ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
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数年ぶりに製作したガンプラが完成した翌日の日曜の昼過ぎ。
俺は近所に出来たガンダムベースに足を踏み入れた。
「すみません。先日予約を入れたアカギといいます。GBNの初回レクチャーを受けたいのですが」
「あっ、はーい! 今日初めてログインですね? ダイバーギアのご用意はありますか?」
自分より年下の受付の女性にログインまでの手続きについてレクチャーしてもらい、ダイチは筐体の中に入って三角形の専用端末【ダイバーギア】とガンプラを所定の位置にセットし、
ゴーグルを装着。操縦桿型のコントローラーを握りしめた直後、俺の視界と意識は仮想の世界へと飛翔した。
「これがVRか。スゲェな、正直侮ってたわ……」
360度全ての視界が現実世界から切り離され、どこか空港や大型駅のターミナルを想起させる施設内には多くの人々が行き交い、喧騒が耳に届く。
しかもそうした視覚情報や聴覚情報はあまりにもリアルと変わらず、空気感、とも言うべきものが伝わってくる。違和感がまるでない。
まるでちょっとした異世界転移を経験した気分だ。
成程、ダイバーの中にはゲームの要であるガンプラを敢えて持ち込まず単純な出会いや人との交流などを求める層が一定数いるというのも理解できる話だ。
ひとしきり状況に驚いた後、俺は指先で空を切ってメニューウィンドウが目の前に出現する。
「うおおおっ!」
何もない空間に浮かび上がるA4サイズ程の画面に思わずぎょっとした。
これも異世界モノの小説じゃ間々見かけるステータスウィンドウ的な奴か……何だか異世界とか仮想世界っていうより未来にタイムスリップした感覚なのは、俺が古い人間だからだろうか?
眼前に開示された画面に目を向けるとそこにはなるべくリアルの姿に寄せて作ったダイバーダイチの現在のランク(始めたばかりなので当然最下層)及びこの世界の通貨であるビルドコインの所有残高(これも初期支給される1000だけ)やら称号・フレンドリストなどが表示されていた。
「あっ、いたいた! そこの無難なコーデにまとめたデカいお兄さん! もしかしなくてもダイ先輩ですよね? 自分、可愛い弟分のアキラッス!」
「アン?」
と、特に見るべき内容のない初期値のウィンドウを眺めている俺に馴れ馴れしく声をかける男が現れた。
機動戦士ガンダムSEEDの主人公キラ・ヤマトが劇中着ていた私服と同じダイバールック。
髪型や背格好などもキラに寄せつつ、原作の彼と比べるとかなりバカそうな(愛嬌があるとも言えるが)自称可愛い弟分は、高校時代の模型部の後輩であり現在は大学4年生のヤマモト・アキラだ。
高校卒業後も時々連絡をしあっていた仲の良い後輩で、GBNでは大学の模型サークル仲間と一緒にフォースと呼ばれるチームを結成しそれなりの成績を残しているとかいないとか。
俺が今度GBNやると言ったら自分からレクチャー役を買って出てくれるあたり、基本はいい奴といえる。
「いやー、テレ屋な先輩ならリアルに寄せた格好すると思ってたけど案の序ですね! けどまあ、うん! 似合ってますよ地味コーデ」
「相変わらず褒めてんのかディスってんのかよくわからないヨイショをするなお前は」
言われて改めて自身のダイバールックを確認する。
GBNでは現実とはかけ離れた体格や外見年齢は勿論、獣人型やハロにだってなれる。
しかしリアルと体格が違い過ぎると多少は操作に影響があるかもしれない……と危惧した俺は、リアルと同じ185㎝の大柄な体格と比較的近い顔の造形を選び、服もジーンズにしろYシャツと袖なし黒パーカーと今日の適当に着てきた私服に合わせた。
キャラメイク時、ちょっとだけソレスタルビーイングの制服にしようかとも悩んだが、結局気恥ずかしくて無難な方に逃げた。
ずばり
