ガンダムビルドダイバーズ REBOOT   作:キラメイオレンジ

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現実世界パート

自分のことを真っ当だと思っている主人公の化けの皮が徐々に剥がれていく話(笑)


第8話 現実は仮想世界より奇なり

「ふぅ……濃ゆい時間だったなぁ」

 

時刻は午後17時半を少し回ったあたり、現実世界に帰還した俺は数時間同じ姿勢で固まった身体をストレッチで解しながら、家系ラーメンの様に濃厚だった数時間を思い返した。

 

ウザさに磨きがかかった後輩バカップルとの再会。

初心者狩りとELダイバーとの戦い。

お姉系トッププレイヤーとの邂逅。

そして、JCとのコンビ結成。

 

息抜きに始めたゲームなのに、何だか繁忙期を乗り切った後の様な徒労感が残る。

 

しかし、まぁ……楽しくなかったか? と問われれば、首を横に振るだろう。

 

久方のぶりのバトルはやはり現実では泡得ない高揚感があったし、何より素晴らしい可能性の塊に出会えた。

やる事は山積みで、明日は全国のサラリーマンを絶望させる月曜日だが、俺の心は活力に満ちていた。

 

さあ、牛丼でも買って帰るか!

 

「~~♪」

 

「あ、あの!」

 

上機嫌に名曲『儚くも永久のカナシ』を口ずさみながら店を出ようとするが、そんな俺を凄く聞き覚えのある可愛らしい声で止めた。

 

振り返るとそこには、明るめの茶髪でちょこんと小さなポニーテールを結った12,3歳位の女の子がいた。

 

えっ、まさか……嘘だよね?

 

「と、突然こんなこと聞いてすみません! もしかして、ダイチししょー……ですか?」

 

「えっ、うん。そうだけど……ユナ?」

 

「ハイッ!!」

 

俺が肯定した瞬間、ユナは一瞬で懐まで距離を詰め、俺の腰に抱き着いてきた。

 

リアルでもこの動き、やっぱりこの娘に天性のセンスが……って違うそうじゃない!

 

「うわあああ♡ 凄い偶然! 最早運命!? ししょーししょーダイチししょー♪ リアルでもご近所さんだったんですね♪」

 

「ちょっ、ユナ! ストップ! 止めて! ししょー逮捕されちゃう!!」

 

まだまだ人の多い模型店の入り口付近でJCに抱きしめられる身長180㎝オーバーの大人とか絵面がヤバ過ぎる!

あっ、さっき初心者講習してくれたお姉さんがスマホに手を!

止めてお願い! 通報しないで!!

 

 

・・・・・

 

 

世の中には『事実は小説より奇なり』などという格言があるが、俺が陥った状況はまさにそうだ。

 

「えへへ♡」

 

仮想世界で知り合った女の子が現実でもすぐ隣でダイブしており、且つその事実にスグ気付き、夕暮れの商店街を腕を組んで歩く。

 

今日日、ベタなラブコメやエロゲにだって起きねえ展開だ。

 

「あ、あのさユナ? 現実(リアル)で会えたのは俺も嬉しいけど、取り敢えず一旦、放してくれないかな? さっきも言ったけど、世の中には女の子が大人の男が会話しただけで通報する心配性な人が多いから」

 

「あっ、すみませんししょー! 今度から誰も見てないところでくっつきます!」

 

「うん、そうして……って違う。そうじゃない。それだとより不道徳だから」

 

「??? ししょーの言ってること、よく分かりません」

 

全身から脂汗を流しながら周囲の視線を気にする俺に対し、ユナは曇りのない眼で首を傾げる。クッ! 我が身は可愛いが、同時にこの無垢さは守りたい! どうすりゃいいんだ!?

