ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
海上の第1ステージから一転し、第2ステージは平原や森が広がり、一部には河川が流れる広大な自然が広がるフィールドであり、そのあらゆる場所に【人類革新連盟】が誇る主力MS【ティエレン地上型】がその重厚な面持ちで待ち構えていた。
ミッション概要によると、その総数は60機。
その内、ゲート付近に待機していた十数機が、右腕に装着した主武装である200㎜滑空砲の照準を
『わああああっ! ししょーししょー! いきなり一気に撃ってきましたよ!? いっせー攻撃です!!』
「落ち着け、設定上ティエレンの滑空砲はフラッグやイナクトのリニアライフルに比べて威力は高いが弾速は遅い(※あくまで同じ完成度で比較した場合)。この距離ならまだ、数が居ても十分避けられる筈だ」
『でもでも! ししょーのキャノンはともかく、私のサブマシンガンもこの距離じゃ当たりませんよ!?』
俺はシールドを機体の前面に稼働させ、GNフィールドを展開しつつ空中で制止。
長距離で威力が減衰した砲弾を防ぎつつ、GNキャノンによる砲狙撃でティエレンをコツコツ撃墜しつつ、こうした状況での立ち回りが分からないユナに指示をした。
「長射程を持たない空戦機は、パワーと装甲値の高い陸戦機にしたら恰好の的だ。高度を下げて地面すれすれを滑空して敵の懐に飛び込んで、足を狙うんだ。飛べない機体にとって脚部の損傷は致命傷だからな。――高度を下げると視野は狭くなるが、そこは俺が狙撃しながら支持を出してサポートする! 聞き逃すなよ?」
『分かりました! ブレイジングエクシア、敵陣に飛び込みます!!』
格闘戦型の機体による対地戦闘の基本を聞いたユナは即座に実行に移す。
ちょっと00っぽい、というかガンダムマイスターっぽい言い回しを使う愛弟子に可愛さに思わずニヤっとしつつ、俺は突撃しようとするブレイジングエクシアを狙い撃とうとするティエレンを撃墜。人の可愛い弟子を狙ってんじゃねえぞコラ!
一方、愚直に
太陽炉搭載機独特のホバーリング機動で鈍重なティエレンの懐に潜り込み、太腿の付け根に搭載した左右のGNビームサーベルを抜刀し、脚部を斬り落としていく。
「巧いぞユナ! 重装甲のティエレンの場合、打撃よりそっちの方が効率的だ! 最初のステージで言った武器の使い分け、キチンと出来るようになったな!」
『エヘヘ、ごしどーの賜物です!』
俺が指摘する前に適切な武器を選択した事を褒めると、ユナはモニター越しで嬉しそうに頭を掻いた。
やっぱりこの娘は呑み込みが早い。
生来の素直さと1つの事に真っ直ぐな性格と、天賦の運動神経が巧くかみ合っている。
そこに加えて中学生という、無限の伸びしろを持つのだからこの先いくら上達するか想像もつかない。
やはり改めて思う、俺はこの娘を最高のファイターに育て上げたいと!!
『先輩~、どうでもいいっスけど今モニターでスゲーキモい顔してますよ? ユナっちを見て『グヘヘ、やっぱり中学生は最高だぜ!』とか思ってないっスか? 素直なJCを『俺好みの女に調教してやるぜ!』とか考えてないッスか?』
「うるさい黙れ撃墜するぞクソ後輩!」
ベクトルは全然違うが近い事を考えていた事をアキラに見透かされた俺は、早口に全否定。
ていうか、キモかった?
地味にそこが1番傷ついたんだけど!
『アキラさんはいつもししょーに対してしつれーです!! さっきのちょっとニヤってした顔は“せくしー”って言ううんですよ!』
『ええぇ、ユナっち流石にそれは無理あり過ぎ……。どこをどう見たってキモいっスよ!』
『キモくありません!! 私のししょーは超カッコイイんです!!』
『アラアラ♪』
俺が人知れずショックを受けている間、いつの間にかアキラとユナは俺がキモいかカッコイイかの論争を始め、マギーさんはそれを楽しそうに静観するという謎の状態に発展していた。
ていうかお前ら、まだミッションの最中!
