ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
全5ステージで構成された連戦ミッション【天上人の軌跡】もいよいよ大詰めを迎えた。
ここまで各国家群とトリニティを倒したとなれば、最後に待ち受ける相手とステージは、今更考える余地もない。
インターバルゾーンに出現したゲートを抜けた先は、無限の闇と星々の輝きが混在する宇宙ステージだ。
そして待ち構えるのは赤いGN粒子を巻き散らす30機の天使を狩る為に人に授けられた剣――疑似太陽炉搭載型MS【
GBNのシステム上、太陽炉搭載機であるガンダムタイプと非搭載機であるフラッグやティエレンなどに明確な性能差はないが、そこは演出上、これまでのステージに比べ高いステータスに設定されている。
但しAIはイナクトカスタムやスローネと異なり画一されたNPD。こちらも動きのレベルが1ランク上がっているようだが。
言うなればそれまでのステージで学んだ事の総決算といった所だろうか?
「ユナ、2時の方向から5機編隊が接近。キャノンをぶち込んで陣形を崩すから、粒子ビームに続いて突撃いろ」
『了解ですししょー!』
俺に指示に速やかに従い、ゼロクアンタが放った砲撃によって散開したGN-X小隊に向かい突撃する
ビーム兵器独特の早い攻撃を仕掛けてくる複数の敵を相手取るにあたり、高威力だが大振りで隙の多いGNパンチ等の肉弾戦ではなくGNサブマシンガンによる射撃とビームサーベルという速さを活かした戦闘スタイルで応戦。
俺が指示するまでもなく、これまでの戦闘で学習してきた事がキチンと身についている証拠だ。第4ステージに於いては通信障害で動揺したりと、良くも悪く精神状態が操縦技術に影響しやすい点はあるが、やはりユナの伸びしろと成長速度は目を見張るものがある。
「いいぞユナ! そうやって数に呑まれず、落ち着いて迎撃するんだ」
『は、はい! けどこのペースだと……』
後方からGNキャノンを放って敵を撃墜しつつ、1機ずつ確実に堕とすユナに激を飛ばすが、彼女の返事には珍しく不安の色が見て取れた。
恐らく、頭では俺の言っている事を理解しているのだろう。
しかし、そうした気持ちと裏腹に『1秒でも早く、目の前のGN―Xを倒しきらなければ』という焦りがブレイジングエクシアの動きから見て取れた。
このステージの敵=30機のGN-Xは、Dランクという難易度が反映されてか一斉にではいくつかの分隊が、一定時間ごとに増員されていくしようになっている。
最初は3機編隊。その次は今の5機編隊が3分後に増援された。
傾向から見るに、間もなく次の増援が‘7~8機で出現する筈だ。
現れた敵を次の敵が現れるまでに仕留めきれれば問題はない。
しかしその前に増援に合流されていけば敵は雪だるま式に増え続け、対応しきれなくなる。
ましてや俺達は、本来4人仕様のミッションに2人で挑んでいるわけだから、より負担が大きくなる。
“ピピっ!”
「――と、思った先からかよ!」
5機編隊の内まだ2機を仕留めきれていない状態で今度は一気に9機のGN-Xが出現。
このペースで行くと次は残り13機が攻めてくるだろうな……。
少しヤバい。かな?
「ユナ、4時の方向に回避。固まってる奴らを打ち抜く」
『は、はい……!』
俺はユナが少しでも戦い易い状況を作ろうと支援砲撃を続けるが、ここに来てゼロクアンタガルムの欠点が浮き彫りになった。
攻撃力と防御力を高水準で維持しつつ、無駄な装備を省いたこの機体は、限られた時間で複数の敵を相手するのに必要な“面の攻撃”に対応した装備が欠けていたのだ。
よく考えれば発想の元になったブサイク3兄弟のビルゴも、そうした欠点を3機の連携で
補っていたし、流石に絞りこみ過ぎたか……。次の改修の課題だな。
今は手持ちの装備と勝利を掴み取らなければならない。
幸いにも、温存していた切札はある!
