ガンダムビルドダイバーズ REBOOT   作:キラメイオレンジ

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主人公は(自称)まともな常識人!

少なくとも本人はそうだと信じている。


第10話 弟子のいる生活

「お前さ、最近ちょくちょくスマホ弄るようになったな?」

「えっ、そうっスか?」

 

激動の初ダイブから4日経った木曜日の昼休みの食堂。

 

左手で総菜パンを口に運びながら右手でスマホを操作する俺に、向かいの座席でラーメンを啜る50代の先輩が尋ねた。

 

「そうだよ。しかもなんだかやたらニヤニヤしながら操作してるし、さてはお前、コレができたのか?」

 

と、左手の小指を立てていやらしい笑みを浮かべる先輩。昭和の表現か!

 

「べ、別にそんなんじゃないッスよ。ただ最近始めたオンラインゲームの友達と、色々ゲームの話してるだけっていうか」

 

「あっ? なんだよピコピコ仲間ってことは男か? ていうかお前、そういうのするんだな」

 

ゲームの事をピコピコとか、今日日おばあちゃんだって言わねぇし、大人のゲーマー=すべからくムサい男と認識するとか、アンタどこまで昭和なんだ?

 

と、心の中で倍以上年の離れた先輩にツッコミをいれつつ、『いやぁ、一応今どきの若者なんで(笑)』と、適当に答える。

 

実際の所、そういう偏見と言うか先入観をもたれるのはありがたい。

 

何故なら俺は今、この人の娘さん(高校生らしい)と然程歳の変わらない娘とLINEしているという、中々に世間体の悪い事をしているのだから。

 

〈おはようございますししょー♡ 今日も寒いですね!〉

〈ししょー、今日のお昼は何食べてます? 私はおうどんです!〉

〈ししょー! ダブルオー面白いです!! ロックオンかっこいい!〉

〈ししょー……ナドレってエッチなガンダムだったんですね……。もうお嫁にイケない!〉

〈ししょーししょー! この間あった英語の小テスト、100点とれました! 褒めて!!〉

〈おやすみなさいししょー! 良い夢を!〉

 

と、朝から晩、おはようからおやすみまでししょーししょーと連呼され、事ある毎にメッセージやらスタンプを送られる日々が、あの翌日の月曜から今日まで続いた。

 

げに恐ろしきは物心ついた時からSNSが生活の一部になっていた女子中学生。

きっとユナや彼女の同級生にとって、メッセージを送るなど呼吸も同然なのだろう。

 

必要最低限、簡潔な内容だけしか送らない俺の様なタイプとはえらい違いだ。

 

月曜にマナーモードにして夕方までチェックしていなかったら100件の未読メッセージがあった上に家の前で涙目のユナが待っていて『ししょー、私の事キライになっちゃいました!? 捨てないで~!』と往来で抱き着かれた時は、逮捕エンド待ったなしかと思った。

 

お陰で今は仕事中でも30分に1回はスマホをチェックし、メッセージを確認したらすかさず返信するのがすっかり習慣になってしまった。

 

全く、3日に1回は家にスマホを置き忘れていた元カノ(アイツ)とはエラい違いだ。

 

そしてこの愛弟子による怒涛のLINE攻勢がしんどいか? と問われると困った事になかなか楽しい。

 

日常の何気ない出来事を報告し合い、その事にお互いコメントし合うというのは、直接顔を合わせなくても確かなつながりを感じられて、ホッコリする。

 

――うん、JCと四六時中つながっているって、傍から聞くとやべー奴だな……。

――俺はロリコンとかじゃなくて、健全に弟子を可愛がってるだけだからセーフだけど!

 

などと代わり映えしない様で地味に色々変わった日常の仕事をこなし、今日も滞りなく定時退勤が出来た俺は、17時には自宅に到着。徒歩通勤最高!

 

明日は楽しい楽しい平日の非番(土曜は仕事だが……)!

 

帰りがけのスーパーで買った総菜(大体揚げ物)と缶チューハイが入った袋を手に、狭いながらも楽しい我が家に戻ると、そこには3日ぶりに見る愛弟子の姿があった。

 

アレ?

何か月曜の後継とデジャブするぞ?

 

と、いう事はこの後は……!?

 

「うわぁあああ~~~~ん! ししょぉおおおお~~~~!」

 

「やっぱりこうなる! ハイ、予想通り!! あっ、違うんです誤解ですよ皆さん! この子は妹! 実家から遊びに来た妹なんです! なんかお袋とケンカしたみたいで!!」

 

またしても往来で泣き疲れ、スマホを片手に怪訝な顔をするご近所さんに必死に釈明しつつ、俺は泣きじゃくるユナを大慌てで部屋に連れ込んだ。

 

ちくしょう! 字面だけならすっかり犯罪者だ!

