ガンダムビルドダイバーズ REBOOT 作:キラメイオレンジ
その後、俺とクジョウさんは他愛のない話で盛り上がりながら談笑した後、未成年の瑞樹さんが同席している事もあり、20時に解散となった。
「今日は本当にありがとう。久し振りに1人のダイバーに戻れた気がしたよ。――来週の極東オープン、お互い頑張ろう」
「ええ、といっても俺はミドルクラスですけど、アハハ」
別れ際に再びを握手を交わした後、クジョウさんはタクトくんと色々話をする為にフォースネストへと帰還。俺もログアウトしようとシステムウィンドを操作するが……。
「あ、あのっ……!」
そんな俺の正面にミズキさんが立ち、何か真剣な眼差しを向けてきた。
その表情は怒っている様にも、緊張している様にも見えるが、真意は掴めない。
「ん? どうかしたのかなミズキさん?」
俺は内心『ずっと飲み会みたいな雰囲気に巻き込んで気を悪くさせたかな?』とか『敬愛するクジョウさんに馴れ馴れしい』とか言われるかと緊張しつつ、表向きはすっとぼけた態度で彼女と視線を合わせた。
しかし、こうして改めて面と向かって向き合うとミズキさんは文句のつけようがない美少女だ。
ユナと比較すると少女特有のあどけなさを残しつつ、落ち着いた雰囲気を持っている。恐らくは高校生くらいか?
身長は十代女子にしてはやや高めの165㎝位、栗色の髪と翠の瞳だが日本人顔な辺り、恐らく俺やユナと同じ、リアルに寄せて作ったダイバールックと想像できる。
……後、余談だが胸は中々立派なものをお持ちだ。いや、他意はないけど!
「い、いえ……その、お別れする前に、改めて謝罪とお礼が言いたくて……今日は、本当にすみませんでした! それと、ありがたとうございます!! あの時、貴方がタクトさんと止めてくれたから、武器を捨てて言葉をかけてくれたから……私は、自分の間違いに向き合えました……」
そんなミズキさんは謝罪と感謝の言葉の後、自身の身の上にあった話と共に胸の中にあった思いを打ち明けてくれた。
3カ月前に友人と希望を胸に初めてダイブした折、質の悪い初心者狩りに捕まり嬲り者にされた事。
友人はその事がトラウマになって以来GBNを辞めてしまったが、やられっぱなしは我慢がならなかったミズキさんはその後も何度となくその初心者狩りに挑み、敗北を重ね続けた所、タクト君に救われ、彼に誘われる形でアヴァロンに加入した事。
タクト君が掲げる『このGBNを、悪のいない真の理想郷に』という理念に共感し、ヴァイス・ユニオンに参加したが、メンバーを増やすと共に次第に過激になっていく彼らのやり口に疑問を覚えていた事。
そしてそれでも、自分を救ってくれたタクトを裏切る事が出来なかった事を――。
俺の脳裏には不意に、ブサイク3兄弟に嬲られてたユナの姿がよぎった。
「本当は……随分前から分かってたんです。あんな事は間違っている。いくら不正や非道を働いた人たちでも、あんな尊厳を踏みにじる言い方……あれじゃあ私達をいたぶって愉しんでいた人たちと同じだって……私は、卑怯者です」
まるで懺悔でもするかの様に全てを告白し、涙を流すミズキさん、俺はアイテムストレージからハンカチを取り出し、彼女に差し出した。
「それは違うよミズキさん。だって君は今日、立ち向かえたじゃないか? 恩人でフォースの先輩であるタクト君を相手に、間違ってるって言えた。それは、勇気がなければできない事だよ」
「そ、それは、ダイチさんが……」
「俺は何もしてない。それは君自身が手に入れた君だけの勇気だ。だから、そんな後ろめたい顔なんかしないで、胸を張って前を向かないとな? 俺も、きっとクジョウさんも、そうしてくれるのを望んでいるよ」
自分がしてきた過ちに気づき、足を止めるのは簡単なようで実に難しい事だ。
まして、恩義を感じている相手にそれが出来る人間は決して多くない。
ミズキさんは、もっと自分自身を誇るべきなのだ。
「分かりました。…………けどやっぱり、お礼だけは言わせてください。本当に、今日はありがとうございましたダイチさん。私も、いつか……貴方みたいに、苦しんでいる人を救える人になりたいです」
ハンカチで涙を拭い、俺言った通り胸を張って顔を上げるミズキさん。
けど
「俺みたいにって……志が低いなぁ。どうせ目指すならクジョウさんみたいな人を目指さないと」