9機編隊の投入から5分、最終増援まで後2,3分って所か……。
「――ユナ、粒子を温存しつつ後3分堪えろ。俺が合図をしたら“アレ”の解禁だ」
『っ! ――分かりました!!』
俺の言葉の意図を察したのか、10機近いGN-Xに囲まれた状態にありながら、ユナは嬉しそうに笑って返事をした。
それでいい。
逆境を楽しんでこその――ファイターだ!
その後、俺達は迎撃行動をしつつも粒子ビームやGNフィールドの展開を最小限に抑え、消極的な戦法に徹する。
そして、最後のGN-Xが増援されたタイミングで、反撃に打って出る!
「ユナ、今だ! お前の力、見せてやれ!!」
『ハイししょー! ――――トランザムッ!!!』
俺の指示に嬉しそうに返事をし、封じていた切札を起動。
原型機と同じ青と白のブレイジングエクシアの機体に赫々とした輝きが灯る。
だが、変化はそれだけにとどまらない。
「えっ? あれ?? ししょー! 何か私のブレイジングエクシア、色々動いてます!」
トランザムシステムの起動に連動し、オリジナルで搭載した肩パーツの内側がせり上がり、内蔵していたGN粒子放出口が露出。同時に背中のGNドライブは00セカンドシーズン最終話で見せた【オーバーブーストモード】に移行。
「気張れよユナ? そいつはししょーが作ったとっておきだ。キミでも気を抜けば、機体についていけなくなるぞ。その名も――【スーパートランザム】だ!!」
リペアⅡのオーバーブーストとシャイニングガンダムのスーパーモードのギミックを複合した。天才的なセンスを持つユナだからこそ使いこなせる。彼女の、彼女のよる、彼女の為だけのトランザム。
その出力は――通常のトランザムの1.5倍だ!!
『すーぱー……とらんざむ……。――ししょー、私、頑張りますっ!!』
「ああ、頑張れ!!」
放出される莫大な粒子放出量と、それに伴うより強い輝きを感じ取ったユナはしばし呆けたが、成すべきことを自覚し、のっけからスラスターを全開にする!
「やああああああっ!!」
愛らしさを感じる少女の声で放つ気合いの叫びと共に、加速するブレイジングエクシアは一瞬、00ライザーの粒子化の如く戦闘宙域から姿を消し、次の瞬間には砲火を放っていたGN-Xの1機の頭部に膝蹴りを食らわせていた。
そして僚機の撃墜にGN―Xらが気付いた次の瞬間にはまた姿を消し、別の機体のコックピットに抜き手を穿つ。
無論、これは00ライザーやクアンタの様な規格外のGN粒子が起こした超常現象的な能力ではない。
単純に、通常時の4.5倍に加速したブレイジングエクシアの動きが捉えきれないというだけの至極簡単な話なのだ。
そこから先はまさにユナの無双が始まった。
相手がライフルの照準すら合わせられない程の速度で接近し、殴る蹴るなどの原始的、故に余計な動作のない動き且つ一撃で堕としにかかるのだから、最早数の有利などないに等しい。
そこもまた、ブレイジングエクシアの武装を敢えてエネルギー消費を最小限に留めた意図が活きてくる。
極まったスピードとパワーを持つ機体にとって、余計な手持ち装備なおもりにしかならない。
ビームよりも早く懐に潜り込み、超スピードとパワーで殴り飛ばす。
スーパートランザムを起動させたブレイジングエクシアにとってそれだけが、十分に必殺の一撃足りうるのだ!!
『ししょー! このブレイジング凄いです! 流石ししょーと私の子ど……愛の結晶!』
デタラメな加速で飛び回る
何か一瞬、ブレイジングエクシアの事を『ししょーと私の子供』と言いかけた気もするけど、うん、きっといい間違いだよね!
学校の先生をうっかりお父さんって呼んじゃう的なアレだ!