 

「うぅ……いいんでしゅかしじょー……? 男の人は、家に上がる前は5分待たなきゃいけないんじゃ?」

 

「家の前で大泣きしてる弟子を5分も放置できるか! フッ、それに言いたくはないが月曜の時点で既にこういう自体は想定済みだ!」

 

あの時は玄関で待たせてる間に速攻で片付けるという綱渡りであったが、人は日々成長する生き物。既に子供の教育上よろしくないブツはベッドの下およびクローゼットに収納済み。加えて毎朝30分早く起きる様にして部屋の掃除を心がけるようにしている。

 

ファブリーズで男臭さも脱臭済みだ。

 

ユナのお陰でお兄さんすっかり綺麗好きになっちゃったよ!

 

「こ、ここがししょーのお部屋……!」

 

「いいか? 前にも言ったけどベッドの下とクローゼットは覗かない! この2つの条件を守れるなら、存分に寛いでくれ」

 

「ひゃっ、ひゃい! お世話になりましゅ!」

 

「三つ指つかなくていいから……。そういえばもうすぐ18時だけど、門限は大丈夫か?」

 

電子ケトルを沸かしてインタスタントのコーヒーを用意しながら俺は尋ねた。

 

やっぱり中学生なら牛乳と砂糖は必要かな? 

 

というか喫茶店の一人娘にインスタントはまずいか?

 

「あっ、おかーさんから行き先がししょーの所だったら特別に21時まで許してくれるって許可は貰いました。後、帰りは必ず送ってもらうのが条件だって」

 

「えっ、なにその許可? ししょー全然同意とかしないんだけど??」

 

ユナ母って結構強引なところあるよな……。

 

「……ダメですか?」

「いや、親御さんがいいって言うならいいけど……」

 

玄関の前で泣かれたり抱き着かれたりしてご近所の視線に恐怖するのに比べれば、親公認のJCを家に招き入れる方が全然マシ。……何かどんどん感覚が麻痺してる気もするが。

 

「あっ、後これお母さんがお夕飯に持っていけって、オーブンで10分位だそうです」

 

「晩御飯持ち込み!? ……まあ、折角だからいただくけど!」

 

流石に18時前では晩飯には早いという事で頂いた差し入れを冷蔵庫にしまい、ユナと共に腰を下ろした。

 

「それで? もうすっかり元気だけど、何で泣いてたんだ? ししょーが話聞いてやるから言ってみなさい」

 

「ハッ、そうでした! 聞いて驚かないでくださいねししょー!? 実は……じつは……ロックオンがぁぁ~死んじゃったんですよぉおおおおお!!!」

「………………えっ、うん。知ってるけど?」

「ご存じだったんですか!?」

「君にブルーレイを貸したのは誰だった覚えてる!?」

 

前から薄々そうなんじゃないかと思ってたけど、俺の弟子アホだ!!

 

ていうか、そんな理由で人ん()の前で泣いてたのかよ!? 

 

分かるけど! 俺もリアタイで観た当時はショックだったけど!!

 

「あー、作品にハマってくれたのは嬉しいけどさ、そんなにロックオンの事が好きだった?」

 

「ぐす……だって……凄くカッコいいじゃないですか? 優しくて強くて……他のマイスターの事をいつも気にかけて……まるでししょーみたいじゃないですか!」

 

「うん、前半は全面的に同意するけど、後半は何言ってるのかちょっとわかんないかな?」

 

一体何をどう勘違いすればガンダム界でも5本の指に入る名兄貴キャラと、こんなJCに翻弄されっぱなし冴えない男を同一視できるんだ?

 

早いところこの()の幻想をぶち壊さないと、色んな意味で取り返しのつかない事になりそうで怖い。

 

「それに……刹那やティエリアもそうだけど、遺されたフェルトちゃんが可哀そうで……あの子絶対ロックオンの事好きでしたよ?」

 

ああ、そう言えばフェルト・グレイスってユナと大体同い年だったっけか?

同年代の女の子キャラに感情移入した流れでロックオンが好きになったって訳か。成程。

 

「ししょー! ししょーは私を置いて死んだりしませんよね!?」

「感情移入し過ぎだから! GBNは撃墜されても死なないから!」

 

作品の考察とか感想は割とまともな癖に、時々スイッチが入ると暴走する。

 

……まあ、物凄く好意的に解釈するならこの一途さと思い込みの激しさは、意思の強さ集中力の高さともとれる。

どちも強いファイターには必要不可欠な才能だ。

 

「ぐす……それにしてもロックオンは、どうしてサーシェスと戦ってる時にトランザム使わなかったのでしょう? 使ってたら勝てたのに……」

「あー、それは確かになぁ」

 

涙を拭いながら00ファンならば誰もが1度は考える疑問を浮かべるユナ。

 

第1シーズン内で言えば間違いなく最強クラスのパイロットだったサーシェスと互角の死闘(それも狙撃特化の機体で近接型を相手に)を繰り広げ、鬼神の如き迫力で追い詰めつつあったロックオン。――あの戦いはマジで名シーンだったなぁ。

 

直接の敗因はダリル機の特攻による損傷と右目の負傷を見抜かれた事だが、そもそもスローネとの1対1の戦闘の際にトランザムを起動させていればもっと早期に撃破できた可能性は十分にある。