「ひ、低くありません! 確かに隊長は尊敬していますけど、私は……。あ、あの、ダイチさん! よ、よければ私とも、フレンド登録してもらえないでしょうか?」
「えっ、俺と? 別にいいけど……」
クジョウさんとは先程店内で登録をしたが、まさか彼女からも求められるとは思わなかった。いや、未だに登録フレンドが4人(ユナ、アキラ、マギーさん、クジョウさん)な俺としてはリストに登録される名前が増えるのは喜ばしい事だ。
それに俺の見立てでは彼女、現時点ではユナより1ランク上に実力を持っている。
ひょっとすると今後、ユナの良い対戦相手になってくれるかもしれない。
「あ、ありがとうございます! そ、それでその……ダイチさんは、用がないのにメッセージ送られるのは、お嫌いですか?」
「いや、他愛のない雑談とかは寧ろ好きな方かな? 仕事があるし、毎日ダイブできるわけじゃないから、返信とか遅れがちになるけど、いいかな?」
「も、勿論です! そ、それじゃあその……メッセージ、送らせてもらいますね?」
どこか遠慮がちではあるが、はにかんだ笑顔を向けてくれるミズキさん。正直、可愛い。
清楚さと奥ゆかしさがあって、良くも悪くも無邪気で天真爛漫なユナとはまた趣の違う笑顔だ。――やはり女の子は、笑っている時が1番可愛い。
「ああ、楽しみにしてるよ。それじゃあ、また!」
嬉しそうにフレンドリストを眺めるミズキさんに別れを告げ、俺はログアウトした。
・・・・・
『セ・ン・パ・イ☆ 聞きましたよ聞きました! ユナっちが試験勉強でログインできない間にま~た新しい“JC”ひっかけたんですって!? よっ、このJCキラー!』
時間は22時、今回の戦闘で体感したゼロクアンタライザーの乗り心地を思い出しながら銃身バランスを調整していた俺のスマホから
「夜中にいきなり電話した上に喧嘩吹っ掛けるとはいい度胸だな? JCじゃなくまずお前を
『アッハッハッ! またそんな事言って、内心ちょっと誇らしいんじゃないッスか? JCキラーの称号』
「どこの世界に『女子中学生口説くのが巧いですね』って言われて喜ぶ成人男性がいるんだ!? ていうかそもそも、俺は誰も口説いてない!! 弟子にとった子がたまたま世界一可愛い女子中学生だっただけだ!!!」
『うわぁ……またナチュラルにキモチ悪いこといってるよこの病人……。というか今回俺が言ってるのはユナっちのことじゃなくてアヴァロンの子の事ですよ! マギーさんから聞きました!』
ハッ? アヴァロンの子?? それってまさか――
俺は背中から季節外れの冷や汗が流れるのを自覚しつつ、アキラに尋ねた。
「えっと、それはもしかすると、ミズキさんの事言ってるのかな? ……あの子、JCだったの? JKじゃなくて?」
いや、だってかなり大人びてたよ彼女!?
雰囲気も落ち着いていたし、それにその……アレもかなりご立派だったし?
どう考えても高2か高3、ヘタすれば女子大生くらいと思ってたんですけど!?
『うっはスゲェ! そうと知らずにJC堕とすとかマジ天然のロリコンだわ! おまわりさーん、この人ッス♪ ――あっ、ちなみにミズキちゃんは中2ッスよ』
「あの身体つきで中2!? ……って違うそこじゃねええ!! そもそも何でお前が俺とミズキさんが連絡先交換したって知ってるんだよ!?」
『えっ、そりゃあだって自分、今日はアヴァロンやアダムの林檎の人達と一緒に最近問題になってる若手の“初心者狩り狩り”の捜査をしてたから、アヴァロンのフォースネストに戻ってきたクジョウさんやミズキちゃん本人から色々聞いたんスよ。いやぁ~にしても先輩は相変わらず厄介事に縁がありますね? 疫病神にでもとり憑かれてんじゃないッスか?』
「バカみたいなハイテンションでの心配ありがとよ……。俺もクジョウさんから有志連合のあれやこれや聞かされた。――お前も結構、面倒な事してたんだな?」
俺はアホのウザさに対する怒りを一旦鎮め、その上でコイツが所属している有志連合の抱える問題について尋ねた。
顔役のクジョウさん程ではないだろうが、こいつもGBN黎明期からいる古参のSランク。
今の様な現状に思うところもあるだろう。
先輩としちゃ、愚痴ぐらいは聞いてやる心づもりだ。
