ガンダムビルドダイバーズ REBOOT   作:キラメイオレンジ

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タイトルの意味については本運にて(笑)


第15話 認知

日曜日。それは一週間を戦い抜いた者達の魂を癒す魂の休息場だ。

 

友人たちとどこかへ出かけても良い。

 

ニチアサを堪能した後に()り貯めたアニメの消化やゲームに費やしても良い。

 

ちょっと洒落たカフェに繰り出して、コーヒーを飲みながら読書に費やすのも悪くない。

 

或いはちょっとストイックにトレーニングに費やして日頃貯まった脂肪を燃焼したり、将来の為に資格試験の勉強とかしちゃうのもありだ。

 

極端な話、何の予定もなく日がな1日グダグダ過ごしたって良い。

 

ある偉大なガンプラファイターは言った『ガンプラは自由だ』と。

 

そんな彼にリスペクトを込めて言おう『日曜の過ごし方だって自由だ』と。

 

 

・・・・・

 

 

時間は午前11時。

休日の日課であるトレーニングや買い出しなどの用事を済ませた俺は、ガンプラの点検を行っていた。

 

何しろゲーム内では144倍まで巨大化させて動かす物だ。

 

スラスター内に僅かなプラスチックのカスが詰まっただけでも動きに異常をきたすし、関節などの可動が固すぎたり緩すぎたりしてもいけない。

 

GPD時代はこれに加えて補修用の予備パーツの点検なども必要だった事を考えれば、これでも随分と手間がかからなくなったものだ。

 

最後にすっかり習慣になった部屋の消臭や、昨晩“お世話になった”エロ本がひょっこりベッドの下から顔を出してないかだけチェック。

 

そういえば気のせいかもしれないが、昨晩は何故か妙にベッドや枕から妙にいい匂いがしたのが気になるが、まさかユナの奴……。

 

いやいやいや、にそれはないか!

 

年頃の少女が一人暮らしの男の部屋のベッドで寝るとか、流石にそんな……うん、ないという事にしておこう。じゃないと今晩、ぐっすり眠れそうにない。

 

 

・・・・・

 

 

「いらっしゃいませー! ――あっ、ししょー♡」

 

時刻は丁度正午を回ったまさにお昼時、待ち合わせより早く家を出た俺はユナの実家である喫茶(あかつき)に来店。

 

私服にエプロンを付けたユナが、相変わらず春の日差しのような笑顔で迎えてくれる。

 

「こんにちはユナ。店の手伝いか?」

 

「はい! 昨日はガンプラ作る為にお休みしたから、今日はその穴埋めで」

 

「そっか、エラいな。席空いてる?」

 

「あっ、はい、カウンターで大丈夫ですよね? こっちにどうぞ!」

 

ユナに案内され、俺はゴウザブロウさんとアキナさんが調理をするキッチンの前の席に腰を下ろす。

 

時間帯を考えれば当然かもしれないが20席ほどある席はほぼ埋まっており、お客さんの入りは上々のようだ。

 

「いらっしゃいダイチさん。食べに来てくれて嬉しいわ」

 

「あっ、はい、ていうかいつも差し入れありがとうございます」

 

考えてみればユナがウチに来た時はここの店の味を無料でテイクアウトあせて貰ってる状態なんだよな。そう考えると心苦しい。

 

「いいのよいいのよ。いずれ“家庭の味”になるものなんだから好きなだけ食べて♪ なんだったらウチの娘も食べちゃっていいわよ? ちょ~っとお高くつくかもだけど」

 

「だからそういう笑えないネタぶっこむのは止めてもらえますか!? 真っ昼間の飲食店で言う事じゃないですよ……!」

 

見た目は品の良い美人なのに、自分の娘をネタにエグい下ネタをぶっこんでくるアキナさん。やっぱりこの人がアサヒ家で1番やべぇ人だわ。

 

逆に旦那さんのゴウザブロウさんは、見た目こそガンダムファイターとしてやっていけそうな屈強な巨躯であるが、性格は至って素朴で穏やかだ。

 

口ベタを拗らせすぎて、意思の疎通にはニュータイプかイノベイターへの覚醒が必要なのが玉に瑕だが。

 

「ユナ~、今日はもう上がっていいからダイチさんと一緒にお昼食べちゃいなさい」

「は~い!」

 

俺がここに来た目的の半分を察してくれたアキナさんに呼ばれ、エプロンを外したユナが隣のカウンター席に座り、一緒にカレーを食べる。

 

先週いただいた時は緊張で味が殆ど分からなかったが、こうやった改めて食べると本当に美味い。手間暇をかけて作った深みのある味だ。

 

「エヘヘ、ご飯~♪ ご飯~♪ ししょーとご飯~♪ そして食べたらGBN~~♪」

 

カレーを食べながら上機嫌に歌を歌うユナ。まあその気持ちはよくわかる

 

心血を注いで完成させたガンプラを一刻も早く動かしたい。

 

新しいガンプラを作り上げて最初のダイブは何時だってそんなワクワク感に溢れるものだ。

 

「あっ、そうだししょー、見てください! 私“達”のガンプラ♪」

 