 

「改めまして私、ユナこと【アサヒ・ユウナ】って言います! この商店街のはずれの【暁】って喫茶店の一人娘で、偶にお店手伝っているので、良かったら来てださいね♪」

 

「おっ、さり気にお店の宣伝とは中々しっかりしてるな? ていうかあの店の娘さんだったのか? 俺、この辺に住んでるから店の場所知ってるよ。そこから歩いて5分位のマンションに住んでる。因みに職場も近い」

 

「じゃあずっと、同じ所で生活してたんですね! うわぁ~何か不思議な感じですね!」

 

「そうだな」

 

きっと町中ですれ違った事は何度もあったのだろう。

ただ同じ生活圏で暮らす、学生と配達員。

それが仮想世界で出会い、師弟関係を結んだ上、リアルでも知り合う。

 

何とも不思議な巡り合わせだ。

 

「ところで、折角だから今後の予定について確認したいんだが、ユナは原則、平日は放課後から門限の18時までの2時間弱、土曜は家の手伝いがあるんだったな?」

 

「はい! おかーさんとの約束で、勉強と土曜日のお店の手伝いをしっかりやる条件でGBNの許可貰いました! 代わりに日曜は朝から大丈夫です! 後、再来週からの春休みはいっぱい出来ます」

 

「それは都合良いな。俺も土曜日は出勤の方が多くて、大体日曜+平日1日が休みなんだ。月1くらいで日曜仕事もあるけどな。その時は翌日の月曜が休み。平日は大体17時前に上がれるかな。週1で夜間当番があるけど」

 

「じゃあ、大体週に1回の平日と日曜日は時間合いますね!」

 

「そうだな。取り敢えず来週いっぱいはリアルでユナのガンプラの改修にあたろう。遠方の友達がGBN始められるのは春休みからなんだよな? 当面の目標はそれまでに、ある程度戦えるようになろう」

 

「はい!」

 

金曜日という日程そのものは事前に決めていたが、やはりお互いのリアルの事情が分かると予定が立てやすいな。

 

「それで、こっからが大事なんだけど、ユナってガンプラやガンダムは全然知らないんだよな?」

 

「は、はい……誘ってくれた友達は好きなんですけど……ごめんなさい」

 

「いや、謝る事じゃないよ。因みにナドレを選んだ理由は?」

 

「えと……笑わないで、くださいね?」

 

「あ、ああ……」

 

何故か少し恥ずかしそうにするユナ(可愛い)。

俺は首を傾げながら、頷いた。

 

「…………その、お店でどのガンプラを使おうか見てたら、赤くて長い髪の毛とか、白くて細い体とか……何だか美人さんなガンプラだなぁ~って思って……」

 

「び、美人さん……まぁ、言いたいことは分かるよ。うん」

 

思いもよらぬ選択理由に、俺は笑いこそしなかったが、少し固まってしまった。

いや、その理由がどうというより、自分では考えもしなかった発想に純粋に驚かされた。

 

しかし、それでナドレか……。

 

「ユナ、ちょっと言い辛いんだけど、君が選んだナドレはそのままで使うと実戦ではちょっと厳しい所があるんだ。勿論、完成度を上げたり改造すればいくらでも性能の底上げは出来るけど……」

 

――ガンプラの機体性能の優劣はその完成度によってのみ決まる。

 

これはGBNは勿論、GPDが嘗て単純にガンプラバトルと呼ばれていた頃から揺るぎない大原則だ。

 

極端な話、ビルディングを極めればコアファイターだろうがボールだろうが最強になれる。

 

だからもしユナがどうしてもナドレに拘りたいというなら、全力で改修を手伝うつもりだ。

否、例えどんなリクエストがあっても、ガンプラは自由。

俺が必ず、最強のダイバーが乗るに相応しい機体にしてやる!