『アハハ、先輩がマジで心配してくれるって何気に久し振りッスねー? ――大丈夫ッスよ。こう見えて自分、全国制覇をした【月宮の
しかしアキラは、そんな俺の胸中など見透かした上で、いつもの様なチャラいノリで応えた。
ったく、だから昔の2つ名を言うなって言ってんだろうが恥ずかしい……。
コイツといいニシカワさんといい、どいつもこいつも昔の俺を神聖視し過ぎだ。
「……しんどい事になったらスグに相談しろよ?」
『うっス☆』
それにしても……。
「昨日ちょっと思い出したんだけどさ、アキラお前、昔と随分変わったよな? 確か高1の頃は結構可愛げあったのに、秋ぐらいから段々見た目がチャラくなって、ウザくなって……どうしてそんなんなったの?」
俺は昨日のニシカワさんとの会話で思い出した在りし日の気弱で可愛げのあったアキラ少年と今のウザさMAXのアホタレを比較し、その残念ビフォーアフターっぷりを嘆いた。
『ええ~ヒデェッスよ先輩! どうしてもこうしても先輩が『お前は自分が思っているよりずっと才能があって、勇気がある。肩の力を抜いて、自信を持て』って言ってくれたから、こういう感じにしたんっスよ?』
「…………………………えっ、ちょっと待って? つまりお前がそんなんなったのって、俺の所為なの?」
『
なんてこったい!
つまり何か? 俺は俺自身の言葉で生み出したクソウザモンスターの所為でいらんストレスを抱える羽目になってんの? 自業自得なの!?
嘘だと言ってよバーニィ!!
『まあ、自分が言う事じゃないッスけど、先輩って自己評価は低い癖に、人に対して無駄に寛大なとこありますからね。良くも悪くも、人の持ってる本性引き出すっていうか……』
「人を変態製造機みたいに言うの止めろ」
もし仮にそれが事実なら、俺が今、1番関わりが深い存在であるユナが、いずれ変態になっちまうって事じゃねえか! そうなったらもうハラキリどころじゃすまされねえぞ!?
責任のとりようがねえ!!
『まあまあ、自分もそうですけど心のままに生きるって結構楽しいッスよ? サクラっちだって、ある意味じゃ先輩のお陰で成功したみたいなもんだし』
「サクラ……って、ああユキムラの事か?」
さっきも少し名前が出てきたが、【ユキムラ・サクラ】はアキラと同じ俺の1つ下の後輩で、共に月宮工業と戦った戦友だ。
常に前髪で表情を隠している。
どちらかと言うと内向的な子だったが、俺の事は兄の様に慕ってくれていた。
……後、
夏の大会の直前、就職活動の為に部長の身でありながら模型部を急遽引退することになった罪悪感から疎遠になっていたが……。
『ああ、そういや先輩には言ってませんでしたね? サクラっちってば今はプロの漫画家さんなんッスよ! 去年の夏ぐらいに月刊誌でデビューしてこの間、単行本1巻が発売したッスよ!』
「えっ、マジで!? スゲーな!」
そう言えば高校時代もガンプラの設計図面とか書くのやたら巧かったし、時間がある時によくスケッチしてたっけか……。
何だよ。変態どころか大成功してるじゃねえか!
「タイトルなんて言うんだ? 早速電子版買うわ!」
疎遠になったとはいえ俺にも可愛い後輩の成功を祝う気持ちはある。
取り敢えずは電子版を購入して読んで、その後は書籍版を買おう!!
『あー、はいはいペンネームは【アカギ・サクラ】で、作品の名前は【キャプテン・レッド】ッス』
「オイちょっと待てぇえええええええええええええ!!!」
何だそのツッコミどころ満載のペンネームと作品名は!?
何故俺の名前がペンネームになって、作品名が俺のイタい2つ名!?
得体の知れない恐怖心に身体が震えつつ、俺はAma●onの検索でキャプテン・レッドの単行本第1巻の書籍版を購入。恐る恐る、内容に目を通した。
作品の内容は有り体に言って『アメコミ風ヒーローアクション』だった。
普段は心優しいが冴えない高校生の主人公“アカバネ・ダイキ”、しかしその正体は超人的な身体能力と、どこまでも熱い不屈の心で悪の超能力者やサイボーグと戦うというモノ。
正直、内容は面白いという思う。――モデルが過去の自分だという事実から、目を背ければ。
というか、主要メンバーが明らかに当時の模型部メンバーじゃねえか!
主人公の足を引っ張るちょっとひょうきんなサイドキックはこれどうみてもアキラだし!