 

後に出たスペシャルエディションではGNアーマーによる艦隊攻撃の段階で使用した形になったが、リアルタイムでTVを見ていた俺も、当時は友人とあれこれ考察したものだ。

 

「00ファンの間でも意見が分かれるが、俺個人としては『シミュレーションをしたことがないシステムをぶっつけ本番で使う事のリスクを考慮した』って説を推すな。追い込まれていたならいざ知らず、そのままでも十分に戦えていたんだし、上がり過ぎた機動性に翻弄されて、射撃の精度が落ちる可能性もある。――切札はただ切ればいいってもんじゃない。ユナもそこは覚えておいた方がいい。大事なのは使いどころだ」

 

「な、成程……流石ししょー、勉強になります!」

 

俺は俺なりの考察を披露しつつ、今後の為にユナに覚えておいて欲しい事を言い聞かせた。

 

因みにロックオンのトランザム不使用に関しては俺の友人たちの間では他に――

 

『サーシェスにキレていて忘れていた説』

『GNアーマーの運用で粒子を消費していた説』

『どうせ脚本の都合だろ(笑)説』

 

が浮上し、議論したものだ。

 

「あ、あのししょー……それで良かったらなんですけど……これから00の続き、一緒に観てくれませんか? 続きを1人で観るの、ちょっと怖くて……」

 

そう言ってユナは鞄から取り出したブルーレイを手に上目遣いでお願いした。

うん、やっぱり俺の弟子超かわいい! 

こんな顔されて断れる人類がいるか? いや、言る筈がない!

 

そうして俺達はアキナさんが作ってくれたドリアを食べながら、00を鑑賞。

 

第1期の残りの2話を視聴して案の定『クリスが! リヒティが! ……名前忘れちゃったけどお医者さんの先生がああああ!』とか『うわあああああん! あの変態さん(グラハム)なんでこのタイミング出てくるんですか!? ひきょーです!』などと、期待通りのリアクションをしてくれた。

 

こういう作品にのめり込んで観るタイプの子と一緒に観ると、既知のファンとしてはなんとなく嬉しくなる。あれこれ横から解説を添えたりして『そうですか!?』『なるほど!』などと反応されたりするのがまたたまらない。

 

その後、俺達は続けて第2期の1~3話までを視聴し終え、コーヒーでひと息ついた。

 

「ハァア……とってもアレルヤと姫様助けられて良かったですねししょー。マイスターが全員揃ってワクワクしてきました!」

 

「楽しめたんなら良かったよ。00は気に入ってくれたかな?」

 

「とっても気に入りました! 私の中で好きなガンダム作品不動の1位です!!」

 

「まだ00しか見てないでしょキミ!?」

 

などと談笑しつつ、俺は最後に1つ、肝心な事を聞いた。

 

「それで、まだ第2期が20話以上と劇場版が残ってるけど、ユナの中で作りたいガンプラのイメージはなんか出来たか?」

 

「あっ! それなんですけどちょっと待っててくださいね!」

 

俺が話をふるとユナはまた鞄を開け、取り出したノートを開く。

 

そこには、ガンダムエクシアが描かれていた(意外と言ったら失礼だが、中々うまい)。

 

因みにイラストの各所には

 

・剣は使わずパンチとキックで!

・なるべく動きやすくしたい。

・なにはなくともトランザム!

 

などとメモ書きがあった。

 

「私、やっぱり自分の身体を動かすカクトー戦で行きたいです! だから、エクシアを使いたいです!」

 

「――うん。いいんじゃないか? 口出しすると考えが偏るから言わないでいたけど、俺もユナの運動神経を活かすなら格闘型が高機動型かって思ってたよ。じゃあ明日はいよいよ店でガンプラ買いに行くぞ! 16時にガンダムベース集合でいいか?」

 

「はい! お買い物デートですね♪」

 

「いや、デートじゃない」

 

どさくさに紛れてまた俺の社会的地位を脅かしかねない発言を牽制しつつ、俺はユナを暁まで送り、アキナさんに挨拶を済ませて帰宅した。

 

そしてクローゼットからエロ本……ではなく、この4日間の間に改修を進めていたゼロクアンタを取り出し、仕上げを施した。

 

「うーし、チェック完了。名前は……うん、装備構成が似てるし【ゼロクアンタガルム】でいいか。ユナが前衛で戦うなら、俺は火力と防御力で支援する形がいいだろう。模擬戦で対砲撃機戦を教えてやれる。明日の非番はユナが来るまでコイツの試運転と、“先立つもの”を稼がないとな」

 

明日のスケジュールを脳内で整理した俺はその後、シャワーを浴びて読みかけのラノベを1時間ほど読んだ後、夜中の0時の就寝。

 

愛弟子との夕方の合流を心待ちにしつつ、眠りについた。

 

弟子と過ごす生活は、些かスリリングで慌ただしくあるが、楽しい。

 




次回は久しぶりにGBNに入ります(笑)
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