「ユナ! 今は
『は、はい!! ごめんなさい!』
『うっへ、地味に殺害予告ッスか!? ……結婚式に招待すんのやめよっかな?』
などとわちゃわちゃしたやり取りをしつつ、俺達は危なげなく第2ステージをクリア。
ゲートを潜り、第3ステージへと転移する。
・・・・・
00を主題にしたステージにあって、ユニオン・人革連のステージの後とくれば、最早疑う余地もなく次はAEU系の機体が相手だ。
ファーストシーズン前期における大規模戦闘【モラリア軍事演習】を彷彿させる造形のステージで点在する60機の【ヘリオン】や【イナクト】を撃墜するというミッションの概要はこれまでと同じだが、1つだけ異なる点としてここには“中ボス”と呼べる存在が居た。
『し、ししょー! やっぱりこのイナクト……サーシェス強いです!』
そう、当初の出現した60機を仕留めた所で現れた61機目の敵――濃紺の機体カラーにライフルとブレイド、2つの機構を持つ独自の武装を装備した機体は【イナクトカスタム】。
00ファーストシーズンに於いて、最高の戦闘技能と最低の人間性を併せ持つ戦争中毒者【アリー・アル・サーシェス】が駆る機体だ。
しかもそのトリッキー且つ洗練された動きは、それまでの画一的なNPDと異なり、作中のパイロットデータが反映されている。
まるで生身のダイバーが動かしている様な機動――常に銃を持った相手の懐に飛び込む戦いをしてきたユナにとっては初めての本格的な格闘戦だ。
「くっ……このっ!!」
鋭く斬り込んできたかと思えば、反撃を嘲笑うかのような動き、一見獰猛な獣の様でありながら、確実に獲物を狩ろうとする狡猾な狩人の様な戦闘スタイルは、ユナにとって相性最悪の相手なのだろう。
「ユナ、一旦下がれ。俺が出る」
俺は、良い経験になると敢えて加勢を控えていたが、このままではよくないと思い、ゼロクアンタを前に出す。
GNバルカンによる牽制で肉薄するブレイジングエクシアから引きはがした後にキャノンを投棄し、2本のビームサーベルによる白兵戦をしかける。
「ユナ、君の運動神経は素晴らしいが、こういう“生きた動き”をする相手にはそれだけじゃ勝てない。大事なのは、相手の動き――行動パターンを把握して“その先を読む”事だ。このイナクトの動きを、よく観察してみろ」
俺はユナにそう言った後、2本のビームサーベルを駆使し、“敢えて”セオリー通りの剣筋でイナクトに斬り込み、相手方の回避や反撃に打って出るパターンなど引き出す様な立ち回りをして見せた。
「分かるか? 一見縦横無尽に動き回ってる様に思える
『――――ハイ! 今なら何だか、攻撃が当たる気がします!!』
「よし! ならもう1度選手交代だ!」
俺はビームサーベルを抜刀したブレイジングエクシアが前に出るタイミングに合わせてGNビームサーベルをダガーモードにして投擲し、イナクトを牽制し後退。
翻弄されっぱなしだった先程違い、明確に相手の動きが見えている動きをブレイジングエクシアは、イナクトカスタムが次にする動きに合わせて次の攻撃を仕掛け、徐々に追い詰めた所で、2本の光刃を交差させ、濃紺の機体を斬り裂いてみせた!