 

「いえ、ナドレ(この子)はこれからも大事にしますけど、私、今日の戦いで自分が乗りたいガンプラが出来たので、新しく作ります!」

 

「えっ、あっ、そうなの?」

 

何だか拍子抜けした気持ちになったが、ユナの言う乗りたいガンプラは、またしても俺の予想の斜め上のものだった。

 

「ししょー、私もししょーと同じゼロクアンタに乗りたいです!」

 

「うん、それは止めとこうか」

 

「なんでですか!?」

 

さっき心の中で『どんな機体を選んでも受け入れる』と誓ったばかりだが、俺は彼女の希望を断固として拒否した。

 

「理由は2つ。1つはそもそもにあのゼロクアンタはまだまだ改修の余地がある未完成の機体だから。2つ目はコンビでガンプラもペアルックとか、俺が社会的に死ぬ」

 

何の知識もない素人JC(この時点で既に何だかいかがわしいな……)に、知識と経験を笠に着て弟子にした上に自分と同じ機体に乗せ、自分色に染め上げる。

 

どんな変態プレイだ!?

アキラのバカだってそんな事せんわ!

 

「大丈夫ですよししょー! 私の機体は赤かピンクにしますから、見分けはつきます!」

 

「そういう意味じゃないよ!? 大体、自分で言うのも何だけど、あんな大した特徴のないガンプラ、どこが気に入ったんだ?」

 

そもそもに気になっていた事なのだが、この子は俺やゼロクアンタの事を過大評価している気がする。

 

無論、向けられる信頼は嬉しいし、出来る限り期待に応えてあげたいとは思う。

 

しかし、ユナには“あの程度の動き”をゴールに見据えてほしくない。

この娘にはもっと高みを、俺みたいな凡人にはたどり着けない頂に上って欲しい。

 

「大したことなくなんかありません! ししょーの事をバカにするのは例えししょーでも許しませんよ!? ――だって、カッコよかったんですもん! 何にも分からず顔の濃い人達に絡まれて何にも出来ず泣いていた私を、助けに来てくれたししょー、熱くて、強くて、速くて……昔大好きだった、ニチアサのヒーローみたいで……♡」

 

心酔するゼロクアンタ(俺)を俺によって否定され激昂し、うっとりした表情でそのすばらしさを本人に説くユナ。

 

……なんでだろう? 褒めらえている筈なのに、喜びより重圧が勝って余り嬉しくない。

 

どうやらユナは素直で真っ直ぐないい子には違いないが、少々思い込みが激しいようだ。

 

「ま、まあ、使うガンプラについてはおいおい考えるとして……前提としてユナは、トランザムが使える機体に乗りたいんだよな?」

 

「はい! より正確に言えばトランザムが使えるゼロクアンタに乗りたいです!」

 

「そこは一旦置いて話そうか!? ――オホン、それならまず予備知識は蓄えておかないとな。ユナ、ちょっと俺の部屋に寄っていいか?」

 

「……………えっ!?」

 

戸惑いと驚き、そして何故かちょっと嬉しそうな表情のユナを連れ、俺は自宅のマンションへと彼女を案内した。

 

 

・・・・・

 

 

「こ、ここがししょーのご自宅なんですか? 本当に家のご近所なんですね」

 

「まだ引っ越して1年経ってないけどな。悪いけど玄関の前で待っててくれるか? 2,3分で終わるから」

 

「えっ? 中には入れてくれないんですか!?」

 

「当たり前だ! 独身男性の部屋舐めんなよ!? 男臭さとむさ苦しさで具合悪くなるぞ!」

 

年頃の乙女に夢も希望もない事を言って悪いが、おしゃれな1人暮らしなどハッキリいて幻想だ。床に散らばったエロ本、畳まずに脱ぎ捨てられた服、うっかり零したカップラーメンのスープのシミ、敢えて言おう、独身男性の部屋など存在そのものが18禁だと!

