ガンダムビルドダイバーズ REBOOT   作:キラメイオレンジ

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時系列はエルドラを巡る戦いから数か月経過した翌年の2~3月頃を想定しています。


第0話 青年のREBOOT

 

 

「お先に失礼しまーす」

「おう、お疲れー」

 

夜間の配達を担当する先輩に挨拶をし、俺――アカギ・ダイチは更衣室で着替えを済ませ、帰路に就いた。

 

高校卒業し郵便局に配達員として就職しておよそ5年が経った。

 

家庭の経済的な事情で望んでいた進学が出来なかった憤りも、学生とは色々と勝手の違う社会人生活に忙殺される日々の中で今ではすっかり整理がついた。

 

仕事にもすっかり慣れ、昨年からは実家を離れて職場から徒歩15分ほどの駅前に部屋を借り、1人暮らしも始めた。

 

自分の配達区域でもある商店街を散策しながら、適当に夕飯や余暇を楽しむ為の本等を探すのは中々に楽しい。

 

「ガンダムベース新店舗、本日オープンでーす!」

「よろしくお願いしまーす♪」

 

そんな浮ついた帰路で視界に新しく出来た模型店のチラシを配る『機動戦士ガンダム』の連邦軍の制服のコスプレをした若い女性が目に入り、そのまま配っていたチラシを手に取った。

 

「ガンダムベース……例のゲームが出来る店が出来たのか」

 

商店街のはずれに出来た大型の模型店。

それは今や世界屈指の人気を誇る遊びGBNをプレイするのに必要不可欠な筐体とガンプラが置いてある事が最大のセールスポイントでもある。

 

GBN――正式名称ガンプラ・バトル・ネクサスオンライン。

無限に広がる仮想空間で自身が現実世界で組み上げたガンダムのプラモデル――通称ガンプラを動かして戦いや冒険を楽しむ次世代のVRゲームだ。

 

現実世界での模型工作技術と仮想世界での操縦センス。

2つの要素が能力の優劣を決する独特のシステムと歴代ガンダム作品を踏襲しつつ融合・拡大した広大な世界は老若男女多くの人々の心を掴み、今日では全世界2千万人を超えるユーザーがいるという。

 

という話を実際にプレイしている高校の後輩から少し前に聞いたが、正直今日にいたるまでさしたる興味はなかった。

 

理由は俺自身がスマホのソシャゲすらロクにしたこともない。趣味と言えば読書とスポーツジム通いというアナログな趣味の人間と言うのもあるが、単純にGBNというゲームそのものにちょっとした忌避感を抱いていた部分が大きい。

 

嘗て、GBN以前のガンプラユーザー達はデータではない実物を動かして戦わせるGPDにハマった。かくいう俺の高校時代の青春もまたGPDが多くの比率を占めていた。

 

創意工夫を凝らし、愛情と手間暇かけて作った自分のだけのガンプラを動かし、壊し合う。

 

破壊と創造、愛と闘争が交差するその戦場はまさしく矛盾を孕みつつも、俺を含む多くの若者(ガンプラバカ)の心を掴んだ。

 

しかし一方でデータのみを反映し、ゲーム内でいくら破壊されても本体が傷つかないGBNが出来た今となっては非合理的であり、破壊的・刹那的なシステムとも言え、廃れるのは必然であった。

 

ぶっちゃけ戦う度に補修に手間と金がかかるGPDは財布に優しくないという致命的な問題点だったし……。

 

しかし青春をかけたもの時代の変遷に伴い消えていく虚無感は、少なくとも俺にとっては決して軽いものではなかった。

 

加え、丁度俺の家庭は親父が経営していた定食屋の経営が傾き、進学の断念と就活というゴタゴタが続いたことも重なり、そのまま自然とガンプラそのものから離れていった。

 

しかし今、こうして気まぐれに立ち寄った模型店に入り、整然と並べられた無数のガンプラを前に久しく忘れていた胸が高鳴る感覚が蘇った。

 

「久しぶりに、作ってみるか?」

 

それは正しく、気まぐれや衝動と言える感情だった。

 

思いたったが吉日とばかりに、歴代ガンダム作品の中でも最も好きな『機動戦士ガンダム00』のコーナーに足を運び、その作中でも最強目される『HGダブルオークアンタ』を手に取った。

 

「模型部引退が早まって設計図止まりだった機体……俺だけのクアンタ……やべぇな、何か猛烈に楽しくなってきた……!」

 

頭の中に浮かべた自分だけのガンプラの完成した姿を夢想し、思わず笑みが零れる。

イケメンとは程遠いもっさりした大人が子供も多い場所でこんな顔をしては色々不味いと自嘲しつつ、俺は先程手に取ったクアンタを2つに加え、イメージの再現に必要なキットやプラ板・パテ等を数点。更に実家の押し入れにしまいっぱなしの工具や塗料一式を買いそろえた。

 

店内には購入したキットをスグに作れる工作スペースもあったが利用者の平均年齢十代半ばだったので、二十代の準おっさんは分を弁えて自宅での制作を選択した。

 

・・・・・

 

そうしてブランクを感じつつも出来る限り気合を込めて製作を始めて1カ月。

俺の、俺による、俺の為のダブルオークアンタ――【ガンダムゼロクアンタ】が完成した。

 

奇しくも、日曜日を控えた土曜日夜間という、ある意味絶好のタイミングであった。

 

「やっぱり退勤後から寝るまでの時間だと大分かかったな。ま、明日は1日コイツの試運転に費やせそうだ」

 

明日から始まる新たな世界での日々を夢想しながら俺は床に就くのだった。

 

 

 

 

 




アカギ・ダイチ
本作の主人公。23歳。入社5年目の郵便配達員。長身筋肉質。
高校時代はGPDに熱中したが、就活とGBNへの移行が重なりガンプラから離れていた。
ガンプラ製作技術及び操作技術は『上級者寄りの中堅』といった所。
射撃も格闘もそつなくこなせる万能型だがビット系などの操作センスは壊滅的にない。
主役機にありがちな『高性能だが操作性がピーキーな試作機を乗りこなす』より『安定性と操作性に優れた制式採用機のポテンシャルを限界以上まで引き出す』という才能に退いているが、本人は『カッコイイから』という理由で主役機に乗りたがり、それを意図的にデチューンするという謎の改造をよくする。(本人曰く『引き算の美学』)
取り分け好きなガンダム作品はガンダム00。
自身の資質とは相性最悪であるクアンタを改造し、GBN世界にダイブする。
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