あっという間にカレーを平らげたユナはコーヒーでひと息ついている俺に専用のポーチ(HGサイズのガンプラを収納できるクッション入りのガンプラホルダー)から取り出したエクシアを見せる。

 

ていうかガンプラを携行しながら店の手伝いをしていたのか……。

 

「この子ったら昨日帰ってきてからおフロ以外ずーっとガンプラを持ち歩いてるんですよ? まるで自分の子供みたいに」

 

「ハハハ」

 

「お、おかーさん! 変な事ししょーに言わないでよ~~!」

 

茶化すアキナさんと照れるユナ、美人過ぎる親子のアットホームなやり取りに思わずほっこりする。

 

チラりと周囲を見れば常連巨躯らしいお客さん達も各々談笑や読書などをしながら時折こっちをチラ見し、『尊い(てぇてぇ)』という顔をする。分かる!

 

「あっ、変な事で思い出しましたけど聞いてダイチさん! この娘ったら昨晩お風呂で――」

 

「おかーさん!! それはホントに言っちゃダメェエエエエエエエ!!」

 

えっ!? 何!? 昨日お風呂で何があったの……!?

 

――って、いかん! 流れる様にその時の状況=裸のユナを想像しそうになる!

 

くっ! 『昨日お風呂で』というたった一言でほっこりムードをいかがわしい方向に移行させるとは、恐るべしアキナさん……。

 

再び周囲をチラ見すると常連客達も平静を装いながらソワソワし、一方で俺と同様に罪悪感に苛まれた顔をした。クッ、理解できると同時に何故か凄いムカつくのは何故だ!?

 

「そ、それよりししょー、見てください! 私達のガンプラ! ぜひ手に取って!」

 

話を逸らす為にも声を張り上げてガンプラを推すユナ、先程からちょいちょい強調する“私達”という言葉が若干引っ掛かりつつも、俺は手に取ってみた。

 

エクシアリペアⅡをベースにシャイニングガンダムを参考にした改修が施されたユナのガンプラ。――これが2個目の制作だとは思えない、丁寧な仕上がりだ。

 

「ど、どうですか……?」

 

「うん。率直に言わせてもらうと――――俺がユナぐらいの年頃に作ったガンプラより100倍上手に出来ている。ユナはビルダーとしても才能があるな」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

パアアアアアアと花が咲いた笑顔を見せるユナ。うん、超可愛い。

 

頑張って作ったガンプラを褒められて嬉しそうにする少女(ユナ)と、その頑張りを称えて頭を撫でるお兄さん()

 

この場の空気は再び健全でアットホームな空気に浄化出来た。

 

チラ見する常連客達も『フッ、あの新顔やるじゃないか』という感じの視線を向ける。

 

後はアキナさんに変に混ぜっ返される前に店を出ればいつもの様なあらぬ誤解を受けずに済む。

 

そう思って俺は席を立ち上がるが、そんな俺の服の袖をちょこんとユナが摘まんでいた。

 

「あのー、それでししょーに……お願いがあって……エクシア(この子)に名前を付けて欲しいんです!」

 

ガンプラを前に出し、何か校舎裏の告白的なノリで乞われたのは、意外なものだった。

 

「俺に? ユナが作ったガンプラなんだから、ユナがつけるべきだと思うぞ? ネーミングだって、ガンプラ作りの一環だぞ」

 

俺は内心罪悪感を覚えつつも、少し突き放す様なニュアンスで断った。

 

この()は少し……いやかなり思い込みが激しくて、染まり易い所がある。

 

俺なんかの言う事を真っ直ぐに受け止めて信じてくれるのは嬉しいが、だからと言って過剰に絶対視して、判断の一切を委ねてしまう子になってしまってはいけない。

 

『自己の判断で行動する』というのもまた、一流のファイターに必要不可欠な才能だ。

 

まあ良くも悪くも素直な子だ。言えば素直に「むー!」ってアレ? 何かちょっと怒ってる?

 

ユナはぷくーっとほっぺを膨らませて「ししょー!」とカウンターを叩いた。

 

「ししょー! それはちょっと無責任だと思います! “この子”はししょーがくれた大切なパーツ(もの)で、ししょーの手解きを受けて、ししょーのお部屋で作ったししょーと私の愛の結晶なんですよ!? ちゃんと認知して、素敵な名前を付けてください!!」

 

「認知!? ちょっ、おまっ、真っ昼間に人前で何言っちゃってんのかな!??」

 

折角取り戻した健全な空気を木っ端みじんん以吹き飛ばすユナの爆弾発言が店内の空気を一変させた。

 

聞き耳を立てていた常連さん方は、ガタッ! と席を半立ち状態で待機し、これからの俺の発言次第で何時でも()れる姿勢を取る。

 

何だこの訓練された動き! アンタら全員ユナのファンかなんか!?

 

一方、カウンターではアキナさんが瞳をキラキラさせて傍観しており、ゴウザブロウさんは『アチャー』という感じて顔を覆う。

 

ちょっとご両親! 自分の娘の語彙力に責任もって!!