「あー、スンマセン。何か久し振りに先輩と遊べると思うとテンション上がっちゃって! 結局先輩いなくなった後も殆どの部員がGBNに乗り換えるのを受け入れられなくて引退しちゃったんスもん。だから自分、先輩にGBN好きになって貰えるように全力でレクチャーしたいますよ!」
「ああ、まあよろしく頼……「アッく~~~~ん♪」……む?」
俺が感謝の言葉を口にしようとした途中、ピンクの髪色をしたポニーテールの女性ダイバーがアキラに抱き着いてきた。因みに服装はこれまたSEEDのヒロインであるラクス・クラインが来ていた紫の着物と陣羽織だ。
「あ、リっちゃんどうしたの? 今日はお父さんとパーティじゃなかった?」
「アッくんとGBNしたかったから仮病でサボっちゃった♪ それよりこちらの方は?」
「ああ、この前話した高校の先輩だよ。今日デビューだから色々教えてあげようと思って」
「あ~~ん! アッくんってば優しい♪ 大好き♡」
「俺もだよりっちゃん♡」
「知ってる♡」
頭の悪そうなキラとラクス風のバカップルが目の前でイチャコラし始めた。
俺は一体、何を見せられているんだろう?
「あっ、スンマセン先輩。この子はリエちゃんって言って俺が以前所属してたプラモサークルで知り合った彼女なんッス! どうッスか? めちゃくちゃ可愛いでしょ? けどリアルはも~~~っと可愛いんですよ!!」
「よろしくで~~す♪」
「アッハイ」
数分ほどイチャコラした後輩とその彼女に乾いた返事をし、改めて3人で行動することにした。
「基本的にミッションカウンターでミッションを受注してクリアするってのがゲームとしての流れっスね。ミッションの内容はGPDみたいなフリーバトルからお使い系まで多種多様でガンプラなしでも楽しめるものも多いっスよ。で、クリアするとビルドコインとか賞品がもらえてランクも上がっていきます。それ以外も普通に色んなエリアをガンプラで飛び回って観光みたいなこともできますよ?」
「異世界ラノベで言う冒険者ギルドみたいな感じだな」
「概ねそんな感じっスね。因みにDランクに上がればフォースを結成する事が出来るようになって個人じゃ参加できないミッションにも挑戦できますよ!」
「フォース……部隊かぁ。確かアキラは大学のサークルでそのままフォース組んでたんだっけ?」
「はい! もう解散しちゃいましたけどね!!」
「えっ、なんで……?」
高めのテンションで説明するアキラがさらりと穏やかではない事実を告げた。
「いやぁ~別によくある話なんスけどね? 俺らのサークル、最初は男同士でやってたんっスけど、俺が2年になった時りっちゃんが初の女性部員として入ってきて、超可愛い彼女を皆好きになっちゃったんですよ。けどりっちゃんは俺しか眼中になくって、俺らが付き合いだしたらギスギスしてそのまま空中分解……」
「それ典型的なサークルクラッシュじゃねえか! なんでそんな苦い経験を世間話風に話せるんだよ!? なんか怖ぇよ!」
「アッくんを責めないで先輩さん! 全部私が可愛すぎるのが悪いの!」
「君は少し黙っててくれないかな!?」
どこか頭のネジ抜けてるんじゃねえかとアキラを言及する俺に、健気なヒロインムーブを決める元サークルの姫が割って入る。
この娘もナチュラルにぶっ壊れてるな……。
「まあ、そういう訳で先輩もとっととランク上げて、俺らのフォースに入ってくださいよ。今なら№3のポストを用意しますよ?」
「いや、3人しかいないフォースの№3ってそれただの下っ端! つーか俺が何時お前らのフォースに入るっって言った!?」
「えー、いいじゃないっスかケチ~。流石に2人じゃフォース同士のバトル厳しいんッスよ~。なんなら名目上の隊長にしてあげますから~」
「私は別にアッ君と2人だけでもいいよ? まあ、先輩さんがどうしても入りたいっていうなら鉄砲玉ってことで」
「本気で誘う気あんのかお前ら!?」
俺は思わず、顔も知らない模型サークルの元メンバー達に同情した。
こんなに人をイラっとさせるバカップルが中心にいたら、そりゃ皆離れるわ!
