし―。

 

(拘束が弱い…!)

 

幾人も同時に縛っているからか、触手の締め付けが甘いのだ。これならば抜け出せないことは無い。隙を見てミミックを倒せば…!

 

(いくぞお前達)

(はい団長、せーの…!)

 

目だけで会話し、調子を合わせ暴れ出そうとした…その時だった。

 

ガコンッ!

 

「「「わっ…!?」」」

 

突然トロッコの動きが変わる。見ると、上位ミミックの一匹が路線変更用のレバーを弄っていた。

 

「まさかドワーフ達の元に…?」

 

「ハズレ。こっちよ! 一緒にスリル味わいましょう!」

 

ガコンッガコンッ!

 

どんどんと道は変わっていく。ふと、看板が目に入る。そこに書いてあった文字は、『この先ゴミ捨て場』。そして…。

 

「「「『谷につき、落下注意』…!?」」」

 

 

 

「正解! コホン…。 えー、次はゴミ捨て場、谷底行き、谷底行きでございまーす。皆様、お忘れ物なきよう」

 

「あ、忘れてた。盗んだもの返してもらうわね」

 

せっかくゲットした武器や魔法鉱物までもミミック達に奪われ、もはや成す術無し。そんな間にもトロッコは直進し―!

 

ガガガガッ! グオンッ!

「「ひゃっほっー!」」

「「「わああああっ!!?」」」

 

車体後方が跳ね上がり、俺達は勢いよく空中へ放り出される。これ絶対死ぬ…! あれ…!触手が解けてる…!?

 

ひゅううと落下していく中、俺は捉えた。90度立ち上がったトロッコの中、上位ミミック達がぺったり張り付き吹っ飛ばされるのを堪えているとこを。

 

「じゃーね冒険者達!」

 

彼女達に手を振られ、俺達は成すすべなく谷底へ落ちていくしかなかった。

 

 

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