後、『キャプテン・レッドの引き締まった身体にイヤらしい劣情を抱き、その貞操を奪おうと目論む淫乱な悪の女科学者【プロフェッサーブルー】』は多分、
そして、キャプテン・レッドと相思相愛の小柄な少女【ユキ】……これはつまり……。
『あー、ひと通り読みましたか先輩? ――お察しの通り、その漫画は密かに思いを寄せていたダイ先輩を【アマツカ先輩】に
「ウチの模型部マジでヤベー奴ばっかじゃねえか!? 嘘だろオイ! 俺の青春時代の輝かしい思い出が崩れてくんだけど!」
大人しい少年からクソウザいアホに変わり果てた後輩に、ずぼらで下ネタ大好きな元カノと来て、闇深い女性漫画家って……アイツだけはまともだと信じていたのに!!
『その様子だと、流石にサクラっちが先輩に気があったのは察してたみたいっスね?』
「……まぁ、懐かれているなとは、思ってたよ」
俺は当時のユキムラの事を思い出し、あの大会の後からなんとなしに向けてくれた彼女の熱っぽい視線は自覚していた。
だけど当時は既に
――我ながらホント『何様のつもり?』だと言いたくなるモテっぷり、昔の俺マジで1発ぶん殴りてえ!
しかしこうなると、認める他ないのかもしれない。
アキラの言う『アカギ・ダイチは変態製造機』などという訴訟モノの戯言を信じる気はない。
だが、1つの事実として俺の周りにはちょっと……いや、かなりアレな人達が多いという事実は受け入れなければならない。
最近知り合った身近な例だと、アキナさんとかニシカワさんとか……。
ならばせめてユナだけは、“変態”などという言葉とは遥か程遠い位置にいるあの天使だけは守らねばなるまい!
――もし万が一、俺の所為でユナが変態になったとしたら、腹切って死ぬ!
【フジノモリ・ミズキ/ミズキ】
・№1フォース・アヴァロンに所属する新人ダイバー。現在Dランク。栗色でセミロングの髪と翠の瞳が印象的なやや長身(そしてEカップの巨乳)の少女、姿形は凡そ現実と同じだが、現実では髪と瞳は黒く、メガネをかけている。
・
・元々アニメ好きで、同じ趣味の友人と『違う世界でキラキラ輝きたい』という理由でGBNを始めたが、ダイブ初日から悪質な初心者狩りの被害にあった事で友人はGBNを去り、ミズキ自身も心に傷を負った。
・しかし、生来の正義感、ガンダムWから学んだ『負け続けても経ち続ける敗者の強さ』を胸に1人でも活動を続け、件の初心者狩りへのリベンジを挑み続けていた。
・そして5度目のリベンジの最中、介入したタクトの加勢により遂に復讐を遂げた彼女は彼への恩義と、微かに抱いた好意からアヴァロンへの加入を決めた。
・アヴァロンの気質は彼女の性格と合っており、心の傷は徐々に癒え、有志連合が担う自警活動にも精力的に参加しいったが、タクトがキョウヤら幹部メンバーにも内密でヴァイス・ユニオンを結成し、そこへの参加を命じられた辺りから現在GBNで問題になりつつある歪みを知っていく。
・ヴァイス・ユニオンの『不正を働いたダイバーは最早人にあらず』という過激な思想で初心者狩りやチートツールの売人をいたぶるやり方は間違っていると思いながらも、恩のあるタクトを裏切る事も、キョウヤに相談する事も出来ずに苦悩をしていた。
・しかしそんな折、ヴァルガでビルゴ3兄弟を狙った際にダイチと遭遇。例え悪事を働いていたとしても虐げられた者を守る為に有志連合に連なる自分達に立ち向かう彼の姿に『なりたかった自分』を見出し、タクトと決別。その後、自分達がしてきた所業の一切を告白。事情を鑑みたキョウヤの裁量で罰則は与えられなかった(タクト以下、主犯格は当面の謹慎が言い渡された)が、本人はその後、贖罪の為に危害を加えた初心者狩りなどに謝罪して回っている。
・ダイバーとしての経歴は3カ月の新人だが、アヴァロンに勧誘されるだけあってビルダーとしてもファイターとしても確かな才能を有しており、ダイチの見立てでは『現時点ではユナより強い』。それまでは白く塗装したウィングガンダムを使っていたが今後はダイチの言葉を受け、『自分色のガンプラ』を作っていく予定。
・ダイチの事は『自分に本当の勇気を教えてくれた尊敬できる男性』と認識しており、彼とフレンド登録する。が……?