『やりましたししょー! ロックオンの仇とれました!』
「よくやった! あの短い観察でよく見切ったのは流石だな。相手の動きを読む、忘れるない様にな?」
『ハイ!!』
はしゃぐユナの腕前を称賛しつつ、俺は今回の戦闘で学んでもらった事をよく言い聞かせた。
何故ならそれは、彼女の様な近接格闘に特化したタイプのファイターにとって必要不可欠な技能だからだ。
実際、制作技能と操縦機能が戦闘力の基盤になるガンプラバトルに於いて、詰め込んだ多彩なギミックや豊富な武装などで敵を圧倒したり、類い稀な戦闘センスに物を言わせるなど“力業スタイル”で勝ち続けるファイターは上級者にも多い。
しかし真に強いファイターというのは戦う地形や相手の技量などを分析し、柔軟で適切な操縦をしながらガンプラと“人機一体”の動きをする者だと、俺は思う。
そしてユナには、そういうタイプのファイターになって欲しい。
・・・・・
第1ステージと同じ海と空に覆われた陸のない第4ステージは、大量の敵を倒すこれまでとは異なる趣向の少数精鋭との戦いだった。
『…………し……“ザザッ!”……しょ“ザザッ”……きこ……“ザザ!”……』
通信機越しに聞こえるのはノイズ交じりな上に途切れ途切れのユナの声。
これはゲームシステムの不具合ではなく、今俺達が相対してる3機の敵――【ガンダムスローネ】の内1機【スローネドライ】が発動させた特殊機能【ステルスフィールド】により齎された通信障害だ。
そして、通信による相互の連携を遮断した所で、
「これまでのステージでの戦闘パターンを学習した上での分断策って訳か。流石にDランクミッションといってもゴールまで来ると難易度上がるな」
俺は一定の距離を保ってビームライフルとランチャーによる砲撃戦を仕掛けるスローネアインを相手取りながら、スローネツヴァイと戦うブレイジングエクシアの様子を伺った。
【ミハエル・トリニティ】のデータが反映されたスローネツヴァイの動きは先のステージで戦ったサーシェスと比べる動き自体とそれほどでもないが、ガンダムスローネの能力値自体はかなり高めに設定されている。
そこに加えてこれまで常に指示をしてきた俺との通信が絶たれた精神的な不安が影響したのだろう。
ブレイジングエクシアの――ユナの動きには、それまでにあった思い切りの良さがない。
まるでビルゴ3兄弟に嬲られていた――始めてあった時の様な、不安そうな動きだ。
これは、あの娘がダイバーとして抱えるいくつかの欠点の1つであり、ある意味で最も厄介な“
俺の様な出会って間もない男に全面的な信頼を寄せてくれ、指導にも素直に従ってくれるユナの性格は彼女の飲み込みの速さの要因でもあるし、正直あんなに真っ直ぐ慕われるのは、個人的にも嬉しい。
しかし信頼と依存は似て非なる者であり、俺の指示ばかりアテにする様になればあの娘はその類稀な才能を殺し、大成できないだろう。
これは想像するだけで首を吊りたくなる気持ちになるが、俺は将来的に成長したユナから“見限られるべき存在”にならなければならないと考えている。
――ダイチししょーはそこまで大したダイバーではない。
――ししょーより強い人はいっぱいいる。
そうした現実に向き合わせ、俺という存在を踏み台にしてより高みを目指して欲しい。
例えその果てに、今までの交流が途切れたとして……とぎれ……うぅ! ダイバーゴーグルに涙が溜まって視界が滲む! 娘を嫁にやりたくない親父か俺は!?
正直な所、俺には目の前のスローネアインを速攻で倒した後に通信妨害を仕掛けるドライを撃墜する事も可能だ。しかしここは敢えて、ユナが1人を乗り切るまで現状を維持する。
いずれ来る巣立ちの為にも、ユナには1人で戦い抜く強さを持ってもらわねば――。
『……キャ“ザザッ!”あああああ……“ザザッ!”あああ~~~!』
血を吐く思いでそう決断し、スローネアインとのぬるま湯に浸るかのような射撃戦に興じる俺だったが、画面の端で常にチェックしていたブレイジングエクシアが、スローネツヴァイが放った【GNファング】を受け小破したのを見て、思考が停止した。
あ、あのシスコン次男! 人の可愛い愛弟子をいたぶる様な真似しやがって!!
“俺のユナ”に何してくれてんだこの野郎っ!!!