 

※あくまでダイチ個人の見解です。

 

「し、ししょーの臭さなら、甘んじて受け入れる所存です……!」

 

「だからどうして君はそう無駄に肝がすわってハートが強いんだ!? ――そういう覚悟は、将来好きな男の子が出来た時にとっときなさい」

 

「ブー……じゃあ、そういう相手の部屋なら入っていいんですね?」

 

「ああ、但し最低5分は部屋の片づけをさせてやる時間をあげるんだぞ? それとクローゼットとベッドの下は絶対に覗かない。ししょーとの約束だ!」

 

「分かりました!」

 

頑固な弟子に何とか納得してもらい、俺は手早く部屋の中で目当ての物を探し玄関へと戻り、それをユナに渡す。

 

「ほい。ししょーから弟子へ最初の宿題。次のダイブまでに、これをひと通り見ておくこと」

 

「ええと、これ、ガンダムのブルーレイ、ですか? きどーせんしガンダムゼロゼロ?」

 

「ガンダム00(ダブルオー)だよ。ユナが大好きなトランザムを使う機体が出てくるシリーズだ。取り敢えず自分が使う機体の事くらいは把握しないとな。因みにお前が乗りたいっていうクアンタは最後の劇場版に出るから」

 

「えっ♡ じゃあ初めに映画から観ますね!」

 

「それはやめとけ! 混乱するから!」

 

ストーリーなど知った事かとばかりに欲望に走ろうとする弟子を止め、そのまま今日はここで解散と宣言しようとするが、そこでユナのスマホのアラームが鳴った。

 

「あっ、門限過ぎちゃった! うわー……おかーさん怒るかなぁ」

 

時刻が18時を回り、親との約束を破ってしまった事に肩を落とすユナ。

 

……うん、反省するのはいいけど、門限前に帰りたいなら今度からアラームは5分か10分前に鳴るようにしような?

 

辺りを見ると日照時間も大分伸びたとはいえ流石に薄暗い。

 

歩いて5分の距離とはいえ、門限過ぎまで年頃の子を連れまわしてしまったのは人として心苦しいな……。

 

「……家の前まで送ってくよ。どうせ夕飯買いに出かける予定だったし」

 

買い置きしたカップラーメンで済ませる選択は排し、晩飯の牛丼を買いに行くついでと言う体でユナを送ろうと提案。

 

するとユナはパァと花が咲いた様な表情(くどい様だが可愛い!)悪魔的な提案をする。

 

「だったらウチの店で食べて行ってくださいよ! おとーさんとおかーさんにもししょー紹介したいですし!」

 

「……………………えっ?」

 

現実世界に帰還して尚、俺の修羅場は続く!!

 

 

 

 

 




【アサヒ・ユウナ/ユナ】
本作のヒロインで現在中1の12歳(3月18日生まれ)。ダイチと同じ日にGBNを始め、同じミッションで出会った新人ダイバー。
現実では平均よりやや小柄で明るめのミディアムショートヘアで小さなポニーテールを作っている。明るく快活でちょっと天然ノーテンキな少女。
家族や友人を何よりも大切にし、他者を思いやる優しさを持つが、1度信じた相手は何があっても信じ抜いてしまうなど、少々愛が重い。
父親から護身術として格闘技を習っており、運動神経抜群で身体能力が高い。ついでにハートも強い鋼メンタル。
ダイバールックは現実と近い容姿にしているが、髪だけ桜色でロングにしており、やはりポニーテールに結っている。服装は桜色を基調にした旅人風。
初心者狩りの罠にハマり窮地に陥っていた所をダイチに救われ、その事に対する感謝とゼロクアンタのトランザムを用いた戦いに魅入られ、彼に弟子入りした。
彼女にとってダイチは最強のダイバーであり、彼が『俺より凄い奴はごまんといる』と言ってもこの持論は曲げない。ししょーをディスる者はししょーでも許さない。
生来の運動神経と格闘スキルによりファイターとしては驚異的な反射神経とセンスを持ち、無改造とはいえトランザム状態のナドレで『やっと満足に機体が追従してくれる』というレベル。
反面、ガンプラはおろかガンダム作品についての知識は皆無であり、ビルダーとしてはずぶの素人。その為、能力を活かすガンプラを作成するのが今後の課題。
春休み、転校した親友とGBNで再会する予定。
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