しかし既に天才的なファイターとして資質の片鱗を見せるユナでも、流石に5倍近い加速は持て余すらしく、偶に
乗りこなすには相応の習熟訓練が求められるだろうが、逆に言えばそれはこれだけの戦果を発揮して尚、彼女のガンプラには膨大に伸びしろがあるという意味だ。
その後もブレイジングエクシアは宇宙を縦横無尽に駆け回り、右往左往するGN-X達を一方的に撃破。最後の1機をトランザムが切れるのとほぼ同時に仕留め、展開していた装甲と機体カラーが本来のものに戻る。
『はぁ……はぁ……はぁ……、し、ししょー……』
「ああ、お疲れ様! 本当によく頑張ったな……!」
貯蔵する粒子の殆どを使い切った愛機と同様、急激な加速を体験したユナは息を切らせ、ぐったりとした表情を見せた。
基本的に疲労感とは無縁であるGBN内にあって尚、それだけの負荷を与えるこのシステムはやはり強力な反面、ファイターの資質を問う代物らしい。
『えへへ……ししょーってば意地悪さんですよぉ。こんなにスゴい技、本番まで内緒にするなんて……わたしもう、腰が抜けちゃったみたいにうごけません……』
「トランザムが好きなユナに合わせて作ったんだが、流石にハードだったか?」
『はい……でも、使ってる時はとっても熱くて、ドキドキして……ししょーが私の事を考えて付けてくれたモノだって考えると……嬉しくて……♡』
疲労感からかぐったりした感じの声でスーパートランザムに対する好意的な感想を返してくれるユナ。それは素直に嬉しい。嬉しいのだが……。
『うわー、何か先輩とユナっち、めちゃくちゃ事後っぽい感じで会話してませんか? なんか会話のノリが無駄にエロい』
「うん、アキラ、取り敢えずお前は1回死んどこっか?」
余計な事しか言わないクソ後輩が乗るフリーダムに向け、俺は最大出力のGNキャノンを放つ。――チッ、避けてんじゃねえぞSランクが!
会話してる俺自身がちょっと思った事を声に出すんじゃねえよ!!
憎い!
汗だくの女子中学生に――可愛い愛弟子が頑張り抜いた姿にエロスを感じてしまった自分の想像力が憎い!!
『ちょっ、先輩勘弁してくださいよ~! 見学状態とは言えミッションクリア直後に味方機の攻撃で撃墜とかアホみたいじゃないッスか!』
「“みたい”じゃなくて正真正銘のアホなんだよお前は! ――大体、このミッションはまだ終わりじゃねえ」
『ほへ? そうなんですかししょー……??』
疲労でぐったりしたユナは首を傾げて尋ねる。
まあ、あれだけの大立ち回りをした後なら失念するよな。
「ああ、最後に文字通りの大物が残ってる――――――来るぞ」
GN-X部隊全30機の撃破から丁度1分が経過し、システムはこの連戦ミッションのとりを飾る大物を出現させた。
成金趣味が極まった金色の巨体。
背部には『取り敢えず付けられるだけ付けてみた』と言わんばかりに搭載された7基のGNドライブが金色の粒子を巻き散らしている。
疑似太陽炉搭載型MA【アルヴァトーレ】。
本当は3話構成で終わらせるつもりでしたが思いの外、長くなってしまいました!
次回で今回のミッションは終了です。
【ガンダムブレイジングエクシア③】※今回は特殊機能について紹介
専用特殊機能:スーパートランザム
ブレイジングエクシア開発に際し、ユナの類稀な反射神経を十全に活かす為にダイチが考案したオリジナルのトランザムシステム。
トランザムを起動すると同時に発動(任意で通常のトランザムに切り替えも可能)。
シャイニングガンダムの肩パーツをモチーフにしたオリジナルパーツが展開し、GN粒子放出口が出現。同時に背面のコーン型スラスターが展開しリミッター解除状態になる。
エクシアリペアⅡに搭載されたオーバーブーストモードにスーパーモードの要素を加え、トランザムするという、堅実さを好むダイチにしては珍しい過剰な強化システム。
その出力は通常のトランザムシステムの1.5倍=基本性能の4.5倍の出力を誇る。
当然、粒子消費速度も通常より跳ね上がるが、装備を減らすことで活動時間の確保を図っている(それでも通常のトランザムより短いが)。
これは通常のトランザムではユナのポテンシャルに(将来的には)、物足りなくなると考えた為。ビルダーとガンプラの人機一体を信条とするダイチは、自分のガンプラに転用するつもりはない。
ダイチ自身の与り知らない所ではあるが、その発想は『トランザムシステムとヴォワチュールリュミエールの融合』という発想は【ビルドダイバーズのリク】の愛機【ダブルースカイ】の【スカイドライヴユニット】に通じるものがある。