「ちぇ、まあ根がチョロい先輩の勧誘はおいおいにして、取り敢えずミッション始めますか」
「誰がチョロいだ誰が」
「ぶっちゃけ先輩の腕ならいきなりDランクミッションに挑んでも問題ないと思いますけど、流石にブランクあるし、まあちょい長めの連戦チュートリアルミッションとからやったらどうッスかね? Eランクのコレ。使うガンプラも新作なんですよね?」
後輩の下心が多少気になりつつも取り敢えず話は本筋に戻った。
勧められたのはいくつかあるE・Fランクダイバー限定の初心者向けミッションの1つだ。
内容は自然が豊かな地上フィールドで、殆ど棒立ち状態のW系量産機を10体撃破。
まさしくガンプラの操作を覚える為の内容という事らしい。
「フィールド内には同じミッションを受けた初心者さんの他にも、普通に散歩や別ミッションで来てるガンプラが飛んでるかもしれませんから誤射には注意してくださいね。中にはわざと攻撃に当たってフリーバトルに持ち込む初心者狩りとかする連中もいますから」
「フリーバトル? それって両者の合意の上でやる奴だろ?」
「まあ原則はそうですけど、許可なく相手から攻撃を受けたダイバー側には攻撃した側の拒否権なしで喧嘩ふっかける権利があるんッスよ。一時誤射と主張して気にくわないダイバーに嫌がらせする悪戯が横行した上での仕様なんスけどねぇ」
「1つの問題に解決策を用意すれば別の問題が出る。そこら辺は現実世界と同じだな」
「そういう面も含め、ここも1つの世界って事ッスかね」
現実であれ仮想であれ、多くの人間が1つのコミュニティに集まればそこには必ず悪意が生まれるものだ。そしてその悪意とはコミュニティの増加・発展に比例して大きくもなる。
ある意味では必然と言う奴だ。
人と人が正しく分かり合う事の難しさは、歴代ガンダムシリーズが物語っている。
「ま、仮に鉢合わせてもそんなつまらない事する連中に遅れは取らないさ。多分な」
実際5年ぶりのバトルという事でどの程度やれるかは不安ではあるが先輩としての沽券を取り、後輩及びその彼女の前で強がって見せる。
「そっスよね! 【トランザムマイスター】の先輩にかかりゃそんな連中雑魚っスもんね!」
「おいバカやめろ。高校時代仲間内で呼び合った異名とか出すんじゃない! 恥ずい!」
「ええ~いいじゃないッスか別に、ぶっちゃけ先輩の武勇伝なんてりっちゃん毛穴ほどの興味もないし」
「うん、全然ない♪」
「やっぱ帰れよお前ら」
ヤマモト・アキラ
22歳。ダイチの高校時代の後輩で現在は大学4年生。
ガンダムSEEDのキラ・ヤマトの私服姿を意識したダイバールックを着こなすが生来のチャラさから全く似てる感じがしない。
人懐っこく陽気な性格をしているが甘やかされて育った末っ子気質で基本的に世の中舐めてる感があり、ダイチをちょくちょくイラっとさせるゆとり系。
彼女のリエとは所かまわずイチャつくバカップル。
大学のプラモサークルメンバーとフォース【TSU(スリーシップユニオン)】を結成していたがリエとの交際がきっかけでサークルクラッシュが起き、現在メンバーは2人だけ。
言動はバカっぽいがダイバーとしては古参でSランクの実力者。フリーダムを改造した機体【ハイパーフリーダム】を駆る。