なまじ生きたダイバーに近い動きをするキャラクター反映型NPDだったからだろう。
俺はこれがAI相手のミッションだという事を忘れ、まずGNフィールド展開による強引な防御で距離を詰めてスローネアインをビームサーベルで両断。
その後、ハンドガンで応戦するスローネドライをGNキャノンで速攻に撃ち落とした後、速やかにスローネツヴァイと損傷したブレイジングエクシアの間に割って入った。
「よお、よくも人の弟子を可愛がってくれたな? テメェも兄貴と妹の待つあの世に逝けぇええええええええ!!!」
GNガントレットにフィールドを展開して放つ拳【GNフィスト】でスローネツヴァイを殴り飛ばした直後、俺は我に返り、己の醜態を後悔した。
・・・・・
連戦ミッションにはその性質上、そこまでの戦いで受けた損傷や消費したエネルギーを回復させるインターバルポイントが設けられている場合がある。
RPGゲームによくあるボスが待ち構える部屋の前にある全回復機能付きのセーブポイントみたいなものだ。
「ししょー♡ ししょ~♡ ししょぉおお♡」
「ああ~ユナ……頼むからちょっと離れてくれない」
「嫌です♪」
俺は今、機体の回復を待ちながら、左手の自由をユナに奪われた状態で後悔と羞恥と、二の腕に伝わるフニっとした感触の心地良さに支配されていた。
クソッ! 優秀過ぎるぞGBNの五感フィードバック!
現実で抱き着かれた時と同じ感触じゃねええか!!
ああ、現実と比較できるほどJCの胸の感触を把握してる自分が嫌だ!!
「……ユナ、さっきも注意したけど、さっきのステージは結果としてクリアでも、内容的には大失敗なんだ。君は俺と通信が絶たれた状態でもツヴァイを倒さなくちゃいけなかったし、俺はその為に敢えて君を援護しなかった。――俺は君の成長の邪魔をした。ししょー失格だ」
「えぇ~ど~してそんなかなしーこと言うんですかぁ~ししょーのいじわるぅ♡ あんなにひっしな感じで助けてくれた癖にぃ~♡」
俺は自戒の念を込めて突き話す様にユナに言い聞かせるが……まるで届いてねぇ!
ポーチドエッグの様に蕩けた顔になったユナは、まるで熱に浮かされた様な、若しくは夢見心地な顔で俺の腕にすり寄る。声のねっとり感も尋常じゃない。――ハッ!
「うわぁ……」
「……ウフ♪」
不意に視線に気づきが振り返れば、ガチでドン引きした顔をするアキラと、小粋なウィンクをするマギーさん! や、止めろ!! そんな目で見ないでくれ!!
違うんだよ……!
俺が目指してる師弟関係はこういう感じじゃないんだ!!
俺が目指すのはもっとこう、健全且つストイックというか、普段は兄妹の様な距離感で、指導になるとスパルタ熱血的な!
自由な右手で顔を覆いつつ、仮想世界の空を仰いだ。
――健全って難しい!
ダイチはガンプラバトルになると熱血っぽくなるので指導は割とスパルタ。
ユナは普段の優しいダイチも好きだが、戦闘中の暑苦しいダイチにもキュンとする。
そして最近、厳しく指導されるたり命令されるのが嬉しいと感じる様になっている。
もうダメだこいつら……。
ユナはダイチの左腕に抱き着くのが好き。
身体を擦り付けたり、匂いを嗅いだりする。
【ガンダムブレイジングエクシア②】※今回は装備について
GNガントレットⅡ
シャイニングガンダムの腕部を参考に開発したオリジナルの腕部パーツ。
ゼロクアンタに搭載された物と同様、腕部全体覆う様にGNフィールドを展開し、防御は勿論、GN粒子が持つ重力制御能力の応用で高硬度、高質量の拳打【GNパンチ】を繰り出す。また、その性質上GNソードと同様にフィールド突破能力もある。
GNサブマシンガン
ガントレットの内側に内蔵された射撃兵装。使用時は籠手部分が展開して二連装の銃口が出現する。アリオスガンダムの腕部構造から着想を得た。ユナではなくダイチ発案。
あくまでも格闘戦闘を補助する為の武装なので射程や威力より連射性と取り回しを重視しているが、ガンプラの装甲を破壊するのに十分な威力は持っている。
GNビームサーベル/GNビームダガー
原型機のエクシアリペアⅡからそのまま流用した斬撃武器。
普段は太腿の付け根に装着しており、使用時は素早く抜刀する事が可能。
次回は特殊機能について紹介します。