 

「うぅ、酷いですししょー、この子を作る時はあんなにいっぱい優しくしてくれたのに……昨日だってあんな素敵な言葉をくれたのに……(ガンプラが)デキちゃったらぽいなんてあんまりじゃないですか!」

 

「わざと!? キミもしかしてわざとそれっぽく言葉をチョイスして俺を陥れようとしてる!? ガンプラの話だよな! 俺がちょっと手伝ってガンプラ作った話してるんだよ! 皆さん、聞いてますよね?」

 

俺はユナに言い聞かせつつ周囲のお客さんに身の潔白を主張。

 

何かもう、こうして必死こいて言い訳してるのも含めて傍から見ると完全に『無垢なJCを言葉巧みに自宅に引きずり込んて孕ませた挙句、それを認めないゴミカス野郎』以外何者でもない。

 

ちくしょう! 俺は一体、どこまで堕ちればいいんだ……!!

 

「うふふ、天然発言で周りを味方につけるとか流石私の娘ね♪ ダイチさん、知っての通りこの娘は一度火が付くと簡単に止まりませんよ? 観念した方が賢明です」

 

更にそこへ何故か顔を艶々させたアキナさんが追い打ちをかける。

悔しいがここは折れるしかない……か。

 

「…………分かったよ。俺がその(ガンプラ)の名前を付ける。そうだなーー【ブレイジングエクシア】でどうだ?」

 

俺は改めてユナのエクシアをじっと見据え、思い浮かんだインスピレーションをそのまま口に出した。

 

トランザムを最大限に引き出す事を前提に改修した近接格闘特化。

どこまでも一途なユナの在り方を体現する燃え上がる様な戦闘スタイル。

そして、俺が知る限り最も偉大なガンプラファイターへのリスペクトを込めて。

 

俺はこのガンプラに今、そう名付けた。

 

「ぶれいじんえくしあ…………うん! 流石ししょー!! すっごくカッコイイ名前です♪ フフ、良かったねぇ~“パパ”が素敵な名前つけてくれたよぉ♡」

 

やや安直かとも思ったが、気に入ってくれた様子のユナを見て俺はほっと胸をなでおろす。

 

……ん? ちょっと待て、今この子、しれっとヤバい発言しなかった?

 

「なあ、ユナ? 今パパがどうといか言わなかった?」

 

「気のせいだと思います♪」

 

「だよね! 最近ちょっと疲れてたのかししょーってばちょっと耳がおかしかったみたい! じゃあ、気を取り直してガンダムベースに行こうか!」

 

「はーい♡」

 

ユナが言うならきっと俺の聞き間違いなのだろう。

何故なら俺の可愛い弟子はウソなんてつかないから!

 

何故だかそれまで俺に対し殺意を向けかけた常連さん達が人生詰んだ人を見る様な目を向け、アキナさんはウキウキし、ゴウザブロウさんに至っては『強く生きてくれ』という眼差しを向けているが気にしない!

 

今は取敢えず、可愛い弟子と楽しくゲーム出来ればそれでいいや!

 

後、心なしかユナの視線や声音が一昨日あった時に比べてこう、“ねっとり”してる気がするのもきっと気のせい!!

 

 




【アサヒ・ゴウザブロウ】
ユナ=アサヒ・ユウナの父親で40歳。妻のアキナと共に喫茶暁を経営。婿養子。
身長2m、体重110㎏を誇る筋骨隆々の巨躯で元・総合格闘技のホープ。
将来を嘱望されていたが、居眠り運転で車に轢かれそうになった子供を庇った際に足を負傷し、選手生命を絶たれた。
厳つい見た目と屈強な肉体を持つが、性格は素朴で心の豊かなに好人物。格闘技の試合でも常に相手への敬意を忘れず、正々堂々と戦う姿勢からライバルからも慕われていた。
ユナの身体能力と心根の穏やかさは父親譲り。
生きがいをなくして仕事を探している最中、暴漢に絡まれたアキナを助けた事で彼女に一目惚れされ、強引に暁の住み込み店員になる。
当時中学3年生にも関わらず凄まじいアプローチを仕掛けてくる(出会ってひと月目に夜這いをしてきた)アキナに振り回されつつも、その一途な想いを受け入れた。
正式に籍を入れるのはアキナが高校卒業後と思っていたが好き合っていると分かったアキナの歯止めの効かなくなったアプローチにより高1の夏に彼女が妊娠したと知った時は、自首しようとして周囲に止められた。
現在は妻と娘を守る事に新たな生きがいを見出している。
ダイチの事は一目見た瞬間から昔の自分を重ね、『娘を誑かした不届き者』としてではなく『娘に誑かされつつある昔の自分』として捉え、将来を心配している。
一方、親友が引っ越してしまい少し元気をなくしていたユナに昔の様な笑顔を取り戻させてくれた事には感謝しており、2人の関係に対する思いは複雑。

非常にどうでも良い情報だが、クジョウ・キョウヤは作中(GBN内)最強なら、この人は作中(現実世界)最強。


アキナもそうだけど、やっぱりこの夫婦、無駄に味付けが濃いな(笑)

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